検証 ナチスは「良いこと」もしたのか? の商品レビュー
よいことをしたといわれるが、結局は独自のものではなく前政権からの引き継ぎで効果を上げていたり、他国と同じことを幾分か徹底的に行ったり、名目は立派だったけど結局は戦争のための、戦争による経済だった。つまり自転車操業だった。そもそもよいこととされる政策の対象はいわゆる健常なドイツ人の...
よいことをしたといわれるが、結局は独自のものではなく前政権からの引き継ぎで効果を上げていたり、他国と同じことを幾分か徹底的に行ったり、名目は立派だったけど結局は戦争のための、戦争による経済だった。つまり自転車操業だった。そもそもよいこととされる政策の対象はいわゆる健常なドイツ人のみであったため良いこととは言いきれない。そしてだんじょかんで強く家父長制的価値観が強く押し出されているので政策の内容が変わるものもあった。 移民が増えている日本は当時のドイツとやや似た状況になってきているため、ナチ政権のようなことはしないようにしつつ、けれども日本を守るにはどうすればいいか考える必要があると思わされる。 以下各章まとめメモ まずナチズムは国家社会主義といわれるが、正しくは国民社会主義であり、美大落ちの理想の民族に当てはまる場合には社会的な恩恵を与える、国家はそのための道具という考え方だそう。そして社会主義とあるが所謂左翼な意味合いでなく労働者階級をとりこむための方便であり、民族統合の道具という意味で美大落ちは左翼という批判はあたらない。 選挙で選ばれたので民主的という部分もあるが、そもそも保守第2党くらいで与党ではなく連立政権にいれてもらって首相にしてもらった形であり、当時の与党内の認識の甘さが原因。その後美大落ちが解散総選挙を実施して暴力的に共産党員を襲撃して棄権扱いにしたことで成り上がったので完全に民主的ではなかった。 民衆も全員が熱心に支持していたわけではなく、世情に乗っかって利益を得られるから便乗している部分もあった。そのせいでユダヤ人と仲良くしていると密告されて利益の養分にされるのである意味強制されてユダヤ人を疎外している面もあった。同意と強制両方があった。 アウトバーンを始めとした政策は前政権からの引き継ぎであり、そして経済界の努力によりアメリカよりも先に不況から回復しつつあった。よってナチスの政策はプロパガンダ的な意味合いの方が強い。さらに、若者や女性を労働から排除して雇用を確保し賃金抑制などもしたことによりむしろ生活水準は下がった。そして軍需経済により一気に回復局面に入るが、その際の公債で歳出が歳入を上回り、占領地からの収奪がないと回らない、でもそのために金も人も足りないという自転車操業に陥った。 労働者向けに余暇を楽しめるようなプランを政策としてだしたりフォルクスワーゲンを作ったりしたが、効果は一部分に留まったり車は金だけ集めて戦争突入により車は生産されなかったりした。必ずしも労働者の味方ではないが政権への多少の引き寄せ効果はあり、戦後のマスツーリズムの先駆けになった点もある。 子供を増やす政策をとっていたが、これも借り物。そもそも当時の西欧全体で少子化していたので各国も色々やっていた。ナチスドイツの場合党に有利なドイツ人のみを対象にしていたし、障碍者とかは断種したりしてた。恐慌明けに自然と増えたのと重なっているだけ。軍需経済のため、十分な金がなく不十分に終わったし、そもそも国が訴えると負担に感じるのでうまくいかなさそう。環境を整えるまではいったけど増えはしなかった。 環境保護もしたといわれるが、お題目は立派だったが徹底はされていなくて戦争が優先されることもあった。食糧増産もそう。そしてなにより戦争したんだから環境破壊してんだろというオチ。 がん検診を導入したとか、健康にたいして熱心だったというが、男性は戦場などで飲酒喫煙を許可されたが、女性はそうでもなかった。この根底には家父長制的考えがありそう。
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読みやすく端的でわかりやすい。「ナチスはいいこともした」とされることのある政策に対して、ひとつひとつ根拠を提示してそれは違うと解説されている。はっきりと否定されていて気持ちがいい。参考文献も丁寧に載せてくれている。
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ナチスを肯定しようとする一部の風潮を真っ向から批判する内容。「良いこと」として挙げられるナチスの政策を専門家の視点から1つ1つ切り捨てていく。実際に本書では99%は「良いことでもなんでもない」という主張であったように感じる(1%分は筆者の主張を踏まえて私の主観)。ゴリゴリの社会派...
