小山さんノート の商品レビュー
詩人のようなフレーズが多々でてくる。 資本主義からこぼれ落ちた一人の女性。 性差別を受けながらも、真摯に懸命に生き抜く。
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公園でテント暮らしをしていたホームレスの女性、小山さん。彼女が遺した80冊を超えるノートを、ワークショップのメンバーが8年かけて文字起こしをし、編んだ。ものすごい日記だった。 想像を超えて自分の中に小山さんが息づいていた読書時間だった。貧しくとも自分の精神回復のために読み、思考...
公園でテント暮らしをしていたホームレスの女性、小山さん。彼女が遺した80冊を超えるノートを、ワークショップのメンバーが8年かけて文字起こしをし、編んだ。ものすごい日記だった。 想像を超えて自分の中に小山さんが息づいていた読書時間だった。貧しくとも自分の精神回復のために読み、思考し、書き、喫茶へ行き、時々踊っていた小山さんの力強い声がずっと離れなかった。ふと気を抜くと、涙が溢れた。最後数十ページは、小山さんがそうしたように、喫茶店で読み終えた。 ワークショップメンバーのエッセイも素晴らしかった。 **** 私たちは資本主義の価値観に自分自身を価値づけられ、おどされ続けて、身動きできないような気持ちに落とし込まされがちだ。目に見えて役に立つこと、お金になることをしたらどうかという視線が絶えず注がれ、それをしないのは「わがまま」で、それができなければ落ちこぼれても仕方ないと言わんばかりだ。また、人目を気にすることや、将来のことを考えて現在を犠牲にすることを過剰に求められがちだ。外部から求められるだけでなく、より厄介なのは、私たち自身が「検閲官」を内側に取り込んで、自らを社会で通用し望ましいとされている規範や価値観でがんじがらめにしてしまうことだ。(P269より) **** 小山さんはそんなことはずっと前からわかっていた。なんで小山さんみたいな素敵な女性が家を持てず、お金や物を拾い、テントで生活しなければならなかったのだろう。私なんかよりずっと多くの言葉をもち、感情をコントロールしながら自分を見失わずに、ずっとずっと立派に生きたのに。怒りと寂しさで苦しくなる。 涼しくなったら、この本を買いにエトセトラブックスに行く(今回は図書館で借りた)。誰かと語り合いたくなる本である。多くの人が読むべき本である。
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食べたもの、残金、服装などから「小山さん」を想像する。実際は痩せているのだろう。だが、なぜか想起されるのはふくよかな姿だ。精神をなんとか奮い立たせて想像の翼を広げて生きている小山さんは、なぜかやせぎすではない気がしてならない。 亡くなる直前に、許しを得て彼女の部屋に入ったひとが息...
食べたもの、残金、服装などから「小山さん」を想像する。実際は痩せているのだろう。だが、なぜか想起されるのはふくよかな姿だ。精神をなんとか奮い立たせて想像の翼を広げて生きている小山さんは、なぜかやせぎすではない気がしてならない。 亡くなる直前に、許しを得て彼女の部屋に入ったひとが息をのんだ光景はさぞ美しかっただろうな。 路上生活をしている人が、こんな精神世界を持っていることがある、とこれまで想像すらしてこなかった。感謝。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ノンフィクションなので救いがない。辛いことがたくさん書いてあって読むのがしんどい。内容もわかりにくいところも多く、ワークショップの方が注釈をつけてくれているのでそれでなんとなくわかる部分もある。精神や感情について書いてある箇所も多く共感や同調する気分にはなれないけれど、それでも読ませる内容になっている。小山さんノートワークショップの登さんは「どこから読んでも良い、簡単に読み進めるのは難しい、この本を持って人の気配のあるところにいって読むと良い」と言う。本当に苦しい日記。でも正直で自分の内面と時間をかけられるだけかけてじっくりと向き合ったまっすぐな日記。 必死に生きている小山さんの日々の様子は、救いがないとわかっていても、何かしら小山さんに光がみえないか、心穏やかになるひと時がないか、読みながらそれを必死に探している自分がいる。