歌われなかった海賊へ の商品レビュー
傑作『同志少女よ、敵を撃て』の逢坂冬馬氏による第二作目。 今回も第二次世界大戦下の物語、そして舞台はドイツ。 1944年、ヒトラーによるナチ体制下のドイツ。 密告により父を処刑され、居場所をなくしていた少年ヴェルナーは、 エーデルヴァイス海賊団を名乗るエルフリーデとレオンハルト...
傑作『同志少女よ、敵を撃て』の逢坂冬馬氏による第二作目。 今回も第二次世界大戦下の物語、そして舞台はドイツ。 1944年、ヒトラーによるナチ体制下のドイツ。 密告により父を処刑され、居場所をなくしていた少年ヴェルナーは、 エーデルヴァイス海賊団を名乗るエルフリーデとレオンハルトに出会う。 彼らは、愛国心を煽り自由を奪う体制に反抗し、 ヒトラー・ユーゲントに度々戦いを挑んでいた少年少女だった。 ヴェルナーらはやがて、市内に敷設されたレールに不審を抱き、線路を辿る。 その果てで「究極の悪」を目撃した彼らのとった行動とは。 物語の9割は当時の大戦下のドイツだが、 冒頭と結末は2020年を過ぎた我々の生きる現代パートである。 歌われなかった海賊へ、このタイトルの示す意味が ヴェルナーたちの物語として我々に提示される構成。 前作『同志少女よ、敵を撃て』と比べるとだが、 今回はより個々の内面を掘り下げる内容になっているような気がした。 戦時下においてのそれぞれの正義、 そして見て見ぬふりをすることによって免罪を得ようとする心理。 そういった個々の精神に降りかかる苦しみを描いていた。 この戦争という人類の悲劇を舞台にした物語を読むと毎回思う。 誰もが生存を望んでいるのに、なぜこうなってしまうのかと。 決してあの時代を生きた人々を責めているわけではない。 それを言えば、我々は悲劇を忘れてはならないと言われ続け、 忘れてはいないということにしている存在でしかないことになる。 上手いことまとめられない自分の語彙力の無さに愕然とするが、 それぐらい言語化できない感情に襲われてしまう。 この物語もその類の物語であった。 つまり、胸を抉るほどの魂が込められた内容だったということ。 この大戦下を舞台にしてハッピーエンドなどあり得ないのだが、 それでもどこか救いがあったのには読み終え、ホッとした。
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戦争を経験したことないのに、なぜ経験したかのような気持ちになるのだろうか…当事者は、想像し得ない混乱と不安の中にあったんだろう… どんな育ち方したらこんな本が書けるんだ
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戦記物では決してなくて、戦時中の人々や主人公とその家族、仲間たち、さらにナチスや連合軍の兵士に至るまで、全ての人間がどのように自分を納得させて生きているのかをとても丁寧に文章で描かれています。 現在の自分に置き換えても、どの登場人物にもなり得ることに気付きました。
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2026年7冊目。子供にも読ませたい、素晴らしい名作であった。冒険小説でもあり、歴史小説でもあり、現代の我々に対して強く問題提起も投げかけてくる啓蒙的な小説でもあり、素晴らしい1冊であった。この作者の作品は3つとも全て読んだが大ファンになった。これからの作品も全て追いかけていきた...
2026年7冊目。子供にも読ませたい、素晴らしい名作であった。冒険小説でもあり、歴史小説でもあり、現代の我々に対して強く問題提起も投げかけてくる啓蒙的な小説でもあり、素晴らしい1冊であった。この作者の作品は3つとも全て読んだが大ファンになった。これからの作品も全て追いかけていきたい。
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読んでよかった。歴史に残らなかった一般人にもそれぞれの生き方があり、尊厳がある。家族があって子孫が繋がっている。語り継ぐものがなく、消えてしまった事実もいかに多いことだろう。また語るものの偏見によって事実とはニュアンスが違ってくることもあるだろう。 長いものに巻かれるズルい生き方...