ナチスを肯定しようとする一部の風潮を真っ向から批判する内容。「良いこと」として挙げられるナチスの政策を専門家の視点から1つ1つ切り捨てていく。実際に本書では99%は「良いことでもなんでもない」という主張であったように感じる(1%分は筆者の主張を踏まえて私の主観)。ゴリゴリの社会派な内容なため、読みづらさが各所にあった。
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ナチスは極悪非道な政権であっただけでなく、良いこともした、という意見は、ちらほら見聞きしたことがあり、私が聞いたそれは、自然保護、健康増進のための研究、という側面から語られていました。 本書は、ナチスの研究者による、それら(他には、経済回復、労働者向けの福利厚生措置の導入、少子...
ナチスは極悪非道な政権であっただけでなく、良いこともした、という意見は、ちらほら見聞きしたことがあり、私が聞いたそれは、自然保護、健康増進のための研究、という側面から語られていました。 本書は、ナチスの研究者による、それら(他には、経済回復、労働者向けの福利厚生措置の導入、少子化対策)の政策が、どのような社会情勢の中で、どのような目的で行われ、どのような結果をもたらしたのか、そして、どのような二面性もそこには含まれていたのかも合わせて描き出されています。 「良い」「悪い」の意見を持つ、言う前に、多方面から俯瞰して考えることの大切さを感じました。
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数年前からちょこちょこ「いや、いうてナチスも良いことしてるじゃん?」みたいな言説をよく目にするようになり、それを(ほんとか~?)と思っていたのだけどナチスやナチズムに関する本は膨大で「ナチスは良いことをしたのか否か」をピンポイントで検証している本を探せずにいた。 だからこそこの本...
数年前からちょこちょこ「いや、いうてナチスも良いことしてるじゃん?」みたいな言説をよく目にするようになり、それを(ほんとか~?)と思っていたのだけどナチスやナチズムに関する本は膨大で「ナチスは良いことをしたのか否か」をピンポイントで検証している本を探せずにいた。 だからこそこの本が出版されたときはタイトルが知りたいことズバリのもので嬉しかったし、必ず読もうと思っていた。 具体的なナチスの政策を検証するだけではなくなぜ「ナチスは良いこともした」という言説が出て回るのかというメカニズムやSNSなどに反乱する歴史的な言説を巡るあれこれも解説がなされており、それはナチスに限らず魅力的な歴史のあれこれに触れる心構えを知る意味でも読む意義があると思ったし、読めば読むほどナチスがしてきたことは今の本邦の状況に重なりゾッとした気持ちになった
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ナチスが「良いこと」をしたかどうか。 この問いは、レイシストのように偏見に満ちた危険な差別主義的視点だ。ナチスだから、何もかも悪いわけないじゃないか。ユダヤ人だから全てが悪いという構文が成立しないように。物事は二元論ではなく、もっと複雑だ。戦争を全てナチスのせいにして、ナチスの存...