光の見えない苦しい日々だけど小山さんは喫茶店でのひと時が唯一心休まる時間だったのだと思う。本を読み、書くことが喜びと何度も書いてある。苦しくなるとなんとか時間とお金を工面して喫茶店に駆け込み自分を必死に取り戻している。小山さんにとっての心の病院みたい。行けば精神状態が戻ると必死に喫茶店で過ごす時間に救いを求める様子が。 都会に紛れていても、家を持たない人ということで浮いてしまうのか、急な他人からの暴力を受けることもかなり多くある。淡々と書いてあるけど、心はどうなっているのだろう。一回一回辛く思っていたらしんどいから、心の柔らかい部分は普段しまっているのかな。他人からの暴力もあれば一緒にテント生活をしているパートナーからの理不尽な暴力や暴言もある。他人からの暴力は淡々と書かれているけど、パートナーの行動に関してはとにかく辟易していることが何度も何度も書いてある内容でわかる。DVからのがれる女性のためのシェルターのようなものに逃げ込めたら良かったのだろうけど、圧倒的な情報弱者だったのかもしれない。それに、小山さんに手を差し伸べた人が行政とのつながりを提案しても頑なに拒否していたし、最初の頃の日記でお兄さんに泣きついている文章があるけれど警察に頼れと拒絶されてしまっていたから、それから他人を頼るのが怖くなってしまったのかな。きっと理路整然と解決策を見つけることが出来る人ならここまで内にこもって何冊も何冊も日々の記録を書いていないと思う。 どうにもできない無力感、ぐっすり眠りたい、少しだけお酒が飲みたい、煙草が吸いたいと毎日が切実。それから何度もフランスに行きたいと願っている。心からの願望だったのだろうな。 辛い辛い人生だなと思う。けれども、その辛い人生を、苦しい日々をもう嫌だと投げ出さずに一歩一歩、一日一日乗り越えて生きていた記録。最後には小山さんが行っていることは宗教的な修行みたいなものかと思ったりもした。薄っぺらい言葉になってしまうけど、小山さんは魂の尊厳というか、知性を持つ人間の尊厳、それをずっと失くさずに生き抜いたのかなと思う。どんなに大変でも精神を自分なりの方法で回復して毎日逃げずに過ごしていたから。そして、この日記は読む人をとにかく考えさせる本だと思う。読書をしながら、小山さんがもっともっと光あるほうに導かれる方法はなかったのか、一人の人間の一生としてこんなに辛くて良いのか、小山さんはどうすればよかったのか、とずっとずっと自問自答しながら考えていた。重いので★は3つで。でも内容を理解したその上で読みたい人に読んでもらうのは良いことだと思った。
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ホームレス生活の厳しさと併せて、一人の人間の中に広がる精神世界や思想、豊かさが迫ってくる本だった。 創作物だと過剰に善い人や達観した人として描かれがちなホームレスだが、もちろん意地悪だったり精神を病んでいる人も多いわけで。そんな中で共の人からなかなか離れられなかったり、コミュニ...
ホームレス生活の厳しさと併せて、一人の人間の中に広がる精神世界や思想、豊かさが迫ってくる本だった。 創作物だと過剰に善い人や達観した人として描かれがちなホームレスだが、もちろん意地悪だったり精神を病んでいる人も多いわけで。そんな中で共の人からなかなか離れられなかったり、コミュニティの上下関係に苛まれたり、家を壊されたり、という描写はとてもこわかった。 小山さんとわたしは似ていないと思うが、気持ちがわかる部分が多かった。「音楽は心の調和を保ち、踊りは心身をかろやかな美に導く。酒は緊張をときほぐし、精神を清め安らげる。タバコは知覚を機敏にし、思考のくつろぎをあたえる。コーヒーはなごみと香りをあたえ、仕事、生活のつかれを忘れさせる。お金は選たくする自由をあたえ、一人一人の個性を生かす」ー小山さんが大切にしたもの、生活者の美学のようなものを守りながら生きていけたらと思う。
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読むのにとてもエネルギーが必要だった。 人付き合いが元来苦手で、宗教由来の虐待を受けたり、家族間でも問題があったり… 生活保護を受けるにあたって、親族や周りに頼れる人は本当にいないのか、役所の人が確認すると以前見聞きした。 小山さんの状態だと共の人と暮らしていたり、他諸々理由もあ...
