バタン島漂流記 の商品レビュー
★5 史実に基づいた江戸時代の漂流記、海の男たちの生き様を堪能できる歴史冒険小説 #バタン島漂流記 ■あらすじ 徳川四代目家綱の時代、尾張と江戸を航路を結び、物品の輸送を行っていた。船には船頭をはじめ、十五名の船乗りたちが乗船していた。しかしある航海の途中、突然の荒波に船が難破...
★5 史実に基づいた江戸時代の漂流記、海の男たちの生き様を堪能できる歴史冒険小説 #バタン島漂流記 ■あらすじ 徳川四代目家綱の時代、尾張と江戸を航路を結び、物品の輸送を行っていた。船には船頭をはじめ、十五名の船乗りたちが乗船していた。しかしある航海の途中、突然の荒波に船が難破してしまい、彼らは太平洋で漂流することに… もはや生還は絶望的であった。 ■きっと読みたくなるレビュー ★5 こりゃまた素晴らしい歴史冒険小説。海の男たちの生き様をガッツリ堪能できる傑作です。当時の船乗りの仕事を体験できる、海洋冒険小説でもありますね。 そして本作はなんと史実に基づいた物語、いやはや読書というのは勉強になります。文明も未熟な400年も前の時代に、こんなことをやってのけ人たちが居たのか… 人間とは無限の可能性がありますね。 本作のイチ推しポイントは、海の男たちの生きた姿。大海原の漂流から始まり、異国の地での厳しい生活。ひとりひとりの生の躍動がビンビン伝わってくる。船乗りとしての気概、日本に帰還するという想い、そして十五人の友情を余すところなく描いています。 キャラクターがまたいいんすよ。特に門平と和久郎は幼馴染。若かりし頃から船乗りに従事している門平は、船づくりの職で悩んでいた和久郎を船乗りとして拾ってあげる。その後、様々な待ち受けている苦難も、その都度お互いを励まし合い困難を乗り越えていくんです。そりゃ物語ではあるんしょうけど、いい話じゃないですか。もう泣きそう。 また船頭や先輩の船乗りの男たちがカッコイイんすよ。私もこんな頼りがいのある男になりたい。彼らの力強さを見ていると、日頃から愚痴ばっかり言っている自分が恥ずかしくなっちゃう。勇気と元気をもらえました。 そして漂流後に到着したバタン島、異国の地での生活についても興味深く描かれていく。酷い扱いを受けるのですが、日本に帰還することへの熱い想いが溢れ出て、読む手に力が入るんですよ。 漂流はもちろん、その後も様々な試練が待ち受けるのですが、彼らは立ち向かっていくんすよ! 時には耐えがたい悲劇もあったりするのに… 彼らをなんとか日本に帰してあげたい、心からそう思わせてくれるんです。 終盤はもう何も言えない、男たちの人生丸ごと肌で感じてしまい、マジで涙を流してしまいました。 歴史小説ではありますが、わかりづらい文章やセリフもほとんどなく、むしろ読みやすい。さすが直木賞受賞の作家先生。どなたにもおすすめできる、エンタメ抜群の冒険小説でした。 ■ぜっさん推しポイント 人間って嫌なことがあると、ついボヤいちゃいますよね~ 何もかもイヤになって、最終的には厭世的になってしまうこともある。 元気がでないということもあると思うんですが、そんな時にぜひ読んで欲しい本ですね。この本には、いかに真剣に生きるのか、生命に対する執着が余すところなくに描かれていました。
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西條奈加さんはまたしても全く予想もしなかったすごい話を書き上げましたな。大人の冒険譚というべきか,ワクワク・ドキドキが止まらない,そして最後はちょっと切ないお話。 内容は,江戸時代に荷を運ぶ船が嵐に遭い,舵も帆も壊れて漂流することになるというもの。そして幾多の危機を乗り越え,乗員が奇跡的に全員無事でたどり着いたところは...。彼らは果たして故郷に戻ってこられるのか。江戸幕府の鎖国政策がどういうものかということも今まで知っていた知識とは別の観点で理解できた気がする。
