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愚か者の石 の商品レビュー

4.4

21件のお客様レビュー

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2024/09/04

毎日帰宅が22時近くのいわゆる社畜である私が、程度は違えど囚人と同じような生活してんだな…と内容とは一切関係ない感想を抱いた序盤。 そこから想像よりも過酷で地獄そのもののような環境におかれても、生きる事を諦めなかった登場人物達はすごいなあと感嘆した やっぱ生きようとする力、生命力...

毎日帰宅が22時近くのいわゆる社畜である私が、程度は違えど囚人と同じような生活してんだな…と内容とは一切関係ない感想を抱いた序盤。 そこから想像よりも過酷で地獄そのもののような環境におかれても、生きる事を諦めなかった登場人物達はすごいなあと感嘆した やっぱ生きようとする力、生命力って大事だな〜 私なんかすぐ辞めたくなるしな〜と…。 だからこそ最後の結末は非常にあっけなく、どうにも悲しい気持ちになってしまった。 ずーっと暗く重たい雰囲気の本だったけど不思議と読み応えがあったので作者さんの他の本も読んでみたいと思う。

Posted byブクログ

2024/09/03

本の雑誌・上半期ベストから。心打たれる優れた作品ってことに異論はなし。ただ、”絞め殺し~”のときにも思ったんだけど、ちょっと疲れるんだな。年のせいで重厚な作品が読めなくなってきているとしたら由々しき事態なんだけど、今のところ、長編や時の細かさ額になる訳でもないので、本作については...

本の雑誌・上半期ベストから。心打たれる優れた作品ってことに異論はなし。ただ、”絞め殺し~”のときにも思ったんだけど、ちょっと疲れるんだな。年のせいで重厚な作品が読めなくなってきているとしたら由々しき事態なんだけど、今のところ、長編や時の細かさ額になる訳でもないので、本作についてはちょっと当たらなそう。ここでもやっぱり、作者との相性なのかな…。あと他に、せめて直木賞受賞作くらいは、と思うんだけど…。

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2024/08/31

昭和以後は観光地としてのイメージが強い北海道だが、明治の開拓期にはこんな歴史もあったのかと思わせる作品でした。 監獄の囚人なお話しなので、基本、暗いのですが、それでもなぜか飽きずに先へ先へと読み進められるのはなぜだろう。この内容から何を感じ取ったらいいのか、時々立ち止まって考えな...

昭和以後は観光地としてのイメージが強い北海道だが、明治の開拓期にはこんな歴史もあったのかと思わせる作品でした。 監獄の囚人なお話しなので、基本、暗いのですが、それでもなぜか飽きずに先へ先へと読み進められるのはなぜだろう。この内容から何を感じ取ったらいいのか、時々立ち止まって考えながら読んだのですが、これがなかなか。。。 最後は大二郎の”生きざま”にフォーカスされて終わるのですが、その点ではとても厳しいお話ではあります。

Posted byブクログ

2024/08/28

暗い、臭い、理不尽、他にも負の形容詞がたっぷりの作品、めちゃ重かったぶん、読み応えも十分で一気に読んだ。明治時代、主人公は政治犯として無実ながら実の兄の密告で逮捕された巽。収監された樺戸監獄で同室の大二郎と心を通わせる。そして看守の鑑のような中田。この3人が物語を動かしていく。ヒ...

暗い、臭い、理不尽、他にも負の形容詞がたっぷりの作品、めちゃ重かったぶん、読み応えも十分で一気に読んだ。明治時代、主人公は政治犯として無実ながら実の兄の密告で逮捕された巽。収監された樺戸監獄で同室の大二郎と心を通わせる。そして看守の鑑のような中田。この3人が物語を動かしていく。ヒール役の中田が変わっていく所が見もの。

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2024/08/18

明治14年、国立の監獄「樺戸集治監」が建設された。 政治犯や重罪犯が収監され、開拓のための厳しい労役を強いられた。 囚人と言っても罪の重さもそれぞれ違う。 明治18年、学生だった巽は国事犯として収監。 労役では2人1組で鎖に繋がれる。 巽の相手は大二郎という男。 ふたりを殺めた...

明治14年、国立の監獄「樺戸集治監」が建設された。 政治犯や重罪犯が収監され、開拓のための厳しい労役を強いられた。 囚人と言っても罪の重さもそれぞれ違う。 明治18年、学生だった巽は国事犯として収監。 労役では2人1組で鎖に繋がれる。 巽の相手は大二郎という男。 ふたりを殺めた罪で収監されているというが 掴みどころがなくどのような人物なのかはっきりしない。 看守の中田もストーリーの軸となる。 過酷というひと言では言い表せないほどの労役。 河﨑秋子さんの作品は「生きる」ことへの執着が描かれる。 本作も、汗臭く泥にまみれ、労役で硫黄に侵されながらも 懸命に生きる人たちが描かれている。 本作で樺戸集治監のことを知った。 吉村昭さんの『赤い人』も読んでみたい。

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2024/08/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

北海道の集治監を舞台に囚人と看守、あるいは囚人同士の触れ合い反発など、その犯した罪状には拘らずに監獄内の日常とどうやって生き延びるかを描いている。 水の入った石を持つ大二郎と若い巽が奇妙な友情と大二郎のホラ話の裏に隠された真実に惹きつけられる。また、看守中田の冷めたストイックな態度がどこか哀れだった。

Posted byブクログ

2024/08/04

北海道に拘って、種々の引き出しを開けてくれる筆者。 素晴らしい作家が誕生したと読む喜びを抱く。 吉村昭、山田風太郎の作品でおなじみである樺戸集治監。 明治政府が屯田兵では追い付かない、しかも究極の苛酷な労働を囚人たちに課した歴史は暗黒というか、必要だったというか・・もはや語れる...

