もぬけの考察 の商品レビュー
都市の片隅にあるマンションの408号室を舞台に、次々に不穏な退場の仕方で入れ替わっていく住人たちを描く。 4つの短いエピソードが収録されているが、特にそれぞれの住人の退場についてなどの詳細があまり語られていないので、これ自体がいろいろと考察しがいのある小説である。ちょっと猟奇的な...
都市の片隅にあるマンションの408号室を舞台に、次々に不穏な退場の仕方で入れ替わっていく住人たちを描く。 4つの短いエピソードが収録されているが、特にそれぞれの住人の退場についてなどの詳細があまり語られていないので、これ自体がいろいろと考察しがいのある小説である。ちょっと猟奇的なホラー味もある。 ただ、自分にはちょっと純文学味が強すぎて、最後までとっつきにくかった。なんだんたんだ、これは、という読後感。
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ただ淡々といなくなるまでがかかれていて それがひどく不気味に感じました なんでこんな書き方なんだろうと 最終章をよんで、なるほど、 そうだったんだね。となりました 前の住人とはなんの関係も関連も無く その部屋に住んだ住人はいなくなる… ついさっきまで普通だったのに そうじゃなく...
ただ淡々といなくなるまでがかかれていて それがひどく不気味に感じました なんでこんな書き方なんだろうと 最終章をよんで、なるほど、 そうだったんだね。となりました 前の住人とはなんの関係も関連も無く その部屋に住んだ住人はいなくなる… ついさっきまで普通だったのに そうじゃなくなる瞬間が一瞬で 静かすぎて不安になります。 部屋という空間とそこに住む住人のみの連作短編 ある意味家系ホラー…なんでしょうか。 ページ数はそんなに無くて 読みやすいけれど、しっかり不穏です。
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※このレビューにはネタバレを含みます
面白かった。特に1話目。最後の最後に隣人が蜘蛛女?だった事のホラー感と衝撃。文面を5度見した。これは、主人公が自ら外の世界との関わりを断ちだんだんカビが生えてしまったという隠喩にも感じるが、そもそもハエトリグモを故意に飢え死にさせていた事への罰が蜘蛛女の襲来なのかもしれない。でももっと遡るとこんな風になったのは、コロナ禍で出勤が減ってこの陰鬱な部屋に引っ越して来たから。人と会う事が減って身なりを気にしなくなって、どんどん社会性が失われていったから。そんな生活で何かしら溜まったストレスの捌け口が恐らく虫への加害のきっかけになったから。人に会わなすぎて判断力が鈍っていなければ管理会社はダメでも119番でレスキューして貰えば良かった。会社の人からの電話に出るだけでも良かった。でも彼女はそのどちらもせず、離れた家族には気を遣い、気軽に連絡出来る友もなく、色々な要因が合わさって破滅を迎えた。蜘蛛達にやってきたように、彼女はマンションと建物の間に落ちて終わった。 2話目、3話目も外の世界との関わりのせいで破滅する話だ。不気味で、生の感覚がなく、ずっと陰鬱な雰囲気。それが一つの部屋に押し込められた個人そのものでもあるようだ。「事故物件」「変な家」など、不動産ものとしてタイムリーなテーマでありながら住人達は皆いなくなってしまうから事故物件にはならないという皮肉さも良い。ずっと繰り返されていた向かいのビルの屋上で昼寝するデブ猫が最後に侵入してくるのも繋がる気持ちよさがあった。 文鳥はとても可哀想であったが、他者に与えられるもの・奪われることの理不尽さを感じ、よく効いていたと思う。3話目の主人公と文鳥の中身が入れ替わったのか、単に気がおかしくなってしまったのか。前者だったらちょっと救いがあるかなと思っているし、人間も文鳥も体の操縦に突然不慣れになっているので可能性は高い。文鳥とは〜っていちいち解説してるのは4章で出てくる作家個人だから、真実とは限らない。「自分が描いた絵に吸い込まれる部屋」だから、まぁあり得る。 最終話の画家の話は、なるほどねと思ったけどちょっと蛇足だったかも。彼?が部屋の外の話も知っているのは変だ、となる。それなら1〜3話のみで謎の第三者目線のまま終わっても別に構わなかった気がする。 引き込まれる文体で良いホラーを書けそうな作家さんなので、また他の作品も読んでみたいなと思った。読書体験としては良いものになった。
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ホラーではないけれど怖い連作短編集。 こんな本を読んだら安い賃貸には住めなくなるかも。 読んだ後も引きずる一冊でした。
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次々に変わる408号室の住人が、こんな怖い思いをしていたなんて、という連作ミステリ。内容が身近で、自分も部屋を借りていた頃、前の住人について思いを巡らせたり、実際郵便物が届いたりしたことを思い出し、恐怖心がジワジワと湧いてくる。視点が住人、ペット、家と変わって書かれているところ...
