私労働小説 ザ・シット・ジョブ の商品レビュー
個性的な人間が特殊な環境での特殊な経験を描いたノンフィクション小説だが、普遍的なテーマを感じた。シットジョブとは自虐に過ぎる表現だが、時には無慈悲な現実をありのままに受け止める事も必要だと不思議な気持ちになった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
どういった経緯でこの本をリクエストしたのか記憶がないが、面白かった。 英国は階級社会だという事がよく分かる。 貴族とレイバーは明確に線引きされ、差別が横行している。差別が残っている限り、英国の未来は明るくないと思う。 企業の弁護士は、企業の役に立つけど、人の役に立つとは限らない。 書類やコンピューターや電話を相手にして仕事をしていると、人間を相手にした仕事がしたくなるんだよね。人間の仕事というか、人間にしかできない仕事がね。
Posted by
良い生活がしたいなら、仕事を変えれば良いと思うが、あえて底辺と言われるような仕事をしている人達は、なにか理由があってその仕事をしていることもあるんだなと思った。 印象に残ったフレーズ 「実のところ、労働者階級というのは、女性のことを指す言葉なのかもしれない」 そこまで言わんでも...
良い生活がしたいなら、仕事を変えれば良いと思うが、あえて底辺と言われるような仕事をしている人達は、なにか理由があってその仕事をしていることもあるんだなと思った。 印象に残ったフレーズ 「実のところ、労働者階級というのは、女性のことを指す言葉なのかもしれない」 そこまで言わんでも。
Posted by
・生臭い、リアルな既視感のある「労働」の「小説」。 ・読んでスカッとする類の物とは正極な小説。 ・同じ怒りや諦めや醜さ…も自分の中で再確認した。必要な小説。 ・自意識に(余り)結びつけず、「労働」そのものに眼差す、という小説は結構貴重なのでは。
Posted by
この著者の本は2回挫折してるけど、これは読める! 若い人が外国で働くことは、円安もあって増えているようだが、イギリスではまだこういう階級社会の空気が残っているのかなぁ。まぁ日本でも外国人実習制度で、歪みが露呈して問題になってるから、同じようなことがあるってことか… 外国で生きてい...
この著者の本は2回挫折してるけど、これは読める! 若い人が外国で働くことは、円安もあって増えているようだが、イギリスではまだこういう階級社会の空気が残っているのかなぁ。まぁ日本でも外国人実習制度で、歪みが露呈して問題になってるから、同じようなことがあるってことか… 外国で生きていくのは、たいへん。国内でもたいへんなんやけど。
Posted by
ブレイディみかこさんのノンフィクションのようなフィクション。自伝的要素のある小説。 看護師、保育士、病棟でのボランティア、クリーニング工場、水商売、などなど「ケアする職業」についての短編集。 小説とはいえ、ブレイディさんがどうやって生きてきたかが、なんとなく分かるような話になっ...
ブレイディみかこさんのノンフィクションのようなフィクション。自伝的要素のある小説。 看護師、保育士、病棟でのボランティア、クリーニング工場、水商売、などなど「ケアする職業」についての短編集。 小説とはいえ、ブレイディさんがどうやって生きてきたかが、なんとなく分かるような話になっているのではないかと思う。 衝撃的だったのは、留学生がナニーとして働いていた上流階級の品の良いオーナーが、実はとても差別的で時代錯誤な階級社会主義者だったこと。 使用人は窓のない地下で暮らし、地上では物を食べてはならない。 それは、世話をする子どもたちにも徹底されていて、手のかからない上品な子供達が発した「アップステアーズで物を食べさせてはいけないってママに言われてる」の言葉には、読んでる私も絶句した。 いつの時代の話??え?映画なの??と。 保育園での若い見習いの実習生が、真面目で融通が効かなく労働者階級の言葉を使うが故に、やがて同僚たちに疎まれてしまう話も、切なく苦しくなった。 あとがきで著者が言うように、「シット・ジョブ」(低賃金で働く報われない職業)はいつまでも「シット・ジョブ」であって良いわけがない。 ケアする職業の人ほど、それに見合う賃金をもらって良いはず、と私も思う。 いずれにしても、相変わらずブレイディさんの話は小気味良く、サバサバしていて、決して明るい話ではないのだけど、何故か読了後はスッキリした感じがあるように思う。
Posted by
「人間が低くなるには、二つあるんだ。一つ目は、他人に低く見なされるから自分が低い者になったように思える時。これは闘うべきだし、どちらかといえば簡単な闘い。もう一つは、本当に自分自身が低くなっていくように思えるとき。こういうときは、その場からできるだけ早く離れるべき」 「自分を愛...
