言葉の風景、哲学のレンズ の商品レビュー
同氏による著書『言葉の展望台』が面白かったので本書を手に取った。どちらも哲学エッセイで面白いのだが、本書ではややカミングアウト後のトランスジェンダーの生き辛さに触れる私的な内容が多かった気がする。 哲学は視点を増やすと同氏はいう。ものの見方を多様化するには、いろんな角度から考え...
同氏による著書『言葉の展望台』が面白かったので本書を手に取った。どちらも哲学エッセイで面白いのだが、本書ではややカミングアウト後のトランスジェンダーの生き辛さに触れる私的な内容が多かった気がする。 哲学は視点を増やすと同氏はいう。ものの見方を多様化するには、いろんな角度から考える作業が役に立つのだろう。そうした「役に立つ」という利点に目を向ければ確かにそのような効用がある。私は、カントの永遠平和の思索が国連の理念に、マルクスの思想が社会主義国家を、ルソーの一般意思が共和制を、ジョンロックが議会制民主主義をという具合に、哲学が制度設計に繋がっている事例を考えると、個人的な利得の話に限定されない哲学の偉大さを感じることができる。 しかし、そんな壮大な視座ではなくとも、トランスジェンダーとして「ものの見方」に嵌まらない自分自身の生き辛さの方がよほど重要だという感覚も良くわかる。我々は世界平和よりも、先ずは自らが飢えず、暴力を避け、平和に生きられることを望む。 ― 「からかいの政治学」では「からかい」が「遊び」の文脈にあること、それゆえ女性やその他のマイノリティへの攻撃に「からかい」という装いを与えることで、それに対する抗議を「おとなげないもの」や「理不尽なもの」として無効化する働きをすることが論じられていく。さらに女性がもともと性的な「からかい」の対象とされてきたがゆえに、女性解放運動への「からかい」に対する真面目な主張や抗議は、特有の仕方で意味を捻じ曲げられるという。 一文を引くが、「からかい」とか「茶化し」というのは私も日ごろから気になっていた内容だ。コミュニケーションのテクニックとして認められる部分もあると思うが、対象を自らの編集範囲の対象として捉えることで、自分自身を落ち着かせるために相手を利用する作法だという気がする。それは「あだ名」にも似ている。本来、私はあなたの世界の住民ではない。しかし、これらのテクニックにより、私はあなたの世界に無理やり引きずり込まれるのだ。そしてその世界が嫌だと拒む事が「おとなげない」とされる。これは暗黙の了解のような礼儀作法やマナーの延長にあり、それは、上下関係等の比較が前提としてあるものだ。 トランスジェンダーが否応なくこの上下関係に組み込まれるために、生き辛さを感じるのだろう。哲学のレンズは、異なる世界を見せる。時々、そのレンズを付け替えてみるべきなのかもしれない。
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信州大学附属図書館の所蔵はこちら→ https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BD04630061
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言語哲学の本だと思っていたので、どの話にもジェンダーがベースに出てきたことに単純に驚いた。本の紹介文や「はじめに」に、記載しておいていただけるとありがたい。 哲学を実生活に落とし込むような試みが興味深い。失礼な言い方にはなるが、ごちゃついているような印象を受けるのも生活感があった...
言語哲学の本だと思っていたので、どの話にもジェンダーがベースに出てきたことに単純に驚いた。本の紹介文や「はじめに」に、記載しておいていただけるとありがたい。 哲学を実生活に落とし込むような試みが興味深い。失礼な言い方にはなるが、ごちゃついているような印象を受けるのも生活感があった。 色々と思考している著者と比べるとカケラも考えていない自分がヒトとして同時に生きていること自体、面白いなあと思うような内容だった。
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今読みたい本だった。 トランスジェンダーの方が更年期障害の治療のため婦人科で医療行為を受けようとしただけで、医師にセクハラをしに行こうとしてるんだ、露出狂なんだと決めつけられる国、 政治家が、同姓カップルなんて見たくもないと発言する国、そんな国に住んでいるんだなあと思った。 心や...
