歌わないキビタキ の商品レビュー
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自然を介して、心を遊ばせている描写が気持ちを穏やかにしてくれます。梨木さんの類稀な感受性の高さがこれでもかと発露されています。 所々、「老い」「衰え」に対する寂しさのようなものを感じました。 鳥の描写がとても生き生きしていて、鳥の図鑑ないしは鳥がテーマの小説を読みたくなりました。アトリ、カラ類。私は最近シマエナガが好きです。 また、外せないのが植物。木漏れ日、そして木洩れ陽という言葉も、殊更美しく感じました。 なかなかユーモアがあります。クスッと笑える独り言や、節ごとのオチ。この辺りは、小説ではなくエッセイならではの、著者との距離の近さを感じられて良いです。 好きな一文。今日から座右の銘にします。 自分が大きくなるときに誰に遠慮があるものか。妬みひがみは蹴散らしていけ (ふとしたときに顔を覗かせる著者のネイチャーな思想が、良くも悪くも、この本がノンフィクションのエッセイであることを思い出させ、ふいに現実に戻されるため、合わない人は合わないかもです。そして、書かれた時期がコロナ蔓延、ウ露戦争の始まった時期というのもあるので、それらの話題を避けている方は注意です。)
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作者の梨木さんの日々感じてこられたものや生き物への感じられ方を垣間見ることのできるエッセイ本です。 私は普段、エッセイはあまり読みません。よほど好きな作者の方のものでなければ……いえ、よほど好きな作者の方でも、ほぼ読みません。 エッセイはどこか違う誰かの物語ではなく、作者...
作者の梨木さんの日々感じてこられたものや生き物への感じられ方を垣間見ることのできるエッセイ本です。 私は普段、エッセイはあまり読みません。よほど好きな作者の方のものでなければ……いえ、よほど好きな作者の方でも、ほぼ読みません。 エッセイはどこか違う誰かの物語ではなく、作者本人に起きた事象や感情、思考であるが故に、物語の登場人物のようにいくらリアルであってもあくまで『物語』、と思えないところが苦手でした。作者本人を知ることによって、その作者が書かれた物語を純粋に物語として楽しむことができなくなる場合があることも怖かった。 けれど、今回読んでみようと思ったのはどことなくタイトルに心惹かれたからです。 『歌わないキビタキ 山庭の自然誌』特別何か衝撃を受けるようなものではなかったのですが、ふと読んでみようという気になったのです。 作者の梨木さんが、自然に生きる動物たちへ抱いている感覚が伝わる一冊でした。 八ヶ岳で、霧島で、自然の中で起きる日々の変化や動物たちとの出会い、お母様の介護のこと。 今まで敢えて深く知ろうとしないようにしてきた作者さん本人のお人柄が垣間見え、『生』とはこういうものなのか、としみじみ感じさせられました。 途中、私のまだ知らない世界の話がいくつか飛び出てきたので、いつかしっかり向き合ってみたいと思いました。世界との接点をできるだけ多く持てるようになりたいものです。
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小説家のエッセイは基本的には苦手な部類なのだが、本書からは山庭の植物や動物たちを観察しながら、思いを様々あちこちへ飛ばし、また手繰り寄せては解きほぐして、自分を納得させるような丁寧さが伝わってくる。自然の循環の一端に在る自分をあるがままに受け容れようとする姿勢に大切なことを教わっ...
小説家のエッセイは基本的には苦手な部類なのだが、本書からは山庭の植物や動物たちを観察しながら、思いを様々あちこちへ飛ばし、また手繰り寄せては解きほぐして、自分を納得させるような丁寧さが伝わってくる。自然の循環の一端に在る自分をあるがままに受け容れようとする姿勢に大切なことを教わった気がする。
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コロナ禍からウクライナの戦争2022年9月から23年9月迄が綴られている。鳥と植物、ねずみ、薪ストーブとアクセントというか日常、非日常に気付き共に、哀しみや憂いをも含まみ彩りある文章がつらつらと書かれている。ヒラクビルの本屋で出会った本、タイミングが合った。出会えてよかった。落ち...
コロナ禍からウクライナの戦争2022年9月から23年9月迄が綴られている。鳥と植物、ねずみ、薪ストーブとアクセントというか日常、非日常に気付き共に、哀しみや憂いをも含まみ彩りある文章がつらつらと書かれている。ヒラクビルの本屋で出会った本、タイミングが合った。出会えてよかった。落ち着きを持って振り返る。よく観察しよう、その時、ゆっくり大事な一瞬がある、そんなことを気づかせてくれた本。
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八ヶ岳と霧島の別荘での日々を綴ったエッセイ。たくさんの動植物に出会い感じた事が綴られていて、新しい発見にワクワクしながら読み進めた。 梨木さんご本人の闘病や介護の中で感じた事、長年気にかかっていたことがある時突然わかったことなども綴られていて、共感することも多かった。 梨木さ...
