1,800円以上の注文で送料無料

長くなった夜を、 の商品レビュー

3.3

14件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    5

  3. 3つ

    5

  4. 2つ

    2

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2025/11/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

※評価は全てつけていません 二人称で書かれている理由、「長い夜を、」ではない理由、それが読んでいくうちに理解できてしまって、どんどんページが重たくなりました。 主人公にとっての幸せを考えてくれるのは他人ばかりでした。 肝心の主人公に自我がないせいで、周りの善意は伝わらない。主人公を取り巻く人間関係がほとんど一方通行であることに、虚無感を覚えました。 主人公に意志がないために、誰に対してもまともな会話がなかったことも印象的でした。 たとえば母に「帰りが早かったなら、なんでもいいから作っておいてほしかったな」と言われても、帰ってきた時間をごまかしただけ。そこには「私だって大変なんだよ」とむっとした描写も、「ごめんね、仕事で疲れててそこまで気が回らなかった」と反省する様子もありません。母親や自分の気持ちを考えるわけではなく、母親を怒らせないことでその場を納めようとするだけです。 こうやってずっと生きてきたとすれば、主人公には家族以外の人間関係は皆無に等しいでしょう。そして、その家族とも意思疎通はしていない。 この時点で主人公の社会性は育っていないと想像でき、彼女の容量の良し悪しに関わらず、幼稚園教諭として仕事はできないだろうと思いました。 印象的だったのは、幼い主人公に対する両親の『教育』の場面です。 辛かったはずなのに、その辛さを覚えているのに、それでも実家を離れなかった(=『教育』に成功した)主人公の目線や表情を見ていれば、早くから妹が反抗的になるのも当たり前だと思います。 子がいながら妹が自分本位に行動してしまうのも、『普通』の子と違って両親から愛されなかったためなのかなと想像しました。主人公と違って『普通』よりに過ごしてきた妹にとって、主人公よりもずっと自分たちのおかしさに触れる機会は多かったでしょうから。 そんな妹に「教えてや」と詰め寄られても、おかしいと感じる感性を捨ててしまった主人公にとって、『幸せ(=主人公家族にとっての正解)』はあのラストしかなかったのですね。 おかしいと思い続けるより、考えを捨てることを選んだ。作品中で見える、主人公の唯一の『自我』だったような気がします。 そして考えることをやめた主人公は、常識をも持ち合わせなくなります。『普通』の人間は、たとえ体調が悪くても良くなるよう動くでしょうし、そこに憐れみを求め続けようとはしない。そうなる前に元気になって、自分の判断がおかしいことに気がつくはずです。 ラストの先、主人公にとっての幸せはなんでしょうか。 どうすれば『よかった』んだろう、ならたくさん答えが見つかるのに、どうすれば『いい』んだろう、と未来のことになるともう何も見えなくなります。 両親が死んだら、 妹に訴えられたら、 入院が長引いて仕事を辞めざるを得なくなったら、 誰が主人公を導いてやれるのでしょうか。 主人公には誰のことも見えていないのに。

Posted byブクログ

2025/09/21

はじめましての作家さん 救いがない!でもこういうのが読みたかった 普通に暮らしていたはずなのに、子連れで出戻ってきた妹と暮らすようになり少しずつ歯車が狂っていく 甥っ子の存在は癒しかと思いきや、あらたな生贄 同僚やスナックママの気遣いがリアルな距離感でいい

Posted byブクログ

2025/09/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本当になんとなく見つけて手にとって、帯を見て、読んだら苦しい気持ちになるだろうなあと思って、それでも読んで、案の定そうなった。 38歳実家暮らし・非正規雇用の環が、ネグレクト気味のシングルマザーの妹・由梨の息子・公彦の保育園の送り迎えをしたり面倒を見たりしているという話。38歳の娘に門限を強いる両親も頭がおかしいのだが、それから抜け出せない環もどうかしてしまっている。幼い子供を一人家に置いて男に会いに行く由梨もいかれている。個人的には環の父親の一人称が「僕」なのも無性に嫌だった。外面だけは取り繕っている感じが一人称と口調から滲み出ている。ろくでもない登場人物たちを脳内で並べて、つい「だれが一番悪いんだ」と考えてしまうのを堪えて、どうか環の入院をきっかけに、少しでもマシな方に歯車が動いてくれと願うしかない。

Posted byブクログ

2025/08/27

こういう親の善かれの教育が、子どもの将来を奪っていくんだ。門限や家事の遂行、早起きの強要、親の尊重、性からの距離を取らされること。行動も言動もリアルで、本当に胸が苦しくなった。なぜ自由に反抗した方が良い目をできるんだろう。そして、従った方はなぜ家族の尻拭い担当なのだろう。関西弁で...

