勿忘草をさがして の商品レビュー
高校生の航大はある事件から暇を持て余す毎日を送っていた。そんな毎日を過ごしていたある日、一年前に自転車で転んだ自分を助けてくれたおばあさんの家へお礼を言おうと思った。しかし、覚えているのは沈丁花の香りだけ。沈丁花を探して素敵な庭の家を教えてもらうが、目的の家ではなかった。その家の...
高校生の航大はある事件から暇を持て余す毎日を送っていた。そんな毎日を過ごしていたある日、一年前に自転車で転んだ自分を助けてくれたおばあさんの家へお礼を言おうと思った。しかし、覚えているのは沈丁花の香りだけ。沈丁花を探して素敵な庭の家を教えてもらうが、目的の家ではなかった。その家の菊子さんに話しかけられ、庭番の孫の拓海に沈丁花の話をすると花の知識で謎を解き始めた。 植物とミステリー➕青春小説の短編集。 タイトルの『勿忘草をさがして』からわかるように色々な花や植物が出てくる。そして、拓海と菊子さんの自慢の庭を見ながらティータイムをするなんて羨ましい限り。花が好きな人におすすめの一冊。
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まず、表紙が素敵。こんな素敵な庭で菊子さんのような可愛らしいおばあちゃんが美味しいお菓子と飲み物でもてなしてくれるなんて最高。 だが探偵役は菊子さんではなく、孫で無愛想だけど優しい大学生・拓海。 主人公の高校生・航大が一年前に出会った沈丁花のある家に住む高齢女性を探すという、あま...
まず、表紙が素敵。こんな素敵な庭で菊子さんのような可愛らしいおばあちゃんが美味しいお菓子と飲み物でもてなしてくれるなんて最高。 だが探偵役は菊子さんではなく、孫で無愛想だけど優しい大学生・拓海。 主人公の高校生・航大が一年前に出会った沈丁花のある家に住む高齢女性を探すという、あまりに大まかな手掛かりだけでのミッションに拓海が付き合ってくれたことをきっかけに、二人は様々な謎解きに挑む。 とは言え、学校から少しずつ消える植木鉢や、なぜか植物が上手く成長しない花壇、蔦に覆われた密室といった、ミステリーとしてはささやかなもの。 だがそこには優しさと人の気持ちにきちんと向き合う誠実さがあって微笑ましく読めた。 といっても真面目一方ではなく、友人たちと軽口を言い合う明るさもある。 航大も拓海も友人の凛も、相手が年下であっても子どもであってもいい加減な対応をしたり偏見で見たりせずに対応しているのが良い。 逆に航大や拓海とその親との関係はギクシャクしていて、私も考えさせられた。 最終話の表題作はいよいよそこにスポットが当たる。ドロドロしたりキツイ展開にならなければ良いがと思いながら読んだが、その結末はさて。 航大が園芸男子になる日も近そうだ。 庭仕事は体力も必要だし、案外似合うかも。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
胸があったかい想いでいっぱいに包まれる読後感。 航大と拓海のような友達関係が深まっていくってすごくステキだ。 植物が絡む小さな謎を解いていく過程は、航大と一緒に楽しませてもらえた。 家族とも職場とも違った第三の自分の居場所や人との繋がりって、なかなか出来づらく貴重だ。 ・・・・・・・ 何か夢中になれるような楽しみが見つかればいいのになと思えど、何も変わらない日常の中でどう見つければいいのかなと漠然と思いながら過ごしている今。 菊子さんのちょっとした言葉がとても胸に残る。 『何でもいいのよ。とにかく自分がしたいことをするの。それを探すこと自体、とっても、楽しいと思うわ』 『コツは、少しでも気になったものには積極的に触れてみることね。』 たしかに、気になるっていう気持ちがムクっと出てきても、その次の「触れてみる」って一歩を踏み出すのって何気に面倒くさくなってしまいがち。 だけど、せっかくなのでこの本をキッカケに今年は《積極的に》《ためしに》《触れてみる》をやってみようと決めた。 それを受けて、自分がどう感じるのかを知ることが楽しみだ。 ・・・・・・ 殺人事件が起こらないミステリー。 日常の小さな謎。 連続短編集。
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草花と謎と優しさと、の話。 高校生の航大くんと大学生の拓海くんが沈丁花をきっかけに出会い草花とささやかな謎を解き、少しずつ成長していく話。航大くんが良い子やから、こちらが感じる憤りもホッとするような優しさに昇華してくれる。今まで気にしていなかった草花が気になる、という航大くんに完...
