バリ山行 の商品レビュー
芥川賞の作品にしてはとても読みやすく一気に読了。本格的な登山はした事ないので、単純に知らない事を知れて楽しく読めた。
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第171回芥川賞受賞作(2024上半期)。 バリ山行(ばり・さんこう)。 山行とは、いわゆる登山のこと。バリとは、バリエーションルートの略。通常の登山道ではない道。破線ルートと呼ばれる熟練者向きの難易度の高いルートや廃道。 つまりバリ山行とは、...
第171回芥川賞受賞作(2024上半期)。 バリ山行(ばり・さんこう)。 山行とは、いわゆる登山のこと。バリとは、バリエーションルートの略。通常の登山道ではない道。破線ルートと呼ばれる熟練者向きの難易度の高いルートや廃道。 つまりバリ山行とは、道なき道を行く登山。 とはいえ、ガチガチの山岳小説ではまったくない。 前職をリストラされ、若干のトラウマを抱える30代営業マンの波多(はた)。妻と幼子あり。 彼の仕事や将来への漠とした不安が主題である。 波多の抱える不安「感」は、多くの社会人が抱くものと同じであり、感情移入が容易だ。 社内レクの一環として、ゆるめの登山会に参加し始めた波多は、「バリ」をやっている同僚の妻鹿(めが)さん(40代独身男)を知ることになる。 やがて会社の業績が悪化し始め、またもリストラの不安にさらされ苦悩する波多。 彼は、バリ山行に、そしてバリをやる妻鹿さんという人間に惹かれ始める。 「山と人生」はよくあるテーマだ。しかし、だからといって本作は決して陳腐ではない。淡々としつつも、確かに心が震える素晴らしい物語だった。 人生における混乱、無秩序、錯綜。 バリ山行における混乱、無秩序、錯綜。 波多は、妻鹿さんは、何を考え、どう結論を出したのだろうか? そしてあなたの心は、はたしてこの物語を読んだあとに変化するのだろうか? メジャールートを行きますか? バリエーションルートを自ら探しますか? どちらが正解?不正解?それとも正解なんてそもそもない? 個人的にとても好きな終わり方だった。その美しい余韻に浸ってしまった。
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自然に挑む登山小説でありながら、男くさいサラリーマン小説の面も持ち合わせる、「自然・山」と「人間・職場」が濃密に対比されながら描かれている作品。 濃密ながら、大袈裟なスケールの話ではない。自然は日常の延長線上にある範囲のものであり、出てくる山は低山。人間の悩みも小さな職場に収ま...
自然に挑む登山小説でありながら、男くさいサラリーマン小説の面も持ち合わせる、「自然・山」と「人間・職場」が濃密に対比されながら描かれている作品。 濃密ながら、大袈裟なスケールの話ではない。自然は日常の延長線上にある範囲のものであり、出てくる山は低山。人間の悩みも小さな職場に収まる範囲のものである。それでも、一気に読めてしまう没入感があるのが面白い。 以下、雑記。 <自然の描写> ハイキング程度の登山の経験しかないため、どこまで今回の登山の描写が緻密或いは正確であるかは分からない。しかし、岩肌・山の鬱蒼としたイメージが浮かぶほどに描写が細かい。 登山をスポーツと捉える派、自然への挑戦と捉える派、それぞれの立場の人物が出てくるが、善し悪しの判断を見せないのは現代らしい。 <職場の描写> コロナ禍による業績不安の折を自身の職場を思い出させるほどに、嫌な職場、そして悪い方向に転んでいく職場の描写がリアルだった。愚痴・解決策の出ない飲み会・突然やめる同僚…著者は実際に経験があるのだろうか。 <主人公・波多について> 性根は悪くないのだが、芯が弱く、器が小さく、逃げてばかりいる、リアルなダメさがあった。社内コミュニケーションのための飲み会には行かないが、我を通せるほどの実績は上げられない。自分が危機に陥る(と想像しただけでも)他人に当たる。家族とのコミュニケーションも真正面からは取れない。 「逃避」が1つのテーマなのではないかと思うほどに、波多は全てから逃げているように感じた(自然、あるいはそれがもたらす「本物」の危険に立ち向かう妻鹿さんとの対比という作劇場の都合もあるのだろうが…)。
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山登りが好きな人は、もっと違った捉え方があるのかもしれません。山に臨む魅力って何なんでしょう…昔からそこに山があるからなんていいますが、この小説に出てくる妻鹿さんはそうでもなさそうです。街でも山でも人と違う道を一人で進みたかったんでしょうか。主人公は、最後に妻鹿さんと同じ境地にな...
