世界のすべて の商品レビュー
静かで穏やかな気持ちになれる本です。2024年らしい最新版の価値観がてんこ盛りの作品ですが、全く押し付けがましくなくて、畑野さんらしい優しい世界が広がっています。海沿いの喫茶店「ブルー」の細部の描写が、お店のビジュアルからお客さんたちの人物像に至るまでとても繊細で、目の閉じると瞼...
静かで穏やかな気持ちになれる本です。2024年らしい最新版の価値観がてんこ盛りの作品ですが、全く押し付けがましくなくて、畑野さんらしい優しい世界が広がっています。海沿いの喫茶店「ブルー」の細部の描写が、お店のビジュアルからお客さんたちの人物像に至るまでとても繊細で、目の閉じると瞼の裏に色付きで浮かび上がってくるようです。 紫色の装丁もすごく素敵。表紙と裏表紙を繋げて見える夕暮れ時の雨降り「ブルー」の風景が美しく、このまま額に入れて飾りたいくらい好きです。また読了後には、この紫色が意味を持って違って見えてきます。優しい色ですね。
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今回の色々なセクシュアリティの多様性があり、興味深かったです。 恋愛感情も制欲もない鳴海。他のセクシュアリティの人からすると、鳴海の否定も肯定もしないスタンスが心地よかったんだと思いました。 敵を作らない様に気を配って生活するのはしんどいなとヒシヒシ感じました。 自分の気持ちに折り合いつけて、漸くカフェがオープンしたのはホッとしました。
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マイノリティについて優しく解説してくれる 教科書のような本だった。 自分から積極的に勉強しない分野だったから、 知らない事も多く、かといって 知らないままでいい内容でもなかったので、 読めて良かった
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5年間勤めた会社を辞め、街の小さな喫茶店「ブルー」でアルバイトをする鳴海優輝。「ブルー」には、秘密を抱えた人々が集まってくる。打ち明けられる秘密に向き合う鳴海にも、周りに言えない想いがあった。セクシュアリティの多様性を繊細に描く、畑野智美の新たな代表作。(e-honより)
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アロマンティック・アセクシャルという言葉、私は初めて聞きました。恋愛感情も性的感情もどちらも抱かないセクシュアリティの事だそうです。この小説の主人公である鳴海優輝は5年間勤めた会社を辞めてカフェでアルバイト中だが自分がアロマンティック・アセクシャルである事を隠しながら仕事をしてい...
アロマンティック・アセクシャルという言葉、私は初めて聞きました。恋愛感情も性的感情もどちらも抱かないセクシュアリティの事だそうです。この小説の主人公である鳴海優輝は5年間勤めた会社を辞めてカフェでアルバイト中だが自分がアロマンティック・アセクシャルである事を隠しながら仕事をしている。 しかし、カフェのオーナー夫妻も常連の北村さんもヒナちゃんも実は多様なセクシュアリティの持ち主だった。自分は普通ではないと思うからこそ秘密を打ち明けられずに悩んでいるのは読んでいてちょっと辛くなる。 恋愛感情がわからないというのは畑野智美さんの作品で以前読んだ『ヨルノヒカリ』の木綿子もそうだった記憶。そして、「ポリアモリー」という複数の人を同時に愛せる人は奥田亜希子さんの『愛の色いろ』でも登場していた。それだけ、最近ではみんなに認識されているセクシュアリティなのかもしれない。 お年頃になれば結婚するのが当たり前。そして結婚したら子供はまだ?と平気で聞いてくる人がまだまだいる。そんな世の中だから生きづらさを感じる人がいてもおかしくない。 でも普通て何だろう?セクシュアリティの事だけでなく、夫婦や家族の形態にしてもその数だけ形があると思う。だから偏見とか持ちたくないな…と思ってしまった。
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畑野さんを知ったのがX(twitter)。アイドルのKing & Prince絡みのツイートをよく目にしていました。畑野さんはリーダー岸君のファンで、私もKing & Princeが大好きだったので、小説家の方にもファンがいるんだな〜とか思っていました。 だからこ...
