きらん風月 の商品レビュー
木挽町のあだ討ちが大変面白かったので期待して読んだが うんまあふつう 山中鹿之介を架空のヒーローに仕立て上げた鬼卵と老中を引退し国元でも煙たがられていた松平定信が邂逅したら という話 尼子十勇士の仕掛け人はこの人だったのね
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大飢饉続発による財政逼迫、田村意次政策による庶民の幕政不信。それらの政治課題に対して老中として真っ直ぐに取り組んだ一方で、圧政が過ぎるとの誹りを受けた松平定信が、政務を退いてのちに戯作者栗杖亭鬼卵と交わる。己の施した政への市井の評価は如何なるやと気になる定信に、自らの生い立ちを語...
大飢饉続発による財政逼迫、田村意次政策による庶民の幕政不信。それらの政治課題に対して老中として真っ直ぐに取り組んだ一方で、圧政が過ぎるとの誹りを受けた松平定信が、政務を退いてのちに戯作者栗杖亭鬼卵と交わる。己の施した政への市井の評価は如何なるやと気になる定信に、自らの生い立ちを語りつつ臆することなく飄々と応答する鬼卵。結局は語らう時点で是も非もないが「世の中の人と多葉粉のよしあしは煙となりて後にこそ知れ」とな。なるほど、改革をすれば利を得る者あれば損を被る者あり。総じてその評価は時を経て振り返るしかない。
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晩年の戯作者の栗丈亭鬼卵と引退した松平定信が邂逅したという話。 自分の生い立ちを定信に話して聞かせるという形で進む。 栗丈亭鬼卵という人を知らないので、どこまで史実に基づいているのかわからず読み進めたが、当時の人たちが絵や詩や浄瑠璃、歌舞伎などを必要としたことはよく理解できた。 ...
晩年の戯作者の栗丈亭鬼卵と引退した松平定信が邂逅したという話。 自分の生い立ちを定信に話して聞かせるという形で進む。 栗丈亭鬼卵という人を知らないので、どこまで史実に基づいているのかわからず読み進めたが、当時の人たちが絵や詩や浄瑠璃、歌舞伎などを必要としたことはよく理解できた。 政や飢饉のこといろいろ書きたいことがたくさんあるのはわかるが少し詰め込みすぎで結局こちらに伝えたいことがよくわからなかった。 エンタメ小説というより研究により栗丈亭鬼卵の人となりはこうだったよ、という発表のよう。
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読本書きにして浮世絵師でもあり歌詠みでもある栗杖亭鬼卵(りつじょうていきらん)。知らなかったが実在の人物であるらしい。文人墨客と政(まつりごと)の人との比較で松平定信が出てきたのかもしれないが、別にいらない気がした。
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ちらっと出てくる滝沢馬琴がイメージ通り。 松平定信は江戸ものには必ず出てくるけど、私の中では定まらない。
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ええか、世の中の大半の揉め事はな、振り上げた拳の下ろしどころを見失うことで起きる。せやけどお前の言う通り、黙っていればええというわけやない。言わなあかんこともある。 窮屈な世の中で物を言うには、身を守ることを忘れたらあかん。言って、殺されたんでは元も子もないからな。その為には、相...
ええか、世の中の大半の揉め事はな、振り上げた拳の下ろしどころを見失うことで起きる。せやけどお前の言う通り、黙っていればええというわけやない。言わなあかんこともある。 窮屈な世の中で物を言うには、身を守ることを忘れたらあかん。言って、殺されたんでは元も子もないからな。その為には、相手に拳を振り上げさせず、上げたとしてもすぐに下させるように間を空けとくことが大事や。その間が狂歌に欠かせぬ滑稽であり、風刺、諧謔や。面白おかしゅう書けばええ。生真面目にいうたら喧嘩になる。せやけど下らない言葉に乗せてしまえば、真に受けて怒った方が恥をかく。力を抜いて、笑いながら書け 筆は卵や。ここからは武者も美女も神仏も出る。それが人の心を躍らせ、救いもする。せやけどここからは、鬼も蛇も出る。それは思いがけない形で暴れ、人を食らいもする
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風流人と朴念仁のスリリングな会話、楽しい。「暇にあかせてようけ本を読んで、物を書いて、頭でっかちになっている世のはみ出し者」文人墨客。社会にゆとりなくなっている現代ても棲息出来てるかな。「耐え忍んだかて禄は増えない。とは言え、ただ怠けるのも、それはそれでしんどい。せやから楽しいこ...