草花と謎と優しさと、の話。 高校生の航大くんと大学生の拓海くんが沈丁花をきっかけに出会い草花とささやかな謎を解き、少しずつ成長していく話。航大くんが良い子やから、こちらが感じる憤りもホッとするような優しさに昇華してくれる。今まで気にしていなかった草花が気になる、という航大くんに完全同意する。私もこれを読んでどんな花か検索したり道端の花に目をやったりし始めた。ほっこり。 ・春の匂い 沈丁花が植えてある家を探す航大が、拓海とお婆ちゃんに出会い、拓海と共に探す話。三大香木の沈丁花を見て香りたくなる。そしてその家を探そうと思った航大の過去に眉を顰める。理不尽な扱いを受けた航大が悪くない、それくらいが丁度いい、と思えるようになる過程が良い。拓海の面倒見の良さもお婆ちゃんの温かさも大好き。 ・鉢植えの消失 学校の鉢植えが徐々に消えていく話。あんな過去があったけど、友達と仲良さそうな航大にホッとする。優しさに包まれた謎と高校生の時に感じた溝に微笑んだり苦笑したり。 ・呪われた花壇 花壇の花が元気がないのは亡くなったお爺ちゃんの呪いなのか、という話。草花探偵拓海が謎解き勉強になる。そして航大の友達陸がずっと気にしてた花壇を荒らしたお爺ちゃんの真相を告げた時、陸と同じような笑みが浮かぶ。それが正鵠を射ていたかは定かではないものの、陸を救いたい拓海が告げた言の葉は優しかった。 ・ツタと密室 蔦が巻き付いた空き地の物置、そこからどうやって草刈機を取り出したのかという話。蔦の密室と空き地で遊ぶ子供たちのいざこざ、謎を解く拓海と子供達を明るく導く航大に心が軽くなる。大きな変化はなくても停滞はしていない、そう感じられるのが良いと思う。 ・勿忘草をさがして 拓海の祖父の命日近くに届く押し花の栞は何を意味するのか、と言う話。拓海の母親が会いに来るがどうしようかと悩む拓海と相談に乗る航大。航大の思いやりや優しさがこちらにも拓海にも届く。拓海と母親のやりとりに笑みが溢れ、拓海が持っていた理由も分かる気がする。
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穏やかな物語が好きな人にも、そうでない人にも。 主人公が元サッカー部男子 友人たちが登場する これはPOP次第で読者が広がりそう!!
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ガーデニングやお花についての小さな謎、蘊蓄と共に謎解きを楽しめる展開。 「四季折々の花が咲き誇る庭で、おしゃべりしながら美味しいデザートをつまむ」 ちょっとしたことがご縁で始まった老婦人と無愛想な大学生との交流。 鬱屈した日々に射し込む穏やかで優しい時間。 ささやかだけど大切で...
ガーデニングやお花についての小さな謎、蘊蓄と共に謎解きを楽しめる展開。 「四季折々の花が咲き誇る庭で、おしゃべりしながら美味しいデザートをつまむ」 ちょっとしたことがご縁で始まった老婦人と無愛想な大学生との交流。 鬱屈した日々に射し込む穏やかで優しい時間。 ささやかだけど大切で、贅沢な時間。 航大と友人の会話のキャッチボールが軽妙で愉しげでいい。学生時代が懐かしくなった。 短編ごとに作品のもつ趣は少しずつ異なっていますが、誰かしらに屈託があり、ラストは謎解きとともにスッキリ。 優しい読み心地の連作短編集でした♪
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友達のケンカに巻き込まれ正当防衛だけど相手に怪我をさせてしまった主人公。熱心に打ち込んでたサッカー部も自発的という名の元に退部することになり、親も我慢できたのではと百かばってはくれない。心にバシバシとげができてる。そんな時に優しくしてくれたお婆さんを探すのだが覚えているのは庭のこ...
