1,800円以上の注文で送料無料

「おかえり」と言える、その日まで の商品レビュー

4.3

33件のお客様レビュー

  1. 5つ

    15

  2. 4つ

    11

  3. 3つ

    6

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2023/12/11

『「おかえり」と言える、その日まで』というタイトルを見た瞬間に、内容を全く知らないのに胸を打たれた。震災を経験し、「おかえり」と言えることが当たり前ではないと、痛感していたからだ。 この話は、救命の看護師さんであった著者が、外傷についてさらに勉強したい思っていた頃に浮かんだ「な...

『「おかえり」と言える、その日まで』というタイトルを見た瞬間に、内容を全く知らないのに胸を打たれた。震災を経験し、「おかえり」と言えることが当たり前ではないと、痛感していたからだ。 この話は、救命の看護師さんであった著者が、外傷についてさらに勉強したい思っていた頃に浮かんだ「なんで身近な里山で大けがするのか?」という疑問と、インストラクターとして参加していた救急対応の講習会で出会った男性からの「百聞は一見にしかず」という言葉で山岳救助の現場に関わったことから始まる。 山岳遭難捜索は思いのほか難しい、というのがまず初めに浮かぶ感想だ。「慣れている登山者だから」「きっとこの道通ったはず」が通用しない。登山者も人、天候や山のコンディションも自然、となると、予想に反した行動やアクシデントが起こるということを強く認識させられた。そして、わずかな手がかりを頼りに、地道に捜索する人たちが、残された家族の方々から丁寧に聞き取ったことを踏まえて、あらゆることを想定し、動いていく。表現は適切ではないかもしれないが、ノンフィクションの推理小説を読んでいるような感覚になった。 読み終えた後、帯の『運命の分かれ道は、本当に近くに潜んでいる』を改めて読むと、本当にそうだな…という気持ちになる。 どのケースもそうだった。 『一枚の看板がちょっとずれていた』だけでも、登山者は違う道に来てしまう。 『いつもルーティンの行動をしてるから、きっとこの辺にいるだろう』と捜索範囲を決めても、実はそれは前回登った時のままにしていただけで、まだそこに到達する前に事故にあった、 など、思いもよらない運命の分かれ道が近くにあるということに気付かされた。とても良い作品だった。

Posted byブクログ

2023/06/05

山岳行方不明遭難者捜索活動および行方不明者家族のサポートを行う民間団体の代表の方の著書。 リスクがあるから楽しい登山。 リスクを可能な限り減らしたとて、ゼロにはできず、事故は起こる。そんな時に心強い味方となるのがこういった組織。 まさか自分が、と、思ったことだろうなと遭難者の道行...

山岳行方不明遭難者捜索活動および行方不明者家族のサポートを行う民間団体の代表の方の著書。 リスクがあるから楽しい登山。 リスクを可能な限り減らしたとて、ゼロにはできず、事故は起こる。そんな時に心強い味方となるのがこういった組織。 まさか自分が、と、思ったことだろうなと遭難者の道行とその最期を想像した。 こういった本を読んでから登るのが、いいんじゃないかなと思う。

Posted byブクログ

2023/05/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 漫画『岳 — みんなの山』(石塚真一著)を文章で読んだ気になる好著。  著者が2018年に立ち上げた捜査団体・山岳遭難捜索チームの活動を通し、登山者がどこで判断を早まり遭難し、帰らぬ人となるかを実例を上げて解説する。  また、捜索側も、その道のプロ、警察の山岳警備隊や救助ボランティアの山のプロゆえに理解できない、山の素人や一般登山者の判断を、初心者目線で見直し、遭難者の発見に結びつける著者の慧眼にも恐れ入る。先入観が、何より危険なのは、あらゆる物事に通じる極意だと改めて感じる。  遭難者のプロファイリングも丁寧に行い捜索を進める点も脱帽。 「道迷い遭難の場合は特に、遭難者の性格が反映される。」  と、残された家族や知人にしっかりとヒアリングを行う。  また、さっこんはSNSを活用し、遭難時に同じ山に居た登山客を割り出しヒントを得ようとしたり、遭難者の過去の登山歴、画像をチェックし、当日どのような服装で山に入ったかも突き止める執念たるや!   後半の事例なぞは、ちょっとした推理小説のようで本としても読み飽きない。  ともかく、個人で行動するのは危険、たとえ単独行とするも、誰かに連絡をしておく、入山届や、登山計画などをどこかに残しておくことが早期発見、そして救助、救命の助けになるということも良く分かった。  なにより、こうした方々に迷惑をかけないよう、無理しない登山を楽しもうと改めて思った次第。

Posted byブクログ