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私の大好きなジャンルである漂流記。これも掛け値なしに面白かった。言葉の通じない異国にたどり着くというところが、どこか旅をしている気にさせるからだろうか。荒くれ者の船乗りたちが、色々ぶつかり合いながらも、力を合わせて、生き延びるというシチュエーションが好きというのもある。 他の漂流記と違うところは、自分たちで作った船で日本に帰り着いたところ。はじめから船の構造がとても細かく描写されていたが、後半造船する場面に繋げる意味もあったのかも。 西條奈加さんの文章も素直で読みやすく、ひさびさに心躍る読書だった。
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江戸時代の実話を基にした小説。江戸から尾張へ向けて荷を積んだ舟が港を目前にして嵐の為、流されて今のフィリピンの北の島に辿り着く。言葉も通じない島民達との確執もありながら15人全員で日本に帰る希望を捨てずに暮らして行く様子が胸を打つ。和久郎と門平の友情、白鷺のシーンが哀しかった。
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四代家綱の時代。 江戸を出た弁才船が三河沖で遭難。 1ヶ月あまり漂流しバタン島に漂着。 島民に奴隷のように使われる。 そして、船乗りたちは自力で船を再建し日本へ戻ってくる。 これ、史実だという。 船の構造、専門用語などもわからないことは調べながら読み進めた。 「板子一枚下は地獄...
四代家綱の時代。 江戸を出た弁才船が三河沖で遭難。 1ヶ月あまり漂流しバタン島に漂着。 島民に奴隷のように使われる。 そして、船乗りたちは自力で船を再建し日本へ戻ってくる。 これ、史実だという。 船の構造、専門用語などもわからないことは調べながら読み進めた。 「板子一枚下は地獄」 荷を乗せ波に揉まれ目的地に帰り着くまで皆で無事を祈る。 西條奈加さんの手により人間味あふれる作品に仕上がっている。 島民との交流も読み応えあり。 当時は多くの海難事故があったという。 命を落とすこと無く日本に戻ったからこそ 今の時代まで語り継がれている。 命あってのもの。 頭たちの声が聞こえてくるようだ。
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「なんでそんな?」と思ったら実話だったからですね。難しいですね、作り話だったらもっと面白く書けたでしょうに。
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一気に読んでしまった。生き残れるんだ…!っていう驚きと、生き残ってもそうなるんだ…!っていう驚きと、物悲しさとか、喜びとか、無念さとか、なんかいろいろないまぜになった気持ち。西條奈加さん、好きです。
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途中から小生の子どもの頃に読んだ十五少年漂流記を思い出しながら読んだ。もう昔のことなので内容など全く覚えていない。本書は十五人の水夫が図らずも乗った船が難破してバタン島に漂着し日本に戻る苦難の道のりの話しだ。それも鎖国時代のこと。生還したとはいえ彼等の御苦労は大変なものだ。なかな...
途中から小生の子どもの頃に読んだ十五少年漂流記を思い出しながら読んだ。もう昔のことなので内容など全く覚えていない。本書は十五人の水夫が図らずも乗った船が難破してバタン島に漂着し日本に戻る苦難の道のりの話しだ。それも鎖国時代のこと。生還したとはいえ彼等の御苦労は大変なものだ。なかなか細部まで語られていて素晴らしかった。
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Amazonの紹介より 荒れ狂う海と未知の島、そして異国の民。ため息すら、一瞬たりとも許されない――船大工を志すものの挫折し、水夫に鞍替えした和久郎は、屈託を抱えながらも廻船業に従事している。ある航海の折、船が難破してしまう。船乗りたちは大海原の真っ只中に漂う他ない。生還は絶望的...
