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あの夏が教えてくれた の商品レビュー

4.2

14件のお客様レビュー

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2024/09/19

実は私は、人種問題だの差別問題だのを扱った小説は、読まない。 楽しくないのだもの。 「差別はいけないことだと思いました」 「2度とあってはならないことだと思いました」 そんなギフンにかられないとならない感じ、とりあえずそう言っておけばよい感じが、とにかくイヤなのだ。 こちとら、い...

実は私は、人種問題だの差別問題だのを扱った小説は、読まない。 楽しくないのだもの。 「差別はいけないことだと思いました」 「2度とあってはならないことだと思いました」 そんなギフンにかられないとならない感じ、とりあえずそう言っておけばよい感じが、とにかくイヤなのだ。 こちとら、いい加減、学校で読まされたのだ。 とうにいっぱいいっぱいだ。 もう読みたくない。 なのだけれども、これは面白かった。 面白いのかつまらないのかわからないが、なぜか、つい読み進んでしまう話というのがある。 『あの夏が教えてくれた』は、まさにそんな感じで話がはじまる。 主人公は ボーディ・サンデン、ミズーリ州の田舎町で暮らす15歳の少年だ。 時は1975年・・・・・・といってもピンとこないだろうが、カセットテープが普及しはじめる頃である。 カセットテープが最新のトレンドで、かっこいい、とがった、まだ恵まれた人しか持てないような代物であった時代だ。 ボーディ・サンデンってどこかで聞いたような名前・・・・・・ アレン・エスケンスの本をいくつか読んだ、勘と記憶力の良い方ならお気づきだろう。 えー、あの?! あの作品、この作品に出てきた、あのボーディ・サンデンが主人公なのである! ・・・・・・ ・・・・・・ 申し訳ない。 実は私はすっかり忘れていた。 そういえば、そんな人がいたような? という、見事なうろ覚え状態で読み進めたのだ。 えーと、えーと、ボーディって、たしかあんな人だったようにうっすら記憶しているけれど、ふーむ、人には歴史があるのねーと、描きようにうなずきも感心もしたのである。 さすがアレン・エスケンス、うまく描くなあと感心したのだが、それもそのはず、作者が20年の歳月をかけて書いた話なのだ。 『わたしは本書、『あの夏が教えてくれた』を、(・・・・・・)一九九一年に書きはじめました。(・・・・・・)この小説を棚上げにしたのは、二十年、取り組んだ後のことです。(・・・・・・)ついにこの小説を書けて、本当によかった。』 (冒頭) 「では、他の作品を読んでいないと、面白くないのではないの?」 当然の疑問だが、心配ない。 初めて読む作品がこれでもいっこうに障りなく、面白い。 たしかに、他作品を知っていればさらなる楽しみがあるだろう。 「へー、あの人にこんな過去がねえ」 「え、あの人もこの話に!」 「こんな場面、あの話でもあったような・・・・・・」 そんなこんなは、後で他作品を読んだ時におぼえればいい楽しみだ。 現に、見事なうろ覚えの私が、非常に面白く感じた1冊なのである。 初めてアレン・エスケンスを読むにもよい1冊だ。 さらに私は、私にしては非常に珍しい表現も加えて、この本を薦めようと思う。 『高校生の読書感想文におすすめ』

Posted byブクログ

2024/09/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

CL 2024.9.1-2024.9.3 1970年代、いまだ人種差別が色濃く残るアメリカの田舎町が舞台。作者の他の作品にも登場するボーディが少年の頃のひと夏の成長譚。 終盤、一気に多くの人が死んでしまうのが重すぎる。

Posted byブクログ

2024/08/15

田舎町に暮らす少年ボーディ。その街で一人の女性が失踪する事件が起きる。そして近所に黒人一家が越してきて、その家には同い年の少年トーマスが。 あらすじが難しい。失踪事件があり、トーマスとの友情譚があり、隣人ホークの過去話がいろいろと絡み合って・・・なかなかに興味深い。いや面白いんで...

田舎町に暮らす少年ボーディ。その街で一人の女性が失踪する事件が起きる。そして近所に黒人一家が越してきて、その家には同い年の少年トーマスが。 あらすじが難しい。失踪事件があり、トーマスとの友情譚があり、隣人ホークの過去話がいろいろと絡み合って・・・なかなかに興味深い。いや面白いんですけどね。黒人差別的なものがそこかしこにでてくる。白人至上主義の過激団体とか。そして差別的な人物はことごとく悲惨な末路をたどるわけで。なんだろうな、説教臭さみたいなものを感じてしまった。この手の差別問題とか、あと環境問題とかを物語に持ち出すとものすごくわかりやすく単純に善悪がはっきりするのであんまり好きじゃない。「面白い」お話じゃなくて「正しい」お話をしないといけないみたいな窮屈さを感じる。特に最近の海外文学では。 いやまあそれを抜きにしても面白い話ではあったんですけどね。なんでもこの作品の主人公ボーディくんは別の作品では成長した姿でまた主人公を務めているんだそうで。機会があったら是非読んでみたいと思います。

Posted byブクログ

2024/07/28

地方の保安官が自分の管轄区内で起きている集団による人種差別を放置し、みずからも助長するような言動で差別に反対する人々を苦しめている。C.J.ボックスのジョー・ピケットシリーズの初めに出て来る悪徳保安官もそうだったけど選挙でえらばれる公務員っていったん悪いほうに行くと歯止めが利かな...

