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サキの忘れ物 の商品レビュー

3.6

43件のお客様レビュー

  1. 5つ

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  2. 4つ

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2024/01/03

#サキの忘れ物 #津村紀久子 #読書記録 ブハラからタシュケント行きの鉄道の中で読了。いや、爽やかな明るい本読みたいな、と思ってたんだけどね。全然違った。すっかり不思議な物語たち。不思議な世界に連れ込まれました。 表題作『サキの忘れ物』は、普通の日常物語。でいながら妙に社会派...

#サキの忘れ物 #津村紀久子 #読書記録 ブハラからタシュケント行きの鉄道の中で読了。いや、爽やかな明るい本読みたいな、と思ってたんだけどね。全然違った。すっかり不思議な物語たち。不思議な世界に連れ込まれました。 表題作『サキの忘れ物』は、普通の日常物語。でいながら妙に社会派感を覚える。高校中退で、自分というものがなく、ぼーっと生きている(自堕落ではなく、そう生きるしかない切ない、苦しい感じ)主人公が、本と(そしてその持ち主と)出会って、真っ直ぐ前を見られるようになるお話。 『王国』は、幼稚園児童の話。おぉ。こんなに子供目線になれるのすごい。 『ペチュニアフォール…』『行列』『河川敷のガゼル』『真夜中をさまようゲームブック』は不思議感が溢れている。異世界を淡々と描かれると、なんか不気味で不穏。 『喫茶店の周波数』『Sさんの再訪』は割と普通の物語。だが、なるほど、『サキ…』も含めて、なんか、人の気持ちに入り込みすぎたり、自分の気持ちを自分に暴露しすぎていたり、な、生きにくい感じが息が詰まる。のが、なんか不気味で面白いのか? 『隣のビル』は再び普通でかつちょっと明るい未来が見える(普通の日常が描かれるサキ、喫茶店、Sさん全て、未来は明るくはあるな。が) 旅先で読む本じゃない。。

Posted byブクログ

2023/12/16

久しぶりに津村さんの作品を読みました。 帯は、 ------------------------- 1冊の 文庫本が、 18歳の千春を 変えてゆく。 いつまでも残響が胸に残った。(森絵都) 津村さんの新作は希望のひとつなのだった。(益田ミリ) -----------------...

久しぶりに津村さんの作品を読みました。 帯は、 ------------------------- 1冊の 文庫本が、 18歳の千春を 変えてゆく。 いつまでも残響が胸に残った。(森絵都) 津村さんの新作は希望のひとつなのだった。(益田ミリ) ------------------------- 9話の短編集です。 文字が並んでいるだけなのに、 著者によって雰囲気が違うんですよね。 (当たり前ですね。苦笑) 心が疲れていたり、 ざわざわしているときに津村さんの作品を読むと、 落ち着くというか、冷静になれるというか。 1作品目の「サキの忘れ物」、 最後の「隣のビル」が個人的には好きで、 それにサンドイッチのように挟まる形で、 「ベチュニアフォールを知る二十の名所」、 「真夜中をさまようゲームブック」は 少し怖くて好きでした。 「喫茶店の周波数」は お気に入りの喫茶店で訪れる人たちの会話を盗み聞きする場面がある(聞こえてきちゃうのかもですが)んですが、 その気持ち、なんかわかる…とじわじわしてました。笑 「Sさんの再訪」は昔の友人を思い出せず、 当時の日記を読み返して確認するものの、 登場人物はイニシャルで書かれていて、 たくさんSさんが登場するんですが、 それもくすりと笑えます。 「行列」もなんですが、 よくわからない、 ちょっと不思議な世界観のなかに、 日常生活のなかでちょっと感じる (だからすぐ忘れたりなかったことにしちゃう) モヤモヤとかとても嫌な気持ちとか、 ちくっとするようなことを描いていて、 だけどふっと軽くなったり落ち着くような結末だったり。 普段はあまり解説をしっかり読むことはないのですが、 本作の解説は読みやすくて良かったです。

Posted byブクログ

2023/12/15

9編から成る短編集。表題の「サキの忘れ物」は、1札の本が千春にもたらした変化が素敵だなと思った。「喫茶店の周波数」は、聞き耳立ててるつもりはなくてもついつい話の先が気になってしまうの分かるなあ、そうか周波数が合っちゃったのか、と共感。真夜中をさまようゲームブック」はゲーム感覚で読...

