太宰治賞(2023) の商品レビュー
受賞作「自分以外全員他人」西村亨著 自分の中にもある生きづらさ、みたいなものを、露わなかたちにして目の前に供してくれる。 嫌だなぁ、と思わせる一編。 分類すれば「私小説」というんだろうか。 「太宰治」的なのかな。世の中では。 僕には、あんまりハマらなかった。 最終候補作「コスメテ...
受賞作「自分以外全員他人」西村亨著 自分の中にもある生きづらさ、みたいなものを、露わなかたちにして目の前に供してくれる。 嫌だなぁ、と思わせる一編。 分類すれば「私小説」というんだろうか。 「太宰治」的なのかな。世の中では。 僕には、あんまりハマらなかった。 最終候補作「コスメティック・エディション」北野解著 途中断念。
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西村享『自分以外全員他人』読了する。暗さが立ち込めている物語だった。終始読むのが辛くなりがちだったが、読みやすい文体だったのでスルスル読めた。 自分を押し殺し我慢し続け、疲弊していく主人公。些細な事の積み重ねで死にたい願望がつのっていく。しかし、すぐに死ぬことも出来ず計画的に時期...
西村享『自分以外全員他人』読了する。暗さが立ち込めている物語だった。終始読むのが辛くなりがちだったが、読みやすい文体だったのでスルスル読めた。 自分を押し殺し我慢し続け、疲弊していく主人公。些細な事の積み重ねで死にたい願望がつのっていく。しかし、すぐに死ぬことも出来ず計画的に時期を調整するが、まだまだ生きていくことを考えている。死ぬことを考えることは、生きること、生き方を考えることと感じた。思い悩んだりひねくれたり、死に方を考えたり必死で生きているように思えた。生きたいのだと訴えていた。 現代社会にこういった状況の人が多くいて、寸止めのところで生きている人たちが共感できる作品であって、何でもない日常を捉えて切実な現代社会の現状である。
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受賞した「自分以外全員他人」を読みました。閉塞感ある日常の中、自転車に乗るシーンで少しだけホッとできたー、と息をついたら、またすぐ息詰まる日々…。コロナ禍の、あのギスギスした空気も相まって、読むのが辛いのに読むのをやめられない小説でした。本当の自分を押し殺して、優しくあろうとする...
受賞した「自分以外全員他人」を読みました。閉塞感ある日常の中、自転車に乗るシーンで少しだけホッとできたー、と息をついたら、またすぐ息詰まる日々…。コロナ禍の、あのギスギスした空気も相まって、読むのが辛いのに読むのをやめられない小説でした。本当の自分を押し殺して、優しくあろうとするけれど、その歪みに悩む主人公。オチには「ああ」と思わず声が出ました。
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西村享を知ったのは昨日の新聞 (2023年10月14日 朝日新聞be)。 車谷長吉を知った時のような衝撃、 というか脱力感があった。 記事のタイトルは 「死にたい僕を書くことが引きとめた」。 記事を書いたフリーライター・清繭子の 出だしが印象的だ。 「会ってみたら、想定を上回る『...
西村享を知ったのは昨日の新聞 (2023年10月14日 朝日新聞be)。 車谷長吉を知った時のような衝撃、 というか脱力感があった。 記事のタイトルは 「死にたい僕を書くことが引きとめた」。 記事を書いたフリーライター・清繭子の 出だしが印象的だ。 「会ってみたら、想定を上回る『死にたい人』 でびっくりした」 そして西村が言う 「最終選考に残ったという連絡が来た日も、 近所の公園で死ぬ練習をしていたんです」 死ぬ練習って何だよ。 続く言葉にあっ、となった。 「小説と同じく断食往生する計画」 これは読まなければいけないと思った。 「断食往生」は自分も望んでいたことだったから。 断食で死を迎えることを知ったのは 山折哲雄の「身軽の哲学」かそれに関するコラム だったと思う。木喰、遊行の末の死。 これだと膝を打った。 同じことを思っていた人が他にも いたことを知る愉楽。 西村享のことをもっと知りたくて ネットで見ていたら、 さらに惹かれるものがあった。 「百回以上読んだ太宰治『人間失格』」 という表題、 その中で町田康の言葉が紹介されていた。 「小説を書くコツは同じ小説を繰り返し 百回は読むことだ」 西村享のことをもっと知りたい。そう思った。 さらに先程、偶然目に入った新アニメ 『アンデッドアンラック』のオープニングが 自殺未遂の女性で、つい観てしまった。 そんなこんなで、何かつながるものを 感じたのだった。
