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関心領域 の商品レビュー

3.9

18件のお客様レビュー

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2024/11/09

アカデミー賞5部門にノミネートされ、国際長篇映画賞及び音響賞を受賞した、同名映画の原作小説。受賞に合わせて早川書房より邦訳版が刊行されたので、手に取ってみることに。 舞台は、第二次世界大戦下のナチスドイツ、とある強制収容所。飲酒に溺れ己の"正常"を保とうとす...

アカデミー賞5部門にノミネートされ、国際長篇映画賞及び音響賞を受賞した、同名映画の原作小説。受賞に合わせて早川書房より邦訳版が刊行されたので、手に取ってみることに。 舞台は、第二次世界大戦下のナチスドイツ、とある強制収容所。飲酒に溺れ己の"正常"を保とうとする強制収容所の司令官パウル・ドル、上官であるドルの妻ハンナとの恋愛に執心する将校アンゲルス・ゴーロ・トムンゼン、生き延びるために同胞の死体処理に従事する特別労務班長であるユダヤ人のシュムル・ザハリアシュ。非人道的な残虐行為が横行する強制収容所に関わる三者の視点で描かれる、"非日常的"日常―――。 強制収容所(と、ナチス体制)の"異常性"から目を逸らすように、それぞれの形で己の「領域」からそれらを排除しようとする姿が印象的。歴史上、決して風化させてはいけないナチスによるホロコースト。それを後世に伝えるものとして大切な作品であることは間違いないが、作品に対する私一個人としての満足度はそこまで。

Posted byブクログ

2024/10/31

関心領域 自分の中にある言葉でこれを読み解けない気がするがそれでも心に刻まられる作品 戦争という狂気の中で行われる蛮行の中にある人間らしさとはなんなのか 明日の僕たちはどう生きてなにを残していけるのだろうか

Posted byブクログ

2024/10/28

アウシュヴィッツをモデルにした収容所とその周囲の暮らしや戦況の話。 収容所の管理にあたる軍人は家族帯同で暮らしていた。 家では普通に家庭生活があり、周囲の街にも普通に暮らしている人たちがいる。 そこへやってくるユダヤ人を満載した列車。同じ人間でありながら家畜よりも酷い扱いで、到着...

アウシュヴィッツをモデルにした収容所とその周囲の暮らしや戦況の話。 収容所の管理にあたる軍人は家族帯同で暮らしていた。 家では普通に家庭生活があり、周囲の街にも普通に暮らしている人たちがいる。 そこへやってくるユダヤ人を満載した列車。同じ人間でありながら家畜よりも酷い扱いで、到着してすぐにガス室行きか、半年も持たずに死ぬ。 彼らを選別し、収容所に運んでいくが彼らの気配、音、匂いは当然普段の暮らしに影響がある。死体が増えるにつれ、焼却しきれずに野原に埋める。それが地下水に出て、近隣では井戸水が飲めなくなる。 何が起きているのか、想像がつく。でも、それを口にはしない。 目を逸らし、受け流す。 そんな環境でも、自分の考えや判断を保つ人もいる。そのうちの1人である収容所司令官の妻に恋をした主人公は、彼女の考えに習い、目の前のことを考えて反乱を計画するが失敗。逮捕されて終戦を迎える。 司令官の妻が過去の恋人を否定するのに、「他人の考えで頭がいっぱい」と表現しており、小説全体では、周囲に意識を向け、自分の頭で善悪や自分の行動を判断することがテーマになっている。 収容所の運営にあたっていたユダヤ人は、自分の考えで司令官の命令に背き、他人の命を救う。 読むのはとても苦しい。 知らんぷりをしないこと、目を背けないことを伝える本を読んでいると、パレスチナやウクライナを考えざるを得ない。 知っているのに、私は何もしていない。  ユダヤ人が迫害されたが、ユダヤ人でないから声を上げないでいたら、自分が迫害された時には、誰も私のために声を上げなかった、という詩を思い出す。 「何をすべきだと思うか」を、問われる本。

Posted byブクログ

2024/09/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本が好きなら誰しも一度は読んでみてほしい作品。 洋画の翻訳の様な口調で話は割とテンポ良く進む。それに慣れないドイツ語とちょくちょく話がややこしくなる時もある。そして、淡々と自分は物語を進める。 しかし、何か肝心な事を忘れていないか?という気持ちに常に襲われていた。もちろん、これは強制収容所で働く人々のお話というのは理解していた。だからこそ、この作品は狂気に溢れているという認識をもって読み始めた。しかし、本当に狂気に溢れているのは自分自身であったと今は認識している。 鏡の様な作品と言われていたが、本当に間違いない。自分は作品を通して、ドルとトムゼン達の事に意識が集中していた。そして、ここが強制収容所で、当たり前の様にユダヤ人を殺しまくっている事実が凄く薄まっていた。たまにそれを思い出させる様な描写もあるが、惨さや悲惨さという感覚が薄れていたのかもしれない。だからこそ、最後のトムゼンの台詞は強烈に刺さった。 現代でも、自分の興味関心のある世界の外側を覗こうと思う人は数少ないかもしれない。 しかし、世界では酷い事も悲しい事も楽しい事もたくさん同時進行に起こっている。この感想を書いている時にも。 感受性が強い人は、この作品はとても苦しいかもしれない。けれど、読書体験としてはひとつ最高の体験をさせてもらえた。あなたはこの作品を通じて自分がどのように写るか楽しみではあるけど、知りたくもない気持ちもある。視野は広く正しく観よう。