「人間が低くなるには、二つあるんだ。一つ目は、他人に低く見なされるから自分が低い者になったように思える時。これは闘うべきだし、どちらかといえば簡単な闘い。もう一つは、本当に自分自身が低くなっていくように思えるとき。こういうときは、その場からできるだけ早く離れるべき」 「自分を愛するってことは、絶えざる闘いなんだよ」 「自分のソウルによくない仕事はやめるべき」 ケアする仕事=賃金が安い=シットジョブ 働いている当人がクソみたいな仕事と思っているということ。 人種や職種で他者を上だの下だのと決めるのは、なんとも愚かな行いかと思うのだけれど、自分でも気づかないくらい心の奥底にそれは確実に存在している。
Posted by
小説だけど「私」が入っているし、中洲のガールズパブや、ナニーとして働いたイギリス上流家庭、クリーニング工場、保育園などで起こったことはどれも本当に近いのではないかと思う。 ケン・ローチの「この自由な世界で」では、イギリスの労働者階級が東欧や中東の不法移民を働かせて儲けていたけど、...
小説だけど「私」が入っているし、中洲のガールズパブや、ナニーとして働いたイギリス上流家庭、クリーニング工場、保育園などで起こったことはどれも本当に近いのではないかと思う。 ケン・ローチの「この自由な世界で」では、イギリスの労働者階級が東欧や中東の不法移民を働かせて儲けていたけど、見た目はほとんど違わない東欧の人ですらあの扱いだもの、差別意識のある中産階級以上の人のアジア人労働者の扱いは、そうなんだろうなと悲しく怒りつつも納得した。息をするように自然に差別しているのだ。子どもでさえ。 だから『日の名残り』や『黒後家蜘蛛の会』なんかは強烈な皮肉なのだ。 モンティパイソンや「ジーヴス」なんかでもさんさんおちょくられているのに相変わらずやってるんだな、とも思う。 「サンドウィッチを作らせたり、セックスさせたり、何かの行為をさせるときは存在するのだが、人間としてのあたしは存在しない。そう、要するにここでも使役動詞の問題だ。階下に寝る者は何かを「させる」ために同居している労働力に過ぎず、「彼女たち」は何かを感じたり、ムカついたりする主体性のある存在としては認識されないのだ。」(P72) 水商売の女を恋人にしている男は女子大生や昼職の女を恋人にしている男より「下」だと思う男たち。長くロンドンにいながら日本人としかつるまず、英語もろくに喋れない澱んだ日本人たち。真面目で几帳面な若い女を労働者階級だからとあからさまには言わないが、がっつり差別する中産階級。 まさに、「シット」である。 日本の窮屈さが、ダサさがイヤでイギリスに行ったけれど、イギリスも天国じゃない。 そんな中でどう生き抜いていくか。 そしてより良い世界にできるのか、リアルに考えさせられた。 しかし一番心に残ったのは、心を病んでしまったお母さんの話だった。
Posted by
自伝を含めての私小説。 読んでいると本当にブレイディさんが経験されてきたことなんじゃないかなと思うくらい惹き込まれた。
Posted by
自伝的要素たっぷりのフィクションだそうだ。ブレイディみかこさんがどんなふうにシットジョブで働いてきたのかがよく分かる。ライターという才能があったからこそ、そこに光をあて、こんな僕にも知ることができ、言語化された世界が見ることができた。ブレイディみかこさんはイギリスに行かなかったと...
自伝的要素たっぷりのフィクションだそうだ。ブレイディみかこさんがどんなふうにシットジョブで働いてきたのかがよく分かる。ライターという才能があったからこそ、そこに光をあて、こんな僕にも知ることができ、言語化された世界が見ることができた。ブレイディみかこさんはイギリスに行かなかったとしても、たぶん日本でもそんな人たちの側にたって応援する人になっていただろうと感じる。
Posted by