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月と日の后(下) の商品レビュー

3.6

18件のお客様レビュー

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2025/02/09

 藤原彰子の一生を、時系列に沿って丁寧に描いた物語。淡々と進む点は上巻と同様だが、下巻では彰子が明確な意思と目的を持って動くようになり、そこに大きな見応えがあった。特に、道長が存命中は実質的に「彰子 vs 道長」の構図になっている点が興味深い。藤原家のために強引に政治を進める道長...

 藤原彰子の一生を、時系列に沿って丁寧に描いた物語。淡々と進む点は上巻と同様だが、下巻では彰子が明確な意思と目的を持って動くようになり、そこに大きな見応えがあった。特に、道長が存命中は実質的に「彰子 vs 道長」の構図になっている点が興味深い。藤原家のために強引に政治を進める道長に対し、彰子は父が兼家や詮子のようにならぬよう釘を刺し、諸卿を懐柔していく。その駆け引きが巧みに描かれ、大きな事件が起こるわけではないものの、気づけば彰子が大きな存在へと成長している。その描写技巧には驚かされた。  また、道長の死後、頼通の治世については私自身知らない点が多く、史実として新鮮に感じながら読み進めることができた。特に、彰子が白河天皇の治世まで生きていたことには驚いた。  物語を通して、この時代に長生きすることの残酷さが浮き彫りになる。夫である一条天皇、実妹の姸子・威子・嬉子、敦康親王、息子の後一条・後朱雀、孫の後冷泉・後三条——愛する者たちを次々と見送る人生の重みが、彰子の生涯に刻まれていた。  それにしても、これほど多くの人が若くして世を去る中で、大病もせず90近くまで生きた倫子(明子もそうだが)と彰子の生命力には驚かされる。改めて、道長の栄華を支えたのは、ニ男四女を産み育てた倫子の存在だったと再認識した。娘たちは代々の天皇に嫁ぎ、子を産み、息子たちは皆長寿を全うしながら政治を動かしていった。  一方で、残念に感じたのは紫式部との関係があまり描かれなかった点だ。死の直前、彰子が思い出すのは一条天皇と紫式部の二人なのに、紫式部との交流の印象が薄く感じられた。晩年はいわゆるナレ死であっさりと描かれており、もう少し回想などを交えて、互いの人生を振り返る場面が欲しかった。

Posted byブクログ

2025/01/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

平安時代とは道長頼道の時代だと思っていたが、彰子の存在の大きさをとても感じた。 紫式部が仕えた方としか習っていないのは、とてももったいないことだった。 それにしても、この時代の放火、悪霊の考え方、そして何よりも身分、家を守るための婚姻を現代になぞらえるとぞっとする。

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2024/12/27

内裏、焼亡しすぎ… それだけ政が荒れてたということか。内裏に限らずいろいろなものが燃えてなくなったんだろうな。しっかりしていれば火はおこらない。いまの世なら炎上してるという表現になるのかな。実際の火がおこってないからことの重大さに気づきにくい。火は怖い。すべて灰になる。 長くて濃...

内裏、焼亡しすぎ… それだけ政が荒れてたということか。内裏に限らずいろいろなものが燃えてなくなったんだろうな。しっかりしていれば火はおこらない。いまの世なら炎上してるという表現になるのかな。実際の火がおこってないからことの重大さに気づきにくい。火は怖い。すべて灰になる。 長くて濃い一生だった。もう誰が誰だかわからなくなったが、ただ彰子が一条帝を思い続けて最期は穏やかそうで、それだけでよかった。

Posted byブクログ

2024/11/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

彰子の長子出産から亡くなるまで。下巻は丁寧に説明された年表を読む感じで、少々駆け足で物語が進むため他の方のレビューを見ると賛否両論ある様だが私は充分楽しめた。それにしても当時は刃傷沙汰が無い代わりに建物がよく燃える

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2024/10/20

 数奇な運命というより、彰子の実務&心労のあまりの多さに「おつかれさまです……!」という感想が先立ってしまいました。骨肉の争いに肉親の度重なる死も、人事や行事の差配も、考えるだけで気が滅入ってしまいますね……; というか行事が多すぎる……。  物語のほとんどが実際に起きた出来事の...