Posted byブクログ

2024/09/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

映画のほうは見てないが、漏れ聞く限り、音響が素晴らしいが眠くなる、というものだったので、エンタメとしてはあまり面白くないんだろうな、映画だけじゃわからないところもありそうだな、と思って、原作を読んでみた。 予想よりは文学的でつまらないというわけではないが、わかりにくくてエンタメとしてもあまり。キャラがつらつら心情を述べてるの苦手。誰に話しかけてるの?神や自分自身や読者に話しかけ、作者の代弁であるのはわかってるが。 キャラの描写が自己欺瞞に満ちてて、会話の真意を読み取らなくちゃいけないのが疲れた。映画だと表情や音楽や撮り方でわかるだろうが、小説だと文字のみで、頭が疲れた。 愛国者を気取る、命知らずの軍人を気取る、心酔者を気取る、まともさを気取る。 トムゼンのハンナへの思いは赤と黒みたいで、なんか好みの女がいたらヤラなきゃもったいない精神から始まってて、最後まで、はあ?の気持ちだった。 パウルは最低すぎる。やばい。娘の扱いにもヒヤヒヤした。気持ち悪い。 シュムルの節は短いながらも端的で削ぎ落とされていて良かった。簡潔明瞭。 ところどころは良かったが、信用できない語り手、特にパウルやトムゼンの自己欺瞞に付き合うのがだるかった。 ボリスや周りの人との会話も。 ハンナは結構本音で直球だったのかな。

Posted byブクログ

2024/09/07

ナチス政権下、歴史的にも醜悪かつ理解し難い、その行為とその周辺を舞台にして、収容所の司令官、連絡将校中尉、ユダヤ人の特別労務班班長の3人、それぞれの違った視点からの描写を交えながら、物語が進行していく。 あの場所から幸せな何かが生まれるなんて、どんなにぞっとすることか。 作中...

ナチス政権下、歴史的にも醜悪かつ理解し難い、その行為とその周辺を舞台にして、収容所の司令官、連絡将校中尉、ユダヤ人の特別労務班班長の3人、それぞれの違った視点からの描写を交えながら、物語が進行していく。 あの場所から幸せな何かが生まれるなんて、どんなにぞっとすることか。 作中のこのセリフには、共感しかない。 この物語を哀切な悲恋で締め括ることは許されない。 著者の後書きも含めての作品だと痛切した。 現実に、ルドルフヘスが、己の行いによって酒と薬に溺れ、精神を病んでいたのかはわからない。 現実に、こういった中尉のような、都合の良い自己正当化で残虐行為を行っていた人たちもいたかもしれない。 けれど、どのすべても許されることではなく、このことについて、わたしはエンタメとして消化することに激しい抵抗を覚え、作中の登場人物の誰のことも理解したくはないしできない。

Posted byブクログ

2024/09/02

前半退屈&カタカナの名前全然覚えられなくてまともに入ってこないんだけど、後半は止まらないほど面白く、もう一度読みたくなる 戦争の恐ろしさは人間が人間であることを忘れていく、染まっていく、正常さとは人間が意図的に作っていることに気づけないことだなと思った

Posted byブクログ

2024/08/19

この作品を原作とした映画が、アカデミー賞を受賞したとの事で調べてみると、ちょうど公開されていました。しかし、残念な事に公開しているのは、東京の劇場のみでした。映画も観れば、最も作品への理解が深まると思いましたが、関西での公開を待つ事にします。

Posted byブクログ

2024/08/19

オシフィエンチムは、ポーランドの都市。ドイツ語名アウシュヴィッツの方がよく知られているだろう。そこにはナチスにより、ユダヤ人の強制収容所が設けられた。彼らはオシフィエンチムの一地区と付近の村の住民を追放し、40平方キロメートル以上を親衛隊管理区域とした。そしてここを関心領域(In...

