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私労働小説 ザ・シット・ジョブ の商品レビュー

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39件のお客様レビュー

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2024/03/20

ブレイディみかこさんのノンフィクションのようなフィクション。自伝的要素のある小説。 看護師、保育士、病棟でのボランティア、クリーニング工場、水商売、などなど「ケアする職業」についての短編集。 小説とはいえ、ブレイディさんがどうやって生きてきたかが、なんとなく分かるような話になっ...

ブレイディみかこさんのノンフィクションのようなフィクション。自伝的要素のある小説。 看護師、保育士、病棟でのボランティア、クリーニング工場、水商売、などなど「ケアする職業」についての短編集。 小説とはいえ、ブレイディさんがどうやって生きてきたかが、なんとなく分かるような話になっているのではないかと思う。 衝撃的だったのは、留学生がナニーとして働いていた上流階級の品の良いオーナーが、実はとても差別的で時代錯誤な階級社会主義者だったこと。 使用人は窓のない地下で暮らし、地上では物を食べてはならない。 それは、世話をする子どもたちにも徹底されていて、手のかからない上品な子供達が発した「アップステアーズで物を食べさせてはいけないってママに言われてる」の言葉には、読んでる私も絶句した。 いつの時代の話??え?映画なの??と。 保育園での若い見習いの実習生が、真面目で融通が効かなく労働者階級の言葉を使うが故に、やがて同僚たちに疎まれてしまう話も、切なく苦しくなった。 あとがきで著者が言うように、「シット・ジョブ」(低賃金で働く報われない職業)はいつまでも「シット・ジョブ」であって良いわけがない。 ケアする職業の人ほど、それに見合う賃金をもらって良いはず、と私も思う。 いずれにしても、相変わらずブレイディさんの話は小気味良く、サバサバしていて、決して明るい話ではないのだけど、何故か読了後はスッキリした感じがあるように思う。

Posted byブクログ

2024/03/18

「人間が低くなるには、二つあるんだ。一つ目は、他人に低く見なされるから自分が低い者になったように思える時。これは闘うべきだし、どちらかといえば簡単な闘い。もう一つは、本当に自分自身が低くなっていくように思えるとき。こういうときは、その場からできるだけ早く離れるべき」 「自分を愛...

「人間が低くなるには、二つあるんだ。一つ目は、他人に低く見なされるから自分が低い者になったように思える時。これは闘うべきだし、どちらかといえば簡単な闘い。もう一つは、本当に自分自身が低くなっていくように思えるとき。こういうときは、その場からできるだけ早く離れるべき」 「自分を愛するってことは、絶えざる闘いなんだよ」 「自分のソウルによくない仕事はやめるべき」 ケアする仕事=賃金が安い=シットジョブ 働いている当人がクソみたいな仕事と思っているということ。 人種や職種で他者を上だの下だのと決めるのは、なんとも愚かな行いかと思うのだけれど、自分でも気づかないくらい心の奥底にそれは確実に存在している。

Posted byブクログ

2024/03/17

小説だけど「私」が入っているし、中洲のガールズパブや、ナニーとして働いたイギリス上流家庭、クリーニング工場、保育園などで起こったことはどれも本当に近いのではないかと思う。 ケン・ローチの「この自由な世界で」では、イギリスの労働者階級が東欧や中東の不法移民を働かせて儲けていたけど、...

小説だけど「私」が入っているし、中洲のガールズパブや、ナニーとして働いたイギリス上流家庭、クリーニング工場、保育園などで起こったことはどれも本当に近いのではないかと思う。 ケン・ローチの「この自由な世界で」では、イギリスの労働者階級が東欧や中東の不法移民を働かせて儲けていたけど、見た目はほとんど違わない東欧の人ですらあの扱いだもの、差別意識のある中産階級以上の人のアジア人労働者の扱いは、そうなんだろうなと悲しく怒りつつも納得した。息をするように自然に差別しているのだ。子どもでさえ。 だから『日の名残り』や『黒後家蜘蛛の会』なんかは強烈な皮肉なのだ。 モンティパイソンや「ジーヴス」なんかでもさんさんおちょくられているのに相変わらずやってるんだな、とも思う。 「サンドウィッチを作らせたり、セックスさせたり、何かの行為をさせるときは存在するのだが、人間としてのあたしは存在しない。そう、要するにここでも使役動詞の問題だ。階下に寝る者は何かを「させる」ために同居している労働力に過ぎず、「彼女たち」は何かを感じたり、ムカついたりする主体性のある存在としては認識されないのだ。」(P72) 水商売の女を恋人にしている男は女子大生や昼職の女を恋人にしている男より「下」だと思う男たち。長くロンドンにいながら日本人としかつるまず、英語もろくに喋れない澱んだ日本人たち。真面目で几帳面な若い女を労働者階級だからとあからさまには言わないが、がっつり差別する中産階級。 まさに、「シット」である。 日本の窮屈さが、ダサさがイヤでイギリスに行ったけれど、イギリスも天国じゃない。 そんな中でどう生き抜いていくか。 そしてより良い世界にできるのか、リアルに考えさせられた。 しかし一番心に残ったのは、心を病んでしまったお母さんの話だった。

Posted byブクログ

2024/02/24

自伝を含めての私小説。 読んでいると本当にブレイディさんが経験されてきたことなんじゃないかなと思うくらい惹き込まれた。

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2024/02/22

自伝的要素たっぷりのフィクションだそうだ。ブレイディみかこさんがどんなふうにシットジョブで働いてきたのかがよく分かる。ライターという才能があったからこそ、そこに光をあて、こんな僕にも知ることができ、言語化された世界が見ることができた。ブレイディみかこさんはイギリスに行かなかったと...