今読みたい本だった。 トランスジェンダーの方が更年期障害の治療のため婦人科で医療行為を受けようとしただけで、医師にセクハラをしに行こうとしてるんだ、露出狂なんだと決めつけられる国、 政治家が、同姓カップルなんて見たくもないと発言する国、そんな国に住んでいるんだなあと思った。 心や体に違和感を抱えている人が、心に合わせて生きようとしただけなのに医療機関に断られるのは、人権侵害だと思う。理解できない人たちを無理に理解させるのは難しいと思うが、理解できる人だけでも社会を変える努力ができたら良いなと思った。
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「会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション」の作者のエッセイと知り、手に取りました。 日々のコミュニケーションのなかで引っかかっているけど上手く言語化できないことについて、コミュニケーションについて考えている哲学者だからこその視点で言語化されていると感じました。 印象に残ったのはあとがきで、筆者自身のことを「そんなに整理のついていないごちゃごちゃした人間」と述べていたことでした。 整理された人間なんていないのかも、と考えさせられました。 引用されていた「布団の中から蜂起せよ」にも興味が湧きました。
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事前には、言語哲学をベースにしたエッセイみたいな本かなと思ってたので、読み始めてちょっとびっくりしました。トランスジェンダーである著者からみると、世界はこんな違和感に満ちていますよ、ということを語っていたからです。多くの哲学的エッセイって、著者は無色透明な研究者、みたいなことが多...
事前には、言語哲学をベースにしたエッセイみたいな本かなと思ってたので、読み始めてちょっとびっくりしました。トランスジェンダーである著者からみると、世界はこんな違和感に満ちていますよ、ということを語っていたからです。多くの哲学的エッセイって、著者は無色透明な研究者、みたいなことが多いので、著者自身の色がかなり濃く彩られているのが驚きの原因でした。 ジェンダーに関連する話題が多いですが、あまり感情的な話に偏ることなく、冷静に議論しているので、ジェンダー論の論調に苦手意識をもつ私でもすっと読めたし、なるほどと思うことが多かったです。「哲学を学ぶと、物事を理解するための視点のレパートリーが増える」(1)。この本がすっと読めたのは、そういう視点のレパートリーをうまく使ってくれているからだと思いました。【2024年6月27日読了】
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学問としての哲学のものの見方や考え方を、分かりやすい例えで噛み砕くことで問題提起してくれているのだけど、やっぱりちょっと難しくて…途中何度か音読しながら理解しようと頑張らないと読め進められなかった ちょうどオリンピックで女子ボクシング選手の問題もあり、当たり前のことながら、一概に語れることではなく各々のケースによって状況は異なるけれど、まずは正しく知ること、考えること、思いやること、どうしても生じてしまいがちなコミュニケーションのズレを埋められるようになりたいと思った
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いつも利用している図書館の新着本リストを見ていて、タイトルに惹かれて手に取ってみました。哲学者三木那由他さんによる “哲学的な視座” からのエッセイ集です。 トランスジェンダーである三木さんならではの起点からの興味深い指摘や思索の紹介が数々ありましたが、“哲学者”なら、さもあ...
いつも利用している図書館の新着本リストを見ていて、タイトルに惹かれて手に取ってみました。哲学者三木那由他さんによる “哲学的な視座” からのエッセイ集です。 トランスジェンダーである三木さんならではの起点からの興味深い指摘や思索の紹介が数々ありましたが、“哲学者”なら、さもありなん、と思わせるネタも印象に残りました。
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哲学は結構好きだけど、時折痛いところを突かれることがある。 日常的に言葉を扱っているくせに深く考えずに発言しているんだよな。 『からかいの輪の中で』を読むと、嫌な気持ちと後ろめたい気持ちが同時に沸き上がる。 何故あの子はあんな顔をしたのか。 どの言葉に引っ掛かりを覚えたのか。 答...
哲学は結構好きだけど、時折痛いところを突かれることがある。 日常的に言葉を扱っているくせに深く考えずに発言しているんだよな。 『からかいの輪の中で』を読むと、嫌な気持ちと後ろめたい気持ちが同時に沸き上がる。 何故あの子はあんな顔をしたのか。 どの言葉に引っ掛かりを覚えたのか。 答えを知る術は無いのに今でもモヤモヤすることは意外と多い。 毎度の事ながら、こういうモノの見方があるんだなあと気づかせてくれる三木さんの著書は好き。
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※エッセイなので評価をつけることはしない そんな風に考えるんだ〜とか、考えすぎやん!とか、自分は考えなさすぎなのかなとか色々思った。 言葉一つに無数の風景がある。 読んでいて、うんうんとうなづく部分と、うーんそれはどうなんだろうと首を傾げる部分があり、 読みながら自然と自分...
※エッセイなので評価をつけることはしない そんな風に考えるんだ〜とか、考えすぎやん!とか、自分は考えなさすぎなのかなとか色々思った。 言葉一つに無数の風景がある。 読んでいて、うんうんとうなづく部分と、うーんそれはどうなんだろうと首を傾げる部分があり、 読みながら自然と自分の考えと向き合っていた 批判ではなく自分自身の考え、思い込みを客観視できた気がする
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