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全部読むつもりだったのに受賞作の「自分以外全員他人」がとっっってもよくて、これだけで充分だという気持ちになった。とことん苦しいけどこれは現実だ。
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※このレビューにはネタバレを含みます
『自分以外全員他人』西村亨 【あらすじ】 あと1年半、あと1年半待てば俺は自殺できる――。 マッサージ業界でフリーランスとして働く柳田譲。 不安定な日々を過ごし、生きる支えも希望もなく、45歳が限界だと思っていた男は自らに死亡保険をかけ、自殺でも保険金が下りるようになる日を待っていた。 人とうまく関係を築くことができず、母とも母の再婚相手とも分かり合うことはないまま家を出て、職場の同僚や客ともおおよそ心地の良い会話はできない。 鬱で退職した元同僚の真似をして始めたサイクリングだけが唯一の心のよりどころだったが、逆走する自転車や幅寄せしてくる車を見かけるたびに腹を立て、気が狂いそうになるのを必死で抑える日々。 極めつけは入居しているマンションの駐輪場での置き場所トラブル。 自分の魂そのものになった自転車を屋根付きの駐輪場に止めたい、それだけだったのに、自分はなにも悪いことをしていないはずなのに。 日常が怒りに染まっていく中年の破滅の物語。 三鷹市HPより https://www.city.mitaka.lg.jp/c_photo/103/103125.html ◇ 太宰治賞2023の受賞作品。 西村さんの受賞の言葉をネットで読み、作品を読んでみたくなった。 ◇ 死にたい気持ちと、怒り。 この二つが作品全体に漂っていた。 主人公の柳田は、常に怒りを心に秘めていた。 いつ爆発するか分からない爆弾を抱えたまま、なるべく平穏な日々を過ごせるよう努めていた。 その感覚は、程度の差はあれど共感できる人も多いのではないかと思う。 きっと誰もが、感情を抑えつけながら生きている。 幼少期に母親から言われたことを守っている。 正しい人間であろうとしている。 それなのにルールを守らない人間がいて、怒鳴り散らしたり嫌がらせをしたりするようなおかしな人間もいる……。 そう考えていた柳田は、その「おかしな人間」に少しずつ近づいていってしまう。 しかし自分ではそれに気づかず、これが正しい道なのだと信じ込んでいた。 「誰にも理解されない独自のテーマを持とうとしてしまう」 おじさん(母親の再婚相手)にそう感じていた柳田は、確実に自分もその道を進んでいた。 「おかしな人間」は柳田だけではない。 みんな少しずつ狂っていて、怒りや「どうにもならない心」を抱えているように見えた。 しかし、そもそも現実に正常な人間なんているのだろうか。 人間にとって正常であるとはなんなのか。 そんなことが私の頭をよぎった。 おかしくなっていく感覚は、自分では分からないものだ。 自分は正しいと思い込んでしまったら、曲げることはなかなかできない。 自分の考えと違うことを言われたら、自分の思想も自分自身も否定されたように感じてしまう。 極端な思考になってしまう。 その感覚は、私自身も経験したことがあるものだった。 「明るい自殺なんてあるわけない」 同僚が言った「明るい自殺」という言葉が、柳田の頭に残っていたのだろうか。 ずっと死にたいと思っていた柳田は、不食によって明るく死んでいきたいと思うようになる。 小説を読みながら、明るい自殺なんてものはあるのだろうかと考えた。 「死」は救いを纏い、甘く誘惑することもあるだろう。 しかし救いとして「生」を手放すことは、明るさなのだろうか。 どれだけ考えても、私の中では答えが出ない。 ついに爆発してしまった柳田は、頭の中でこう考える。 「こんなふうに、林も苦しかったのだろうか。林だけでない、他のクソ客も、トンネルですれ違ったあの男も、世の中と上手く噛み合えず、そこから弾かれてしまった人間たちすべて」 取り返しがつかなくなってしまってから、ようやく柳田はそのことに気づく。 完全に我を忘れてしまえたほうが、まだ良かったかもしれない。 冷静に気づくことができてしまったことが、とても残酷に思えた。 死、怒り、苦しみ。 そんな負の感情に溢れた物語だったが、とても好きな作品だった。 この苦しみは自分だけではないのだと、きっと誰かの救いになるだろう。 負の感情でしか救われない思いもあるのだから。
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