ラウリ・クースクを探して の商品レビュー
主人公のラウリは、1977年にバルト三国のひとつエストニアで生まれた。ラウリがコンピューター言語に秀でた才能を持っていることやそのころのエストニアの様子がラウリの成長や周りの人との関りとともに語られる。章は三つに分かれていて、第一部が生後~学生時代。ラウリと同じような才能を持つ友...
主人公のラウリは、1977年にバルト三国のひとつエストニアで生まれた。ラウリがコンピューター言語に秀でた才能を持っていることやそのころのエストニアの様子がラウリの成長や周りの人との関りとともに語られる。章は三つに分かれていて、第一部が生後~学生時代。ラウリと同じような才能を持つ友人イヴァン、絵の才能があるカーテャの3人が中心(表紙参照)。それから時代が飛んで、就職してから(2章)、現在(3章)。 結局一番この本で訴えてきたものがなにかわからないまま読了してしまった印象。IT?ソビエトと周辺国?政治が絡んだ時の友情?だけど、読みやすいし、いろいろ心に残るようなエピソードも多くて、サクサクと読了しました。全体を通してライターのような人物がラウリを取材したくて探しているのですが、これは作者みたいな人を想像して読んでいたのですが...なるほど。でした。 カーテャの「わたしを不幸だと決めつける権利なんか誰にもない」のセリフが良かったです。あとは自分の特異な能力や趣味を貫くような生き方はなかなかできないだけに小説では堪能したい。そこも楽しかった。 中学校から。語られる内容が難しく向いていないが、性や暴力の叙述は少なめなので小学生も大丈夫。
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大人たちの勝手な理由で離れ離れになる仲良し三人組。ラウリ、イヴァン、カーテャがボートで釣りを楽しむ様子が描かれた表紙。物語の先を知る読者として、遣る瀬無い思いで暫し眺めた。
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ソ連邦時代のエストニア生まれのラウリ、レニングラード生まれのイヴァンのプログラミングの2人の天才少年がエストニアのタルトゥーの中等学校で10歳の時に出会うところから物語は始まり、もう1人の親友だったカーテャも含め3人が経験した1991年のエストニア独立、そして現代(恐らく2022...
ソ連邦時代のエストニア生まれのラウリ、レニングラード生まれのイヴァンのプログラミングの2人の天才少年がエストニアのタルトゥーの中等学校で10歳の時に出会うところから物語は始まり、もう1人の親友だったカーテャも含め3人が経験した1991年のエストニア独立、そして現代(恐らく2022年)と3つの時代が描かれている。ラウリやカーテャとイヴァンは国を隔てることになり、それぞれが描いていた職業とは違う道で活躍しているが、敵性国家間で会うのは難しい、そして44歳でと3人が再会する場面は美しい。3人はそれぞれ何をなしたというわけではなく、通常の人生を歩んだという言葉が印象的である。旧ソ連の構成国間の複雑な関係が今でも続いていることを知らされる。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
同作者の本は意外にも読んだことがなかったのだが、するりと読めてさっぱりと終わるいい話。三部仕立てではあるが印象としては長編ではなく中編。 ドキュメンタリー風の地の文を見た時点で、読書慣れしている人なら「私」の正体に関する仕掛けがあることは予測できたかと思うが、ネタバラシには思い切りぶん殴られた。とはいえヒントは「通訳と違って『私』はどうやらロシア人」くらいしかなかったと思うので仕方ないか。 「ドキュメンタリー風」の癖に主人公ラウリの心理までやけに詳しいなとは思ったが、第三部でいろいろと腑に落ちる。1時間の長電話にもここまで来てまさかと思わされたが、ほっと一安心。 読んでいるうちに作中の年代が2024年現在に追いつき、遠い過去のドキュメンタリーと思っていた話が現実と地続きになる感じは今でしか味わえないものだと思う。同時に、ウクライナ侵攻がやがて歴史へと変わっていくものだということも思わされた。 あとはこの本編が「ルポ」ではなく(もちろんこれは創作ではあるのだが)イヴァンによる都合のよい「創作」であったらどうしようなどと考えてしまったが忘れることにする。
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#ラウリ・クースクを探して #宮内悠介 23/8/21出版 https://amzn.to/48C7hgt ●なぜ気になったか 2023年下半期直木賞候補作なので、無条件に読むと決めている本の1冊。初めての作家さんの作品を読む機会が得られるし、相性の確認も兼ねて読むことにしてい...