風流人と朴念仁のスリリングな会話、楽しい。「暇にあかせてようけ本を読んで、物を書いて、頭でっかちになっている世のはみ出し者」文人墨客。社会にゆとりなくなっている現代ても棲息出来てるかな。「耐え忍んだかて禄は増えない。とは言え、ただ怠けるのも、それはそれでしんどい。せやから楽しいことをせい。それはいずれお前を助けてくれる」「世の中の大半の揉め事は振り上げた拳の下ろしどころを見失うことで起きる」「死ぬまでの暇つぶしみたいな生き方はしなさんな。そんなに人生は短うない。楽しく生きたらええねん」結局、埋火は役割り果たせたのか、モヤモヤ残った。
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「白河の清きに魚も棲みかねて もとの濁りの田沼恋しき」で有名な松平定信は隠居し、今はお忍びの旅の途中。家臣に案内されて、日坂宿で煙草屋営む浮世絵師であり戯作者でもある栗杖亭鬼卵(りつじょうていきらん)を身分を隠したまま訪れる。規律正しい社会を目指した定信の問いに、鬼卵は自由人とし...
「白河の清きに魚も棲みかねて もとの濁りの田沼恋しき」で有名な松平定信は隠居し、今はお忍びの旅の途中。家臣に案内されて、日坂宿で煙草屋営む浮世絵師であり戯作者でもある栗杖亭鬼卵(りつじょうていきらん)を身分を隠したまま訪れる。規律正しい社会を目指した定信の問いに、鬼卵は自由人として生きて来た来し方を語ります。 面白い設定です。堅いながら苦言に耳を傾けることができる定信。それを支える家臣。それに対し、木村蒹葭堂をはじめ丸山応挙、上田秋成、海保青陵といった多くの文人賢者に支えられ、自由人として生きて来た鬼卵は、定信の政策に苦言を呈しながら自分の半生を語ります。 人物も良いですね、みんな綺麗に個性が立っています。とくに奥さんの夜燕 弟子の須美と言った女性陣は素晴らしい。ただ登場人物が多すぎたかな。もう少し絞って、その分女性陣を多く描いて欲しかった。 それにしても見事な設定です。読みながらずっと浅田次郎さんを思い起こしていました。実は著者の前作『木挽町のあだ討ち』も『壬生義士伝』っぽい感じを受けていました。もの真似ではなく「同じ系統」という意味でですが。「稀代のストーリーテラー」ともいわれる浅田さん風のストーリーですから、面白くないわけ有りません。 まあ、悪達者という悪口もありますけどね。
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江戸中期の文化人の栗杖亭鬼卵を描く歴史小説。 題材が大阪の江戸中期の文化人ということで、江戸では蔦屋重三郎が活躍していたころで有名人が多いが、大阪の文化人はよく知らなかったので勉強になった。 登場人物の有名どころでは、松平定信、円山応挙、次いで雨月物語の上田秋成と江川英毅(英龍の父)くらくいで、後の文化人(栗柯亭木端、如棗亭栗洞、木村蒹葭堂、志村天目、夜燕、五束斎木朶など)は知らなかった。 鬼卵を知らなかった自分としてはよくわからなかったが、物語的には鬼卵と定信が直接出会ってやり取りするところが史実の隙間を縫っていて面白いのだろう。
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寛政の改革の松平定信と栗杖亭鬼卵。 この時代の生きる苦しさを描きつつも読後感は良かったです。 「世は意のままにならぬもの。…さすればこそ、時に風月を愛で、詩文や物語を読んで思いを馳せて楽しみ、日々の憂さを晴らすのです。そして明日を生きる力にする。」 ほんとにその通りです。
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