言語の本質 の商品レビュー
なぜヒトは、ことばを持つのか? 子どもは、どの様にしてことばを覚えるのか? ヒトとAI、動物との違いは何か? 言語の本質を考えることは、人間とは何かを考えることです。 そのための鍵は、オノマトペ。 アブダクション(仮説形成)推論が、人間特有の学ぶ力と結びついていることを証明してい...
なぜヒトは、ことばを持つのか? 子どもは、どの様にしてことばを覚えるのか? ヒトとAI、動物との違いは何か? 言語の本質を考えることは、人間とは何かを考えることです。 そのための鍵は、オノマトペ。 アブダクション(仮説形成)推論が、人間特有の学ぶ力と結びついていることを証明していきます。 認知科学者と言語学者が、分かりやすく解説してくれます。 とにかく、興味深く、面白いです。
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ヒトが言語を操り、動物は何故言語が無いのか?それはヒトが間違いを犯すからだ、というのは言い過ぎかもしれないが、推論で試し、間違えて修正する。これが人間の本質であると本書は言う。極端に言えば、「訂正」ができるからこそ、言語という複雑なシステムを会得できるのかもしれない。訂正してい...
ヒトが言語を操り、動物は何故言語が無いのか?それはヒトが間違いを犯すからだ、というのは言い過ぎかもしれないが、推論で試し、間違えて修正する。これが人間の本質であると本書は言う。極端に言えば、「訂正」ができるからこそ、言語という複雑なシステムを会得できるのかもしれない。訂正していくからこそ、言葉が記号ではなく、身体的になってきて、抽象的になっていく。バイリンガルの人々が、言語圏が変わることは、人格が変わる感覚と言うが、これはまさに、身体的接地の、その接地する世界が変わることなのだろう。
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オノマトペを通じ、子供はアブダクション(仮説形成)推論をして言語を習得するというお話。認知科学者と言語学者の長年の研究が一つになり、新書としてわかりやすくまとめられている。もっと早く読めばよかった。 アブダクションはここ2,3年個人的にも関心を持ってきた言葉であり概念だ。言語習...
オノマトペを通じ、子供はアブダクション(仮説形成)推論をして言語を習得するというお話。認知科学者と言語学者の長年の研究が一つになり、新書としてわかりやすくまとめられている。もっと早く読めばよかった。 アブダクションはここ2,3年個人的にも関心を持ってきた言葉であり概念だ。言語習得と結びつけることで、アブダクションの意味も鮮明になった。 「ドキドキ」「そろりそろり」「グングン」「ブーブー」。これらの背景を考えるとドツボにはまりそう。 特に印象深かったのは以下の二つ。 ①記号接地問題 言語は分解すれば記号にすぎない。オノマトペはその最たるものだ。使われる記号を実世界の実体のもつ意味に結び付けられるかという「記号接地問題」を初めて知った。これはAIがいかに言語を習得し、概念を理解・想像し行動に移すかにも大いに参考になる。 ②恣意性からアイコン性への回帰 もともと個別性があったものごの伝え方に関して、清音と濁音,母音や子音の音質,音象徴に代表されるアイコン性がどのように影響するのか。この辺は「遊び」の要素もあり、人間の創造性にも直結しそう。 あと、英語にはオノマトペが少ないといのも興味深い。スペイン語(バスク語?)には多いという話があり、西洋でも違いがある。言語の習得法には共通点と相違点があると思うと、楽しくなる。
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久しぶりに、知的興奮を大々的に刺激する名著。 最初は、いろんな言語のオノマトペの比較などから始まるので、そういう本か、何が「言語の本質」だよ、と思っていたら、話が広がり始め、ついには、なぜ人間が言語を発達させることができたのか、チンパンジーとの違いは何なのか、という人類文明の起源...
久しぶりに、知的興奮を大々的に刺激する名著。 最初は、いろんな言語のオノマトペの比較などから始まるので、そういう本か、何が「言語の本質」だよ、と思っていたら、話が広がり始め、ついには、なぜ人間が言語を発達させることができたのか、チンパンジーとの違いは何なのか、という人類文明の起源に迫る考察に至る。 ブートストラッピング、アブダクション推論など、興味を惹かれる用語も素敵。 人間の赤ちゃんはアブダクション推論ができるが、チンパンジーの殆どはアブダクション推論ができない、という実験結果が鍵。でも、7頭のチンパンジーの中に1頭だけ、アブダクション推論ができる個体がいたとのこと。 この本の内容は、この感想欄でまとめるには深くて広すぎ。ぜひ読むべし。
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表紙やタイトルのイメージと違い、読みやすく面白かった。言語について深く考えるキッカケを与えてもらった。 「言語の本質」というタイトルは確かに内容に即したものだが、「オノマトペ」という単語を入れたもう少しキャッチーなタイトルでも良さそうだと思った。
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子どものオノマトペを言語の進化と照らし合わせて研究されていて、最初は面白かったのだが、後半読みづらく何かはぐらかされた様な気がする。
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オノマトペについて探求する言語学者と認知・発達心理学者の2人が、言語の本質について研究し5年かかりで書いた本。学者の共著は章ごとに書き分けることが多いと思うけど、これは全ての章を2人で書いているところも面白い。言語の本質というか、そもそもヒトとはなんぞやについての有用な仮説を提示...
