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この世の喜びよ の商品レビュー

3.3

25件のお客様レビュー

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2026/04/15

私には芥川賞作品を理解するアタマがありません。170頁に満たない本なのに、同じボリュームの「普通」の本を読むときの3倍くらい時間がかかります。 私ならば句点を使うであろうところの読点に困惑し、なんとなく芥川賞作家は使わないと思い込んでいた「ら抜き」にも戸惑う。そうだよね、今時ら...

私には芥川賞作品を理解するアタマがありません。170頁に満たない本なのに、同じボリュームの「普通」の本を読むときの3倍くらい時間がかかります。 私ならば句点を使うであろうところの読点に困惑し、なんとなく芥川賞作家は使わないと思い込んでいた「ら抜き」にも戸惑う。そうだよね、今時ら抜きじゃないほうが逆に不自然なのかもなどと思いながら読むのでした。 ボーッとしているこちらに向かって目の前にいる人がずっと喋りかけて来るけれど何を言われているのかわからない、そんな感じです。これがわかる感性が私もほしいとは思います。

Posted byブクログ

2026/04/12

あなたは、嘗ての幼い娘達と多くの時間を過ごしたショッピングセンターの喪服売り場で働く。そんなあなたは、そこのフードコートの常連である少女と知り合う。一歳の弟の子守りに苦労していると語る少女の姿に、あなたは嘗ての自分を重ね合わせる——— (この世の喜びよ) 語り手はフードコートの...

あなたは、嘗ての幼い娘達と多くの時間を過ごしたショッピングセンターの喪服売り場で働く。そんなあなたは、そこのフードコートの常連である少女と知り合う。一歳の弟の子守りに苦労していると語る少女の姿に、あなたは嘗ての自分を重ね合わせる——— (この世の喜びよ) 語り手はフードコートの少女と、かつての自分を重ねている。1歳の娘を持っていたかつての自分と、1歳の弟の世話を焼く少女を。少女の目線から見れば、語り手の存在は、子育ての先輩という面も持っていたが、同じ悩みを持つ友人と思っていたのではないかと思う。それは、語り手自身が、人と会話するときに、自分と相手の間に若いときの自分を一枚挟んでいることが原因であるとも考えられる。そして、何度目もの会合の先に、二人の関係は深まっていく。少女は気の知れた友人として日常の様々なことを相談していく。弟のこと、母のこと、受験のこと、スキンケアのこと。そこまでは語り手も同じであり、自身の娘のことを中心に相談し合っている。しかし、そんな語り手の少女への思いは、少女がそうであってほしいと思っていた友人同士という関係から少々逸脱し、母娘に近い関係へと変化してしまったように思えた。少女は自身の肌荒れを語り手に相談する。そこで彼女が望んでいた返事としては、同情や共感、そして励ましであったと思う。しかしながら、語り手が少女にかけた言葉は心配であった。それは、これまでの二人の会話に何度も登場してきた、語り手が自身の娘に届ける言葉のような姿をしていた。聞きたかった言葉とは似つかぬ形を突きつけられた少女は語り手の目に、どんどん小さくなる自身の背中を見せつけた。そんな光景は奇しくも、少女の年齢に見合った、母に対する小さな反抗のように見えた。 そんな展開、見ているこちらの胸が痛むような語り手と少女の思いの交錯からの、ラストシーンまでの流れが、本当に美しかった。この世にあるいくつもの喜びのなかから、自らの胸をいっぱいに満たす喜びを再び手にした語り手。若者でなくても、自分の胸は何度だっていっぱいにしてもいい。その喜びを、語り手にはこれからも手放さずに大切にしてほしい。 少女を通して、語り手は過去の自分と今の自分が混じり合う。かつての私があのときとった行動は、今の私のこの行動へとつながっている。私というあなたと、あなたという私がつながって、少女というあなたともつながった。自身とのつながりが、他者とのつながりがこの物語には紡がれて、ショッピングセンターでの一幕という、小さなお話を幾十にも層が積み重ねられ、これほどまでに大きく魅せている。

Posted byブクログ

2026/03/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

表題作は、他者の思考の流れをそのまま読んでいるようで居心地が良いとは言えなかった。 母親は子育ての思い出をおそらく美化していて、はじめは優しいお母さんなのかと思っていた。でも娘ふたりは母親に対して少なからず不満を持っている。勤務時間に売り場にいないことや、自省することがなく他人のせいにするところなど、娘の登場によって明らかにされる母親の本当の姿が見えた時に驚いた。 少女に言われたことも本当に理解したのかは怪しく、善意の正義感だけはあり、やんわりと強情で、この人物をどう捉えたらいいのかと途方に暮れた。わたしには母親が終始ズレているように感じられたのだ。 この世の喜びとは、あなたに何かを伝えられる喜びのことなんだろうか。言い争いの決着もないまま、一方的に伝えたいことを伝えるというのもどこか独りよがりなものを感じてしまい、複雑な気分だ。 でも、こういう描写にはリアリティがあると思う。それだけに、読んでいるとつらい。 「マイホーム」と「キャンプ」も家族の話だった。家族の中ではみんなそれぞれ役割がある。そこから解放されたらどんな自分が現れるのか、自分でも予想できない。 三作品の中では「キャンプ」が好みだった。人と人はこうやって友だちになるし、束の間交流してあっさりと別れていく。

