うどん陣営の受難 の商品レビュー
あらすじ わたしの働く会社では、4年に一度、会社の代表を決める選挙が行われる。私の応援する緑山さんは決選投票まで行かずに落選。ちなみにこの党は現地採用の人たち(地域の伝統的な帽子をかぶっていて、夜型)が中心。会の集まりでは毎夜おいしいうどんが出る。私は現地採用ではないが、なんと...
あらすじ わたしの働く会社では、4年に一度、会社の代表を決める選挙が行われる。私の応援する緑山さんは決選投票まで行かずに落選。ちなみにこの党は現地採用の人たち(地域の伝統的な帽子をかぶっていて、夜型)が中心。会の集まりでは毎夜おいしいうどんが出る。私は現地採用ではないが、なんとなく会に出席している。決選投票に向けて、他の党では不穏な動きが始まる。スパイのように会社内で立ち回り、票を稼ぐべく、困っている人に近寄る人、相手の候補者の高額会食をリークしたり、パワハラ音声をばらまく人。私の懇意にしてる先輩にも近寄る人々がいた・・・。 《感想》中編1編。薄ーい本だと思っていたら、もとはU-nextオリジナル書籍として書き下ろされ、その後電子書籍化し、普通の本になったらしい。 架空の会社を舞台にしていて、不思議ワールド。まるで公職選挙のように、会社内で動き回る。党員じゃなかったら、備品の調達も遅くなるような場面もあった。そんな中で主人公は色々不安に思ったり、先輩を心配したりしながら日常を送る。最寄りのスーパーは金曜日肉が安いので、豚肉が切れてしまったり、やたらとうどんを食べたり。メインのストーリーが面白いのはもちろんだけど、不思議だったり、不穏だったりしても普通に日常を送る描写が細かいところが好きだ。
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とある会社の代表選挙をめぐる短編。 落選が決まった候補の支持派閥(主人公・小林はここに属する)を翻弄するような出来事の数々にギリギリと締め付けられる…ような気もしつつ、どこかとぼけたような津村さんらしい展開に和みます。 社食のメニューがよさげなのと、嫌われポジションな下田課長が...
とある会社の代表選挙をめぐる短編。 落選が決まった候補の支持派閥(主人公・小林はここに属する)を翻弄するような出来事の数々にギリギリと締め付けられる…ような気もしつつ、どこかとぼけたような津村さんらしい展開に和みます。 社食のメニューがよさげなのと、嫌われポジションな下田課長がかわいく見えてくるのがいいです。 読んでいると、とりあえず、うどんを天ぷらトッピングで食べたくなります。 あと、U-NEXTから出ている本は初めて読みました。
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社内政治って嫌だな〜と思うけど、文句を言うだけで知らんぷりしているのはだめだよね、と思った。 かなり過激な方法で投票を呼びかけている描写はゾッとしましたが。 話の本筋とは関係ないけど『入ろうかなと前を通るたびにメニューを見て、高いからもっとつらい時にしよう』ってとても共感した。...
社内政治って嫌だな〜と思うけど、文句を言うだけで知らんぷりしているのはだめだよね、と思った。 かなり過激な方法で投票を呼びかけている描写はゾッとしましたが。 話の本筋とは関係ないけど『入ろうかなと前を通るたびにメニューを見て、高いからもっとつらい時にしよう』ってとても共感した。 つらくないと贅沢してはいけないことないのに。 三万の料理を食べている人もいるのに。 あと、下田課長のコーヒー飲み過ぎのくだりは本当に面白かった。 脳内で映像で再生された。
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私が通う、いつもの図書館は、何故かU-NEXTの100min.NOVELLAが充実しており、前回読んだ高瀬隼子さんが良かったので、今回は誰にしようかなと思案し、選んだのがこの方。 津村記久子さんの小説を読むのは久しぶりだったけれど、私の中ではよく知るタイプだった彼女特有の、...
私が通う、いつもの図書館は、何故かU-NEXTの100min.NOVELLAが充実しており、前回読んだ高瀬隼子さんが良かったので、今回は誰にしようかなと思案し、選んだのがこの方。 津村記久子さんの小説を読むのは久しぶりだったけれど、私の中ではよく知るタイプだった彼女特有の、オフビートなローカルネタの中に、ピリッとした辛みをさり気なくまぶしながらも、素朴な毎日に幸せを見出す庶民たちの心に寄り添った、現実味のある辛さの中でも毎日生きていこうといった、そんなメッセージを、生々しい政治ネタと共に感じられました(笑) タイトルは割と分かりやすく、「うどん陣営」というのは、20年前に後からやって来た会社「社之杜社(やしろのもりしゃ)」に吸収合併された、地元の会社「野乃花社(ののはなしゃ)」で働いていた人の見分け方が、『地域の伝統的な丸い帽子をかぶり、主食がうどんで夜型の人たちのうち、20年以上勤務している人たち』であることから来ており、彼らが4年毎にある会社の代表を決める投票で支持していた、「緑山」が惜しくも得票率3位という残念な結果に終わったことが、上位2名の決選投票の支持者たちから、第2回投票には是非我々をと云わんばかりに、様々な受難、所謂とんだ災難を身に受けるはめになることから、『うどん陣営の受難』なのだと思う。 しかも、このやり口が、かなりえげつない上に、それを勤務中に被るわけだから、これは実際に自分がそこにいたらと思うと、ぞっとするような展開だけれど、それでも棄権するのではなく(棄権したらしたで、彼らの思うつぼとなる)、どちらかへ投票することが、この会社で働いている者の意思表明であるという思考法には、結果はどうあれ、自分自身の思いや居場所を大事にすることの大切さを教えてくれる。 また、そんなギスギスとした雰囲気になりそうな中でも、どこかのどかでアットホームなものを感じさせるのが、主人公の「こばちゃん」こと、小林さんのひとりで地道に頑張る姿で、それを支えるのは、彼女自身の好きなものに身を任せた、読み手も思わず共感してしまう自然体にある。 