赤い月の香り の商品レビュー
『透明な夜の香り』続編。小川朔が、カフェでアルバイトをしていた朝倉満に自身の洋館で働かないかと声をかけるところから話は始まります。 満は過去の経験から、女性と関わるのが苦手ですぐカッとなって暴力を振るってしまう人物。朔がなぜ満を洋館での仕事に誘ったのか疑問に感じていたのですが、そ...
『透明な夜の香り』続編。小川朔が、カフェでアルバイトをしていた朝倉満に自身の洋館で働かないかと声をかけるところから話は始まります。 満は過去の経験から、女性と関わるのが苦手ですぐカッとなって暴力を振るってしまう人物。朔がなぜ満を洋館での仕事に誘ったのか疑問に感じていたのですが、その秘密は終盤に明かされて、同時に満が忘れていた過去も明らかになってきます。 「朝倉満」という名前も、なるほどな〜と思いました。 今回の作品に登場する依頼人たちは、過去の記憶や出来事、経験に執着している人たちばかりでした。そういう依頼人たちを見て、満も少しずつ自分のトラウマと向き合っていくのですが、前作の若宮一香に比べると、満の人物像の完成度は少し低いような、粗いような印象を受けました。 ちょこちょこ若宮一香も今作に登場するのですが、彼女の言葉は静かな水面のような雰囲気を持っていて、文字だけで空気感まで演出してしまう筆者の言葉のセンスや紡ぎ方に驚きます。私が勝手に頭の中でそういう風に演出してしまっているだけかもしれませんが。 新城と源さんは相変わらずで、新城はガサツなところもあるけど憎めないいいやつだな〜も改めて感じました。
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千早さんの何度も美しい言葉の波に溺れながら ページをそっとめくる度に 透明で優しい香りがたつようで ずっとこの世界に浸っていたい… 読み終わりたくない…と何度も感じた 叙情的で幻想的…そして 非日常を感じさせながらも 美しい世界を読者に魅せてから やがて日常へ戻ってくる...
千早さんの何度も美しい言葉の波に溺れながら ページをそっとめくる度に 透明で優しい香りがたつようで ずっとこの世界に浸っていたい… 読み終わりたくない…と何度も感じた 叙情的で幻想的…そして 非日常を感じさせながらも 美しい世界を読者に魅せてから やがて日常へ戻ってくる描写が美しい… 忘れられないあの人の香り その人が纏う香り以上の何かを 手に入れたい香りもあれば 香りをかぐことで辛い過去の記憶を呼び覚ます 香りもある 時に誰とも共有したくない… 自分だけの物語にしたいと思う作品に 出会うことがある 私にとってこの作品は まさに独占欲を駆り立てる物語だった 前作で登場した一香に出会えたことも嬉しい_ ほのかに恋の香りをかいだ気がした… きっとそれは… 読者に余白を残すようなラストであり 続編を期待したい想いから 私にほんのり恋の香りをもたらしてくれたのかもしれない
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テーマは人のもつ「加害性」について。怒りという感情が湧くほどのエネルギーを持ち合わせていない自分は、人に加害を与えることは滅多に無いと思っていたけれど、時には存在しているだけで加害性を帯びることだってあるだろうから難しい。 また、本作品で強く描かれていた部分であるが、親子関係...
テーマは人のもつ「加害性」について。怒りという感情が湧くほどのエネルギーを持ち合わせていない自分は、人に加害を与えることは滅多に無いと思っていたけれど、時には存在しているだけで加害性を帯びることだってあるだろうから難しい。 また、本作品で強く描かれていた部分であるが、親子関係や恋人関係における愛情も、時には加害に転じ得る。それに無自覚でいるのが一番たちが悪いことなんだろう。 朔が、「正しい執着」とは赦しであるという考えに辿り着くところで、物語はラストを迎える。朔の導いた答えは、正直すぐにはぴんとくるものではなかったので、その意味について、この先ゆっくり考えていきたいなと思った。
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『透明な夜の香り』の続編。 前作もとても好きだったのですが、今作も良い。今作の主人公は、前作の若宮一香ちゃんから代わって、浅倉満という男性に。勝手に女性かと思っていたのと一香ちゃんと雰囲気も結構違うタイプの主人公。今作もお客様ごとのストーリーになっていて読みやすい。 香りって、本...
