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境界線 の商品レビュー

3.9

27件のお客様レビュー

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2024/09/18

一気読み。いろいろ引き込まれる作品だった。境界線をはっきり引きたいときもあるし、あやふやにさせたいときもある。

Posted byブクログ

2024/09/18

「面白そう…」と思って入手し、何となく紐解き始めてみた。そうすると頁を繰る手が簡単に停められなくなってしまったそんな訳で素早く読了に至った。色々な意味で強く引き込まれてしまう作品だ。 物語の冒頭、宮城県気仙沼市で女性の遺体が発見されるという話しが出て来る。この人物に関連する物語が...

「面白そう…」と思って入手し、何となく紐解き始めてみた。そうすると頁を繰る手が簡単に停められなくなってしまったそんな訳で素早く読了に至った。色々な意味で強く引き込まれてしまう作品だ。 物語の冒頭、宮城県気仙沼市で女性の遺体が発見されるという話しが出て来る。この人物に関連する物語が始まると示唆される訳だ。 そして宮城県警本部捜査一課に在る刑事の笘篠に、気仙沼の女性の遺体に関する連絡が入る。事件を捜査するということでもなかった。遺体を確認するようにという話しであったのだ。気仙沼で発見された遺体は、笘篠の妻の名が入った免許証を所持していたのだという。 笘篠は驚いた。7年前、気仙沼署に在った笘篠だが、東日本大震災の際に自宅が被害に遭い、妻と乳児だった息子が行方不明となってしまっていたのだ。その行方不明の妻の名が記された、加えて気仙沼に住んでいた当時の住所も確りと入った免許証を所持した人物が遺体で発見される「筈が在るのか?」ということで、笘篠は現地に駆け付ける。 笘篠が現地で見るのは、妻とは全く違う女性の遺体だった。この見ず知らずの女性が、何故、如何やって妻の名を騙るに至ったのか、それ以前にこの女性は何者なのかということが解らない。遺体の状況から、「身元不明者の自殺」という話しになるというようなことであったが、笘篠は酷く気になる。そして遺体の身元を探る活動に関る。 そうして女性に纏わることが明らかになろうとして行く中、更に事件が起きる。事態は如何なって行くのかという物語である。 東日本大震災のような大きな災害の人的被害に言及する場合に「死者・行方不明者」という言い方が在る。「死者」と言う場合は、何らかの形で遺体等が確認され、「〇〇さんは亡くなった」と明確に言い得るということになる。対して「行方不明者」ということになれば、遺体等で死亡が明確に確認出来るのでもない状況下であることになる。津波で居合わせた建物等と共に流されてしまったような人達が多く出てしまったという東日本大震災では、この「行方不明者」も多数に上った。そしてこういう場合、一定の年数を経て「失踪宣告」という手続きをして、「死亡してしまったもの」という扱いにして行くことも出来る。その「一定の年数」が7年である。 本作はその「7年」ということに脚光を当てている。「死亡してしまったもの」という扱いにする、心の区切りが付けられるような、そうすることが巧く出来ないような複雑な思いというものは如何しても在る。如何しても「こうしなければならない」という何かが在るのでもない。そんな中、「身近な人達の名を、見ず知らずの者が騙り、普通に社会生活が営まれている」という異様な事態でも起これば如何なるのか?そして、そういうことを仕掛ける者は何を如何考えているのか?本作の物語の核心部分であるとも思った。 現実には居ない筈ながら、戸籍等の情報の上では居ることになっている、大きな災害に纏わる「行方不明者」が、予期せぬ形で現れるという不思議な様子の謎解きという“警察モノ”の体裁を取る本作ではある。が、もっと踏み込んだ「人が“生きている”というのは何なのか?如何いうことなのか?」を問うような、より深く広い何かを秘めた作品だと思った。加えて、多くの生命が損なわれた大災害と「各々の形で向き合い続ける」ということになっている“東北地方”を物語る作品であるというようにも思った。題名の「境界線」も、対立または半ば対立する概念の狭間に立ち竦む人達の様を象徴するかのような語で、凄く深い意味が籠っているような気もする。 本当に偶々出会ったが、夢中になった作品であった。広く御薦めしたい。

Posted byブクログ

2024/09/16

ミステリーでありながらミステリーとは違う人間模様の話である すべてはあの日に引かれた境界線いろんな境界線と交わる。なにも悪くないのに、助けられなかったことが、一言が言えなかったことがずっと心に後悔として残る。 何気ない1日の始まりは、大切な人にはどのような気持ちであっても大切な言...