Posted byブクログ

2025/12/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

句読点の少ない文章で平凡な日常の描写が続くので読みづらく、最後まで辿り着くのに忍耐が必要だった。どうタイトルに繋がるのかという疑問を抱えながら読んが、ラストの1文で全てが回収された。"何かを伝える喜び"、これは全ての人が持つ喜びかも知れない。作者が幼い娘をもつ母親であり、高校の国語教師である事は、日本の未来にとって大きな価値があると感じた。

Posted byブクログ

2025/11/23

独特のリズムで一つの文章が長く、一度で頭に入るようになるまで時間がかかる。 温度感のある解像度の高い心理描写で、「あなたは」という書きぶりのせいか自分の過去の経験と思わぬところで急に結びついてビックリする。 エンタメとして消費せず、風景を文章を味わってもらいたいというメッセージ...

独特のリズムで一つの文章が長く、一度で頭に入るようになるまで時間がかかる。 温度感のある解像度の高い心理描写で、「あなたは」という書きぶりのせいか自分の過去の経験と思わぬところで急に結びついてビックリする。 エンタメとして消費せず、風景を文章を味わってもらいたいというメッセージのようなものを感じる。

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2025/10/13

三編の短編集。 表題になっている『この世の喜びよ』 は読んでいて なかなかその文章に慣れることができなかった。 主人公は“あなた”という二人称で語られる 穂賀という ショッピングセンターの喪服売り場で働く中年女性。 社会人と大学生の娘がいる。 ある日“あなた”はフードコートに...

三編の短編集。 表題になっている『この世の喜びよ』 は読んでいて なかなかその文章に慣れることができなかった。 主人公は“あなた”という二人称で語られる 穂賀という ショッピングセンターの喪服売り場で働く中年女性。 社会人と大学生の娘がいる。 ある日“あなた”はフードコートに頻繁に一人で来ている十五歳の少女と話しをするようになるのだが 何度か話すうちに口下手な“あなた”は 少女を怒らせてしまう。 文章がなんとなく詩のようだ。 “あなた”の目に映っている場面や、その時々に入り込んでくる回想を思いつくまま語っているような感じで、まとまりがなく 散らばっているような印象を受ける文章だった。 正直 私には なかなか手強い作品だったけれど、売り場に立つ人間の目線や広いのに閉塞感が漂うショッピングセンターの空間はよく描かれていると思った。

Posted byブクログ

2025/08/15

言葉という掴みどころのない有形無形な存在を、濃密でありながら象る輪郭が見えないような、不思議な気持ちになる短編集だった。 この物語に出てくる登場人物たちは皆どこか不器用で、漠然とした不安を抱えている。 ひとりでは不明瞭だった思いが、人との関わりの中で交差し時にぶつかりながら明瞭さ...

言葉という掴みどころのない有形無形な存在を、濃密でありながら象る輪郭が見えないような、不思議な気持ちになる短編集だった。 この物語に出てくる登場人物たちは皆どこか不器用で、漠然とした不安を抱えている。 ひとりでは不明瞭だった思いが、人との関わりの中で交差し時にぶつかりながら明瞭さを帯びていく様は、一抹の妖しさを感じると共に心惹かれるものがあった。

Posted byブクログ

2025/06/11

第168回芥川賞受賞作。 表題作に加えて、 「マイホーム」「キャンプ」の2短編を収録。 正直、本作は芥川賞の悪いところが出たようにしか感じられなかった。 終始なぜそうなるのかがわからない展開。 展開に変化球があればあるほど大きな見返りが欲しくなるけれど、それも特になし。 収...

第168回芥川賞受賞作。 表題作に加えて、 「マイホーム」「キャンプ」の2短編を収録。 正直、本作は芥川賞の悪いところが出たようにしか感じられなかった。 終始なぜそうなるのかがわからない展開。 展開に変化球があればあるほど大きな見返りが欲しくなるけれど、それも特になし。 収録されている3作を読んで、 なんとなくひとつひとつのモチーフに 共通する作者の思いが込められている雰囲気は感じたのだけれど、 そうなると芥川賞は作品ではなく作者に与えられた?と、穿ちたくなる作品だった。

Posted byブクログ

2025/06/02

表題作は、他者に伝えることが得意ではない主人公の「あなた」と、他者に屈託なく伝えることができる「少女」を中心とした小説。 「あなた」の中を絶えず流れ続ける言葉を、そのまま写したような文体で話は進む。癖はあるが、現在から記憶まで思考が転々とする様子がとてもリアルで、ここまで文字で表...

表題作は、他者に伝えることが得意ではない主人公の「あなた」と、他者に屈託なく伝えることができる「少女」を中心とした小説。 「あなた」の中を絶えず流れ続ける言葉を、そのまま写したような文体で話は進む。癖はあるが、現在から記憶まで思考が転々とする様子がとてもリアルで、ここまで文字で表現できるものなのかとびっくりした。

Posted byブクログ

2025/06/02

読んでいる間はずっと灰色のイメージ。暗いと言うのは違うのかもしれないが、晴れやかな気持ちには一度もならなかった。けれど読み終えるとなんだか、まぁ人生とはこんなもんだなとしっくりくる。なにもうまくはいかないし、とびっきりキラキラした出来事もそうそう起きない。

Posted byブクログ