極楽征夷大将軍 の商品レビュー
足利尊氏と弟の義直の兄弟愛かぁ~~~ ぐうたらな兄尊氏を影で支えつつも、時には対峙し決戦となろうとも義直を慕う思いは、最初から最後まで変わらない。 読み応えありありでした。
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2023年上期直木賞受賞作品 室町幕府初代将軍である足利尊氏とその弟、直義と尊氏の秘書役だった高師直の数奇な半生を描く大作です。読み応えは半端なかったですよ。読んでみて作者が膨大な資料を読み込んで時間をかけて丁寧に取材をされたのだろうと想像できます。 源頼朝もそうですが尊氏も...
2023年上期直木賞受賞作品 室町幕府初代将軍である足利尊氏とその弟、直義と尊氏の秘書役だった高師直の数奇な半生を描く大作です。読み応えは半端なかったですよ。読んでみて作者が膨大な資料を読み込んで時間をかけて丁寧に取材をされたのだろうと想像できます。 源頼朝もそうですが尊氏も日本人には人気ないんですよね。 頼朝は冷酷、尊氏は裏切りのイメージがすり込まれています。反対に二人に滅ばされたライバル的存在の源義経や楠木正成は人気があるんですよね。日本人の判官贔屓ってやつですね。本作読むまでの私のイメージも同じようなもんでした。 とこれがどっこい!読後の尊氏のイメージがガラッと変わりましたよ。 尊氏は将の将としての器の人です。あくまで私個人の感覚ですが武士としての能力や性格を別にして、度量の大きさで言うと三国志の劉備玄徳とか維新の志士、西郷隆盛クラスです。 さて本書の紹介を簡単にしておきましょう。 鎌倉時代末期から南北朝時代まで大激動の時代、中の上クラスの御家人の側室の子(非嫡男)から武士のトップオブトップ に上り詰めた尊氏の激動の生涯が詳細にに描かれています! というと実力と天性の才能で天下を取るっていうかっこいいのを思い浮かべそうですが、本書の帯に「やる気なし 使命感なし 執着なし なぜこんな人間が天下を獲れてしまったのか?」とあるんですよね〜。 いわゆる庶子生まれの尊氏は、武芸鍛錬や学問習得に努力する訳でもなく、ぼーっと日々を過ごして育つんです。上昇志向も物欲もないお人よしで、大の面倒くさがり。嫡男の病死で突然家督を継ぐことになっても、面倒くさがり逃げ回る(笑)。やむなく家督を継いだ後も、流れに身を任せたままに、謀反や挙兵といった重要な判断を全て他人任せにするんです。自己主張が強い人を指して「我が強い」という表現がありますが尊氏は「我がない」んです。 こんな尊氏を 辛辣に批評するのが実弟の直義と秘書役の 高師直 。全くやる気を出さない尊氏に面倒くさい仕事を押し付けられてうんざりする2人という構図が作中たくさん出てきて笑えました。 いつ天下人らしくなるのかと、500ページ超の長編を読み進めるんですが尊氏がそれらしくなるのは最後の最後だけでした。 こんなやる気ゼロな尊氏ですが直義と師直の予想とは裏腹に、なぜか武士たちから異常なほど人望を集めていくんですよ。危機に望んでも何もせずにぼんやりしている尊氏を、周囲が勝手に懐が深く表裏がない大人物だと信じ込んでいきます。まさにカリスマです。 尊氏の取り柄といえば、戦の戦況や時代の波がどちらに向いているかを察知する天性の「勘」です。私個人の感想ですが戦にこれだけ強いというのは脳内の空間認識能力が他人より相当優れていたんでしょう。 尊氏は、直義や師直と共に鎌倉幕府を倒してからも、後醍醐天皇との確執や直義と師直の争いに巻き込まれたり、最後には大好きだった弟の直義と争ったりとまさに波乱万丈の人生を生ききります。 その過程が直義や師直などの当事者目線で描かれており読み応えは文句なし。読んで良かったと言える一冊でした。
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南北朝時代の歴史は、とても曖昧にしか理解できていなかったが、かなりすっきりとした。尊氏を、こんな風に持ち上げながら貶めるというスタイルが、とても魅力的な作品を生んだ。高師直や、直義の位置付けも腑に落ちた。 鎌倉幕府とは違う、不思議な生成過程が、室町時代の不安定さを生んだわけだな。
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第169回直木賞受賞作品。 室町幕府の初代征夷大将軍の足利尊氏を弟の直義と執事の高師直の視点で描いている。 まず、尊氏のカリスマ性が幼少のころから知っている二人には理解できないところが面白い。 また、観応の擾乱で権力闘争するというこれまでの史実に対し、二人の良好な関係性が前面に出されていて、ボタンの掛け違い的な対立が哀しくなりました。 それにしても、この時代の小説やドラマが少なすぎるので、ぜひ三谷幸喜脚本で大河ドラマ化をしてほしいです。
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第169回直木三十五賞受賞作 鎌倉幕府の滅亡から室町幕府の成立にかけての経緯がよくわかっていなかった。 その空白の物語を、本書が繋いでくれた。 なかなかに面白い室町幕府成立の話。 大作で細かい本だが、面白かった。
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自分の先々は、存外己の料簡では決められぬ。周りにいるすべての人々の思惑、時代の潮流、そのようなもので大方が決まる 人は皆、様々なものが絡み合う浮世の奔流に、絶えずあちらこちらに流されて行くものだ 総大将にとって最も大事な資質とは、その実質がどうであれ、配下のものや友軍の将に、絶対...