#ラウリ・クースクを探して #宮内悠介 23/8/21出版 https://amzn.to/48C7hgt ●なぜ気になったか 2023年下半期直木賞候補作なので、無条件に読むと決めている本の1冊。初めての作家さんの作品を読む機会が得られるし、相性の確認も兼ねて読むことにしている ●読了感想 ソ連やバルト三国の歴史に興味があればさらに楽しめたと思うが、そうでない僕でも十分楽しめた。登場人物たちが時代の変化に影響を受けながら絡み合うストーリ、読みやすい文章もあいまって一気に読了 #読書好きな人と繋がりたい #読書 #本好き
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タイトルと表紙から想像していた内容とは、全く違っていた。 少年時代を共に過ごした無二の親友を探す主人公、回想部分と現代が交差しながらストーリーは、進んでいく。 今も終わらない戦争、その背景の歴史を知らずにニュースを眺めている自分は、無関心であるのと変わらない。 まずは、知ること、...
タイトルと表紙から想像していた内容とは、全く違っていた。 少年時代を共に過ごした無二の親友を探す主人公、回想部分と現代が交差しながらストーリーは、進んでいく。 今も終わらない戦争、その背景の歴史を知らずにニュースを眺めている自分は、無関心であるのと変わらない。 まずは、知ること、そして1歩を踏み出すことが本当の反戦ということだろう。
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ソ連時代のバルト三国・エストニアに生まれたプログラミングの天才、ラウリ・クースクをめぐる物語である。 天才といっても歴史上に名を残した人物というわけではなく、将来を嘱望されながらもソ連崩壊という時代の波に翻弄されていつの間にか行方知れずになってしまう。 本作ではラウリの伝記を書く...
ソ連時代のバルト三国・エストニアに生まれたプログラミングの天才、ラウリ・クースクをめぐる物語である。 天才といっても歴史上に名を残した人物というわけではなく、将来を嘱望されながらもソ連崩壊という時代の波に翻弄されていつの間にか行方知れずになってしまう。 本作ではラウリの伝記を書くために彼の足取りを追うジャーナリストの視点で、過去を回想する形で物語は進んでいく。 ラウリ・クースクは今どこにいるのか?という大きな謎と並行して、なぜこのジャーナリストはラウリ・クースクを探しているのか?全く名を知られていない人物の伝記に何の意味があるのか?という疑問が読者の頭に浮かぶと思う。第二部の終わりでその理由は明かされるのだが、なるほどそういうことだったのか。気付く人は気付くと思うけど、自分は見事にやられました。 それにしても、まさか量子コンピュータとブロックチェーンが出てくる話を直木賞候補作で読めるとは思わなかった。たまたまこの半年ほどの間にブルーバックスで両方のテーマに関する本を読んでいたおかげで、個人的にはタイムリーで印象深い一冊になった。 もちろんこれらの仕組みについての知識が無くても大丈夫。誰でも楽しめる良質のエンタメになっているので。というか現段階における宮内さんの最高作ではなかろうか。これまで読んだ作品の中では一番人間が描けていると思う。
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旧ソ連時代、内紛の中でプログラミング 技術を通して育んだ友情。時代背景は複雑で難しいところがあるけれど、ストーリー自体は分かりやすく結末も良かった。
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24/01/04読了 ラウリを探し、その人生を紐解く物語。 ミステリランキングに入っているのが謎だったのですが、読み終えて納得。よいラストだった。
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北欧の歴史には詳しくなかったので、最初は不安でしたが、知らなくても感覚でついていけました。話に緩急があまりなくて、核もよくわからず疑問が多いまま、でもラウリという人物にはどんどん興味が湧いていってスルスル読めてしまいました。終盤で点と点が繋がる気持ちよさは格別でした。本でしか味わ...
北欧の歴史には詳しくなかったので、最初は不安でしたが、知らなくても感覚でついていけました。話に緩急があまりなくて、核もよくわからず疑問が多いまま、でもラウリという人物にはどんどん興味が湧いていってスルスル読めてしまいました。終盤で点と点が繋がる気持ちよさは格別でした。本でしか味わえない気持ちいいエンターテイメントでした。
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