 数奇な運命というより、彰子の実務&心労のあまりの多さに「おつかれさまです……!」という感想が先立ってしまいました。骨肉の争いに肉親の度重なる死も、人事や行事の差配も、考えるだけで気が滅入ってしまいますね……; というか行事が多すぎる……。  物語のほとんどが実際に起きた出来事の列挙になっているので、読むのはなかなかくたびれましたが、これだけの沿革を網羅・解釈・作品に落とし込めるだけ文献や資料を読み込んだのだと思うと、筆者にもまた「おつかれさまです……!」と声を掛けたくなりました。

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2024/08/04

下巻の彰子様は宮廷政治の中枢に生きる 時代が巡り、自分の子を送り、火事や疫病が蔓延る宮廷や市中に次々と変わる後継者 そこへ入内させる姫君達 あまりの登場人物により挫折しそうだった

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2024/07/31

藤原道長「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」 一条天皇「怨みをなくし和をもって尊び人々の苦境が後世の災いを生まぬようにする」 怨み怨まれる世でどう安らかに死んでいけるか、どう生き抜くか。 置かれた状況で何を思うか。 大河ドラマ「光る君へ」を見始めてから読...

藤原道長「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」 一条天皇「怨みをなくし和をもって尊び人々の苦境が後世の災いを生まぬようにする」 怨み怨まれる世でどう安らかに死んでいけるか、どう生き抜くか。 置かれた状況で何を思うか。 大河ドラマ「光る君へ」を見始めてから読んだ作品。同時進行で読むから面白く一気読みできたと思う。清少納言側の話しも読みたい。

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2024/05/26

上巻より読むのに時間がかかってしまった。 後半は、小説というより、淡々と事実が並べられ、彰子の伝記という雰囲気だった。 この巻で最も盛り上がる(と私が思った)のは、やはり一条天皇崩御後、敦康親王立太子をめぐって、彰子が父道長に反旗を翻すくだりだろう。 母から皇子を取り上げ、女性...

上巻より読むのに時間がかかってしまった。 後半は、小説というより、淡々と事実が並べられ、彰子の伝記という雰囲気だった。 この巻で最も盛り上がる(と私が思った)のは、やはり一条天皇崩御後、敦康親王立太子をめぐって、彰子が父道長に反旗を翻すくだりだろう。 母から皇子を取り上げ、女性を政から遠ざけようとする摂関政治のやり口に、仕える女房達を従えながら、否と主張するのだ。 小説の後半は、これまで中心的には論じられてこなかった、彰子の「母后」としての力を描いていく。 一条天皇の漢学に由来する政の理想を、彰子が引き継いでいったともあるのだが・・・。 彼女が力をふるったのは人事であり、後宮政策だ。 官人として誰を登用するかということと併せて、誰の娘を宮中に入内させるかを采配する。 儀式を行い、貴族たちに費用を負担させたり、あるいは逆に禄という形で富を分配する。 こういったことを、晩年までやっていく。 恐るべき力である。 ただ、それは、結局のところ、道長、頼通、教道へと続く藤原摂関家の利益のためだ。 摂関家内の内紛を避け勢力を保つこと、他家の摂関家への恨みを解消させること。 これが要は、この時代の「政治」なのだなあ、とつくづく感じさせられた。

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2024/05/26

彰子の死までで物語を閉じる.後世に与えた影響も少なからずあるが,生前の彰子を十全に描くことにより,その影響の想像を読者に委ね,あくまで彰子自身に焦点を当てる構成は,本書の目的である平安宮中に投げ入れられた彰子という平安女性の代表の成長物語と相まって,綺麗にまとまっている.私は男な...

彰子の死までで物語を閉じる.後世に与えた影響も少なからずあるが,生前の彰子を十全に描くことにより,その影響の想像を読者に委ね,あくまで彰子自身に焦点を当てる構成は,本書の目的である平安宮中に投げ入れられた彰子という平安女性の代表の成長物語と相まって,綺麗にまとまっている.私は男なので第三者的な視点で物語を客観的に追うが,もし女性だとしたら,他人事とは思えないだろう….

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2024/05/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

藤原道長の娘、彰子が主人公の物語下巻。 摂関政治の頂点とも言われる道長、頼通の時代のことが語られるのだけど、ちょっと思っていたのとは違った。 一条天皇が存命の頃から中宮定子の忘れ形見の息子が亡くなる当たりまでは彰子の細やかな感情が伝わって読んでて面白かったのだけど、それから後は、ほとんどが身内の昇進や天皇への娘の入内、病に罹った折の加持祈祷、内裏の火災などが人を変え、場所を変え、何度も語られるので、なんというか飽きてしまった^^  彰子を主人公にしたため仕方ない面はあるのだけど、政治的な面、例えば前九年の役に対する朝廷の動きとかそういうのはほぼ語られない。ちょっともったいないと思ってしまった。 物語の構成というのはなかなか難しいものだなあとあらためて思った。 ちなみに病気になるとなにかと加持祈祷したり寄進したりして病気を治そうとする平安時代は、そりゃ、長生きできないよなあと今更ながら思った。

Posted byブクログ