ナイフをひねれば の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ホロヴィッツとホーソーンの物語が三作で終わらない事は今作で周知されたが、あくまでもホロヴィッツの不幸に基づいており、書くのが嫌になる気持ちはとても伝わる(笑)しかし、残念ながら読者はホーソーンをそこまで嫌いでは無く、実はホロヴィッツにこそしっかりしてくれ!!と思ってしまう部分もあり、今回殺害された劇評家の様に殺害されるのではと内心不安でいっぱいだ。 ホロヴィッツが自身の経験譚として記載している関係上、どうしても彼の思考や心理を読者はより深く体感する訳だが、そのせいもあり、ホロヴィッツに対して作品を積み重ねる事に嫌悪感が膨らんでいき、ホーソーンが泊めてくれたのにも関わらず机の引き出しを除いたり彼の兄弟から根掘り葉掘り聞き取ろうとしたり、とても分別のある人物だとは考えられない有様だ。(ホロヴィッツ自体が若い人物であれば問題ないのだが。) 今回はホロヴィッツが脚本を担当した舞台が劇評家にこき下ろされるが、その劇評家がホロヴィッツのもらったナイフで殺害される事件が発生。当然、ホロヴィッツが逮捕され(しかもカーラ警部!!)、一時釈放はされるが、警察が証拠をあつめている数日の内に真犯人を突き止める為、ホーソーンに以来し、真相を突き止めるという内容だ。 最後にネタバレに関わる感想を書いているが、クリスティのとある作品からの着想がある様に感じたが、出来栄えは一目瞭然だ。今作も面白いが、偶々起きた事の使い方に不満を感じてしまい、もう少し推理小説としての矜持があれば面白かった。トリックに関わる部分もクリスティ作品のヒントから、ある程度流れが予測できてしまい、想像出来てしまう。 今後、ホーソーンとヒルダが契約を交わし、ホロヴィッツも了承した事を嬉しく思う反面、いい年齢なので聞き分けのない子供みたいな事は控えて欲しい(笑)ヘイスティングスはポアロより年下であった為、キャラクターを許容できたが・・・ 以降ネタバレ ホロヴィッツがクリスティ作品を楽しんでいた事はこれまでの作品から読み解く事ができるが、今回は「マギンティ夫人は死んだ」から着想された様な印象を持った。そんな中でどうしても二作品を比べてしまうのだが、作品の完成度はやはり「マギンティ夫人は死んだ」が飛び抜けている。「マギンティ夫人は死んだ」はイギリスの昔の遊びから来ている様だが、実際にマギンティ夫人が被害者になり、何故被害者が殺害されたのか。というフーダニットに最大の焦点をあてる訳だが着想と進行がとても面白い作品だった。一方、今作では進行に深みがないため、ホロヴィッツの不平不満がベースになっており、どうしても完成度の面ではクリスティに軍配が上がってしまう。「マギンティ夫人は死んだ」は決してクリスティの最高峰とは言われていないが、彼女は傑作を山程出している為、未読の方には是非読んでみてほしい。
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