自伝的要素たっぷりのフィクションだそうだ。ブレイディみかこさんがどんなふうにシットジョブで働いてきたのかがよく分かる。ライターという才能があったからこそ、そこに光をあて、こんな僕にも知ることができ、言語化された世界が見ることができた。ブレイディみかこさんはイギリスに行かなかったとしても、たぶん日本でもそんな人たちの側にたって応援する人になっていただろうと感じる。

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2024/02/07

生まれや仕事、性別などを起因とする差別は長い伝統があるイギリスだからこそ、強い。 主人公は、それらの負の力への反抗心を行動で示していて、あまりの差別に読んでいて嫌な気持ちになりつつも、最終的にはすっとした。 特に、鏡に口紅で捨て台詞を書いて出ていったとこは、痛快だった。 奥さんは...

生まれや仕事、性別などを起因とする差別は長い伝統があるイギリスだからこそ、強い。 主人公は、それらの負の力への反抗心を行動で示していて、あまりの差別に読んでいて嫌な気持ちになりつつも、最終的にはすっとした。 特に、鏡に口紅で捨て台詞を書いて出ていったとこは、痛快だった。 奥さんはきっと下の階には降りないから、まだあの旦那さんは同じことやってるのだろう。 人として強くありたい。 弱い人に優しくありたい。 自分に好きでありたい。 チャカのお母さんのように。 「自分のソウルによくない仕事はやめるべき」 ソウル!魂かー。 パブロの言う 「本当に人間がすべき仕事」や 「シット ジョブ」くそみたいに報われない仕事の、地位が向上され、満たされて、生きていけたら、報われる世界になったら、最高だよねっ。

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2024/02/06

とても興味深く読了。 イギリス、階級社会というのは知ってたけど今なお”シット・ジョブ(クソのような仕事)”と呼ばれる仕事があることを知った。 金銭的にも報われず、社会的にも軽視されてる仕事。 日本にも3K (きつい、汚い、危険)と呼ばれる仕事はあったけど(今もある)単一民族だから...

とても興味深く読了。 イギリス、階級社会というのは知ってたけど今なお”シット・ジョブ(クソのような仕事)”と呼ばれる仕事があることを知った。 金銭的にも報われず、社会的にも軽視されてる仕事。 日本にも3K (きつい、汚い、危険)と呼ばれる仕事はあったけど(今もある)単一民族だから人種による差別はないしね。 著者は過去に底辺託児所(このネーミングも差別的)で働いてた経験があるそうなのでよりリアル。 そう、自伝的小説とあった。 私もあとがきにあったようにこのシット・ジョブという言葉が未来にはなくなり過去のものとなることを祈らずにいられない。

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2024/02/05

今までのノンフィクション作品の、キモみたいなものを集めてフィクションの短編集にしました、みたいなものだった。 自身の経験に裏付けられているだろう内容。 イギリスでは労働者階級なるものがあって、ヒエラルキーが形成されているようだが、現代にも根深く残っているんだろうか。 日本でも介護...

今までのノンフィクション作品の、キモみたいなものを集めてフィクションの短編集にしました、みたいなものだった。 自身の経験に裏付けられているだろう内容。 イギリスでは労働者階級なるものがあって、ヒエラルキーが形成されているようだが、現代にも根深く残っているんだろうか。 日本でも介護や保育系の職種は薄給のイメージがあるが、もっと高級でもいいと常々思っている。 一番印象的だったのは、「失礼は金になる」というワード。真理をついてるなと思った。

Posted byブクログ

2024/02/03

人生綺麗なものばかりじゃないと思っているが、それがよく現れている小説。荒くて激しい。でもそれが真実。 人間が生きていくためには、どこかで「他者のケアをする仕事」が必要になる、必ず必要な仕事なのに低く扱われてしまう、そのことを考えさせられた。

Posted byブクログ

2024/02/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

なんか急に核心をついたりするので、驚いた。 〈第三話 売って、洗って、回す〉 何も考えず、何も感じない。 それは全体のPIECE(欠片)になることによって得られる究極のPEACE(平和)。 〈第五話 ソウルによくない仕事〉 あなたが自分を愛してないのが仕事のせいなら、やめたほうがいい。自分を愛するってことは、絶えざる闘いなんだよ 自分のソウルによくない仕事はやめるべき 〈第六話 パンとケアと薔薇〉 ケアというのには双方の人間が必要なんだ。ケアする方とされる方、双方の人間がいてポジティブな精神的電波が生まれる。この電波こそが、人間が今日まで生き延びてきた原動力になったというは人もいる

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