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悪なき殺人 の商品レビュー

3.6

13件のお客様レビュー

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2024/07/29

吹雪の夜、フランス山間部の町で、一人の女性が失踪する。大規模な捜索がなされたが、その行方はなかなか知れない。さして大きくもない町で、噂は駆け巡る。皆、彼女は死んでいると思っている。 ・・・そう、(タイトルが示唆するように)彼女は死んでいる。ではその遺体はいったいどこにあるのだろ...

吹雪の夜、フランス山間部の町で、一人の女性が失踪する。大規模な捜索がなされたが、その行方はなかなか知れない。さして大きくもない町で、噂は駆け巡る。皆、彼女は死んでいると思っている。 ・・・そう、(タイトルが示唆するように)彼女は死んでいる。ではその遺体はいったいどこにあるのだろう? 誰が殺し、どこへ運んだのか。 1つの殺人を巡って、複数の人間の思惑が交錯する。 章ごとに語り手が入れ替わる。 ソーシャルワーカーとして働くアリス。 その愛人の孤独な羊飼い、ジョゼフ。 AV女優であったこともある若いデザイナーの卵、マリベ。 アフリカでネット詐欺に勤しむアルマン。 そしてアリスの夫で農場を経営するミシェル。 彼らのそれぞれの語りから、事件の全貌が見えてくる。 「悪なき」といってよいかどうかはわからないが、実は事件は誤解や不運が重なって起きている。犯人は虚像を憎んでいたのであり、被害者は犯人が思うような存在ではなかった。 中心となる殺人事件だけでなく、彼らを取り巻く事情はどこかちぐはぐだ。 出てくる人々は皆、それぞれの意味でそれぞれに孤独である。 それぞれ愛を追い求めているけれど、報われない。 てんでんばらばらの方向を向く矢印のように、それぞれの思いは交わりもせず、かみ合うこともない。 フランスの片田舎の閉鎖的な話で終わりそうなところで、いきなり舞台がアフリカ(コートジボワールであるらしい)に飛ぶのがなかなかアクロバティックである。 アフリカの風俗やロマンス詐欺の現場などの描写はなかなか興味深いが、しかし、アフリカとフランスをつなぐ展開は偶然が過ぎて作為が目立つ。 この虚構を許すかどうかが、本作を楽しめるかの1つの鍵になるかもしれない。 映画化もされていて、同じ出来事を複数の人物の視点で語りなおすことから、黒澤明の「羅生門」を思わせる手法だとの評もあるそうである。 原題は”Seules Les Bêtes”、直訳すると「動物たちだけが」となる。 著者によれば、「孤独に苦しんでいないのは動物たちだけであり、遺体がどこにあるのか知っているのも動物たちだけである」の意だそうである。 実際のところ、読者は、動物たちよりもなお事件の背景については多くを知るのだが、孤独については読者次第だろうか。 何だかそんなアンニュイな気分にさせる作品ではある。

Posted byブクログ

2024/06/14

ようやく読み終わった。 あまり自分には合わない内容だった。 本を読むと言うことは、自分の内的状況にも左右される。 そういった読書に向かない環境にいたために、読み進めるスピードが全く上がらなかったということもあるが、肌にあわなかった。 心理サスペンスと言うには緊張感がなく、とく...

ようやく読み終わった。 あまり自分には合わない内容だった。 本を読むと言うことは、自分の内的状況にも左右される。 そういった読書に向かない環境にいたために、読み進めるスピードが全く上がらなかったということもあるが、肌にあわなかった。 心理サスペンスと言うには緊張感がなく、とくにひねったミステリ要素もない。 途中で話の筋が予想できてしまうし、結末は意外だったがしっくりこない。 読者に全く集中できなかった。

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2024/05/04

2024/5/4読了。本作の原題は『動物たちだけが』だそうな。映画化もされている。確かに思わぬ結末が待ちうる心理サスペンス。原題の意味するところもなんとなく想像出来る。

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2024/04/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

コラン・ニエルの本邦初訳。シリーズ作品があるようだが未訳。本作は映画化されているらしい。 可能なら、裏表紙のあらすじ、帯、登場人物表を見ずに読み始めると楽しめる作品。 フランスの片田舎で女性が行方不明となる。農業従事者を相手にメンタルケアを行うソーシャルワーカーのアリスは、自身の不倫と女性の行方不明を関連付けるが。。。 複数視点により、ある失踪事件が描かれる。いかにもフランスらしい作品で、癖もなくサクッと読めるため、フランスミステリの入門にはうってつけ。

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2024/03/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