オノマトペについて探求する言語学者と認知・発達心理学者の2人が、言語の本質について研究し5年かかりで書いた本。学者の共著は章ごとに書き分けることが多いと思うけど、これは全ての章を2人で書いているところも面白い。言語の本質というか、そもそもヒトとはなんぞやについての有用な仮説を提示している。 キーワードになるのは記号接地問題。接地する、すなわち腑に落ちるという感覚がなければ言語は記号と記号をメリーゴーランドするわけで、まさにAIなんかがこれなわけだが、人間には接地するアイコン性の高い言葉が必要。 オノマトペは他の言葉に比べてアイコン性が高い。音象徴の感覚は赤ちゃんや聾者にも共有され得る。fMRIでの測定の結果、脳はオノマトペを環境音と言語音として二重処理している。もちろん文化的な発展の違いもあるのでオノマトペを異文化間で完全に理解しあえるものではない。 オノマトペは口笛や咳払いなどと比べて、言語の十大原則(コミュニケーション機能、意味性、超越性、継承性、習得可能性、生産性、経済性、離散性、恣意性、二重性)の観点からは一般語に近い。 ヘレンケラーがすべてのモノに名前があると閃いた「名づけの洞察」。オノマトペはヒトが言語を修得するための大局観を与える役割を果たしている。膨大かつ複雑な言語という体系に挑む足場をかけている。 言語の発展を目の当たりにできるニカラグア手話。英語はオノマトペが少ないが、オノマトペが動詞として文構造の中核に取り込まれ表現されるようになった結果オノマトペ性を失い一般語化されていった。言語は完全に恣意的な記号の体系にはならず、人間が使い手である限りは身体感覚と直接つながるアイコン性をもつ言葉が残る。 既存の知識が推論などでアップデートされより洗練された推論を行うようになるブートストラッピングモデル。 チンパンジーのまれな個体を除き、動物は対称性推論をしないが、人間はする。A⇒BならB⇒Aと推論する。これは非論理的で誤りを犯すリスクがあるが、これこそが言語の習得を可能とした。
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もうすぐ2歳になる息子のことを思いながら読んだ。最近は見たものや聞いたものに自分でオノマトペをつけるようになり、観察しているととても面白い(救急車はピンコンピンコンだそうです)。 0から言葉や世界を知っていかなければならない赤ちゃんや子どもが、どのようにして母語を習得していくの...
もうすぐ2歳になる息子のことを思いながら読んだ。最近は見たものや聞いたものに自分でオノマトペをつけるようになり、観察しているととても面白い(救急車はピンコンピンコンだそうです)。 0から言葉や世界を知っていかなければならない赤ちゃんや子どもが、どのようにして母語を習得していくのか。そこにはオノマトペの存在と、人間独自の思考であるアブダクション推論(知識を想像力によって拡張したり、ある現象から遡及して原因を考えたり、一番もっともらしい説明を与えようとする人間の思考スタイル)が関わっている。 オノマトペと子どもの言語習得を切り口に、言語の本質に迫っていく。 子どもの言語習得や思考を調べる実験がおもしろかった。と同時に、久しぶりにしっかりした学術書を読んだので難しくも感じた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
言語の本質とは何かを知りたくて本を開き、いきなり「オノマトペとは何か」と言われるとちょっと面食らうかもしれない。でもオノマトペが何かを探ると言語とは何かが次第に見えてくる。 3章まででオノマトペは言語とみなせるということを論じ、そこから言語の進化という意味でも、人間個体の言語習得という意味でも、オノマトペ的なアイコン性からスタートして、次第に恣意性を帯び、現在大人が一般に使っているような各言語が成立しているということを述べている。その進化や習得の過程では「アブダクション推論」が大きな役割を果たしている。これがヒトだけが複雑な言語を使いこなしている理由でもある。ということ。 抽象的な議論に振り落とされそうになることもあったが、全体通してみれば納得感のある議論に感じられて、とても面白かった。 1. オノマトペとは何か 2. アイコン性—形式と意味の類似性 3. オノマトペは言語か 4. 子どもの言語習得1—オノマトペ篇 5. 言語の進化 6. 子どもの言語習得2—アブダクション推論篇 7. ヒトと動物を分かつもの—推論と思考バイアス 8. 言語の本質
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「キーフレーズ」 ⭐︎記号接地問題 ☀︎言葉の意味を本当に理解するためには、丸ごとの対象について身体的な経験を持たなければならない。 特別支援教育への転用と仮説 ⭐︎おしっこ出た?よりも、おむつ濡れてる?の方がわかりやすいのではないか。 トイレで便器に座っている時は、「出す」「...
「キーフレーズ」 ⭐︎記号接地問題 ☀︎言葉の意味を本当に理解するためには、丸ごとの対象について身体的な経験を持たなければならない。 特別支援教育への転用と仮説 ⭐︎おしっこ出た?よりも、おむつ濡れてる?の方がわかりやすいのではないか。 トイレで便器に座っている時は、「出す」「出した?」が、身体的に理解しやすい。時制が今だから。 おむつに関しては、触れている感覚を問いた方が理解しやすいのではないか? 記号接地をできるようにするために、 1️⃣濡れたタオルと乾いたタオルを触れさせ、経験を増やすことで、言葉とイメージの一致を促す。
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