八ヶ岳と霧島の別荘での日々を綴ったエッセイ。たくさんの動植物に出会い感じた事が綴られていて、新しい発見にワクワクしながら読み進めた。 梨木さんご本人の闘病や介護の中で感じた事、長年気にかかっていたことがある時突然わかったことなども綴られていて、共感することも多かった。 梨木さんが丁寧に生活を送っていらっしゃることは小説からも垣間見れるけれど、自然の豊かさに感謝しながら少しでも自然の厄介者にならない生き方を模索して生きていらっしゃることが伝わってきた。梨木さんの別荘周辺での動植物の様々な変化や、管理の難しさから悩みながらも自然豊かなご実家を手放された話…梨木さんであっても自然と共生するために苦慮されていることが多いことを知る。 文化を保ちながら自然と上手い距離間で生きることは喫緊の課題。一人一人がどう向き合うかを考えながら生きていかなければ、動植物との共生は叶わず、身近な野草ですら次々と絶滅してしまうだろう。 それでも、エッセイの中に登場する小さな生き物達との出会いは楽しい。少し毒のある本にも出会ってしまう読書生活の中で、まるで自分が山小屋に滞在して自然に癒されているかの様に感じ、心穏やかになれた本。
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八ヶ岳の麓に建てた「小屋」の、野性味あふれる「庭」で織りなされる生き物を中心に、周りのことなどを語るエッセイ。コロナ禍とウクライナ戦争を越えて。 梨木さんは小説も好きですが、エッセイも大好き。思えばけっこう読んできたなと思います。「ぐるりのこと」や「水辺にて」「渡りの足跡」など...
八ヶ岳の麓に建てた「小屋」の、野性味あふれる「庭」で織りなされる生き物を中心に、周りのことなどを語るエッセイ。コロナ禍とウクライナ戦争を越えて。 梨木さんは小説も好きですが、エッセイも大好き。思えばけっこう読んできたなと思います。「ぐるりのこと」や「水辺にて」「渡りの足跡」などは割と内証的なのですが、近年の「炉辺の風音」あたりからは静かにこちらに語りかけてくるようで何かこう、ぐっと心に染み入るような感じがしています。じっくり梨木さんの語る言葉に浸る素敵な読書体験でした。 以前から世の中の不合理や戦禍で苦しむ人々などを思う内容も多かったのですが、今回はウクライナ戦争が起きてしまい、そのために混乱する胸の内などは僕も同じだったので非常に共感しました。しかし2023年の10月からはイスラエルのガザ侵攻が始まってしまったので、そうした混乱が落ち着く暇もなく世界はきな臭さを増しています。今、エッセイをどこかで連載されているようですが、たぶんガザについて思うこともたくさんあることでしょう。こうした世界の「今」をどう捉えて書いているのかなあ、と思います。悲しい思いからは逃れられないので積極的に読みたくなるわけでは無いのですけど。 ところで重い話も多いのですが、ところどころ軽妙なエピソードも面白くて、「乳がんと牛乳」のくだりなどはとても楽しく読めたりしました。次のエッセイや小説も楽しみです。
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山庭の自然誌 自然の好きな梨木さんらしい 木や小鳥たちの キノコまで菌系を残しておくとまたキノコ生えてくる そのためのキノコ用ナイフがあるという ここに出てくる木や小鳥たちを実際見たり判別できるようになってみたい 自分の病や介護など色々あるけれども生活、自然の豊かさに助けられて...
山庭の自然誌 自然の好きな梨木さんらしい 木や小鳥たちの キノコまで菌系を残しておくとまたキノコ生えてくる そのためのキノコ用ナイフがあるという ここに出てくる木や小鳥たちを実際見たり判別できるようになってみたい 自分の病や介護など色々あるけれども生活、自然の豊かさに助けられている感じがとてもよい
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西の魔女が死んだが好きだったので、梨木香歩さんはいいイメージを持っていた。表紙のキビタキがきれいで購入した。 政治思想が出ていて、もちろんそれを出すのは作家の自由だし悪いことではないんだろうけど、個人的には苦手。もともと連載を掲載していた雑誌の色もあったのかもしれない。 文章自体...
西の魔女が死んだが好きだったので、梨木香歩さんはいいイメージを持っていた。表紙のキビタキがきれいで購入した。 政治思想が出ていて、もちろんそれを出すのは作家の自由だし悪いことではないんだろうけど、個人的には苦手。もともと連載を掲載していた雑誌の色もあったのかもしれない。 文章自体は綺麗なフレーズが散りばめられてるのに、どうも没頭できなかった。
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梨木さんの文章からは、鳥や植物のことをたくさん教えてもらっている。自然とのかかわり、戦争、病、介護などたくさんの思いが、語られていた。
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※このレビューにはネタバレを含みます
久しぶりの梨木さんのエッセイだったけれど、身内の葬式等のあれやこれやで慌ただしく、また図書館の返却日の関係で読み切ることが出来なかった。 気になったのは認知症の話。 梨木さんの年上の友人Sさんとのやり取りがとてもリアルで、高齢の親を持つ身としては胸の痛む箇所が多々あった。Sさん宅の、整頓の行き届いた台所の変わりよう(壁のあちこちに消化の確認、ゴミ出しの確認などが張り巡らされてあったり鍋が焦がしてあったり)を読みながら、いずれうちの母親もこうなるかも、と思うと怖くなった。いや、私だっていずれ…。 Sさんの「私が私でなくなる。こんな残酷な病気ってある?」涙をポロポロ流しながら言う言葉に胸がギュッと締め付けられた。つい母親の姿と重ねてしまう。 「SさんはずっとSさんです。思考に連続性がなくなったとしても、誰かと何かを論じ合う、ということができなくなっても、魂の佇まいは変わらない」 「たとえ倫理的に考え抜く力をなくしても、動けなくなっても、私たちには幸福で満たされる可能性があるということ。さまざまな『感じ方』を楽しむ術を、身体の各所が持っているということ。諦めないでください」 梨木さんのように割り切って考えられれば良いのだけれど。私も梨木さんの域に達するにはまだまだ修行が必要だ。
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