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青瓜不動 の商品レビュー

4.3

110件のお客様レビュー

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    39

  2. 4つ

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2024/07/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

三島屋シリーズ最新作、やっと読むことができた。おちかというキャラクターが好きだったので、主役交代はちょっと寂しかったけど、この本で二代目聞き手の富次郎をだいぶ好ましく思うようになった。お気楽な次男坊という立場ではあるけど、彼なりの屈託も抱えていて、そこまで思い詰めなくても、と思ったり、共感できたり‥。現代で見ればまだまだ若造、毎日が修行みたいなものかな、と思う。 話の方は、前半の2話、江戸時代の負の側面がけっこうな熱量で書かれている。 「青瓜不動」では、女性が直面する理不尽さに、「だんだん人形」では身分の上下における残酷な運命に、憤り涙しため息をつきながら読み進めた。 それでも虐げられてきた者たちが、絶望に潰されきらずに、救いのある未来に向かう姿には胸をつかれる。気持ち的には、聞き手の富次郎とほぼリンクしていたかもしれない。 「青瓜不動」の終盤で、おちかが無事に女の子を出産する。良かった!でもそのかげで、富次郎の大奮闘があった事は、本人とお勝、語り手のいねしか知らない。富次郎、頑張った! 後半の2話は、三島屋シリーズらしい、不思議でコワイ話。 「自在の筆」では、願いが叶う代わりの代償が怖過ぎる。自分で落とし前をつけた絵師は偉かったと思うけど、失ったものが大き過ぎた。話を聞いた富次郎が筆を折る決心をしてしまったのも、まあ、無理もないかな。でもでも、富次郎にはもう少し、いい意味でのスルーする力を身につけてほしい。百物語の聞き手としては不可欠なものだし。 「針雨の里」は、人ならざるモノの優しさが心に染み渡った。人の想いをのせた紙のひとがた、風舞さん。かりそめの人の姿を得て、穏やかに暮らしていた村を大噴火か襲う。人である迷子たちを逃すために、次々と溶けていってしまう描写は、悲しいの一言。聞き手の富次郎も、涙に濡れる。そして、風舞さんたちの命の尊さに心を打たれ、また絵を描きたいとの思いが溢れてくるのだ。 良くも悪くも、感情に素直な富次郎。おちかとはまた違う魅力を、この本を読み終わって感じることができた。

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2024/07/08

おちかさん、無事に初産を終えられてよかった。子育てで忙しくなるでしょうが、こののち三島屋に里帰りして元気な様子を見せてね。さて富次郎、まだまだ聞き手として惑うこと多く、今回は絵描きとしての苦悩が露見する。自在の筆の話には相当な衝撃を受けたようで、一時筆を折る決心をしてしまった。絵...

おちかさん、無事に初産を終えられてよかった。子育てで忙しくなるでしょうが、こののち三島屋に里帰りして元気な様子を見せてね。さて富次郎、まだまだ聞き手として惑うこと多く、今回は絵描きとしての苦悩が露見する。自在の筆の話には相当な衝撃を受けたようで、一時筆を折る決心をしてしまった。絵師を生業にするわけでなし、もっと気楽に聞き捨ての一助として描けばいいものを。と思うのだが、彼の心の中では絵師への憧れが捨てきれずにとどまっているのだろう。青瓜のうりんぼ様、だんだん人形、狭間村ののふの衆が富次郎を成長させてくれた。

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2024/06/20

このシリーズは他にも読んでるが今回もとても不思議なお話でのめり込み、ハラハラしながら読めた 富次郎の葛藤あり、働きあり こちらも同情したり応援したり 一緒に頑張ったような気持ちになれた

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2024/06/07

ずっと読み続けているシリーズもの。 三島屋の変わり百物語の聞き手は、おちかから富次郎に代替わりした。 今回、九之続では、最初の二話、怪談話というほどでもない軽めの語りが続いたかと、気楽に読み進めていたが、二話の後半くらいから、重くなり始め、三話、四話とずしっと背中に重いものを乗せ...

ずっと読み続けているシリーズもの。 三島屋の変わり百物語の聞き手は、おちかから富次郎に代替わりした。 今回、九之続では、最初の二話、怪談話というほどでもない軽めの語りが続いたかと、気楽に読み進めていたが、二話の後半くらいから、重くなり始め、三話、四話とずしっと背中に重いものを乗せられたようになっていく。冨次郎が好きな絵を諦めようとするところは、心残りが大いにあった。 冨次郎の行く末、何をつかもうとしているのか、まだまだ続きがある、と思わせて話を閉じるあたり。 楽しみは先送りされた。

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2024/06/05

〈三島屋変調百物語〉シリーズ第九作。 聞き手が富次郎に変わってから四作目となるのだが、すっかり聞き手の役目も板について来た感じ。 ただ前の聞き手・おちかが出産間近とあって、変わり百物語はしばしのお休み…のはずだったのだが、やはり『黒白の間』はそれを許してくれないのか、次々と語り手...