読んでよかった。歴史に残らなかった一般人にもそれぞれの生き方があり、尊厳がある。家族があって子孫が繋がっている。語り継ぐものがなく、消えてしまった事実もいかに多いことだろう。また語るものの偏見によって事実とはニュアンスが違ってくることもあるだろう。 長いものに巻かれるズルい生き方もどこかで批判しながらも人間は弱いものだから、そうなるよなぁ、と思うことも多い。 終戦間際のドイツ、ナチスについては知らないことが多すぎたので機会があれば勉強してみたい。
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再読。発売されてすぐに読んだ記憶があったけれど前作の同志少女よ、敵を撃て!を読んでこちらも読みたくなったので読んだ。何度読んでも逢坂冬馬さんの作品は面白い
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面白い。終戦間際ドイツの反ナチの子供たちというめちゃくちゃ重い設定で、このようにすんなり読めてしまうのは少年マンガ的というかジュブナイルぽいからか。 クライマックスにおけるタイトル回収は涙なくしては読めない。
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冒頭の現代パートは2020年以降を想定されていて(最後まで読むと分かる)、現代と末期戦時1944年の夏の本編が決して遠い過去のことではなく、今と繋がっている少し前のことであることを強調する。 レポートを提出する学生の中には、地元の名士メルダース家のひ孫がいる。彼が話を聞いた祖母...
冒頭の現代パートは2020年以降を想定されていて(最後まで読むと分かる)、現代と末期戦時1944年の夏の本編が決して遠い過去のことではなく、今と繋がっている少し前のことであることを強調する。 レポートを提出する学生の中には、地元の名士メルダース家のひ孫がいる。彼が話を聞いた祖母は当時10歳。作中で公言されていなかったと思うけど、これはレオの妹とかになるのでは??、、、あぁレオは“歌われなかった”んだ、、、 またドイツ国防軍少尉ルドルフ・シェーラーの縁戚にあたるという学生もいる。歴史として伝わる事実は正しい。が、一面的であるとも言える。 そして、現在と過去どちらにも繋がるアマーリエ・ホルンガッハー先生とフランツ・アランベルガー。 読了後に読み返す冒頭の現代パートは、初見のときと本当に見え方が変わります。それがこの物語のすべてだ。 「歌われなかった海賊へ 歌わなかった住民より」 ソフトカバー表紙~裏表紙にまたがる四人の顔がとても良いです ヴェルナーと金髪のレオンハルトの目線 ドクトル「人は誰しも爆弾を爆発させたいと思っているよ」 エルフリーデの歌によって実感する“文化ができる瞬間”。 終戦直前のナチス・ドイツ、ヒトラー・ユーゲント、エーデルワイス海賊団のような若者たち 若い、、、若い熱さを感じた。ただこれを“若さ”と括ってはいけないと思った。 降伏後の連合軍統治になったときのことを考慮して動く大人たち、数日後数週間後には敗戦する=統治者が変わると理解している大人たちの思考回路はこういう、、、 ヴェルナーが感じるホルンガッハー先生の存在、すごく辛い 最後の五行、、最後の最後に油断した、、うるっときたよ
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久しぶりに、心が揺さぶられました。 単純に、すごい物語でもあるのですけど、そこから想起させられることがあまりにも重くて深くて、歴史って何だろうか? と考えざるを得なくなります。 特殊な時代、特殊な思想の下、普通の人々の多くは漠然と何が起きており、何がおかしいのか分かっていながら...
久しぶりに、心が揺さぶられました。 単純に、すごい物語でもあるのですけど、そこから想起させられることがあまりにも重くて深くて、歴史って何だろうか? と考えざるを得なくなります。 特殊な時代、特殊な思想の下、普通の人々の多くは漠然と何が起きており、何がおかしいのか分かっていながらも、体制に迎合し、「喜んで騙される」ことを選択するのです。 その結果、事実は歪曲され、本質は封印され、歴史にはファンタジーも含まれていくのでしょう。 歌われなかった歌、語り継がれなかった言葉、その中にこそ、本当の歴史は埋もれているのかもしれません。 決してミステリ小説ではありませんが、お見事な伏線と回収もあり、思わず声が出そうになる場面もありました。
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戦争を少年少女のミクロな視点からの描写、全体におけるストーリー構成と情報の展開の仕方もよかったように感じました。
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