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十の輪をくぐる の商品レビュー

4.1

20件のお客様レビュー

  1. 5つ

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  2. 4つ

    10

  3. 3つ

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2025/01/27

読書備忘録889号。 ★★★★★。 いやぁ~良い物語だったです。 作品紹介にもある通り、1964年と2020年(実際には2021年になりましたけど)の2つの東京オリンピックを通して親子三代の姿を描く感動小説です! 物語の舞台は佐藤家。 スミダスポーツで働く佐藤康介は58歳。 ...

読書備忘録889号。 ★★★★★。 いやぁ~良い物語だったです。 作品紹介にもある通り、1964年と2020年(実際には2021年になりましたけど)の2つの東京オリンピックを通して親子三代の姿を描く感動小説です! 物語の舞台は佐藤家。 スミダスポーツで働く佐藤康介は58歳。 妻の由佳子、高2の娘萌子、そして康介の母、万津子と暮らす。 80歳の万津子はくも膜下出血の後遺症で脳血管性認知症を患い、症状の起伏が激しい。 康介は会社ではお荷物社員。いわゆる老害社員。 昔はああだった!とか、俺は企画部門で活躍した!とか。 今は顧客データの管理をするアドミニストレーター部門に身を置き、エクセルも使えない、使おうとしないダメ社員。スキルを身に着けようとする気もないから尚悪い。 若手社員からも年下の課長からも疎ましがられている。 家庭でも、妻に暴言を吐き、認知症を患っている母親にDV紛いの扱いをする。 という感じなので、読者はイライラしながら読み始めることに。 時は2019年10月。 万津子がテレビのオリンピック特集を見て「私は・・・・・・東洋の魔女」と呟いたことから、物語が動き出す・・・。 えっ?母親が前の東京オリンピックで活躍した女子バレーボールで金メダルを取った東洋の魔女の一員だった?そんなばかな! ただ、良く考えてみれば、母が自分たちを連れて九州から東京へ出てくる以前の過去を何も知らないことに気づく。 物語の構成は2019年10月からのパートと、1958年9月からのパートが交互に進む。 いやいやラストは目頭が潤みましたよ。目頭がっ! 久しぶりの目汁小説でした! それぞれのパートのディテールは一切割愛です!ディテールがこの作品の旨味成分なので! ①2019~2020年パート とにかく康介の描写がとことんイラつく! ダメ社員、ダメ息子、ダメ夫、ダメ父として描かれる。 すべて自己中、気まぐれ、すぐにイラつく、客観的視点の欠落。 これで58歳か?ホンマに!という感じです。 由佳子が気の毒で気の毒で!離婚しても良いよ、と言いたくなる。 そんな佐藤家の光!娘の萌子は超高校級のバレーボール選手で、全日本メンバーに選ばれるかもしれない逸材。 自分もバレーボールをやっていた康介は嫉妬している。おいっ!って感じ。 萌子の進路問題、春高バレー、などなど読みどころです! ②1958~1964年パート 九州出身の宮崎万津子は名古屋の一色紡績の工場に集団就職。 仕事とバレーボールの生活で貧しくも楽しい生活を送っていた。 そんな時に九州地元から縁談の話が舞い込む。 相手は高学歴で、三井鉱山で働くイケメン。 一も二もなく縁談を引き受けた万津子。 そして康介が生まれ、地獄が始まった・・・。 そして萌子。出来すぎちゃん! 父の抱えている問題に気づき寄り添う。そして問題は直せるんだよ、と。 だって、自分と似てる最愛のお父さんだもん! という感じなんですよ。 物語後半は、前半のイライラが全て払拭された台風一過のような展開になるのも良いです。繰り返しますが出来過ぎ!という感もありますが良いんですよ。これで! そして万津子の康介に対する無償の愛。 どんなことがあっても康介の味方だよ、と。 覚悟の東京へ!涙が出ます。 そしてエンディング。母の深い愛と、康介が自分が抱えてきたモノ(問題)の深さに気づいた時、病室で真の絆が生まれる。じゅる(T_T)。 最後に。 十の輪とは1964年の東京オリンピックと2021年の東京オリンピックの輪っかの合計。 誰でも気づきますよね。2020年1月春高は終わった。萌子はどうなる?逸材だけどまだ高校生やで。 そうです!2020年開催予定の東京オリンピックは2021年に延期! 間違いないね!十の輪をくぐったよ!家族全員で! というジジイの勝手な想像でした! 辻堂さんサイコ~でした。