『透明な夜の香り』の続編。 前作もとても好きだったのですが、今作も良い。今作の主人公は、前作の若宮一香ちゃんから代わって、浅倉満という男性に。勝手に女性かと思っていたのと一香ちゃんと雰囲気も結構違うタイプの主人公。今作もお客様ごとのストーリーになっていて読みやすい。 香りって、本当に記憶に繋がっているよなぁと読みながら何度も思った。私が執着している香りって何だろうなぁ。あまり普段は意識していないけどきっとあるんだろうな。
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千早さんの調香師シリーズの続編。 どうして彼女の作品が人気なのかわかる気がする。調香と言う張り詰めた世界観と人の内面の脆弱さが際立っていて、作品の中にすっと入り込めるここち良さを感じる。私の記憶の香りは何だろう。
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『透明な夜の香り』の続編。神秘的な雰囲気は健在。だが正直前作の方が好みだった。アロマ・ハーブ・荘厳な洋館・ミステリアスな調香師..この世界観にはやはり主人公が女性の方がしっくりくるような。本作は男性主人公になり新しい切り口になったと思うが彼があまり好きになれなかったのが残念。その...
『透明な夜の香り』の続編。神秘的な雰囲気は健在。だが正直前作の方が好みだった。アロマ・ハーブ・荘厳な洋館・ミステリアスな調香師..この世界観にはやはり主人公が女性の方がしっくりくるような。本作は男性主人公になり新しい切り口になったと思うが彼があまり好きになれなかったのが残念。そのせいか前作よりは没入できず「朔さんちで働くのってめちゃ大変じゃね」と雇用形態の理不尽さに思いをはせる始末。とはいえ調香師の朔さんは好きだしもっと朔さんのことを知りたい。影響されて最近使ってないアロマディフューザーを引っ張り出した。
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透明な夜の香りの続編。 天才調香師・小川朔が作る香りから広がる物語。カフェで働いていた朝倉からは抑えきれない強い怒りの匂いがした。 洋館に現れた女性は柔軟剤の匂いがきつすぎる... 読むと好きな香りが匂ってくる。 香りは記憶を誤魔化せないのだ。 続編希望!
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病的に臭いに敏感な調香師小川朔,彼に見込まれて前科のある朝倉満は家政夫として働き出す.山上の方にある洋館,むせかえるような植物,だんだん解けていく朝倉の過去,その作り出される香りの謂れなどが謎解きのような味わいがあって面白い. 小川朔が纏う空気が全てを包み込んだような物語だった.
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
Kindleで読んだ。 古い洋館で「香り」のサロンを営む天才調香師・小川朔は、幼馴染みの探偵・新城と共に、依頼人の望む香りをオーダーメイドで作っていた。朝倉満は朔に勧誘され、そこで働くことになるが…。 『透明な夜の香り』続編。 朔のいるあの洋館は、“過去と向き合うことのできる場所”なんだね。 香りで記憶を蘇らせて…。 “「でも、出ていかなくてはいけないんです。あの場所は特別な場所だから、ずっとは居られない。私は過去と向き合わなくてはいけなかった。あそこはその力を蓄えるために楽をさせてくれた、ひとときの隠れ家でした」” 今作は食べ物より飲み物の描写が多かった。 ローズウォーター、ローズマリーのハーブティー、蓬ベースのハーブティー、レモンバームとレモングラスのハーブティー、ミントシロップと炭酸水…。
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前作「透明な夜の香り」がとても面白かったので期待していましたが、これもまた良い本でした。 新しい作家さんの話題の本を連続して読んだ後でこの本を読んだら、文章の素晴らしさと美しさ、説得力がワッと迫ってきました。前述の作家さんたちがどうという訳ではありませんが、全体の佇まいのようなも...
前作「透明な夜の香り」がとても面白かったので期待していましたが、これもまた良い本でした。 新しい作家さんの話題の本を連続して読んだ後でこの本を読んだら、文章の素晴らしさと美しさ、説得力がワッと迫ってきました。前述の作家さんたちがどうという訳ではありませんが、全体の佇まいのようなものが何しろ素晴らしい。 物語としても前作の関わり方、最近世の中に多い連作短編の形の嵌り方といい、バランスのいい本でした。
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