わからない の商品レビュー
『きょうも幼稚園で泣いた。お弁当を食べるのがビリだったせいだ。きのうもおとといも泣いた。入園してから泣かなかった日は三個ぐらいしかない。幼稚園なんてなくなればいいのにと思う』―『カルピスのモロモロ』 何故、「泣かなかった日」が「三日」ではなくて「三個」なのかな。これもまたニコル...
『きょうも幼稚園で泣いた。お弁当を食べるのがビリだったせいだ。きのうもおとといも泣いた。入園してから泣かなかった日は三個ぐらいしかない。幼稚園なんてなくなればいいのにと思う』―『カルピスのモロモロ』 何故、「泣かなかった日」が「三日」ではなくて「三個」なのかな。これもまたニコルソン・ベイカーの「ノリーの終わらない物語」翻訳効果のせい(あの小説の翻訳の影にそんな並々ならぬ努力があったとは!という話は今回初めて知りました)? そう言えば、ベイカーの「中二階」を読んだのが岸本佐知子教入信の切っ掛けだったっけ。そしてその信心の沼を更に深く潜ることになったのが「気になる部分」を読んだことだった。もちろん翻訳もいつも楽しみにしているけれど、中々単行本にならないエッセイあっての翻訳ものとすら思う。これは特定の年代の人にしか通じないかも知れないけれど、中島みゆき嬢が深夜放送に登場した衝撃を「気になる部分」では味わったと言って過言ではない。まあ、一風変わった作家(ニコルソン・ベイカーとかジャネット・ウィンターソンとか。「気になる部分」後で言えば、ジュディ・バドニッツとかミランダ・ジュライとか)の翻訳をする人だとは思っていたけれども。そんな深夜放送版の岸本佐知子がどっさり詰まった本が出版されるとあっては、手を出さずにはいられない。もちろん、これまでのエッセイ集も全て読んではいるけれども。 予約した本は届いていたけれども、四十年来の宿題となっていた大作を読み終えてからと我慢し、さあいざ、と、大部の一頁目を開く。おっと、カルピスのもろもろ、って聞いたことがあるなあ、と、さして記憶力がいいとも自覚していない頭で、立ち止まる。ああ「考える人」か、それならやっぱり読んだことがあるや、と妙に自分のことが誇らしくなる。本棚に今時の言葉で言うところの推しの作家の新刊が三冊も並んでいたので、少しばかり浮かれ気味で読み始めたせいか気分が高揚している。なのでそんな自画自賛もご容赦願いたい。 自画自賛と言えば岸本佐知子のユーモアたっぷりのエッセイは、行き過ぎた自虐が却って自画自賛のようにも聞こえる面白みがあってよい。岸本さんが本当にどれだけだめな会社員だったか、本当のところは判らないけれど、本にまつわる話の多いこの一冊を読む限り、文章を読み解こうとする思考の深さからして、この才女が会社で使い物にならなかったとは俄かには信じられない気持ちが改めて強くなる。それをさらりと自虐的にユーモアに変えてみせられるところこそ才女たる証なんじゃないだろうか。 それにしても、これは岸本佐知子教信者にとっては大変お買い得なバイブルの一冊。ただし聖書と呼ばれるものを余りに集中して読んでいると、形而上学的な世界の方が真実味を帯びてきて、現実が逆にあまりに薄っぺらく思えるようになってしまうので要注意。それを例えて言うなら、いくら好きだからといって一口サイズのシュークリームを食べ過ぎてしまうと、味が判らなくなってくるのを通り越し、一袋食べ切る行為が修行であるかのように思われ始め、美味しさを味わうという行為を通り越して食べ切ることこそが真実に近づく道であるかのように思ってしまうようなこと、と言ったらちょっと違うか。でも、食べ過ぎには、やはり注意しつつ、少しずつ読むのが丁度いいとも思います。
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多分ご近所にお住まいだと常々思っていたけど、本当にそうみたい 経堂出身なんだ、知らなかった 満員電車の中で読んだので、笑いをごまかすのに苦労した
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安定?の面白さ!期待通り、満足感!! 一緒に毒吐きたい(笑) 翻訳本、いろいろ読んでみます。
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遠藤周作、北杜夫、林真理子、椎名誠、米原万里 そして岸本佐知子 我ながらなかなかのエッセイ遍歴だと思う
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「古くは2000年からつい最近のものまで、あちこちに書いた文章」の中から、単行本に収録されていないものを選び、「エッセイ、本にまつわるもの、日記」の三つの章に分けて一冊にまとめたのが本書。『ねにもつタイプ』以来のファンとしては、(やっぱりこの感性が大好きだなぁ!)と、再確認させら...
「古くは2000年からつい最近のものまで、あちこちに書いた文章」の中から、単行本に収録されていないものを選び、「エッセイ、本にまつわるもの、日記」の三つの章に分けて一冊にまとめたのが本書。『ねにもつタイプ』以来のファンとしては、(やっぱりこの感性が大好きだなぁ!)と、再確認させられたり、読んでみたくなる作品や作家の紹介もあるのが嬉しい。が、思わぬところに笑いのツボを刺激されるポイントが潜んでいるので、絶対に外出先で読んではいけません!
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エッセイに、本の話題に、日記の三段構え。日記はそっけなくて最初はぼけーっと読んでいたら、途中から慣れてきて、味わい深くなった。とりあえず「ほとんど記憶のない女」は読んでみようと思う。
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翻訳家の岸本佐知子さんのエッセイと書評と日記。 とにかく面白いのひと言に尽きる。 素のままの自分をありのままに語る。 語り口調も飾りのないまま、気取ってもいないので近しい友人のような気になる。 何度も笑わされる。 エッセイのなかの福助エルメスは、最強。 ベストセラー快読の『イ...
翻訳家の岸本佐知子さんのエッセイと書評と日記。 とにかく面白いのひと言に尽きる。 素のままの自分をありのままに語る。 語り口調も飾りのないまま、気取ってもいないので近しい友人のような気になる。 何度も笑わされる。 エッセイのなかの福助エルメスは、最強。 ベストセラー快読の『イヌが教えるお金持ちになるための知恵』など気になって仕方ないのだが、そのなかでふだんベストセラーの本をあまり読まない。何十万何百万もの人々が読んでいるなら、自分ひとりくらい読まなくてもいいだろう、と変に安心してしまうせいだ。 だからたいていこんな具合にタイトルから中身を勝手に想像して、それを読んだような気になっている。でも読んでみたら想像していたのとはかなり違ってた。とあり確かに想像力がありすぎるから言葉のチョイスが面白いのかな…などと。 日記も数行なのに想像できて笑える。 鳩が地面にベタっと座っていたので、すれすれに近くを通ってやったら面倒くさそうに中腰になった。実に腹立たしい。 人間失格の日。だらけて何もせず、よだれ垂らしてビール。皿洗わずテレビ。読む本はマンガ。 鳩に喧嘩売ったり、だらけた自分を次の日の日記に何十年生きても学習しない自分の馬鹿ばか莫迦と書く。 カブトムシ日記は、面白さマックス。 どれが、なんて選べない。 キシモトワールドを楽しんだ。
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感想 書き手が言いたかったことをずらす。斜に構える。だけどそれをするには。著者が何を言いたいか。それは本の中だけで考えてはいけない。
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