9編から成る短編集。表題の「サキの忘れ物」は、1札の本が千春にもたらした変化が素敵だなと思った。「喫茶店の周波数」は、聞き耳立ててるつもりはなくてもついつい話の先が気になってしまうの分かるなあ、そうか周波数が合っちゃったのか、と共感。真夜中をさまようゲームブック」はゲーム感覚で読めて面白かった。

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2023/11/04

様々な語り口の短編小説。「サキの忘れ物」では読書の素晴らしさを感じたし、「王国」も新しい世界の切り取り方を知れて良かった。

Posted byブクログ

2023/10/31

表題作「サキの忘れ物」がめちゃくちゃ良かった。少しでも本が好き、好きだった時間を持つ人の心に沁みるんじゃないかなあ。続く「王国」も好き。じっと白目を剥いてる幼稚園児を想像すると面白い。 津村記久子はエッセイとお仕事小説(いわゆる「お仕事小説」じゃないのだがそう呼びたい)しか読んだ...

表題作「サキの忘れ物」がめちゃくちゃ良かった。少しでも本が好き、好きだった時間を持つ人の心に沁みるんじゃないかなあ。続く「王国」も好き。じっと白目を剥いてる幼稚園児を想像すると面白い。 津村記久子はエッセイとお仕事小説(いわゆる「お仕事小説」じゃないのだがそう呼びたい)しか読んだことがなかったので、新鮮な短編集だった。人間観察から生まれる毒とユーモア、こんなのも書かれるんだ。嫌味がないよね。 この人の書く人物って、地味だけど(失礼)確かな感触があって安心するんだよな。地に足ついてるっていうか。それって凄いことなんだろう。

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2023/10/21

解説も含め一つの作品だった。自らの読解力では落とし込み、腹落ちしなかった部分も、都甲幸治さんの解説で納得行った。たしかに「境界線を越える」がキーワードだった。繋がりのない短編集だと思っていたが、すごく納得。 わたしもサキの短編集読んでみたくなった。

Posted byブクログ

2023/10/16

「とにかく、この軽い小さい本ことだけでも、自分でわかるようになりたいと思った。」 当たり前だけど、読書をする行為は、読書から何かを得る前に必要なこと。そして、本を手に取る事のハードルの高さは、人によって違う。そのハードルを超えた時に、はじめて知ることに、感じることに出会う。 「行...

「とにかく、この軽い小さい本ことだけでも、自分でわかるようになりたいと思った。」 当たり前だけど、読書をする行為は、読書から何かを得る前に必要なこと。そして、本を手に取る事のハードルの高さは、人によって違う。そのハードルを超えた時に、はじめて知ることに、感じることに出会う。 「行為」と「得る事」の間に隙間がなくて、同時に満たされているように、身体の動きのように、本と接する人がいる。そういう姿は、心を打つほどに美しい。 「見守っている、とデリラは漂っていった。見守っている。あなたがわたしの存在を信じている限り、わたしは現れる。」 子どもの頃、頭の中に物語があって、一人の時によくその世界に入り込んでいた。中学ぐらいまで続いていて、むちゃくちゃな物語だったけど楽しんでいた。逃げ場だったのだろうか…。 「はいはい、パワースポットをお探しとのことですね。」 そういえばパワースポットと言われる場所には歴史が絡んでいる事がほとんど。そして、観光する人は、歴史の一面しか見ていないことがほとんど。視点を変えたらとても怖いものが見えてしまうのかも。 「隣の席の人の会話はラジオみたいだ、と思う。」 喫茶店に行った時、どこに座ろかと必ず迷う。それは人との距離と、見える景色がいつも判断基準になるのだけど、距離の方はなかなか難しい。ここしかないと座った場所で、隣りの人のげんなりする話の渦に巻き込まれてしまう事がある。 「日記には、五人のSさんに加えて、もう一人のSさんのことが書かれている。私の夫である、阪上のことだ。」 振り返って、嫌だったことの確認が、今の選択につながってしまうのは怖い。 人の本質は変わらない。 人は日々更新されていく。 相手をどちらの視点で見るのかで、諦めと希望の比重が変わる。 「あれはすばらしかったですよ。本当にすばらしかったですけれども、もっと苦労せずに見られて、同じぐらい良いものもありますよ」 行列は基本的に嫌いだ。待つとか並ぶとかはほとんどしない。そうしないと出会えないものもあるけど、そうしない事で出会えるものもある。でもみんながそう思うべきとは思っていないし、自分も、例外的に、積極的に並ぶ事を選ぶ時もある。ところで「あれ」ってなんだろう…。 「どこもかしこも居心地が悪いのだとしたら、それは柵や檻の外を選ぶだろう。」 我々は囲われる事に安心や安全を見つけてしまう。外側に目を向けてもなかなか動けない。 「真夜中をさまようゲームブック」 なんとなくゲームは昔から苦手。理系だから得意なのでは、とよくわからない理由で規定される事が過去に何度もあった。数学が専門だったけど数値計算だって苦手。 「まだ自分にこんな運があるんなら、もうあいつに傷付けられないところへ行こう、と私は決めた。」 人生の選択はちょっとした運に縋る事なのかもしれない。いや、その運に祈りを託す事なのかな。 読んで良かった本。 いろいろな事を思い出した。 そういうところをついてくる物語達だった。

