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口の立つやつが勝つってことでいいのか の商品レビュー

3.6

40件のお客様レビュー

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2024/07/15

病気と共に生きていらっしゃる筆者。 欠落というか、苦しさというか、否応なく押し付けられたものと共に生きていくこと。 自由も何もなく、抗えず、本意ではなく共に歩まざるを得ないものがあることで、見えてくるものもあるのだと思う。 僕ごときが、共感できるというと、あるいは、その共感とやら...

病気と共に生きていらっしゃる筆者。 欠落というか、苦しさというか、否応なく押し付けられたものと共に生きていくこと。 自由も何もなく、抗えず、本意ではなく共に歩まざるを得ないものがあることで、見えてくるものもあるのだと思う。 僕ごときが、共感できるというと、あるいは、その共感とやらの浅薄さが噴飯ものなのかもしれないが。 共感できる部分があったと思う。 個別には、以下にいろいろ、あれ?と思わなくもないところがあったが、よいエッセイだったと思う。 「言葉にできない思いがありますか?」 ということを述べていた。 言葉を使って。 ちょっと無理筋な挑戦だよなぁ、と思った。 能力主義への懐疑については、正にそのとおりだなあ、と思った。「能力で人を判断することに『ためらい』がほしい」という。その結論は、もう少し掘り下げられないかなぁ。それはそれでいいけどさ。 「人は「自分だったら、決してこういうことはしない」ということを他人がしていると、とても腹が立つ。 そのとき、「相手には特別な事情があるかも」ということに、なかなか思いがいたらない。」P102 そうか。と思った。 精神衛生上、そう思っておくべきだな、とも思った。いずれ他人はどうなのか分からないわけだし。

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2024/07/01

思いをうまく言葉にできないほうが、当然なのだ。本当なのだ。 どうしても理路整然とは話せない知人、酔うと後悔ばかり話し出す友人、洗面台で流されかけている小虫、授業中に夫の死を語りつづける先生……。弱いものたちのなかにこそ、陰影のある物語は生まれてくる。『絶望名人カフカの人生論』で知...

思いをうまく言葉にできないほうが、当然なのだ。本当なのだ。 どうしても理路整然とは話せない知人、酔うと後悔ばかり話し出す友人、洗面台で流されかけている小虫、授業中に夫の死を語りつづける先生……。弱いものたちのなかにこそ、陰影のある物語は生まれてくる。『絶望名人カフカの人生論』で知られる文学紹介者による、初のエッセイ集。

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2024/06/30

私自身、会話をするとき、常に助走をつけているというか、発する言葉を選びながら話すので、話すスピードは比較的ゆったり、時間をかけているように思う。それでも、流れや勢いに任せて話すと「あ、これは本心じゃないな」ということがある。すごいある。その後、一人で反省会をする。何でもっと分かり...

私自身、会話をするとき、常に助走をつけているというか、発する言葉を選びながら話すので、話すスピードは比較的ゆったり、時間をかけているように思う。それでも、流れや勢いに任せて話すと「あ、これは本心じゃないな」ということがある。すごいある。その後、一人で反省会をする。何でもっと分かりやすく話せないんだろう、うまく表現できないんだろう。そう悩んでいたからこそ、この著書を読んで、この悩みは私だけじゃないし、好意的に受け取ってくれている人もいると思うと、すごく救われた。

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2024/06/23

20歳で大病を患った頭木弘樹さんによるエッセイ集。昨日読んだ内田樹さんの「勇気論」にも、これから読もうと積んである勅使川原真衣さんの「働くということ」にも通じることが書いてあって、その偶然に嬉しくなりました。

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2024/06/18

好きな所 小学生の喧嘩、口の立つ奴が勝つだけだ。論理を捻じ曲げるのが上手い人。高い弁護士を雇える方が勝つ 決して言葉にできない思いがここにあると指すのが言葉だ 言語化できることなんて、ほんのわずかだ。たとえて言うと、箸でつまめるものだけをつまんでいるみたいなことだ。スープのような...

好きな所 小学生の喧嘩、口の立つ奴が勝つだけだ。論理を捻じ曲げるのが上手い人。高い弁護士を雇える方が勝つ 決して言葉にできない思いがここにあると指すのが言葉だ 言語化できることなんて、ほんのわずかだ。たとえて言うと、箸でつまめるものだけをつまんでいるみたいなことだ。スープのようなものは箸でつまめない。そうゆうものは、切り捨ててしまっているのだ。だから実はスープがたっぷり残ってしまっている。そのスープの方が気になる人には、「うまく喋れない」ということになる。もちろん箸でつまめるものをきちんとつまめるも重要だ。しかし、それだけが素晴らしいわけではない。スープもおいしいわけだし、むしろそちらの方がおいしいかもしれないのだから。豆だけでいいと、簡単にスープを切り捨てられなくてもいい。理路整然と話せる人も素敵だが、理路整然と話せない人もまた素敵だ。 能力で人を判断することに「ためらい」が欲しい。 本気にしなきゃ面白くないだろ

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2024/06/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『食べることと出すこと』を読んで衝撃を受けた。これは初めてのエッセイで著者自身書くのが楽しかったと言っているように実に濃密なのに押し付けがましさのない読ませる内容だった。この人はとても死に近いところで日常を生きているのだなと改めて思った。『チボー家の人々』の最終巻にーー(大体の引用)自分というものをはっきり理解し、人間を理解するための最上の条件は一度病気をしてから健康になるということなのだ。健康つづきだった人間は必然的にばか者だーーというくだりがあって思わず書き出してしまったほどだが、要するにこの著者もものすごく死に近い立ち位置でものごとをみているのでこんなにも心に響くものが書けるのだと思う。 長い闘病生活では本とラジオに救われるというのは経験したものとしてはすごくよくわかる。それにしても小学校時代の先生の話は強烈だった。