次々に変わる408号室の住人が、こんな怖い思いをしていたなんて、という連作ミステリ。内容が身近で、自分も部屋を借りていた頃、前の住人について思いを巡らせたり、実際郵便物が届いたりしたことを思い出し、恐怖心がジワジワと湧いてくる。視点が住人、ペット、家と変わって書かれているところも面白い。
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とある賃貸マンションの408号室に引っ越してきた人は皆いなくなってしまう。 私が前に住んでいた部屋でお隣さんが何度も入れ替わったことがあって、この部屋なんかあるのか…と不安になったことを思い出した。交流はないけど物音でなんとなく生活感がわかって勝手に色々と思い巡らせたもんだけど、...
とある賃貸マンションの408号室に引っ越してきた人は皆いなくなってしまう。 私が前に住んでいた部屋でお隣さんが何度も入れ替わったことがあって、この部屋なんかあるのか…と不安になったことを思い出した。交流はないけど物音でなんとなく生活感がわかって勝手に色々と思い巡らせたもんだけど、そういう現実味のある所からあらぬ方向へ展開していくのが面白かった。 408号室の隣にずっと住んでいたサラリーマンは私かもしれない。
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あるマンションの408号室のおはなし。不思議な感じ。三崎亜紀の感じを思い出した。バラバラな短編かと思っていたら、緩やかにつながっている。部屋と郵便物と消える住人。装画がうまく全編を表現している。最後の「もぬけの考察」では、著者自身が金沢美術工芸大学美術工芸学部デザイン科視覚デザイン専攻卒だからか、絵描きの独白には熱がこもっているように感じる。
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とあるマンションの一室でおこる出来事とは…。 その部屋は、408号室。そこに住む人はある日突然いなくなる。 初音〜ある日から出社拒否になり家に篭り蜘蛛を飼い殺す日が続いてから突然に玄関ドアが開かなくなり…。 末吉〜大学へ行かずに繁華街で女性に声をかけ続ける日々、そのうちひとり...
とあるマンションの一室でおこる出来事とは…。 その部屋は、408号室。そこに住む人はある日突然いなくなる。 初音〜ある日から出社拒否になり家に篭り蜘蛛を飼い殺す日が続いてから突然に玄関ドアが開かなくなり…。 末吉〜大学へ行かずに繁華街で女性に声をかけ続ける日々、そのうちひとりの女性が家に頻繁に来るようになると…。 こがね〜友人から文鳥の雌を預かり、世話をすることになったがだんだんと苦痛になってきて…。 もぬけの考察〜事故物件ではないが、以前からこの部屋408号室に住む人は行方不明になる。 次の住人となった画家である私は、その部屋を描いてみたら取り込まれてしまったのか… 描いていたのに描かれてしまっている… 私の思考で描くのは新しい住人の記録。 隣の部屋の咳をする男はどうもないの⁇と思ってしまう。 孤独と恐怖にぞわりとする。
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群像新人文学賞を受賞しているだけあって、あるマンションの408号室を舞台に、この部屋の住人たちが日常から逸脱して行く様子が怖いです。怖いと言ってもホラー的ではなく精神的な怖さです。108ページ程の薄い本なのであっという間に読めますが、内容は本の見かけほど軽くはないなぁと思いました...
群像新人文学賞を受賞しているだけあって、あるマンションの408号室を舞台に、この部屋の住人たちが日常から逸脱して行く様子が怖いです。怖いと言ってもホラー的ではなく精神的な怖さです。108ページ程の薄い本なのであっという間に読めますが、内容は本の見かけほど軽くはないなぁと思いました。
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“HTTP 408 Request Timeout”みたいな感じだろうか。同じ部屋で住んでいた人々の関連性はもちろん。一つ一つの話が面白い。引きこもっていた女性もナンパ師の彼も文鳥も最後の語り手もいずこへ……。
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