山登りが好きな人は、もっと違った捉え方があるのかもしれません。山に臨む魅力って何なんでしょう…昔からそこに山があるからなんていいますが、この小説に出てくる妻鹿さんはそうでもなさそうです。街でも山でも人と違う道を一人で進みたかったんでしょうか。主人公は、最後に妻鹿さんと同じ境地になったんでしょうか。面白い作品でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
芥川賞の作品は読みにくいものが多いけれど,非常に読みやすかった. 会社での付き合いの苦手な主人公が,ふと参加した登山から少しずつ登山の楽しみに目覚める前半と,一人でバリ山行をする妻鹿さんとの出会いで興味を持ちバリの魅力に目覚めるまでを描く後半.特に後半は会社の経営危機に伴う閉塞感もあって緊迫した描写が続いて面白かった.
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「バリ」という言葉も知らないのに、近々山に行くからという理由で読み始めた。 結論から言うと読むにつれて展開が気になり、一気読みしてしまった。 終盤では危険な目に遭ったのに波田も自らバリにいくのが良かった。妻鹿の言葉・生き方に感化されたのだろうか。 私も、妻鹿のような目のまえのもの...
「バリ」という言葉も知らないのに、近々山に行くからという理由で読み始めた。 結論から言うと読むにつれて展開が気になり、一気読みしてしまった。 終盤では危険な目に遭ったのに波田も自らバリにいくのが良かった。妻鹿の言葉・生き方に感化されたのだろうか。 私も、妻鹿のような目のまえのものに取り組む、今できることをやると言う姿勢がとてもいいなと思えた。 帯に書いてあった「生活に支障が出るほど面白かった」と言う言葉も良すぎる。
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ひとこと|挑戦するか後退するか! 感想|この本を読んで新しいことへの挑戦への挑戦意欲を掻き立てられた!現状を良しとする、あるいは他人に言われるがままにするといった行為は非難はされないが、自分の人生にとっての幸福も同時になくなると感じさせる内容だった。これからは、自分唯一できること...
ひとこと|挑戦するか後退するか! 感想|この本を読んで新しいことへの挑戦への挑戦意欲を掻き立てられた!現状を良しとする、あるいは他人に言われるがままにするといった行為は非難はされないが、自分の人生にとっての幸福も同時になくなると感じさせる内容だった。これからは、自分唯一できること、つまりは選択と決定を自分の価値を指標として下していきたいと感じた。
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面白かった! 一気読みした。 表紙も良い。 山、良いですね。 行ってみたくなった。バリではなく登山道でね。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
文体もしっかりしていて、ベテランのような安定感も漂う。”妻鹿さん”を勝手に定年近いおじさんと思っていたので、実年齢を知ってちょっと驚いた。まだ結構若いではないか。”ハタゴニア”と”タモンベル”で笑う。後半になって、なになにどうしたい?と新人らしい迷走を感じるところもあったが、ラストはいいと思った。
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藪の中を切り刻まれながら掻き分けて進むのは、「クレイジージャーニー」のアドベンチャーレースで見たあの感じね、なとど想像しながら読んだ。 世界に出なくても、近くの低山でこんなアドベンチャーレースが体験できるのか、とそこに驚く。 きっと作者は体験もしているのだろうが、臨場感あって、そ...
藪の中を切り刻まれながら掻き分けて進むのは、「クレイジージャーニー」のアドベンチャーレースで見たあの感じね、なとど想像しながら読んだ。 世界に出なくても、近くの低山でこんなアドベンチャーレースが体験できるのか、とそこに驚く。 きっと作者は体験もしているのだろうが、臨場感あって、その筆力に感心した。さすが芥川賞受賞作。 朝比奈秋さんの作品の方が好みではあるが、現実世界のしんどさをバリ山行で描くという手法は、好きだ。どれだけ自分をいじめても、なお、現実の忌々しさの方が上なのだよね。
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