Posted byブクログ

2023/10/14

内容に毒々しいものはないのだが、なぜかその中にもユーモアが溢れている。癖のない文体になぜか注目してしまう。

Posted byブクログ

2023/10/12

 短編小説にはいきなりテーマを提示し、それを放り出して終わるという類のものがある。それが短編の魅力であり、読者側のお約束でもある。それに違和感を覚える人はついていけないかもしれないが、枠内に入ってしまえば自由に楽しむことができる。  この小説集は短編のそういう性格を巧みに利用して...

 短編小説にはいきなりテーマを提示し、それを放り出して終わるという類のものがある。それが短編の魅力であり、読者側のお約束でもある。それに違和感を覚える人はついていけないかもしれないが、枠内に入ってしまえば自由に楽しむことができる。  この小説集は短編のそういう性格を巧みに利用している。こまかな設定の説明は最低限にして、いきなり本質を見せつけている。表題作の「サキの忘れ物」は学校をやめ、居場所をなくしつつあった主人公が、バイト先の客が残した文庫本をきっかけに自分を取り戻していくといった内容で、それがサキという短編作家の小説であるというのがポイントになっている。小説によって自分を変えていく人物を、小説の主人公として読者として読むという画中画もしくは劇中劇のような不思議な感覚になる。  「行列」という作品では有名なものを行列してでもみるという人間の心理をそのまま作品にしている。途中で起きる困惑や欺瞞、あるいは物質欲がもたらす悲喜劇などうまく書き込まれている。  「真夜中をさまようゲームブック」は読者自身のサバイバルゲームのような体をもっているが、小説の展開がどのように構想されるのか、その途中の段階を見せてくれる。  この作品集の評価は割れると思う。私などは実験的な書き方を楽しめた。星新一のようでもあり、筒井康隆のようでもあり、そのどれでもない独特の手触りのある作風だと感じた。

Posted byブクログ

2023/10/04

津村記久子さんはいつも仕事、職業、職場を舞台として女性を書く作家というイメージ。正社員であれ、派遣社員であれ、パートやアルバイトであれ、そこで生まれる微妙な違和感や居心地の悪さを、そして多くはそこから救われる瞬間を描いているように見える。 違和感なのでひどく辛い世界ではない、しか...

津村記久子さんはいつも仕事、職業、職場を舞台として女性を書く作家というイメージ。正社員であれ、派遣社員であれ、パートやアルバイトであれ、そこで生まれる微妙な違和感や居心地の悪さを、そして多くはそこから救われる瞬間を描いているように見える。 違和感なのでひどく辛い世界ではない、しかしそのどん底に落ちていくのは辛い、そこから誰かの助けの手や、ちょっとした気づきで、ちょっと救われる。 そういう意味では表題作の「サキの忘れ物」は違和感以上の不幸の中に主人公は落ち込んでいるし、そこから抜け出す流れもちょっといつもの津村記久子さんの作風とは異なる気がするが、作品としてはやはり一番読後感が良い。

Posted byブクログ