オシフィエンチムは、ポーランドの都市。ドイツ語名アウシュヴィッツの方がよく知られているだろう。そこにはナチスにより、ユダヤ人の強制収容所が設けられた。彼らはオシフィエンチムの一地区と付近の村の住民を追放し、40平方キロメートル以上を親衛隊管理区域とした。そしてここを関心領域(Interessengebiet/The Zone of Interest)と呼んだ。 本作は「関心領域」を巡る物語である。 もちろん、ここでいう「関心」とは「関心を持たれる」、つまりは「重要な」領域の婉曲表現なのだが、著者がおそらくこのタイトルに込めたであろう目論見は読み進めるにつれて徐々に重みを増していく。 「関心領域」は主に3つの視点から語られる。 収容所の司令官。 司令官の妻との不倫をもくろむ将校。 死体処理の仕事をしながら生き延びるユダヤ人。 同じ地域に暮らしながら、彼らが見ているものは驚くほど異なる。 それは彼らの「関心」が異なるからだ。 ある者は組織の中で成功するために躍起になり、ある者は享楽的に生きながら、どこか狂った社会への疑問を抑えきれなくなり、ある者はただただ地獄の日々を生き抜くことが精いっぱいであり。 そうした彼らの視線を通して、読者も渦中に身を置くことになる。 その時代、その場所にいたならば、自分の「関心」はどこに向いていただろうか。 渦中にいるとき、その影響を受けずにいることはおそらくは無理だ。けれども、渦中にいたからといって、やはりなされてはならないこと、なしてはならないことはあるはずである。 ひとたび、それが起きてしまったときに、私たちはどうすればよいのだろうか。 取り返しのつかないことはある。起きてしまったことをなかったことにはできない。 そこで起こったことは、 一時間を思い出すのには一時間かか り、 一ヵ月を思い出すには一ヵ月かかる 類のものである。その記憶の一部は、記録され、魔法瓶に詰められ、木の根元に埋められる。それは後に、「アウシュヴィッツの巻物」と呼ばれるだろう。 収容所で1つの愛が生まれかけたが、それは成就しない。すべてが終わった後、女は言うのだ。 想像してみて、あの場所から幸せな何かが生まれるなんて、どんなにぞっとすることか 悲しいセリフである。悲しいのは、ただのセンチメンタリズムではない。人間が如何に邪悪になりうるかを、否定の余地なく示してしまったのが、ホロコーストである。その事実を知っていながら、美しいものは生まれうるのか。女の言葉は、それを突き付ける。 でも。それでもなお、希望はないのか。答えの出ない問いがぐるぐる巡る。 <本作と映画についての追記> 本作は映画化されている。映画の方を先に見た。 ひとことで言えば、タイトルと舞台が共通している以外、相当の相違である。 原作者は映画についてどう思っていたのか、少々興味のあるところだが、(おそらく偶然なのだろうが)映画公開日と原作者死亡日が同じ日なので、原作者は見てはいないのかもしれない。企画自体は10年ほど前に始まっていたようなので、構想はある程度は知っていたものか。 司令官夫妻は原作では架空の人物だが、映画では実在のルドルフ・ヘス夫妻としている。妻がどちらの人物像に近いかは不明だが、映画の方が近いのかもしれない。 原作では複数人物の視点から語られる「領域」だが、映画では、主にヘス家に重点が置かれる。そして映画の影の主役となっているのは“音”である。映画ならではの体験といえるもので、これはこれで見ておく価値のあるものと思う。

Posted byブクログ

2024/08/06

ジャミロクワイの『VIrtual Insanity』でMVを監督したジョナサン・グレイザー監督がアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の隣に住居を構える収容所の所長ルドルフ・ヘスとその家族の生活を描いた映画『関心領域』 そこに暮らす人々の生活が描かれているだけにも関わらずおぞまし...

ジャミロクワイの『VIrtual Insanity』でMVを監督したジョナサン・グレイザー監督がアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の隣に住居を構える収容所の所長ルドルフ・ヘスとその家族の生活を描いた映画『関心領域』 そこに暮らす人々の生活が描かれているだけにも関わらずおぞましく、醜悪で、下手なホラー映画よりもよっぽど恐ろしい作品であった。 直接的な描写は一切映らないにも関わらず、わずかに聞こえる叫び声や銃声、塀の向こうの焼却炉がゴウゴウと音を立てて吐き出す黒い煙など、恐らく今こういうことが起きてると察することが出来る。 頭をガツンと殴られるかのような衝撃を受ける映画体験だったが、とても映画的な瞬間で作られた恐ろしさだったために、原作ではどんな描かれ方をしているのだろうかと気になって手に取った。 驚いたことに原作は映画とはまったく違っていて、映画で使われていたのはアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所の隣に住んでいる強制収容所所長一家という部分くらいだ。 ちょっと拍子抜けしてしまったのだが、考えてみると本作も『関心領域』というタイトルには間違いなくて、自分の興味のある、関心を向けている領域を外れた人、外すことが出来ない人が描かれている。 原作には原作の面白さがあるため、映画と比べてどうだって話ではない。 どちらもその媒体特有の表現で残酷さや恐怖を描いている。 そしてどちらもグロテスクなことが描かれているにも関わらず、ふと吹き出してしまいそうな瞬間もあったりする。 見比べてみるのが面白いタイプの作品だと思う。 映画から原作に入ると余りにも印象が違うため、ちょっと肩透かしを喰らう気もするので。 個人的には原作→映画から入ってみるのをオススメ。

Posted byブクログ