友達のケンカに巻き込まれ正当防衛だけど相手に怪我をさせてしまった主人公。熱心に打ち込んでたサッカー部も自発的という名の元に退部することになり、親も我慢できたのではと百かばってはくれない。心にバシバシとげができてる。そんな時に優しくしてくれたお婆さんを探すのだが覚えているのは庭のことだけ。その庭探しをひょんなことから助けてくれるおしゃべりのお婆さんと庭に詳しい大学生の孫。彼らと親しくなりいろいろ植物からみの謎をといていく連作短編集。殺人事件とか派手な事件はないけれど、人の心は難しいし優しいしややこしい。 最後は前向き。もし続くならまた読みたいなあ。
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優しさにみちた連作短編集。優しさというのは時に残酷で良いと思える行為が相手を傷つけてしまうこともある。本作はそうならないように丁寧に大切に描いていると感じた。モチーフが「花」なのもそれが起因してあると感じられる。加えて意外にといっては失礼だが主人公らの会話が良い。完全な青春小説な...
優しさにみちた連作短編集。優しさというのは時に残酷で良いと思える行為が相手を傷つけてしまうこともある。本作はそうならないように丁寧に大切に描いていると感じた。モチーフが「花」なのもそれが起因してあると感じられる。加えて意外にといっては失礼だが主人公らの会話が良い。完全な青春小説なので同級生たちとのたわいもない会話も多々出てくるがこれが中々に良いのだ。ふざけすぎるとしらけてしまうのだが絶妙なラインを付いてくる。読んでいて楽しくなった。本作は鮎川哲也賞の優秀賞作品だが、この賞には日常の謎が映える。
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一年前、偶然出会ったおばあさんに会いたい。しかし手掛かりは、庭に沈丁花が生えていることと、その庭で交わした会話だけ――。トラブルにより部活を辞め無気力な日々を送る航大が、一年前の記憶を頼りにある家を探していたところ出会ったのは、美しい庭を手入れする不愛想な青年拓海だった。拓海は植...
一年前、偶然出会ったおばあさんに会いたい。しかし手掛かりは、庭に沈丁花が生えていることと、その庭で交わした会話だけ――。トラブルにより部活を辞め無気力な日々を送る航大が、一年前の記憶を頼りにある家を探していたところ出会ったのは、美しい庭を手入れする不愛想な青年拓海だった。拓海は植物への深い造詣と誠実な心で、航大を導いていく。植物と謎を通して周囲の人間関係を見つめなおす、優しさに満ちた連作ミステリ。 サッカー部でトラブルと起こし、部を辞めた航大。そこからずっと鬱々とした生活を送っていたときに出会った大学生の拓海とその祖母の菊子。2人は航大の話を聞いてくれ、そして探している家を特定してくれた。 そこから航大は、拓海と菊子に会いに綺麗なお庭を眺めながらのお茶会に参加。まぁ、ほとんどがおしゃべりが好きな菊子の話が中心だったんだろうなと推測するが、航大も優しいから聞いてあげる。 航大も航大で、次々に消えていく植木鉢の謎や友人の家の花壇の謎など小さな謎をお茶会で話、それを拓海が推測して、解いていく。決して大きい事件でもなく、ただただ優しいだけなのだ。 航大と拓海のコンビを見て、植物の名前が出てきて気になって画像検索をする作業を何げにやると、ずっと秋のの花粉の「ブタクサ」だと思っていた植物が、実は違っていたことや季節の折々に見かける植物の名前を知った。こんな名前だったのね、と思うことばかり。 拓海が世話をしてきた綺麗なお庭。一度でいいから覗いてみたいな、と思った。 2023.8.12 どくりょう
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祖母の庭番をする大学生の拓海、大好きなサッカーをやめて帰宅部で居場所のない航大、植物に関する知恵から謎解き。すっと読めるけど、老生した大学生のアンバランスさとゴールのない展開で、なんとなく読了。紙風船は、ふうせんかずらではなく桔梗だと、迷わず思ったけどなぁとぼやく。
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