いなくなくならなくならないで の商品レビュー
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死んだと知らされていた親友が突然現れて同居生活が始まる。夢のような生活が続くが時子が就職して実家に戻るあたりから雲行きが変わる。時子も朝日も父も母もあの家に住んでいる人は明確に歪んでいて、強引に家を離れた姉だけが比較的うまくやっている。 朝日は仕事につかず家にいて両親もそれを気持ちの悪いぬるさで容認している。時子は17歳の頃の死んだ朝日に執着していてそれは今の朝日とはもう違う。生きているから変わってしまう。出ていってもらおうとするが朝日は出ていこうとしない。 前半のきらめきと後半のぬるい泥のような気持ち悪さの落差がすごかった。泥みたいな家。愛はなくて執着と依存の話だった。 破滅の気配を漂わせたまま進展はしないで終わる。出ていってくれないの怖いなと思ったけど、朝日のような人はいずれ恋人の家に転がり込んで急にいなくなったりするんじゃないかなと思った。でも朝日は男たちより時子に執着している(時子も時子でそれを嫌がっていない)ところがあるので違うかも。 父と母は姉のことばかり愛しているわけではなくて、姉が自分たちの影響力の外に出てしまったのが嫌ですがりついているように思えた。出産をすればさらにその距離は広がるのでどうにかして逃すまいとしている。
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最終的にぜーーーーんぶが超カオスで終わった。 朝日によって感情も、家族も、友達も、全部ぐちゃぐちゃになる。 過去と、現実もぐちゃぐちゃ。 好きだけど嫌い。 いなくなってほしいけどいてほしい。 どうでもいいけど大切。 愛してるけど憎んでる。 そんなカオスな状態がおもしろい。味わい深い。 ぶっちゃけなにがなんだかよくわからないけど、いくつもの感情が渦巻いてて、絶対当事者にはなりたくないけどおもしろかった。 実際問題、人の感情ってぐちゃぐちゃだよね〜 まぁ、ここまでぐちゃぐちゃなことはまれだと思うが。 シンプルに考えると、時子は結局現実の朝日のことはもはやどうでもよくて、過去の朝日の影を追ってるだけなのでは?と思った。 結局一番かわいそうだったのは時子だな… 親は麻央子ラブだし、朝日は天性の人たらしっぽかったし、人付き合い苦手で、特に秀でたものもなくて、死んだ友達を思っていたらなんか自分の居場所を奪われて、なんなら養わないといけなくなって、、 朝日、全部わかっててやってるでしょ。こわ〜
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胸の痛みはすでに凪いで、心臓の感触があった。肉だったからだ、と思った。朝日は肉でできていて、わたしが落としたのも肉だった。だから石はわたしになれない。 人の頭蓋はとても硬く、手のひらはあまりにやわらかい。 (挿画 加藤宗一郎 装丁 佐藤亜沙美)
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死にたいし、大人にもなりたい。(中略)いまだけいらない。飛ばしたい。(P29) 死んだと思っていた友達から連絡が来てなんとなく同居が始まった。可哀そう、置いていけない、しんどい、可哀そう、でも出て行ってほしい、本当はどう思ってる? 主人公の時子の揺れ動く気持ちは普通の女の子で同年代の子が読むと共感できそう。芥川賞候補作にしてはとても読みやすい。ぜひ読んでみてほしい。 私の場合は、途中から展開や設定が『アバトーン』(第106回芥川賞受賞作)に似通っていてもうそこが気になって以降は集中できなかったです。『アバトーン』が書かれた1991年と2024年の今、そんなに家庭の事情って変わらないのかな、とも思いました。
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死んだはずの友人が四年ぶりに戻ってきて、なぜか一つ屋根の下家族と一緒に住み始めるという設定。帯だけ読むとファンタジーSF系かと思いきや、全くの逆でがっつり地に足着いた物語。主人公も友人も女性同士で、若干ガールズラブやシスターフッドに依っていきそうな気もしたが、描かれているのは終始...