Amazonの紹介より 荒れ狂う海と未知の島、そして異国の民。ため息すら、一瞬たりとも許されない――船大工を志すものの挫折し、水夫に鞍替えした和久郎は、屈託を抱えながらも廻船業に従事している。ある航海の折、船が難破してしまう。船乗りたちは大海原の真っ只中に漂う他ない。生還は絶望的な状況。だがそれは和久郎たちにとって、試練の始まりに過ぎなかった……。 史実に残る海難事故を元に、直木賞作家が圧倒的迫力で描く海洋歴史冒険小説。 実際にあった海難事故を元にしたストーリーということで、ただ単に海難に遭うだけでなく、現地で出会った異人との交流や船乗り達の日本に戻りたいという絶対的な執念があったりと息つく暇もないくらい次から次へと展開していくので、読み終わったときには、良い意味で疲れがドッとこみ上げてきました。 とにかく船乗りたちの数奇な運命が凄まじかったです。 荒波にもまれる描写は緊張感がありましたし、異人との出会いの場面では、どこかミステリアスな雰囲気を漂わせているので、冒険小説だなという印象でした。 緊張感が漂う中で、ほっこりとした場面もあります。最初は険悪な雰囲気だったのですが、距離感が段々と縮まっていく描写には、ちょっとした安堵感がありました。 言葉は通じれど、身振り手振りや分かち合いたいという情熱があれば、なんとかなるということに無限の可能性を感じました。今はお互いの言葉は勉強すればなんとかなりますが、当時のことを考えると、お互いが通じ合えたことに凄すぎるなと思ってしまいました。 といっても、異人が住む島では、ある秘密をもっています。ミステリアスでゾッとしたのですが、小説としては躍動感があり、惹きつけられました。 島での出会いと別れを通じて、第2ステージ、第3ステージと様々な困難が待ち受けていきます。これで終わり⁉と思いきや、まだまだ先は長いということに、緊張の糸がずっと張りまくりでした。 絶対日本に帰る執念さが伝わってきて、ぜひとも帰ってもらいたいと思うばかりでした。 実際の史実では、小説のような波乱万丈のような展開はなかったと思いたいですが、小説としては次々と巻き込まれていて、飽きさせないような展開だったので、最後まで目が離せませんでした。 西條さんの文章の表現力も素晴らしく、読む者を惹きつけているなと思いました。 どこか「十五少年漂流記」が脳裏にちらついたのですが、こちらは大人であり、男臭さや熱き思いが勝っています。 あの物語とは違い、サバイバル感や躍動感があって楽しめました。
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漂流物の歴史小説と言えば、無人島での12年にわたるサバイバルを描いた吉村昭の『漂流』、ロシア漂着後に艱難の末にペテルブルグまで行き女帝エカチェリーナ2世に謁見して帰国した大黒屋光太夫を描いた井上靖の『おろしあ国酔夢譚』などの名作があります。本書も上記と同じく実際に起こった事件(江...
漂流物の歴史小説と言えば、無人島での12年にわたるサバイバルを描いた吉村昭の『漂流』、ロシア漂着後に艱難の末にペテルブルグまで行き女帝エカチェリーナ2世に謁見して帰国した大黒屋光太夫を描いた井上靖の『おろしあ国酔夢譚』などの名作があります。本書も上記と同じく実際に起こった事件(江戸時代の口書が残っている)を元に描かれた本格的な漂流物の歴史小説です。 流された先は現在のフィリピンの一部であるバタン島。そこで主人公達15人の日本人は未開の地の人々に捕らわれ、なかば奴隷のごとく働かされながら、まともな道具も無い状態で11人(3人死亡、1人は島に残った)が乗れる船を作って帰国しました。そうした史実的な面白さもありますが、何と言っても15人の船乗りの人間物語が秀逸でした。 ちなみに・・。 物語の前半の遭難シーンで、結構詳しく当時の船(弁才船)の構造が語られます。実は私、内部構造にまでこだわって再現した弁才船模型を図面から作った経験があり、他の人では理解が難し辛いだろう説明が良く理解出来るのです。もっとも物語は江戸初期、私の模型は江戸中期なので、炊場(かしきば。炊飯所)の位置が違ったりしていましたが。
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