・あらすじ フランスの田舎町である資産家の妻であるエブリーヌが吹雪のなか失踪する事件が起こる。 農協のソーシャルワーカーとして働くアリス。 牧羊を営むアリスの不倫相手のジョセフ。 エブリーヌの恋人マリべ。 エブリーヌの夫の現地妻の恋人のアルマン。 アリスの夫ミシェル。 5人の視点から描かれる各章でそれぞれのつながりや伏線が回収され、エブリーヌ失踪の真相が判明していく。 ・感想 登場人物全員に対して全く好感持てなかったけど、みんな満たされない孤独な生活を送ってる寂しい人たちの物語だった…のかな。 「足るをしる」って言葉を教えてあげたい。 「それぞれの報われぬ愛」って書かれてるけど全員めんどくさい思考してるし、他人にただ期待して、身勝手な振る舞いをしている印象だった。 「悪なき殺人」ってタイトルだけど、いやめっちゃ悪意ありまくりだが…? まぁ愛の前には殺人だって悪にはなりきれないのかもしれない。

Posted byブクログ

2024/03/20

フランスのミステリーなんだということに、読んでいる途中で気づく。 でも、確かに人間描写にフランスっぽいドライさがあるように思う。 章が進むにつれて、パズルのピースが少しずつ埋まっていく。思わぬ大きな展開を見せつつ、やるせない、というか、大丈夫⁈という結末。 フランスの農家の男たち...

フランスのミステリーなんだということに、読んでいる途中で気づく。 でも、確かに人間描写にフランスっぽいドライさがあるように思う。 章が進むにつれて、パズルのピースが少しずつ埋まっていく。思わぬ大きな展開を見せつつ、やるせない、というか、大丈夫⁈という結末。 フランスの農家の男たちの悲しいステレオタイプが脳内に形作られてしまったので、農家の明るい話が読みたくなってしまった。

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2024/03/05

 何とも奇妙で不思議な小説である。フレンチ・ノワールの流れを汲みそうなイメージなのだが、何とやはり、というか既に映像化され、現在はDVDとして観ることができそうである(「悪なき殺人」”Only the Animals”(2019))。しかし、、、。  そう、しかし、である。本書...

 何とも奇妙で不思議な小説である。フレンチ・ノワールの流れを汲みそうなイメージなのだが、何とやはり、というか既に映像化され、現在はDVDとして観ることができそうである(「悪なき殺人」”Only the Animals”(2019))。しかし、、、。  そう、しかし、である。本書は文章作品としての味わいが実に個性的なので、先に映像化作品を見ることはお薦めしない。本書の構成は5人の登場人物が各章毎に主人公となって語る形式の小説である。全員の証言を読む毎に、作品の世界がまるで違った角度から見えてくる。そのことがこの作品を、格別、個性的なものに化けさせているのだ。  物語の中で起こるのはある女性の失踪。季節は冬、舞台となるのは山深い山間の村なのだが、失踪したのはアウトドア好きな主婦で、生死の判断もなかなか下しにくい。農協のソーシャルワーカーとして村の農家を訪問する女性アリスに始まる本作は、導入部から早速、危険の匂いを感じさせてくれる。と同時に失踪中の女性のことが話題にされる。この失踪した女性という謎が本書の軸になりそうだとわかる。  二つ目の物語はソーシャルワーカーの訪問を受けていた羊飼い。本作が凄いな、と思われるのはここで早くも失踪者の事件が見えてしまうからだ。しかし、その見え方はどうみても幻惑的に過ぎるように感じつつ、その不信感を基に、その後の物語に繋げてゆく。  しかし三つ目の物語辺りから物語の様子は変容する。マリベという他所の土地から来ている若い女性。時系列を記憶により戻したり、この先の展開に受け渡したりする役目の章だが、毎度視点が変わる毎に唐突な展開と思えるのが本書の構成の特徴でもあるようだ。しかし、物語は唐突なジャンプを繰り返すたびに、不思議なことに真相へと近づいてゆくのである。  四つ目の物語はいきなりアフリカに飛ぶ。若者たちが従事するネット詐欺の小屋へと唐突にジャンプした物語 に面食らうが、こうなると既に快感である。若い美人女性のふりをして、画像を挙げ、引っかかったカモになる男たちをたぶらかし大金を送金させるというネット詐欺。そしてそこに引っかかるカモ。  最後の章は短い。五つの物語が繋がったときに、それぞれの物語の環が完成する。なかなか珍しい構成だが、わかりやすく言えば芥川龍之介の『藪の中』、黒澤明監督により『羅生門』として映画化されたあれである。同じ事件であれ、観たものによって、それは万華鏡のように別々の形となる。一人の女性の失踪事件の真相を語るためにその手法を用いることで、五つの物語を繋げてしまったのが本書である。さらにそのことで起こってきた化学反応自体が、失踪事件以上に闇が深い。  人間の愚かさと悲喜劇と運命に翻弄される生き物という立場。それらが衝突し合うことで発生する化学反応を一連のストーリーとして物語ったのが本作である。ある意味、凄い発想。そして驚愕。刺激的な作品構成とその内容。フレンチ・ミステリらしいノワールさが際立つ作品である。