それは、うどん好きが高じた『特にだれも頼りにならない、でもうどんはおいしい、というよくわからない流れに慰められる』や、近所のスーパーで金曜日に豚肉が少し安くなることで、売り切れる可能性が高いことについて、『私は別にいつもの価格でも買うから私の方がいいお客さんなのになんで金曜日に豚肉が食べたい時はこんなにはらはらしないといけないんだと、不当に思いもするのだが、そういうものなので仕方がなかった』から感じられた、疑問には思うけれども、それを納得出来る様子に、思わず分かると肯いてしまう、こうした細やかなところにスポットを当てた津村さんの、きっと三万円を超えた会食を開く人たちには汲み取れないのだろうなと思わせる、現代の政治の状況を示唆したものでもある点には、改めて、日々を必死に生きている人たちにも目を向けて欲しい、そんな思いが痛いほどに滲んでいるのが、ユーモラスな文体だけに却って切ない。 しかし、そんな状況でも自分のあり方を大事にする小林さんの生き方への共感が、前を向かせてくれたことも確かであり、それは、大切なウサギを亡くした池田先輩への優しさであったり、最初はあまり政治的活動に乗り気でなかった彼女が、終盤には、もう少し動いてみようと思うに至ったことであり、そこにあったのは、彼女自身、会社のてんやわんやにウンザリしながらも、そこで働いている人達は別といった、それぞれの人間の内面を割とよく見ている点であり、それはおそらく政治に於いても、とても大切なことなのではないかと、私には感じられたのである。
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とにかく面白い。 津村さんの淡々としたクールな文章で描かれるからこそ、社内闘争の様子が滑稽で笑える。 笑いながらも、実際にはしょうもないことに時間や労力をつぎこんでしまってることって自分にもあるのでは?なんて考えさせられたり。 でもとにかく面白かった。 あと、読んでるとただただう...
とにかく面白い。 津村さんの淡々としたクールな文章で描かれるからこそ、社内闘争の様子が滑稽で笑える。 笑いながらも、実際にはしょうもないことに時間や労力をつぎこんでしまってることって自分にもあるのでは?なんて考えさせられたり。 でもとにかく面白かった。 あと、読んでるとただただうどんが食べたくなった。
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うどんが食べたくなる。うどんのための小説ではないと思うが、著者が描く職場の雰囲気、仕事への向き合い方、日々の楽しみが好きだ。少しSFのようなここではないどこかの世界観も好きなのかも。
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短くて1時間もかからずに読めてしまう、くだらなくも真剣な社内派閥問題をつづった物語。 シニカルでそっと笑えて、けれどさりげなく働く人々の打算や本音も練り込んであるのは、作者のお仕事小説ならでは。初期の「アレグリアとは仕事ができない」や「ワーカーズダイジェスト」の風味を懐かしく漂...
短くて1時間もかからずに読めてしまう、くだらなくも真剣な社内派閥問題をつづった物語。 シニカルでそっと笑えて、けれどさりげなく働く人々の打算や本音も練り込んであるのは、作者のお仕事小説ならでは。初期の「アレグリアとは仕事ができない」や「ワーカーズダイジェスト」の風味を懐かしく漂わせつつ、うどんさながらにつるっとすすり上げるように滑らかに楽しめました。 うどんをキーアイテムに持ってきたり、陣営を色で判別したり、やりすぎるとコメディになりすぎる要素をちりばめていても、そこは会社のお仕事模様の描写が巧い作者ならではで、変に浮いていないのはさすがです。パソコンの買い替えに関してのエピソード回りなんて、わかるなあーという同意しかなくて、すごく好きです。
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会社代表を決める選挙の決選投票直前のドタバタを描く。 どんな小さい会社にも政治はあるよね。 選挙で社長決めてる会社はそうそうないだろうけど。 選挙で決めるって、一見公平で民主的な感じけど、なぜこんなにめんどくさくて、醜悪になるのか… 決選投票に残った立候補者2名をぶった斬った...
会社代表を決める選挙の決選投票直前のドタバタを描く。 どんな小さい会社にも政治はあるよね。 選挙で社長決めてる会社はそうそうないだろうけど。 選挙で決めるって、一見公平で民主的な感じけど、なぜこんなにめんどくさくて、醜悪になるのか… 決選投票に残った立候補者2名をぶった斬ったフレーズ「控えめに言って、どっちもくそ」に笑った。 ところで、U-NEXTのハンドレッド・ミニッツ・ノヴェラは約100分夢中で読める小説を年4回刊行するレーベルなんだそうだ。 「100分夢中」といい、「年4回刊行」といい、微妙な企画やなー、と思うけど、発展していくことを期待。 ♫カルメン(ビゼー)
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社内闘争、派閥とはこんな些末なものか、ものなのだ。 そこにうどんがあるだけで成立してしまう。 このうどんの緩さがいい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
会社の代表選挙にまつわる面倒臭さを とっても面白おかしく書いてくれてた物語。 主人公の働く会社では、4年に一度会社の代表者を決める選挙が行われる。 上位二位で決選投票が行われる事になった。 あの手この手で狙われる三位落選のうどん陣営。 中立的な立場でうまく立ち回ろうとする主人公を応援したくなる。 根回しや、恩を売り買収、リークされたりと もうそんな事より仕事しようよ皆と言いたくなる。 公民館でうどんすきの会。 うどんの約束を口実に同僚を救出。 うどん屋貸し切りでペットのお別れ会。 私も入るなら、絶対うどん陣営! そして、むっちゃおうどん食べたくなる。
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