地方の保安官が自分の管轄区内で起きている集団による人種差別を放置し、みずからも助長するような言動で差別に反対する人々を苦しめている。C.J.ボックスのジョー・ピケットシリーズの初めに出て来る悪徳保安官もそうだったけど選挙でえらばれる公務員っていったん悪いほうに行くと歯止めが利かなくなるのかな? ミステリではなく追想の青春小説だった。

Posted byブクログ

2024/06/04

★5 アメリカの田舎町、知恵と勇気を振り絞りながら生き抜く学生の成長と経験 #あの夏が教えてくれた ■あらすじ 1976年頃のアメリカ田舎町、主人公のボーディは高校一年生。彼は高校生活に馴染めず、いつも同級生から迫害を受けてしまっていた。そんなある日、街で黒人女性が失踪してしま...

★5 アメリカの田舎町、知恵と勇気を振り絞りながら生き抜く学生の成長と経験 #あの夏が教えてくれた ■あらすじ 1976年頃のアメリカ田舎町、主人公のボーディは高校一年生。彼は高校生活に馴染めず、いつも同級生から迫害を受けてしまっていた。そんなある日、街で黒人女性が失踪してしまう事件が発生してしまう。保安官は頼りにしている隣人ホークを怪しんでいる様子。不安になったボーディは失踪事件を調べ始めるのだが… ■きっと読みたくなるレビュー ★5 いい話やったわ… 本作はどこにでもいそうな高校生の成長を切り取った物語です。 彼は街の権力者の子どもたちに目をつけられてしまっており、うまく学園生活に馴染めていない。しかも田舎特有の差別意識が高く、よそ者や黒人たちへの迫害も酷い時代や地域。それにも関わらず、彼は黒人の少女を手助けしてしまったことから、より圧力がかけられてしまうことになるのです。 彼なりに知恵と勇気を振り絞りながら、日々生き抜いてゆく。しかしまだ世の中のことを理解できていないのに、街の事件や問題に巻き込まれてしまうのです。誰しも一度は感じたことがある人生の壁。そして気づき。彼は成長することができるのでしょうか。 本作はストーリーテリングが素晴らしい。序盤から最後まで、じっくりと、でも抑揚をつけながら物語が進行していく。背景にある差別意識の表現も、芯を突いてくる書き方で痛烈。薄っぺらな正義感なんか、簡単に吹き飛んでしまいます。 特に同級生たちとやり合うシーンは、アメリカで本当にありそうなダークな学園風景を切り取られている。日本での学園ヒエラルキーやイジメとも似た陰湿な空気が感じられてたまらなく辛い。 それでも隣人ホークや、引っ越してきた友人トーマス、家族との関係性に救われる。ホント誰と一緒にいるかというのは、人生において大切なんですよね。 そして物語の中盤、パーティで女性と関わるシーンがあるのですが、もう胸が張り裂けそうですよ。このシーンだけでも、この本を読む価値があるってくらい脳天が割かれました。今までだったら決してできなかった行動を彼は起こすのですが、はー…私も自分の高校時代を思い出してしまいました。 終盤には少女失踪、そして主人公パーティにとって重要な秘密が明かされる。怒涛の展開にはなるのですが、真相自体は決して派手ではない。読み終わると、涙がでてしまっていましたことに気づきました… ■ぜっさん推しポイント 人が犯罪を犯してしまう根本的な原因は3つしかなく、幼年期の愛情不足、青年期の成長不足、成人期以降は貧困であると言われています。 主人公パーティがこの街に住み続け、愛のある人からの助けもなく、そして邪な仲間たちとも懐柔していたら、果たしてどんな人生を送ることになったのだろうか。犯罪に手を染めることになってしまうのは、想像に難くない。彼にとって「あの夏が教えてくれた」ものは、どんな宝石よりも価値のあるのでしょう。 私の息子たちも、いま青年期をむかえています。知恵や知識は学校で教えてくれますが、生きることについてはまだまだ経験不足。私に何ができるか分かりませんが、いつも近くにいて、話を聞いてあげることが重要なんだと思いました。

Posted byブクログ

2024/06/03

あの名作の3作品を読んだあとにこちら! 自伝的な小説かと思ってたら 違うようで、 でもあの、切ない劇的さは健在で。 解説に書いてあった通り 36章の最後の文章に尽きる!

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2024/05/22

〜偏見はあるに決まっているんだ。大事なのは、その本能を理解し、それと闘うことなんだよ〜 驚いた! 先日読んだ月村了衛さんの『対決』にも似たような言葉が書いてあった 方や日本人作家が女性差別について書いた物語、方やアメリカ人作家が人種差別について書いた物語 まず闘うべき相手は...