ナチスが「良いこと」をしたかどうか。 この問いは、レイシストのように偏見に満ちた危険な差別主義的視点だ。ナチスだから、何もかも悪いわけないじゃないか。ユダヤ人だから全てが悪いという構文が成立しないように。物事は二元論ではなく、もっと複雑だ。戦争を全てナチスのせいにして、ナチスの存在だけが反省点だからと、思想背景や構造を反省しないならば問題だ。 私はナチス肯定派ではない。ただ、これを狂気の免罪符とするのに反対で、人間は過ちを犯しうるものとして警戒し、政策の良し悪しは当然あっただろうし、寧ろその良いと感じる魅力的な政策によって、悪しき思想が覆い隠される危険性がある、とする立場だ。だから、「ナチスだから」当然悪いよね、は子供の苛めみたいで短絡的だ。と、一応堅苦しい前置きをしておくが、そういう視点はさておき、この本での検証は興味深い。 ナチスの手口を学んだらどうだ、と麻生太郎。文脈的に誤りじゃないとしても誤解を招く。何故なら、大衆はナチスは全て悪だと信じているから。他方、ナチスは健康促進、経済対策、労働者保護的な観点で評価され、やや逆説的に、人体実験が医療向上にも貢献したと言われたりする。本書は、その風説に対し、異を唱える。ナチスは全て悪かった理論の補強だ。以下の通り。ナチスオリジナルじゃないから「良いことではない」みたいな論理破綻も含めて、危うい。 ー ナチスの労働政策については、世界に先駆けて、8時間労働制を実施し、有給休暇を義務づけたなどが挙げられるが、これは正しくない。8時間労働制は、各国の労働運動の要求の結果として、1919年に国際労働機関により国際的基準として確立されたものである。 ー 結婚に際して、貸付金が与えられ、1人産むごとに返済額が4分の1ずつ免除され、4人産めば全額免除。ナチスの家族支援政策により結果として子供は増えたように見えるが、実際には景気回復によって結婚の絶対性が増えたことによるものであり、政策のインセンティブはほとんど働かなかったと言う見方もある。世界恐慌によって結婚ができていなかったカップルが景気回復によって結婚に踏み切った。 ー アウトバーンの建設についても、その雇用創出策としての効果がはるかに小さい。1941年6月に独ソ戦が始まると2百万人のドイツ人が軍隊に召集され、労働力不足がより一層深刻になる。そこで今度はソ連から民間人労働者が大量に動員されるようになり、140万人の民間労働者が男女問わず強制連行された。ソ連からの強制労働者は、ヨーロッパ文化の敵として、強制労働者のヒエラルキーの最下層に位置づけられた。第一次世界大戦のように女性を労働動員すると言う選択肢もあったが、専業主婦としてそれまで生活してきた中産階級以上の女性にとってはなんとしても避けたいもので、国民の指示を失う事態を恐れて、ナチ体制は女性の動員に及び腰。そのため、戦争捕虜を含む外国人労働者に目をつけた。 ー 1938年の11月ポグロム(帝国水晶の夜)以降、ユダヤ人青年によるドイツ人外交官。暗殺への償いと言う名目でユダヤ人が所有する財産の20%にあたる約7000億円がユダヤ人全体に課された。出国するユダヤ人はこれを支払った上で残額の25%を帝国出国税として収めなければならず、金銭や物品を持ち出す場合には関税が90%課された。 ー ナチ体制下では、婚姻健康証明書で遺伝的健康が証明できないと結婚できなかったし、子供を産まない繁殖拒否者には罰金が課されていた。障害者に対しては強制断種。さらには安楽死と言う名の殺害が行われ、同性愛者も迫害を受け、5万人に有罪判決。
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もっとダークな部分かと思ったら、上っ面だけのような感覚だ。 事実ばかりが取り上げイコールナチとなっている知識に、ナチの目標や目的が加わった。 教科書や新聞を読むような誌面で雑誌感覚で読めた。
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アウトバーンの建設やレジャーの提供、少子化対策、環境保護、健康推進などナチスの政策には「良いこと」もあったという主張がネット空間などにあるが、専門家の立場からそれらの俗説を徹底的に批判している。経済政策やアウトバーンの建設は前政権からのものであるし、レジャーの提供や少子化対策、環...