Posted byブクログ

2024/01/26

視点を変えながら話が進んでいくので、同じ出来事でも別の視点から見るとそういうことだったのかと納得する。続きの展開は気になるので一気に読んだが、共感できる登場人物が1人もいない。何をもって「悪なき殺人」としているのかも分からなかった。

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2024/01/13

CL 2024.1.10-2024.1.13 一人の女性が失踪するところから始まる5人の男女の一人語り。犯人捜しかと思って読んでいると物語は全く別の方向に流れていく。それぞれの立場で、この順序で語られ、徐々に明らかになっていく事実が興味深い。 誰もがどうしようもない孤独を抱えてい...

CL 2024.1.10-2024.1.13 一人の女性が失踪するところから始まる5人の男女の一人語り。犯人捜しかと思って読んでいると物語は全く別の方向に流れていく。それぞれの立場で、この順序で語られ、徐々に明らかになっていく事実が興味深い。 誰もがどうしようもない孤独を抱えている。だからひとりにとてつもなく執着して、とんでもないことが起こる。これほど"孤独"に蝕まれてしまうとはなんと哀しいことだろう。

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2024/01/08

田舎街で発生した殺害事件。人間の歪んだ愛情、煩悩や執着を描いた腸がよじれるサスペンス #悪なき殺人 ■あらすじ フランスの田舎街で、資産家の妻が行方不明になっていた。その事件には、牧場を営む夫婦、人間嫌いな羊牧場を営む男、装飾デザイナー志望の若い女性など、様々な人間が関係してい...

田舎街で発生した殺害事件。人間の歪んだ愛情、煩悩や執着を描いた腸がよじれるサスペンス #悪なき殺人 ■あらすじ フランスの田舎街で、資産家の妻が行方不明になっていた。その事件には、牧場を営む夫婦、人間嫌いな羊牧場を営む男、装飾デザイナー志望の若い女性など、様々な人間が関係していた。この事件の背景に描かれる人間模様とは… ■きっと読みたくなるレビュー 人間というのは、なんて弱々しく寂しい生き物なんだろうか。悲しい事件で身勝手な登場人物ばかりなんだけど、何かにすがりたくなる気持ちはホントよくわかる。人間の歪んだ愛情と煩悩や執着を描いた、腸がよじれるサスペンスです。 さて、本作は登場人物へのメッセージという形でレビューを残させてもらいます。 〇アリス(牧場の女性、農協のソーシャルワーカー) 正しさを言い訳に自分の責任から逃避する。なまじ優しさを持ってるだけに、実は一番たちが悪い。一番やってはいけない振る舞いをしたのは、あなただと思いますよ。 〇ジョセフ(羊飼い、人間と関わり合いのない人生を歩んできた男性) 人生すべての巡り合わせが悪いと、こうなってしまうという典型。人類って70億人もいるんだから、もっと早く誰か手を差し伸べてあげてたらと思わずにはいられない。人間は一人では生きられないし、生きるべきでもないのです。 〇マリべ(服飾デザイナー志望の若い女性) 愛とはどういうものか、さっぱり理解していませんね。さぞ、おめでたい人生を送ってきたのでしょう。ただ貪欲なのは嫌いではない。もっと誠実な人に出会えば、きっと明るい未来が待ってますよ! 〇アルマン(とある犯罪に手を染める若い男性) 犯罪者の典型、人間のクズ。ただその人が悪いというより、環境や教育がもたらした結果なので、読んでいて辛くなる。人生は長いんだから、これからも諦めずに生きてほしい。 〇ミッシェル(牧場を営む男性、アリスの夫) 気持ちわかるわ…、私自身の人生でも、なにかひとつ間違えばこうなってしまう自信がある。世の中にある不倫、犯罪など、ほとんどは誰だってやりたくないし、巻き込まれたくもない。日常の幸せと欲望と犯罪が、いかにすぐ近くに潜んでいるかがよくわかる。こわっ ■ぜっさん推しポイント 本書にでてくる登場人物たちは自分勝手で悲しい奴らばかり。ただ読んでいると、なんとなく彼らの気持ちはどこか理解できてしまうんですよね。 人間の純情さ、醜さ、欲望っていうのは、むしろ正当なもので、いかに折り合いをつけるのが難しいか。大きい小さいはあるでしょうが、どこの誰にでもありうる話で恐ろしいお話でした…

Posted byブクログ