〜偏見はあるに決まっているんだ。大事なのは、その本能を理解し、それと闘うことなんだよ〜 驚いた! 先日読んだ月村了衛さんの『対決』にも似たような言葉が書いてあった 方や日本人作家が女性差別について書いた物語、方やアメリカ人作家が人種差別について書いた物語 まず闘うべき相手は自分自身なのだ 2つの物語はそんなことを訴えているのではないだろうか 誰の心にも「差別」は潜んでいるのかもしれない、それはある意味自分を守るところから発しているとも言えるからだ 自分といや自分たちと違うものを恐れ遠ざけるために過剰に攻撃的になっている そんなところから「差別」は生まれているかもしれないのだ 「差別」を憎み、「差別」を無くすためには、誰の心にも「差別」の種はあると認め、それがムクムクって育ってきそうになったときに、それと向き合い闘うことが大事なんじゃないだろうか もし、闘い方がわからないと言うならばこの物語を読めばいい 後に冤罪者を救う弁護士となる15歳の少年ボーディが闘った夏が教えてくれるはずだ

Posted byブクログ

2024/05/22

「償いの幸が降る」などの著者の邦訳4作目のミステリー。前作の主人公ボーディの少年時代、1970年代のミズーリ州の小さな町が舞台。黒人女性の横領失踪事件を皮切りに、ボーディ少年は陰謀の中に巻き込まれていく。一部の権力を持つ白人とそれに与する保安官。公然と黒人差別思想が渦巻く中、フェ...

「償いの幸が降る」などの著者の邦訳4作目のミステリー。前作の主人公ボーディの少年時代、1970年代のミズーリ州の小さな町が舞台。黒人女性の横領失踪事件を皮切りに、ボーディ少年は陰謀の中に巻き込まれていく。一部の権力を持つ白人とそれに与する保安官。公然と黒人差別思想が渦巻く中、フェアの立場を貫く人々への嫌がらせが始まる。真実に目を向ける様、諭す隣人、引越してきたトーマスとの関係など、成長小説としても面白い。痛ましい事件を乗り越えたからこそ、その後のボーディになり得たと納得。沢山の教訓が詰まった一冊。タオルを準備して。

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2024/05/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『償いの雪が降る』に登場する弁護士ボーディ・サンデンの高校時代を描く青春ミステリ。 公民権法が制定されて間もない、まだ人々の意識に人種差別が色濃い時代。田舎町に住む少年ボーディの向かいに越してきたのは、ボーディ家よりも裕福で都会から越してきた黒人のエルギン家。一家の息子トーマスはボーディと同い年の少年で、彼よりも経験豊富で洗練されている。当初は衝突した二人だが次第に交友を深めていく。 ある日キャンプをしていた二人は、山林の中で行方不明になっていた女性の死体を見つけ、それが近頃話題になっていた横領事件の渦中にあった女性ということを知る。 時を同じくして、コープスと呼ばれる白人至上主義集団がエルギン家や彼らと親密なサンデン家を攻撃する事件も発生する。容疑者と思しき男を告発するも、その一族は地元の有力者ということもあり保安官はまともに取り合わない。 殺人事件の真相と憎悪犯罪が次第に重なり合っていく。 少年たちの青春の煌めきと人種差別の暗い影。他者を排斥することで纏まろうとする愚かしさや理不尽さ。ボーディ少年の視点で語られることで、様々な感情が綯い交ぜになる。自分の過ちに対する贖罪としてサンデン母子を見守るホークの生き様が胸を打つ。

Posted byブクログ

2024/05/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

・あらすじ 1976年のアメリカ、ミズーリ州が舞台。 黒人差別が色濃くのこる田舎町で暮らす15歳のボーディ。 学校にも馴染めず、母親とも距離がありいつも一人で孤独に過ごしていた。 そんな中、町を牛耳るハルコム一族が工場長を務めるライク工業に新たに黒人の工場長が就任し、一家はボーディの隣に引っ越してくる。 一家にはボーディと同い年の男の子がおり、二人は徐々に共に過ごすようになる。 謎の隣人ホーク、ライク工業の黒人女性の失踪事件、過激な白人至上主義団体…一夏の少年の成長譚。 ・感想 この手の回顧録的な作品めっちゃ好き…解説にもあったけどまさに私の大好きなロバートマキャモンの少年時代と同系統の話ですごく楽しんで読めた。し、ラストは泣きながら読んでた…。 既視感のある設定だから目新しい驚きとかは無いけど安定したこの「少年の成長譚」というテーマに求める要素はほぼほぼ入ってた。 夏、12−15歳の少年(16歳までいくと守備範囲外、あとできれば少年がいい。少女だと冒険的要素が少し減らされるイメージがある)、友情、危機的状況に立ち向かう、淡い恋、家族との絆、大事な人の喪失… 私が大好きな要素が詰まってた。 ボーディたちが危険な場所に向かっていくたびに「危ないからやめなさい!」って大人な自分は思いながらハラハラドキドキしながら読むんだけど、この「危ないからやめなさい」を振り切って突進する少年たちを見るのが好きだからこの手の作品が好きなんだろうな〜。 アレンエスケスの作品はこれが初めてで、解説を読んでボーディのその後を知って驚いた。 絶対に他の作品も読む。

Posted byブクログ