アウトバーンの建設やレジャーの提供、少子化対策、環境保護、健康推進などナチスの政策には「良いこと」もあったという主張がネット空間などにあるが、専門家の立場からそれらの俗説を徹底的に批判している。経済政策やアウトバーンの建設は前政権からのものであるし、レジャーの提供や少子化対策、環境保護、健康推進などは「民族共同体」としてのドイツ国民の意識を高め戦争を遂行するためのものであった。何よりも、結局成果があがっていない。それどころか、ユダヤ人からの収奪、占領地の人々の強制労働などによる収入をドイツ人に分配しただけであった。「最初は借金で生活し、次には他人の勘定でくらした」のである。
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ナチスドイツの政策について、「良いこともしていた」とする議論に反論する書籍。 本書ではまず議論の土台として、主張には「事実」、「解釈」、「意見」の3つのレイヤーがあるとし、知見の積み重ねである「解釈」のレイヤーを無視して、事実のレイヤーから直接意見を導出することの危険性を説い...
ナチスドイツの政策について、「良いこともしていた」とする議論に反論する書籍。 本書ではまず議論の土台として、主張には「事実」、「解釈」、「意見」の3つのレイヤーがあるとし、知見の積み重ねである「解釈」のレイヤーを無視して、事実のレイヤーから直接意見を導出することの危険性を説いている。今まで蓄積されてきた「解釈」を疎かにするなという話は、専門家としてもっともな主張だろう。また、ナチスが教科書的な権威の中で絶対悪として定着している昨今の言説空間において、ポリティカルコレクトネスへの反抗心から、シニカルな相対性を持ち込みたくなる欲望について指摘し、総論としている。 各論においては、まずはじめにナチスの政策の「良いこと」とされる点を書き出し、それについて検討を加える形で行われている。ここで多く示されるのは、たしかに現代的な文脈においては一見「良さそう」に見える政策だが、その実、前政権からの政策結果をナチス独自のものだと宣伝しているだけだったり、民族的一体感を醸成するプロパガンダありきで行われている様子(アウトバーン建築等)だったり、あくまで差別主義・国民社会主義的な理念のもとで行われる排除運動と表裏を成していたり…というような、プロパガンダと戦争需要を優先するならず者国家の様相だ。これらを踏まえ、ナチスの政策を俯瞰したときに見えるその多面性を指摘し、それらの中から現在の自分の論に都合の良い事象のみを選定して、「良いこと」として主張する極端な現在主義の浅はかさを痛烈に批判している。また、ヒトラーの優しいイメージを真に受ける人々について、ナチの宣伝文句に踊らされる者の域を出ないとしてこれにも皮肉を加えている。 そして本書の最後においては、専門家が人口に膾炙するような入門書を示し、認識の土台を作っていくことの重要性にも触れており、これは深くうなずくところであった。 個人的な所感としては、まずやや本論から外れた細かいところで、ゲッペルスが国民にたいして娯楽を意図的に与えていたことは非常に示唆的であると感じた。華氏451度で娯楽が被支配者に大量に供されていたことを連想するように、娯楽は時として統治の道具となることを再認識した。 無論、本書の主張にはすべて頷くところであり、このように専門知を入門書として整備していただいた労苦に感謝することしきりである。 物事の善悪や価値を判断するためには、なによりまず勉強し、知見を広げることの重要性を再認識する読書だった。
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とにかく読みやすい本。 だけどあまり納得はできなかった。 その政策が良いか悪いかを評価する際に「オリジナリティ」って必要? 優良なドイツ人を(平易な言葉を使うならば)エコ贔屓して戦争に突き進む政策といえど、その一部の優良なドイツ人たちには確かにメリットがあったんじゃない?それって...
とにかく読みやすい本。 だけどあまり納得はできなかった。 その政策が良いか悪いかを評価する際に「オリジナリティ」って必要? 優良なドイツ人を(平易な言葉を使うならば)エコ贔屓して戦争に突き進む政策といえど、その一部の優良なドイツ人たちには確かにメリットがあったんじゃない?それって(ごく一部の人に限るという但し書きがつくとはいえ)「いいこと」なんじゃない?と思ったり。 ナチが極悪非道の組織であることは百も承知だけど、「ナチスはいいこともしたのか?」というテーマで語るなら、いやいいこともしたように思えるけど……と考えてしまう内容。 私の理解度が足りずモヤモヤが残る読後だった。 またナチへの理解を深めてから再読したい。
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