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2025/01/17

“輪”は五輪のこと。 十の輪=1964年と2020年(予定)東京オリンピックを指す。 現在Partの序盤、泰介の横柄さと家庭内モラハラがひどく、妻:由佳子に離婚を考えた方が良い、と助言したいほどだった。 が、読み進めていく内に、泰介アナタもしかしたら⁈ 過去Partは母:万...

“輪”は五輪のこと。 十の輪=1964年と2020年(予定)東京オリンピックを指す。 現在Partの序盤、泰介の横柄さと家庭内モラハラがひどく、妻:由佳子に離婚を考えた方が良い、と助言したいほどだった。 が、読み進めていく内に、泰介アナタもしかしたら⁈ 過去Partは母:万津子の半生でこれは辛くてゞ…。 『東洋の魔女』と世界に名を轟かせた1964年女子バレー。オリンピックが人々に勇気と希望を与えたことを実証した物語は、胸に迫った!  万津子→泰介→萌子への愛♡ 泰介、できた妻と娘に恵まれた幸せを噛み締めて!

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2024/11/22

2019年の泰介視点と1959年の万津子視点が交互に書かれている。 泰介視点では、家族に対する態度や職場での態度に腹立つし、万津子視点では、夫や実家家族からの扱いに読んでいて辛かった。 読み終えたら、万津子の泰介に対する母親としての愛情に感動した。

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2024/11/10

2つの東京五輪を生きる親子の話。泰介の現状と泰介の母の過去が交錯するんやけど、各時代の価値観の違いにゾッとする。多様な世の中であれ。泰介も大変やったとは思うけど、母の大変さと強かさと強さ!泰介に対する認識もどんどん変わる、この数十年価値観激動やな。

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2024/10/08

泰介は、認知症を患う八十歳の母・万津子を自宅で介護しながら、妻と、バレーボール部でエースとして活躍する高校二年生の娘とともに暮らしている。 物語は現在2019年から2020年 そして母万津子が若かった頃の1958年からに分かれて書かれている。 初めはひどい男だと思った。自分の親...

泰介は、認知症を患う八十歳の母・万津子を自宅で介護しながら、妻と、バレーボール部でエースとして活躍する高校二年生の娘とともに暮らしている。 物語は現在2019年から2020年 そして母万津子が若かった頃の1958年からに分かれて書かれている。 初めはひどい男だと思った。自分の親を看てもらっているのに妻への思いやりがない。認知症の母に対しては声を荒げて詰る。 そんな父親を救ったのは娘だった。

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2024/08/08

 昭和、平成、令和。 それぞれの時代の″正解″を探すお話なのではないかと思った。  時代時代の″当たり前″に合わせることが難しい人は、少なくないと思う。 その人たちは苦しみだけでない、救いに導いてくれる存在がいるということを、この物語は示してくれた。 優しい人ばかりではないけれど...