北海道に拘って、種々の引き出しを開けてくれる筆者。 素晴らしい作家が誕生したと読む喜びを抱く。 吉村昭、山田風太郎の作品でおなじみである樺戸集治監。 明治政府が屯田兵では追い付かない、しかも究極の苛酷な労働を囚人たちに課した歴史は暗黒というか、必要だったというか・・もはや語れるものはない。 表題「愚か者の石」に込められた筆者の想いは囚人2人と背後で暗い影の如く蠢く看守 3人の動きと思いに投影されている。 して、読み手がその石をどう見るか、吉と出るか凶と出るか、いやはやそんな二分する単純なものではないと私は思えた。 思想犯の巽、ひっかえ凶悪犯?の大二郎はスタート地点からして異なる。 今風に言えば「生まれと育ちが作り上げた罪の土壌」とでもいおうか・・ 明治初期、今から100年前の社会は薩長土肥以外は人に非ずの社会。貧しさは世界共通であったろうが今のモノには分かり切れない凄絶な内容。殖産興業富国強兵の要となった炭鉱で消えて行った人々が国を作ったといっても過言ではなかろう。 人権などどいう言葉は萌芽すらない・・そこで土くれの様に生き抜いてきた男が握った水晶は魔だったか・・もはや大地と化して誰もわからない

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2024/07/31

 超長時間の過酷な労役。弱った者は凍死するような粗末な環境。看守からの暴力が常態化した風紀。そもそも囚人に悔悟や贖罪の念を促すという考えさえ欠けた、まるで使い潰しても構わないといわんばかりの扱いだ。当時の政府側の人間が囚人をどう見なしていたかは『愚か者~』の冒頭に引いた山縣有朋の...

 超長時間の過酷な労役。弱った者は凍死するような粗末な環境。看守からの暴力が常態化した風紀。そもそも囚人に悔悟や贖罪の念を促すという考えさえ欠けた、まるで使い潰しても構わないといわんばかりの扱いだ。当時の政府側の人間が囚人をどう見なしていたかは『愚か者~』の冒頭に引いた山縣有朋の文書にも端的に表れている。 【「小説丸」新刊著者エッセイより抜粋】 明治18年 、国事犯として北海道の樺戸集治監に収監された青年 瀬戸内巽。参考文献にはたくさんの樺戸集治監に関する書籍が挙げられいましたが、北海道開拓の為に集められた囚人たちの劣悪で過酷な状況の描写に「これは罪を犯したらあかん」と震えるほどでした。 そんな中でも主人公の巽がくさらず、しかも娑婆に出たあかつきには自分を裏切った父と兄に復讐してやるとまで考え生き抜いていく姿が、物語の前半部分で心折れずに読み進められた1つだと思います。 あとは、巽とともに収監され 巽と鎖で繋がれることとなった大二郎。そして2人を見張る中田看守。この2人がとても魅力的な人物だということ!でしょうか。 2人を殺めた罪で捕まった大二郎は法螺話で囚人たちを楽しませ 口から出る話は何が本当の事なのかはわからないような男です。しかし大二郎の存在は巽が監獄で生きていく支えになっていくし、また大二郎にとっての巽もそんな存在だったろうなと思えます。 そんな2人を見張る中田看守は 冷静 冷酷 能面づらで感情を読み取ることの出来ない男。看守としては優秀で 看守は天職とも言える人間です。この中田看守がなんとも!いい!(相手に畏怖の念を抱かせるほどの一重ってどんなん?かっこよ) 巽と大二郎が樺戸集治監よりも酷いとされる「硫黄採掘」へと移送させられることになり、監視役として同行した中田とともに 春の吹雪に見舞われ遭難しかけるシーンが…いいんです(そればっかり)。生死を彷徨う体験をした3人に絆が生まれたか?と思うような…。 でもその後の中田看守は相変わらずの能面づらで最高です。 絆といえば、馬や犬などを縛り付ける綱って意味や、自由を縛る手枷 足枷(こちらは「ほだし」って読むのかな?)って意味もあるみたいで 巽と大二郎には良い意味も悪い意味も当てはまりそう。 物語が俄然 面白くなるのは、大二郎が脱走してからだと思います。 巽と同じく大二郎に「裏切られた」ような気持ちにもなり、また脱走した本当の意図も知りたい!となり。 それは中田看守も同感だったようで、刑期を終えた巽と中田は協力して大二郎を捜すことになります。 あぁ…( ノД`) もうため息しか出ません。 大二郎の人生って何だったんだと…。ブクログのY氏なら天を仰いでしまうことでしょう。 大二郎が大事に隠し持っていた綺麗な石の意味と、脱走の真実が明らかになる時に、中田の心が揺れ動く場面が好きで、物語の前半に 今の中田を形成したと思われる生い立ちエピソードが数ページあるんですが、そこを読み返しちゃうくらいでした。 直木賞受賞作の「ともぐい」を始め 数々の受賞作品がある河﨑秋子さん。私はこの本が初の河﨑さんでしたが 読めて良かったです!

Posted byブクログ

2024/07/30

囚人2人と看守がだんだん仲良くなってく話。かな? 過酷な状況でも逞しく生き抜いていく囚人2人の様子は、監獄の中で日々生活していく看守にとっての希望になっていたのでは。

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2024/07/26

謂れのない罪で樺戸の集治監へ入れられた若き巽の拠り所になったのは軽薄で法螺吹きの大二郎。役に立たない石を巧みに隠しもち、その光はいつしか希望に。罪人の巽、大二郎、看守の中田をメインに語られる明治時代の集治監を舞台にした物語に胸がきしむ。ああ、もっとこういう系を読みたい。

Posted byブクログ