〈三島屋変調百物語〉シリーズ第九作。 聞き手が富次郎に変わってから四作目となるのだが、すっかり聞き手の役目も板について来た感じ。 ただ前の聞き手・おちかが出産間近とあって、変わり百物語はしばしのお休み…のはずだったのだが、やはり『黒白の間』はそれを許してくれないのか、次々と語り手が現れる。 しかし今回は不気味だったり薄気味悪かったり得体の知れない気味の悪さや後味の悪さという話ではない、少し救いのある話が多くてホッとした。 表題作の「青瓜不動」は『御仏に仕え、仏の道を歩むということ』の意味を教えてくれた。厳しい修行を積むことや一心に念仏を唱えることだけがそれではない、『俗世で与えられた役割を果たすこと』が『仏道に帰依すること』でもあるということを分かりやすく教えてくれたように思う。 二話目の「だんだん人形」では前半の理不尽さと後半の寓話めいた話との対比が面白く、さらに富次郎なりの解釈で話を掘り下げてくれた。 ところが第三話は少し毛色が変わる。「自在の筆」という、それを持つと書かずにはいられない、それも持つものに『才を与える』という不思議な筆の話。しかしその裏には…という恐怖付き。 この話を聞いた富次郎はある決心をする。 そしてその決心の上で第四話「針雨の里」を聴く。 これまた不思議だが切ない話。それを聴いた富次郎は堪らない想いに駆られる。 私は富次郎という男を少し勘違いしていたようだ。 三島屋という人気店の次男坊、いつかは暖簾分けしてもらうなりどこかへ養子に出るなりしなければならないのだが、それまでの猶予期間をお気楽に楽しもうという姿勢なのかと思っていた。 おちかから変わり百物語の聞き手を受け継いだものの、飄々としたその性質は変わらぬものと思っていた。 だが彼にはおちかとはまた違う、苦しいものを心の底に抱えていた。 そのことが今後の物語でどう発展し、彼はこの先どんな道を進むのか、楽しみに続編を待ちたい。

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2024/05/24

やっとおちかに赤ちゃん誕生! 2代目の聞き役富次郎も、聞き役が板についてきて、語りが始まるとなるとときめいたりしちゃうのがなんとも可愛い。 どの話も引き込まれるし、富次郎にも悩みはあるし、今後も楽しみです

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2024/05/20

なんてこった。「序」でこのシリーズの肝が完璧に紹介されている。なので以下、蛇足的感想。 現在に通じる哀しみや苦しみもあるが、そんな時代だからの諦めも混じるのでとりあえず受け止められる。そしてなんといっても、妖しい物事が本当にあったことのように思えてくるのだ。勿論それは、宮部みゆき...

なんてこった。「序」でこのシリーズの肝が完璧に紹介されている。なので以下、蛇足的感想。 現在に通じる哀しみや苦しみもあるが、そんな時代だからの諦めも混じるのでとりあえず受け止められる。そしてなんといっても、妖しい物事が本当にあったことのように思えてくるのだ。勿論それは、宮部みゆきの筆力によるものなのだけど、舞台が現代だったらこのリアリティは出ないのではないかと思う。 白黒つけることができない悲喜こもごもの人の想いのあわいには、あやしいものが生み出されるのかもしれない。解決する方法がある時代には、そのあやかしは見えないのかも。

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2024/05/15

どこか懐かしい昔話を聞いている感じがした。語って語り捨て、聞いて聞き捨てる。語ることで、心に残った荷物を下ろすことができるのは、よくわかる。聞いているうちに自分も同じ体験をしているように感じる。

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2024/04/30

今回は四つの話。 『青瓜不動』 これを読んでたら、今放送してる朝ドラが頭に浮かんだ。丁度、女性の権利についての事をやっているところだったので。読み進めていくと、田舎で閉鎖的な村ほど女性には、何の権利はないんだという事を思い知らされた。主人公の奈津が虐げられても懸命に生きている姿...

今回は四つの話。 『青瓜不動』 これを読んでたら、今放送してる朝ドラが頭に浮かんだ。丁度、女性の権利についての事をやっているところだったので。読み進めていくと、田舎で閉鎖的な村ほど女性には、何の権利はないんだという事を思い知らされた。主人公の奈津が虐げられても懸命に生きている姿は、読んでて勇気づけられた。前の聞き手のおちかが、無事女の子を出産。本当に良かった。これも今の聞き手の富次郎が頑張ったからかな。 『だんだん人形』 水戸黄門に登場する典型的な悪代官が村人たちを苦しめる。悪代官の被害者、おびんが作った土人形。おびんが土人形に込めた想いがあまりにも悲しい。悪代官の悪行を役人に知らせる為に、奔走した一文(本当は文一)におびんはこの土人形を渡す。この土人形が4回一文の子孫たちを守る。4回守るとおびんの願いも叶う。おびんの願いが叶ったとき、切なかった。語り手の門三郎と富次郎のやり取りが微笑ましくて、暗い気持ちを癒してくれた。 『自在の筆』 この話はいつもと違う。黒白の間で語られなくて、百物語には数えられない。筆に魅せられた人の最期が凄まじかった。物に悪きものが取り憑き、人を狂わすのは怖い。この話を聞いて富次郎は絵を描くのをやめようとする。富次郎が心配。 『針雨の里』 捨て子、迷子、孤児の話だったので暗い話なのかな?と思いながら読んでたけど、とっても優しくて切ない話だった。狭間村の秘密が分かった時、なるほどと納得するところもあったけど、悲しいと思う気持ちの方が多かった。狭間村にいた子たちと村のその後が気になる。この話で富次郎の迷いも消えて良かった。また、一段と良い聞き手になってほしい。 全体的に子供たちが一生懸命生きている姿が書かれてると思います。私も頑張ろうと励まされました。

Posted byブクログ

2024/04/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

三島屋の変わり百物語、聞き手がおちかから三島屋の次男富次郎に代わって3作目。中編四つの構成だが、いずれも悲しく恐ろしい結果にとどまらず、結末の先にほのかな温かさが残るエンディングとなっている。読んでいてとても楽しく、富次郎が聞き役の百物語はまだ続きそうだが、次回は奉公先から三島屋を継ぐために帰ってきた朗らかで完全無欠の好男子だった伊一郎兄さんの茲許の心の陰りを晴らすエピソードを期待したい。

Posted byブクログ