星に願いを の商品レビュー
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図書館にて。 ずっと読みたいと思っていたシリーズの最新作。 読み終わって丸一日、物語が頭から離れなかった。 眼から涙は出てなくても、心のどこかがずっと泣いていた。 私は今、小学生の娘の母親だ。 娘だったこともあるし、現在は母親だ。 過去と現在の記憶、経験がこの本のいろんな部分とリンクしてまるで自分の気持ちのように辛かった。 ごめん、もうそんな言葉じゃだめだな、もう読んだが最後、タツヨさんも真千子さんも花ちゃんも私なのだ。 どうしてこの本に書かれていることが自分に起きなかったことだと思える?たまたまなのだ。偶然、私はそうじゃなかっただけ、ここに出てくる人が全員自分だったかもしれない、同じ体験をしていなくても、近い目にあったことは?似たように誰かを、娘を傷つけたことはなかったか? 罪の意識にさいなまれて、孤独でのたうち回るタツヨさんの辛さがこれでもかと伝わってくる。 だからといって、真千子さんが許せないだろうということもわかりすぎるほどわかるし、許してやってくれなんて口が裂けても言えない。 どちらの気持ちも知ってしまった花ちゃんの優しさ。 鈴木るりかさん、どうしてあなたはその若さでこんな文章が書けるんだろう? 辛いな。容赦ない。書いてても辛かっただろうな。 読み終わってこの本は、親子間の虐待の連鎖に対する怒りということでもなく、親子の和解を描くわけでもなく、表題作どおり本当に誰かの日記を読んでその後を追っているだけの物語。 そこがすごく、そうだよなと思った。 そうなんだよ、普通は、現実は、いつも何も、劇的に解決なんてしないんだ。 胸に残る後悔、足りなかった何かはなんだろう、あの時ああしなければ、とずっと繰り返し考えながら抱えて、心にしまって生きていく。 誰でもそんな昨日があると思う。 読み返すのは辛い本。 でももう読み返さないかもしれなくても、手元に置いておきたい本だと思う。 そして、次回作待ってます。
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花ちゃんとお母さん、2人に関わる優しい人たちがずっと幸せでありますように。 そして花ちゃんのおばあちゃんが天国でみんなを優しく見守っていられますように。 シリーズ、これで完結かな? とても良い本だった!
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14歳の誕生日に「さよなら田中さん」でデビューした鈴木るりかさん。この続編として「太陽はひとりぼっち」、「私を月に連れてって」が出版され、四冊目のこの「星に願いを」は二十歳の誕生日に出されたということ。 「太陽はひとりぼっち」で突然現れたおばあちゃん。お母さんに「死んだ」とさ...
14歳の誕生日に「さよなら田中さん」でデビューした鈴木るりかさん。この続編として「太陽はひとりぼっち」、「私を月に連れてって」が出版され、四冊目のこの「星に願いを」は二十歳の誕生日に出されたということ。 「太陽はひとりぼっち」で突然現れたおばあちゃん。お母さんに「死んだ」とされ、お母さんを子供のとき虐待してひとりぼっちにさせた、「クソババア」。 そのおばあちゃんが亡くなったという。おばあちゃんに頼まれ「死後事務委任契約」を結んでいた吉澤さんという女性が、おばあちゃんと契約したとおり、おばあちゃんをお葬式無しで火葬し、無縁塚に葬り、「預金通帳」と「死亡保険金証書」をお母さんに渡しにきた。そしてその他の物は一切捨てるように言われていたのだが、吉澤さんは三冊のノートだけはどうしても捨てられず、お母さんの所に届けにきた。 お母さんは読もうとしなかったが、花実が読んだそのノートには、おばあちゃんの思いのたけが綴られていた。どれだけ真千子に会いたかったか。赦してほしいけれど、自分で自分を赦せない気持ち。どうしてあの時はあの子にあんな事をしてしまったのか、自分が押さえられなかったという悔やんでも悔やみきれない気持ち。そんな本音を誰にも言わず、娘と孫の前では「クソババア」になりきって、遠くから幸せを祈っていた。その気持ちを綴ったそのノートも残さないつもりでいた。 読みながら、これは鈴木るりかさんが二十歳前に書いたということをすっかり忘れていた。 「どうしてこんな若い子が、こんなん書けるかなあ?」と呟いたら、先に読んでいた娘(中学生)が「人生二周目なんちゃうの」と言った。人生二周目?えっ?前世があったってこと?なるほどなあ。いや、知らんけど。 田中家の箪笥の奥の髑髏にこれ以上触れてはいけないと思うけど、おばさんは、まだ気になることがある。「太陽はひとりぼっち」でおばあちゃんがチラッと言ってたこと。「私を月に連れてって」でお母さんの幼馴染がチラッと言ってしまったこと。「もしかしたら殺人犯かもしれない!!??」花実のお父さんのこと。気になるんだけど、明るい花実親子をそのままにしておきたいとも思う。 だけどきっと聡明な花実はこれから色々知っていくだろう。お母さんの健康も気になる。 鈴木るりかさん、大学卒業までに次を出して下さい。田中親子の物語を人生のライフワークにして下さい。
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大学生になっても一年に一冊は書き続けるるりかさん、すごいね。今回はばあちゃんの過去が明らかに。ってことは、前作とか書く前からある程度構想していたってこと?畏れ入り屋の鬼子母神ですわ。 ばーちゃんの日記がほとんどの内容なので、☆は4つにしたけど、虐待の話とか昔の結婚のこととか、よく調べたねえと感心するばかりです。簡単なお涙頂戴にしていないところもいいねえ。
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題名の意味を知り感動 言葉は暴力よりも強く鋭利なものなんだろう。 諸刃の剣、と似たようなものだと思った。 毒にも薬にもなる、形のない音。 それが言葉だと思った。 続編になるにつれてだんだんと重い話となっている。しかしそれと同時に生きることの素晴らしさや「生きたい」と思える原動力...