こういう親の善かれの教育が、子どもの将来を奪っていくんだ。門限や家事の遂行、早起きの強要、親の尊重、性からの距離を取らされること。行動も言動もリアルで、本当に胸が苦しくなった。なぜ自由に反抗した方が良い目をできるんだろう。そして、従った方はなぜ家族の尻拭い担当なのだろう。関西弁であることでよりセリフがグサグサ胸に刺さった。これから自分を見つけて生きられることを切に願う。

Posted byブクログ

2025/08/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

親にとって良い子であり続けた結果がこれではあまりにも報われない。親の善かれは必ずしも子にとってそうではない。当たり前だけれど、その責任は本人が背負うしかない。ただただどうか救われますようにと祈る。

Posted byブクログ

2025/08/07

二人称小説は珍しいなと思った。 とにかく内容が陰鬱すぎて、最後まで心の距離を取りながら読んでいた。 長い夜が明けたら、きっと楽に生きていけるはずよ。そういう日は突然やってくる時がある

Posted byブクログ

2025/08/06

38歳、派遣社員、女。同居している両親はともに高校の教師だった人で、彼らに完全にコントロールされた人生を歩んでき、彼らの言うとおりに保育士になったものの、体調を崩して退職。現在も両親と同居、家事を担い、門限を守る生活をしている。母親の、保育士に戻らないのかという圧と、父親の、結婚...

38歳、派遣社員、女。同居している両親はともに高校の教師だった人で、彼らに完全にコントロールされた人生を歩んでき、彼らの言うとおりに保育士になったものの、体調を崩して退職。現在も両親と同居、家事を担い、門限を守る生活をしている。母親の、保育士に戻らないのかという圧と、父親の、結婚して子供を産めという圧に苦しみ、老いていく自分の体について、子宮が劣化していると認識している。仕事は通販のコールセンターで、理不尽なクレームを受けている。唯一、妹の子供の保育園のお迎えに行ったり、添い寝したりすることに、安らぎを覚えている。が、妹も、娘の話を一切きかない両親に嫌気がさし、子供を連れて実家を出てしまう。 女は、転職先を見つけ、子供を育てている同僚の若さに嫉妬し、同じ両親の下に生まれたにも関わらず、好き勝手生きている妹を憎んでいる。妹が家を出た理由は男であり、それゆえ、子供が不幸な目に合っていないか心配になって、見張りを始める。親の言うとおりに生きてきたのに、親の望むことの出来ていない自分を責め、逃げ道として過食嘔吐に走る。追い詰められていく女に、救いは現れない。ずっと苦しい。 自分が間違えたことを言っても、「ほんまに僕が間違ってたんか。僕はそんな風に言うてへん。お前が聞き間違えたんとちゃうか」と言い、幼稚園教諭の資格を取得し、晴れて就職が決まった娘が、「単位取るの難しかった」と喜びの中、照れ笑いするのに、「僕らのほうが難しいからな。驕りなや」と牽制する父親が、一人称が「僕」なのも含め、限りなく気持ち悪かった。

Posted byブクログ

2025/07/24

親の言いつけを頑なに守り続けて、30代半ばになってもなお門限を守り続ける女性。 甥っ子への歪な愛情。両親への渇望。 「求められたい」という叫びが聞こえてくるような一冊でした。 ところどころ、場面がどこなのかわからず困惑もしたけれど、「あなた」の頭の中だとするとなるほどなという感...

親の言いつけを頑なに守り続けて、30代半ばになってもなお門限を守り続ける女性。 甥っ子への歪な愛情。両親への渇望。 「求められたい」という叫びが聞こえてくるような一冊でした。 ところどころ、場面がどこなのかわからず困惑もしたけれど、「あなた」の頭の中だとするとなるほどなという感覚。

Posted byブクログ

2025/07/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

中西さんの作品が読みたくて2作目です。 これは…結構感情にきました。苦笑 ---------------------------------- 親からの「教育」という形の「暴力」。 閉ざされた「日常」。 三十八歳、独身、派遣社員。 私には何もない。 どうすべきか教えて欲しい。 ---------------------------------- これは…結構重たかったです。 両親が「教育」した結果、 小さな家の中で無力な子供は、 従うしかない。 誰が悪い?自分が悪い。 そこから両親が年をとって、 なんか間違ってたかも…なんて思っても、 もう遅い。 なかったことにはできないし、 あなた達が敷いたレールから、 いまさら降りるなんて言わせない。 本作の地の文は、 主人公のことを「あなた」と表現し、 ずっと客観的な他人事のように思えて、 常に誰かを意識して、縋り、怒り、 壊れていく姿を、ただただ見るしかできない。 行き着く先を息を呑んで見守りました。 家族という閉鎖的な空間で、 一歩間違えば…というようなヒヤリとする場面や、 本当にあるかもしれないと思わられる場面があり、 胸が痛くなりました。

Posted byブクログ

2025/06/03

ページ数少ないのに、ずっしりと重い。 そりゃ、こんな育て方されても逆らえず、ずーっと従い続けていたら、どこかで歪みは出てくるよね。妹みたいに反発出来たら楽だったのに。親身になってくれる同僚がいて、そこだけが救い。

Posted byブクログ