うどん陣営の受難 の商品レビュー
津村さんの描く女性は一見面倒くさがりだけれど、とても芯の強いが多い。飄々としながら意志を貫く主人公に憧れます。 小品なので展開が早く感じられました。
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会社内の勢力争いのバカバカしさをコミカルに描いた中編小説。 物語は、小林という女性社員の視点で描かれる。 ◇ 社之杜社は20年前に現在の場所に進出し、地元企業の野乃花社を吸収合併した。 以後、民主的で公正を謳う社之杜社では会社の代表 (社長) を...
会社内の勢力争いのバカバカしさをコミカルに描いた中編小説。 物語は、小林という女性社員の視点で描かれる。 ◇ 社之杜社は20年前に現在の場所に進出し、地元企業の野乃花社を吸収合併した。 以後、民主的で公正を謳う社之杜社では会社の代表 (社長) を4年ごとに選挙によって決めるシステムを採っている。 選挙は2回制で、1回目の予備選で候補者を2人に絞り、2回目の決選で代表を決定する。もちろん投票権は全社員にある。 今年が代表選の年に当たり、先頃行われた予備選で2人の候補者に絞られたばかりだ。 小林の支持する緑山は3位に終わった。けれどその支持者たちは「残念また4年後に」と言ってひと息つくことができない。なぜなら3位票を取り込むべく2人の候補者側の暗躍が始まったからである。 そんな受難の日々にうどん陣営と呼ばれる緑山陣営の面々は……。 * * * * * 社内での勢力争いの生臭さが、リアルにかつコミカルに描かれていました。 まず候補者たち。 現代表の藍井戸と、かつての代表の息子である黄島。どちらも保守的です。 2人とも会社の業績の悪さを理由に上げ、藍井戸は減給を、黄島は旧野乃花社社員のリストラを、それぞれ公約に掲げています。ただし自分の陣営の人間に損害が及ばないように画策している模様です。 小林がどちらの候補者も「くそだ」と思うとおり鬼畜の所業なのですが、これこそ経営陣あるあるで『半沢直樹』でもよくお目にかかります。 小林が支持している緑山候補はリベラル派です。 偏った給与引き下げやリストラには反対のスタンスで、旧野乃花社社員や現地採用の社員からの支持はありますが、選挙では一歩及びません。 こういう公正でリベラルな候補者が勝てないところも現実を見ているようで唸ってしまいます。 ここで主人公が「倍返し」とばかりに起死回生策を実行し、勧善懲悪を成し遂げれば、まさに『半沢直樹』の世界なのだけれど、そこは津村記久子さんです。結果がどうなるかは、読んでからのお楽しみということで。 ところでタイトルになった『うどん陣営』について。 緑山陣営の人間には夜型の人が多いため、会合が23時から開かれるのですが、その際おいしいうどんが夜食として振る舞われることが通例になっています。 土地柄、地元社員にうどん好きが多いことが理由でしょうが、ここから「うどん陣営」と呼ばれることになったそうです。 ( 支持者全員がこのうどんを楽しみにしているというのが、何かほのぼのしていていいですね。) うーん、「うどん陣営」……。この感覚が好きだなあ。 『水車小屋のネネ』の「鳥の世話じゃっかん」を思い出します。気に入りました。 藍井戸や黄島陣営の人間たちの恫喝や懐柔策など生々しい描写もありながら、胸くそ悪くなるところまで描かないのはさすが津村さんだと思います。 そして『うどん陣営』。 社内政治や権力闘争の陳腐さや面倒臭さをリアルに描いているのだけれど、津村さんらしい筆致で読みやすかったです。
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すごーくすぐ読めます。 うどんが美味しそうな話でもあるのですが、社内のアレコレは『なんかわかるわぁ〜』って思うようなことがあり。会社員なら、全く同じ経験はなくても似たような気持ちになったことは絶対あるだろうなと思いました。 私が緑陣営の人なら、決選投票でも『緑山さん』って書いちゃいそう。 『控えめに言って、どっちもくそ』な選挙に振り回される感じ、なんかわかるなぁ。それを面白く社内のお話に紡ぎ出せる津村先生、すごい。素敵。
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この薄さと紙質で900円とは呆れてしまった。 会社の代表を4年ごとに選挙で選ぶのは面白い発想だが、その中身はぐだぐだでうどんばかり食べてるのほほんとしたもの。
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何でしょうか。思っていた小説と違うな、と。まず本の紙の質感。週間雑誌のような感じでしたし、短い内容なのに一冊の本になっている事。うどんの美味しさを広める云々より、社内政治強めの内容でした。
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こんな会社は嫌だ。会社の代表者を投票で決める社内選挙のドタバタ劇。「どうでもええわい」と思える非常にミクロな話をあたかもマクロみたいに書く津村さんの手腕は流石だが、私、この会社、耐えられなーい!オンとオフはわけたいし、仕事以外のことで選挙活動とか会合とか煩わしいのは勘弁してほしい...
こんな会社は嫌だ。会社の代表者を投票で決める社内選挙のドタバタ劇。「どうでもええわい」と思える非常にミクロな話をあたかもマクロみたいに書く津村さんの手腕は流石だが、私、この会社、耐えられなーい!オンとオフはわけたいし、仕事以外のことで選挙活動とか会合とか煩わしいのは勘弁してほしい。私もうどんは大好きだけど、皆で事あるごとにうどん食べてるのもよく考えたらシュールだ。その他ちょっとしたディテールに心がざわつく。「これ手帳?」のような薄さと小ささの本なのになかなかの破壊力を私にもたらした。
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出たツムラワールド。淡々としてる笑 津村さんはうどん好きなのかな。浮遊霊ブラジルでもうどんが側溝にながれてたような。装丁がステキ。
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「私はほんと、なんも役に立つことは言えないんですけど、今の状況を面倒だからってやり過ごして、なるようになれって放り出してしまったら、それはそれで自分自身は後悔するかなと思って」 心に残った言葉 読んだ後は確実にうどんが食べたくなりますねー。
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この騒動、客観的に見たら「面倒臭ぇ」としか言いようがないし、どう考えても巻き込まれたくないのだけど、津村さんの視点を通すことでどうでも良く読むことができたし、うどんはトッピングして食べたいし、ウサギは可愛いし、うどんのステッカーは自分も欲しい。
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飄々とした毒舌。津村作品を定期的に読みたくなりそう。「控えめに言って、どっちもくそ」でも、神経を病みそうな懐柔工作があったとしても、対抗勢力が競り合うような選挙があったほうが、組織はマシになる気がする。読んでそんなことを思った。
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