自分の先々は、存外己の料簡では決められぬ。周りにいるすべての人々の思惑、時代の潮流、そのようなもので大方が決まる 人は皆、様々なものが絡み合う浮世の奔流に、絶えずあちらこちらに流されて行くものだ 総大将にとって最も大事な資質とは、その実質がどうであれ、配下のものや友軍の将に、絶対的な信をもたれることである。どんなに苦しい戦況に陥っても、総大将が必ずやたすけてくれることを信じて逃げずに踏ん張り抜くことができるからだ。 戦いは味方が一体化している方が最後には優勢になる 戦とは本来、死を賭して戦うことにではなく、今ある手駒を使ってなるべく簡単に、かつ確実に敵を追い落とすことにあると 我らは神でも仏でもない。一寸先のことなど誰にもわからぬ。生きるとは、その闇夜の先を手探りで進むようなものだ。 競り合いで苦しいのは、殺される恐怖に怯えているのは、相手も同じだ。本当にきつい時に敢えて死地に向かって一歩踏み出ることができるのか。その一歩さえ出れば、さらに一歩、また一歩と、続け様にまた先へと踏み込んでいける。結果、敵は恐れをなして後退する。自分を守らない、だからこそ逆に拾える命がある。 戦さなどは常に水ものだ。勝つ時もあれば負け込む場合もある。だからこそ、よく負ける者だけが生き残る。余力を残して負けてこそ、再起の日もこようというものだ。要らざる矜持や名誉など捨てよ。 本書は、尊氏と直義の二人を中心とした人情物語である、といっても良いかもしれない。良い意味でだ。正直で情に熱い尊氏とそんな兄とは正反対の直義。しかし、その兄弟仲は巌のように固く揺るぎない。直義が危機に瀕しても鎌倉幕府に尊氏を戴くまで自分を助けに来るなと言っていたにもかかわらず、助けに来た尊氏をなじりながらも涙が滂沱の如く流れる様は泣けてくる。久しぶりに感動を得られる歴史小説に出会った感じだ。
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読了まで非常に時間がかかってしまった。序盤の波打ち際での出来事が晩年に回収されるんだと容易に推測できたが、その回収された時の満足度の低さが今回の私の評価そのものなのかなと感じる。とても好きな作者だけに今回は残念でした。極楽というワードのこだわりがむしろ逆効果で史実が歪曲されてミス...
読了まで非常に時間がかかってしまった。序盤の波打ち際での出来事が晩年に回収されるんだと容易に推測できたが、その回収された時の満足度の低さが今回の私の評価そのものなのかなと感じる。とても好きな作者だけに今回は残念でした。極楽というワードのこだわりがむしろ逆効果で史実が歪曲されてミスリードされていく感覚に陥ってしまう。(何が史実かということは関係なく)
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1,000ページ超の大作。個人的には歴史小説は途中でダレることが多いが、主人公の足利尊氏、足利直義を中心に魅力的なキャラばかりでストーリーに引き込まれた。学生時代に読みたかった…
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尊氏、直義の兄弟関係を軸に、あらゆる立場の人々がそれぞれの道理で動いて、歴史が動いていく。 空っぽな世間、水と例えられる尊氏。義務、責任といったすべきことにとらわれ続ける直義、師直が泥沼にはまっていく様。 面白い。
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久々に1ページ2段組、500ページ越えの本だったが、足利尊氏兄弟と室町幕府成立や南北朝時代の話に引き込まれ、あっと言う間に読んでしまった。
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