読むのにとてもエネルギーが必要だった。 人付き合いが元来苦手で、宗教由来の虐待を受けたり、家族間でも問題があったり… 生活保護を受けるにあたって、親族や周りに頼れる人は本当にいないのか、役所の人が確認すると以前見聞きした。 小山さんの状態だと共の人と暮らしていたり、他諸々理由もあってそれは厳しかったんだろうな。 野宿生活の中でもささやかな幸せを見つけたり、どこか俯瞰してみたり幻想に頼ったり。自分をしっかり持って、書き留めている。 日々の生活の様子が綴られるが、暴力の登場は多い… 1人静かに行きたいのであれば、田舎で時給自足チックなことはできる気もするが、小山さんは1人でそこまでの生活は回せなかったのであろう。 ある程度の人付き合いは必要にもなるし… そういう人の力になるには、野宿者が多い地域で炊き出しをしたり声がけや支援をしたり、そういったことしか現状できないんだろうな… この日記を小山さん存命の時に出版社に持ち込めていたらどうなっていたのだろうと思ったりもするが。
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テント村で生活をするなか、足かけ15年の間、30冊も綴った女性の日記の抜粋。 一言、彼女のテント生活には理解できないことが多い。 テント生活で共にする男性のDVに悩まされ、怯えながらも長い間一緒に暮らしていた。 また空き缶を拾いお金にしたり、シケモクを拾い集め吸う。落とし物やお...
テント村で生活をするなか、足かけ15年の間、30冊も綴った女性の日記の抜粋。 一言、彼女のテント生活には理解できないことが多い。 テント生活で共にする男性のDVに悩まされ、怯えながらも長い間一緒に暮らしていた。 また空き缶を拾いお金にしたり、シケモクを拾い集め吸う。落とし物やお金を拾って生活の足しにする。その一方で、せっかく手に入ったお金も、タバコやアルコール、喫茶店でのコーヒー代に使う。 年齢制限や障害などで、職を得ることが出来ず、已む無くそのような生活をしている人がいることは理解しているが、どうも日記を読む限り、積極的に仕事でお金を稼ぐとか、心身共に自立すると言う発想が希薄のように感じた。 ただ彼女は、文学や芸術を志し、書くことで自立したい、生活を立てたいという希望を持っていたようだ。 実際、「私は特別な名誉も人のつながりも、信用も、変な義理、恩も作らぬよう生きてみたかった。夢、理想、希望がある限り、そのイメージを生きていく現実のわずかなお金はほしかった」と書いている。 本も相当数読んでいるようで、喫茶店で本を読み、日記をしたためると言う生活を行っていたことが彼女の日記で分かる。しかもかなりの達筆だ。 本については、このように記述している。 「選たくをしながら、現在の自分にとって必要な出逢いの本を一冊一冊読める時間をわずかとれることは、救いであり、再び希望につながれる。困難なしこりが、なだらかにときほぐされ、新たなエネルギーがほとばしる瞬間、過去に味わったことのない、深くおちついたリズムが永遠の時間と空間をかもしだす」 彼女は、このように自己分析している。 「多くと交わるものは、多くを失うという言葉におびえた。自分の人生を一つに集約したかった、だが、ひとたび選たくしたものの、現実になげ飛ばされると、たちまち萎縮してしまう。人とのつきあい、社交がへただ」 そして格言的な表現も。 「知なるものあわく、信なるもの内に、希望は歩みに、夢は限りなく明日の生をかなでる」 「思考、好みが皆違う人々が歩いている。リズムと機能を大切にいだく幸福を作ろう」 「望まない喜びも悲しみも感激も幸福もうばうような貧しさは、精神を害する。大らかな心を曇らせ、異常にかりたて、反乱を起こす元だ」 やっていることと考えていることのギャップが大きいだけに、関心を引く人物で、実際にお話がしてみたいと感じたが、もう世の中にはおられない。 残念だ。
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世の中の生きづらさを伝えたかったのかもしれませんが、表現が芸術的すぎて、私にはよくわかりませんでした… もっと根気よく読めば何かを感じることができたのかもしれません
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何故、小山さんはパートを何度もやめてしまったのか、福祉の人から住むところのお世話もあったのに何故受けなかったのか、始めは率直に疑問に思った。 後半の小山さんノートに係わった方からの文章で、小山さんは虐待を受けていたということが書かれていた。 ボスを酷く怖がったり、共の人から暴力...
何故、小山さんはパートを何度もやめてしまったのか、福祉の人から住むところのお世話もあったのに何故受けなかったのか、始めは率直に疑問に思った。 後半の小山さんノートに係わった方からの文章で、小山さんは虐待を受けていたということが書かれていた。 ボスを酷く怖がったり、共の人から暴力を受けながらも結局は離れられなかったり。そんなアンビバレンスなようすに少し納得した。 生活の困窮、寒さや暑さそして淋しい孤独の中で毎日お酒やタバコを吸わなければ、また、幻想の世界に入らなければ生きていけなかったのではないだろうか。
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好きでない。 低レベルなエゴを見せられているような不快感を覚え、途中でなげだした。 教養や知性のなさも感じる。 人間にも魅力を感じない。 どうしてこれを出版しようと思ったのか、全く理解できない。
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