畑野さんを知ったのがX(twitter)。アイドルのKing & Prince絡みのツイートをよく目にしていました。畑野さんはリーダー岸君のファンで、私もKing & Princeが大好きだったので、小説家の方にもファンがいるんだな〜とか思っていました。 だからこの話に出てきたアイドルグループ「ナイト」のメンバーカラー紫のリーダーは、岸君を想像しながら読んでました。そんなひそかな楽しみもあり…。登場人物のそれぞれの生き方や思いに触れ、ただただお話として楽しむだけではなく、いま現実にありそうな感じもした。街なかで私が勝手にカップルだときめつけている男女も、実際は恋愛関係ではないのかもしれないんだなとかちょっと世の中の見方が変わったかもしれません。
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自分のセクシャル在り方に悩んだり、カフェ開店に向けてアルバイト屋カフェ巡りをしながら、普通に生きていくことにこだわった物語。マイノリティのさまざまな形が物語の中にうまく処理されているので、逆にマイノリティだらけの人間関係の様な世界が醸し出されている。でも本当に多くの人は気付いてないだけで普通ので人なんていなくてマイノリティだらけである状態が真実かもしれない。
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色々なセクシュアル・マイノリティが登場。主人公は悩みながらも前に進んでいく。友人がトランスジェンダーで、タイで手術して、戸籍も名前も変えて、学生時代とは性格まで違うけど、ご両親ともお姉さんとも仲良しのまま。自分の子供はストレートのように見えるけど、もしそうでなくても静かに受け入れ...
色々なセクシュアル・マイノリティが登場。主人公は悩みながらも前に進んでいく。友人がトランスジェンダーで、タイで手術して、戸籍も名前も変えて、学生時代とは性格まで違うけど、ご両親ともお姉さんとも仲良しのまま。自分の子供はストレートのように見えるけど、もしそうでなくても静かに受け入れたいと思う。
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「アセクシュアル」を「性欲のない人」、「アロマンティック」を「恋愛感情ねない人」と定義することにした。名前が付いたことで、そのグループに属する人は、世界のどこに僕以外にもいるのだと思えた。それで、僕の悩みが解決するわけではなくても、ひとりではないというだけで、救われるものはあった...
「アセクシュアル」を「性欲のない人」、「アロマンティック」を「恋愛感情ねない人」と定義することにした。名前が付いたことで、そのグループに属する人は、世界のどこに僕以外にもいるのだと思えた。それで、僕の悩みが解決するわけではなくても、ひとりではないというだけで、救われるものはあった。 聞いたことのないカタカナ言葉がたくさん出てきましたが、一昔前には、なかった名前が付いたことで救われた人がいるんですね。
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歳を重ね、人に興味も薄れてきた身としては 主人公の鳴海や、喫茶店「ブルー」に集まる人々が 悩みながらも、一歩一歩確実に前へ進んでいる様子が羨ましくもある。 P212 〈僕は、僕個人として、意味を持って存在している〉 鳴海は、恋愛感情がない。 それは、本人にしかわからない苦しさ...
歳を重ね、人に興味も薄れてきた身としては 主人公の鳴海や、喫茶店「ブルー」に集まる人々が 悩みながらも、一歩一歩確実に前へ進んでいる様子が羨ましくもある。 P212 〈僕は、僕個人として、意味を持って存在している〉 鳴海は、恋愛感情がない。 それは、本人にしかわからない苦しさだと思う。 答えがあるわけではないので寄り添う側も慎重になってしまう。 それにしても、鳴海って意外にハッキリと自分の意見を言う。 流されてしまいがちな私からすると 「No」と言える鳴海ってすごいな、と。 それが強く印象として残っている。 (本筋と離れてしまいますが)
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