題名の意味を知り感動 言葉は暴力よりも強く鋭利なものなんだろう。 諸刃の剣、と似たようなものだと思った。 毒にも薬にもなる、形のない音。 それが言葉だと思った。 続編になるにつれてだんだんと重い話となっている。しかしそれと同時に生きることの素晴らしさや「生きたい」と思える原動力になっていく。 鈴木るりかさんの本は、きっとこれからも誰かの心を変える力を持ったものだと私は思う。
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重い、あまりの辛さに読んだ後落ち込むくらいに。 人と人、些細な言葉で相手を傷つけ、一生を後悔と自責の念で過ごしたおばあちゃん。 花ちゃんの日常にも繋がる負の連鎖。 最後の謎解きが当たっていても違っていても何も変わらない、辛い。 これを若い作者が書いたことに驚き。
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田中さんシリーズ。 おばあちゃんの思いが痛いほど伝わってきた今作。 「金の星」も人の優しさが時には辛く感じる。香川くんには幸せになってほしいな。 二十歳になった鈴木さんの世界観は、更にパワーアップ。天才か。
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続編だと知らずにこの本から読んでしまい、さっぱり分からないまま終わった。ちゃんと最初から読もうと思う。
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「老後は、子育ての成績表ですよ」という言葉をラジオで聞き、自分の今を思う花実の祖母。彼女の日記に圧倒された。多くの悔恨と諦めようとする中での少しの期待があった。そうなった理由がまた悲しく、どうしようもなかったのかもしれないが、自分がやって来たことへの始末のつけ方は、それでよかった...
「老後は、子育ての成績表ですよ」という言葉をラジオで聞き、自分の今を思う花実の祖母。彼女の日記に圧倒された。多くの悔恨と諦めようとする中での少しの期待があった。そうなった理由がまた悲しく、どうしようもなかったのかもしれないが、自分がやって来たことへの始末のつけ方は、それでよかったのではと思った。負の連鎖を断ち切る難しさの中で生きてきて、断ち切る兆しを見られたことも、彼女にとっては最高の時間だったはず。 でも彼女の娘、つまり花実の母親の真千子も、負の連鎖の犠牲者でたくさん辛い目にあってきた。それを本当に頑張って頑張って生きてきたこと、花実と正面から向き合って育てていることは、すごいことだと思う。真千子は大家さんといつもふざけた話をして、2人とも明るくて楽しい人だが、辛いことを経験しているからこそなんだと思う。 そして、賢人が花実の祖母の日記について語った内容に驚いた。人がわかり合える難しさ、わからなさの怖さを考えさせられた。このことは、花実がずっと考えて抱えていくことだけれど、星に願った思いのように、そうであってほしいと私も思った。祖父と祖母が光の中を歩いていけてますようにと。 その後に改めて、花実の担任だった木戸先生の言葉の重みを感じた。「すべてを知ることがいいことだとは限りません。その必要もないんです。そして知ってしまったあとでは、知る前にはもう戻れないんですよ」 この先、皆がどういう道を歩いていくのかとても気になる。いつかこの続編が出版されるのが、楽しみ。
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『さよなら田中さん』で田中母娘のファンに。 以後の『太陽は〜』『私を月〜』は読んでいないので、伏線がわからない部分もあるのですが、 いい作品だと思いました。 母娘がこれからも仲良く、幸せでいてほしい。
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