ミステリーでありながらミステリーとは違う人間模様の話である すべてはあの日に引かれた境界線いろんな境界線と交わる。なにも悪くないのに、助けられなかったことが、一言が言えなかったことがずっと心に後悔として残る。 何気ない1日の始まりは、大切な人にはどのような気持ちであっても大切な言葉を交わして行ってきますというのは私自身も感じる毎日。 そのような家族に恵まれたらこそだが。 境界線をずっと引き摺り後悔する毎日は辛くて悲しい。そして、それは事件に繋がってしまう。 一気に読みきった 途中おかしいが涙がでる。 どうしようもなく過ごさざるを得なかった人たちや後悔が突き刺さる

Posted byブクログ

2024/09/15

経験していないのと、身近に被災者がいないこともあり、被災時の状況や震災後の現地の状況の描写に衝撃を受けた。被災地に住んでいる人の中でも境界線があるんだと思った。

Posted byブクログ

2024/09/14

個人的には「面白かった」というよりも、「読んで良かった」という感想がしっくりくる。 被災者でない自分にとっては、3月11日が近づかない限り、日常生活の中で東日本大震災を思い出すことは少ない。 この作品を読むことで、震災や復興について思いを巡らすきっかけになった。

Posted byブクログ

2024/09/11
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※このレビューにはネタバレを含みます

震災後の戸籍問題をテーマとしたミステリー。ミステリーと言っても「護られなかった者たちへ」同様に事件のトリックだとか犯人は誰だとか、読む側の客観的推理は二の次であり、震災を経て人々がどう変わったのか・変わってしまったのかを主観で考えさせられる作品。 周囲との関係性が絶たれた中で自分を証明できるものは歯や指紋による照合であったり免許証などの戸籍情報だったりするが、それすらも偽造がアッサリとできてしまう。個人情報はただの文字情報ではなく、利用する人が使えば他人に成り代わって生活することまでできる。個人情報の漏洩から戸籍上の成り変わり、そして事件にまで繋がっており、個人情報の重みについても考えさせられる。 震災によって引かれた境界線は人も人生も変えてしまった。その境界線が解れることも広がることも決してない。今回の事件も震災の被害にあっていない境界線のこちら側が安易に断ずることもまた難しい。 様々な境界線に区分されて生きながら事件を解決し、最後には自分で区切りをつけるために家族の届を書くシーンが一番胸に残った。 「護られなかった者たちへ」同様、刑務所への皮肉が入っているところも心に残るポイント。

Posted byブクログ

2024/09/11

 宮城県警シリーズ第2弾です。今回は、震災と戸籍売買が大きく重いテーマになっています。前作以上に、震災の爪痕と復興の闇が色濃く描写され、重厚骨太なヒューマンミステリーでした。  著者は、様々な対比を上手く設定し、読み手に考えさせることで、心を揺さぶってきます。  その例として、...

 宮城県警シリーズ第2弾です。今回は、震災と戸籍売買が大きく重いテーマになっています。前作以上に、震災の爪痕と復興の闇が色濃く描写され、重厚骨太なヒューマンミステリーでした。  著者は、様々な対比を上手く設定し、読み手に考えさせることで、心を揺さぶってきます。  その例として、震災で日常が破壊された市民と以前と同じ日常を送っている囚人(塀の外と中)、行方不明者を抱える家族で失踪宣言する人と躊躇する人、天災が奪った命と人間が奪った命、等々。5つの章題も、様々な"境界線"を表しています。  圧倒的な天災による喪失と死を目の当たりにして、一方は怯え他方は無頓着になる、或いは生き方や心情が変容するしないの差異は、どこからくるのでしょうか? その有形無形の分け隔てた境界線には、物理的にやむを得ないものもあれば、人為的なものもあったのでしょうね。  登場人物たちの過去、特に3.11のあの日あの時の様子が、息を呑むほど生々しく描かれます。やはりその震災前後を対比し、内面の葛藤描写が痛々しく切ないです。  震災が人の心へも及ぼした甚大な影響の大きさの一端を突き付けられ、まさしくタイトルの意味と奥深さを考えさせられました。  次へ進むために、意図的に境界線を自ら引くことは正解なのか? 人権や人間の尊厳にまで関係し、答えを出せずに苦悩するのが人なのでしょう。  著者特有のどんでん返しを期待した方は、拍子抜けかもしれませんが、いろいろな解釈・議論を生む物語は、好書なのだと思います。

Posted byブクログ

2024/09/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「護られなかった者たちへ」を読んでからの一冊。 随所に前作と繋がる部分があるが、前作を読んでないとストーリーが分からないというほどではないという印象。 本作も同じく、東日本大震災絡みの事件であり、またもや考えさせられるストーリー展開であった。 津波は家族や家屋など見えるものだけを流したのではない。そこには人であることの正しさ・信念をも取り払ったのである。 戸籍を売買するという行為は決して、許されないし、その行為の根本が震災というのも理由づけてはならないが、どこか犯人の肩を持ってしまう、そんな小説だった。 生きている者と死んだ者、そこには境界線はある。 しかし、それはいつだって確固とした線であるとは限らないなと感じた。

Posted byブクログ

2024/09/06
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※このレビューにはネタバレを含みます

存在を乗っ取られる。もしかして、現実に起こっているのではないかと、怖くなりました。災害の描写の迫力。

Posted byブクログ

2024/09/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

東日本大震災を背景にした物語。 舞台は宮城県。 津波で家族を亡くした刑事の妻が7年後に遺体で発見されたところからスタート。 題名の境界線が複数の意味を含んでおり、改めて災害によっと根強く闇を感じる作品。

Posted byブクログ