 昭和、平成、令和。 それぞれの時代の″正解″を探すお話なのではないかと思った。  時代時代の″当たり前″に合わせることが難しい人は、少なくないと思う。 その人たちは苦しみだけでない、救いに導いてくれる存在がいるということを、この物語は示してくれた。 優しい人ばかりではないけれど、必ずいると思いたい。 ーーーーー パリオリンピック開催中に、東京オリンピックのお話を読み、バレー選手に感情移入してしまった。

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2024/07/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 「私は……東洋の魔女」なんて帯だったから、てっきり元日本代表の話なのかと思っていた。まさか自分を奮い立たせるためのお守りのような言葉だったとは……。  全体としては読んでいてイライラの止まらない泰介パートと、爽やかで軽やかでキラキラしている万津子パートが交互に表れる構成で、最初は早く万津子パートにならないかなと思って読んでいたが、次第に万津子パートが読み進めるには辛すぎる展開になると、自分探し中の泰介パートに早く戻らないかなと思った。この逆転現象は単純にすごいと思う。辛くてしんどくて涙が止まらないけど、ページを捲る手が止まらない、そんな中毒性のある本だった。  奇しくも丁度パリ五輪開催中に読み始めて読み終わったのも、何かしらの相乗効果になったかもしれない。今このタイミングで読めて良かった。

Posted byブクログ

2024/07/07

戦後10年目の世界に降り立ったような臨場感を感じていたら、作者さんが20代だという驚き。 最後の書評にて「作者は自分の劇団(作品)の中に子役から老人まで、優秀な役者が豊富に揃っている」が全くその通りで、とにかく器用で文章が上手。 作者・辻堂ゆめさんの名前を覚えておかないと、と思い...

戦後10年目の世界に降り立ったような臨場感を感じていたら、作者さんが20代だという驚き。 最後の書評にて「作者は自分の劇団(作品)の中に子役から老人まで、優秀な役者が豊富に揃っている」が全くその通りで、とにかく器用で文章が上手。 作者・辻堂ゆめさんの名前を覚えておかないと、と思いながら一気に読み切った。 ラストはマツコの走馬灯の中に入り込んだような、暖かで力強い読後感が心地よかった。萌子がとってもいいこ。萌子…!

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2024/06/23

1964年と2020年の東京オリンピックの時代を生きる、親子の姿を三代に渡って描かれる物語。 現代パートでは息子・泰介、過去パートでは母・万津子目線で描かれています。 息子・泰介のパートは正直、最初はイライラしながら読みました。会社や家庭での言動や行動があまりにひどく、なんて困っ...

1964年と2020年の東京オリンピックの時代を生きる、親子の姿を三代に渡って描かれる物語。 現代パートでは息子・泰介、過去パートでは母・万津子目線で描かれています。 息子・泰介のパートは正直、最初はイライラしながら読みました。会社や家庭での言動や行動があまりにひどく、なんて困ったおじさん…と思っていましたが、後半にある事実が明らかとなると泰介への思いに変化が訪れます。 母・万津子のパートは、結婚してからが波瀾万丈で、読み進めるのも辛く感じました。それでも、東京オリンピックで東洋の魔女を見たことで、生きる希望を見つけた万津子の母親としての思いがひしひしと伝わり、母の強さを感じました。 それぞれの思いが交錯し、2020年の東京オリンピックに向けて、泰介の娘・萌子に思いが託されるラストはとても良かったです。

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2024/06/08

辻堂さん2冊目。1冊目の「山ぎは少し明かりて」でファンになって、この本でさらにファンになりました。読み終えて深い余韻に浸ります。  紡績工場で働く少女たちの会話のシーンはいきいきとしていてとても臨場感があります。それは「山ぎは…」の中であった少年たちの川遊びのシーンでも感じました...

辻堂さん2冊目。1冊目の「山ぎは少し明かりて」でファンになって、この本でさらにファンになりました。読み終えて深い余韻に浸ります。  紡績工場で働く少女たちの会話のシーンはいきいきとしていてとても臨場感があります。それは「山ぎは…」の中であった少年たちの川遊びのシーンでも感じました。本当に画面を見ているような気がします。これは文筆力があればこそなせる業だと思います。  東京オリンピックの東洋の魔女たちの活躍のシーンも私はリアルタイムでテレビで観戦しましたが、本を読んでいて目頭が熱くなりました。そして最後の娘の萌の活躍も。  まだ若い方なのに、当時のシーンや出来事をリアルに再現できる文筆力に再度感服!素晴らしい本でした。

Posted byブクログ