死んだはずの友人が四年ぶりに戻ってきて、なぜか一つ屋根の下家族と一緒に住み始めるという設定。帯だけ読むとファンタジーSF系かと思いきや、全くの逆でがっつり地に足着いた物語。主人公も友人も女性同士で、若干ガールズラブやシスターフッドに依っていきそうな気もしたが、描かれているのは終始、「殺したいほど憎いが愛している」というような矛盾する感情で、芥川賞候補というのも納得の、深く深く心臓を抉ってくる小説。 話は逸れるが、こういった拗らせた作品は昔から妙に好きで、それって何故かって考えた時に真っ先に浮かんでたのは、作中の拗らせた人物たちを俯瞰的に見ることで、「あぁ自分はこの人たちとは違う。普通だ」という感覚を確認できるから、というとても居心地の悪い感情でした。けど本作を読んで思うのは、彼女たちの矛盾した心持ちって自分の中にも少なからずあって、結局は自分もどこかの面では拗らせているから、何かしらのシンパシーを感じてるからなのかなと思った。 そう感じたのは主人公・時子が大事にしていた石に、友人・朝日が文字を書いてしまったシーン。石を大事にしていたのは、時子が朝日を大事に思っていた気持ちそのものの表れであるのに、その石を朝日に踏みにじられた気持ちになってパニックになる。これって、人と人との関わりの中で、相手が好きである故に過度に期待する自分がいて、その期待が外れた結果になるとその相手に腹を立ててしまうという、人間のどうしようもない性に似ている。勿論そうやって自分を重ねない・重ねられない人もおると思うけど、俺自身は人としていくつか欠けてる部分のある登場人物たちに、同じくいくつか欠けてる自分自身を投影できてしまった。だから他人事とは思えない感情が芽生えたんだと思う。 向坂くじらさん、遅ればせながら要チェキマストチェキ!
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何よりもタイトルが秀逸! 芥川賞候補となった作品。 久しぶりに文学的世界にどっぷり 引き込まれた。 いなくなくならなくならないで って 訳分からんようでいて 何となく感覚的にわかる。 肌感でわかるような。 そんな関係の朝日と時子の話。
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うーん、、どうなるの?という興味で読み終えられたけれど、ずっとざらざらしたものをさわっている気持ちだった。 いいなと思う言い表し方などもあったので、この一冊で合わないと決めずにもう一冊くらい読んでみようかなとは思うんだけど、、今すぐではないかなー
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死んだと思っていた高校時代の親友朝日からの電話,時子は幽霊かもと思いつつ行くところのない朝日と住むことになる.二人の共依存のような関係が時子の両親をも巻き込んで歪な家族として暮らすことになる.海岸で拾ってきた白い石とかが現れるシーンは印象的だったが,どこにも行き場のない関係がぐるぐると続く予感でぞっとした.
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高校2年の冬、大晦日に時子の親友 朝日が自殺した。 と、聞かされていた。 けど、4年半経って、朝日から電話がかかってきた。幽霊? そして、時子の部屋に置くことになった。 朝日は幽霊ではなかった。 大学を卒業して、就職する時子はアパートを引き払った。 で、実家に戻った。 朝日は実家についてきた。時子の母も父も許したのだ。 時子は、朝日に逢いたいと思っていた。 海に探しに行ったりもした。逢いたかった。 けど、時子の逢いたかったのは、死んだ朝日にで、 今、ここにいる朝日にではない、ということに時子は自分で気付いてしまった。 時子には姉がいた。男の所へ行くのに家を出ていってしまっていた。 時子の母も父も、姉の空けた穴をふさぐように朝日を受けいれたようだ。 で、急に姉が家に帰ってきた。そして、妊娠していると告げた。 両親ともめて、姉はまた出ていった。 けど、時がたてば、赤ん坊は生まれてくるだろう。 両親の都合とは関係なく、存在が始まるだろう。 時子は朝日の存在に、両親は姉や生まれてくる赤ん坊の存在に対し、自分の心に持て余す感情を持つ。 ひとは、他者との関係を好ましく思ったり、うとましく思ったりする。 いて欲しいような、いなくなって欲しいような。 理性や良心と、自身のエゴとの葛藤・拮抗がある。 本書のタイトル「いなくなくならなくならないで」は、その辺りの心の揺れを表わしているような気がする。 あくまで個人の感想ですけどね。 作者の比喩の美しさ、独特な感性、不思議な空気感も含めて、作品を読んでいただきたいと思います。 あらすじを知ることよりも大切なのは、あなたがどう感じるか、どう考えてしまうかだと思います。それがこの作品の醍醐味かな? で、レビューを書きたくなくならなくならないで。
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文章は読みやすいが、途中唐突にキーワードが乱雑に並び出す。主人公の複雑な心境と言葉がつながっているのかと思うが、入り込めない感じが終始あった。時子は誰のものでもなかった。家族の中にもいないし、仕事場の中にもいない。ただ17歳の朝日の中にはいた、と思っていたが、そうではなかった。姉...
文章は読みやすいが、途中唐突にキーワードが乱雑に並び出す。主人公の複雑な心境と言葉がつながっているのかと思うが、入り込めない感じが終始あった。時子は誰のものでもなかった。家族の中にもいないし、仕事場の中にもいない。ただ17歳の朝日の中にはいた、と思っていたが、そうではなかった。姉だけがその事実に気付いていたが、時子が自分を探そうとすればするほど朝日がそこにいる。そこが時子が苦しいことだったんだなと思う。でも、やっぱりよくわからなかった。
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