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2024/06/09

著者が難病と言われる病気と付き合っていく中で諦めたり支えにしたり感じたことがやはり心に響いてくる。子供の頃の思い出や本の感想、様々なことに疑問を感じてちょっとこれおかしいんじゃないと提言しているのがとても真っ当で興味深かった。

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2024/06/08

評判通りの面白さで1日で一気読みした。1ページの字数が少ないのに付箋をつけて覚えておきたいところがたくさんあった。 「思わず出てしまった言葉は意外と本心でない」というのは目から鱗。確かに勢いで言ったことは、妙に芝居がかって本心ではないことっていうのはあるなと思う。 そこ見つけま...

評判通りの面白さで1日で一気読みした。1ページの字数が少ないのに付箋をつけて覚えておきたいところがたくさんあった。 「思わず出てしまった言葉は意外と本心でない」というのは目から鱗。確かに勢いで言ったことは、妙に芝居がかって本心ではないことっていうのはあるなと思う。 そこ見つけますか!と感心。 ヴォガネットの「私が知る唯一のルールと言うのはだね。人に親切にしなさいってことだ」という言葉が紹介されているが、最近「親切」という言葉を聞く機会が多い。内田樹も親切について語っていたのを思い出した。 「愛より軽い親切」。 「親切」というのは、これからのキーワードだね。 しかし、そんな親切に対して、必ずしも感謝は必要ではないという章もあり、そこもまた唸るほどの洞察力で読ませる。 必ず「ありがとう」と言わねばならないホラーの映画のくだり。最もこの本の中で面白かったところだ。 「ありがとう」言わなくてもいい宮古島。素敵だ!宮古島に行ってみたくなった。 私の周りにもお礼を要求しないタイプの人がいる。淡々としているので何か物足りないような感じもするが、そういう人こそ確かに親切で誠実だ。 「人は常に愛するものについて語り損なう」というロラン・バルトの言葉。しみじみします。本当に語りたいことというのはなかなか言葉にできないものであり、口ごもったり沈黙したりすることの中に真実があったりするものだ。理路整然の良さも否定しないが、語れないものにもやはり真実がある。確かに確かに。言葉にすることはすばらしいけれど、分節されてしまうので限定的になり矮小化されてしまうという側面もあるし。 このもやもやのグレーゾーンもまた「ネガティブケイパビリティ」とも言えそう。 「ネガティヴケイパビリティ」って現代の重要なキーワードですね。 他にぜひ覚えておきたいなぁと思う事は、作者の中学生のときの友人の言葉「本気にしなきゃ面白くないだろう」中学生でこんな真理をつくとは!この子は今どんな人生を送っているのか。これから、使わせてもらおう(笑) 山田太一を尊敬すると言うだけあって、山田太一の作品の引用が多いが、その引用がなかなか鋭く山田太一を読み直したいと思った。

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2024/06/07

行き詰まった気持ちでも読める、そんな時に思い出したい言葉がたくさん。一冊を通してガッツリまとまってないのもいつでも拾い読みできる大らかさがあって良いと思う。

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2024/06/02

この本も良かった。 「絶望名言」などで名言を紹介している頭木さんではあるが、ご本人もかなりの「名言作家」ではないかと思う。 難病はいやだ、病気の自分は大嫌いだと書くが、本当に大変だった(というか完治はしていないので大変は現在進行形)ことが伝わるからこそ、読み手の心に響くわけで、収...

この本も良かった。 「絶望名言」などで名言を紹介している頭木さんではあるが、ご本人もかなりの「名言作家」ではないかと思う。 難病はいやだ、病気の自分は大嫌いだと書くが、本当に大変だった(というか完治はしていないので大変は現在進行形)ことが伝わるからこそ、読み手の心に響くわけで、収入抜群、ルックス最高、体は健康、メンタルはいつも安定というような人の言葉を(少なくとも私は)聞きたくない。 しかし吉武輝子さんの体験などを読んだ後では「でもやっぱり、あの経験はなかった方がよかった」と思うだろうと感じる。その後の人生は今と全く違うもので、これほど多くの人々から愛読される書き手にならなかったとしても、やっぱり病気はいやだ、その気持ちも真実だろうと思う。 悲惨な体験を経験しても、どこかにユーモアがあるのは、自分を外から冷静に見る目があるからだろう。 「その水にしっくりなじめる魚は、その水のことを考えなくなる。その水になじめない魚だけが、その水について考え続けるのだ。」(P139) なんていう名言もいいが、 「子どもから大人になることは、よりたくましくなることだと思っていた。よりなさけなくなるという別のコースもあるとは、幼い私には知るよしもなかった。」(p130) 「強火で一気にみたいな不幸にはみんな同情してくれる。しかしとろ火でじっくりみたいな不幸には、人は冷たい。」(p207) 「「病気をしていても、生きる価値はある」と言うと、なんだかすごく前向きな感じがするが、そうではない。生きる価値があるというのは、明るく楽しいということではない。大いに嘆くし、大いに泣く。おもちゃを買ってもらえない子どものように、床に寝転がって、「ねえ、どうしてこんな人生なの!どうして、もっといい人生じゃないの!」とさんざんだだをこねたい。  その姿を見て、「だったら死ねよ」と言う人もいるだろうが、そんなことを言う人より、長く生きたい。」(P215) というような、ちょっと笑えるのもいいな。

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