上海灯蛾 の商品レビュー
んんん・・・ピカレスク・・・か。 もっと、深刻な話なんだけど・・・ そう纏めるしかなかったのかな。 戦前戦中における阿片売買を 日本は「専売公署」とした。 「専売公社」は戦後の発足だが、 イメージがつながってしまう。。。 日本軍の戦費は阿片によって生み出されていた。 東南アジ...
んんん・・・ピカレスク・・・か。 もっと、深刻な話なんだけど・・・ そう纏めるしかなかったのかな。 戦前戦中における阿片売買を 日本は「専売公署」とした。 「専売公社」は戦後の発足だが、 イメージがつながってしまう。。。 日本軍の戦費は阿片によって生み出されていた。 東南アジアをはじめ、 国内の大阪や和歌山には芥子畑が整備され、 女子どもが収穫に駆り出されれいた。 圧倒的な歴史の闇が存在する。 2020年に連載が始まった『満州アヘンスクワッド』を 読んでみたいと思う。
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24/06/09読了 今年40作め 主人公である次郎と、ゆきえ、伊沢の3人の日本人の辿る道の違いが面白かった。
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太平洋戦争前夜、満州を手に入れた日本は更に手を広げ、中国へ進出していった。そんな時代を取り上げた作者の上海三部作。 『破滅の王』では細菌兵器を 『ヘーゼルの密書』では和平工作を 『上海灯蛾』は阿片密売が生み出す“カネ” それぞれ題材は違うが、テーマは当時大陸に夢を描いていた人た...
太平洋戦争前夜、満州を手に入れた日本は更に手を広げ、中国へ進出していった。そんな時代を取り上げた作者の上海三部作。 『破滅の王』では細菌兵器を 『ヘーゼルの密書』では和平工作を 『上海灯蛾』は阿片密売が生み出す“カネ” それぞれ題材は違うが、テーマは当時大陸に夢を描いていた人たちの希望と挫折。特に今回は“魔都上海”の“青幇”と云われる闇組織が舞台で、ノワールの香りが強い。 「戦争をする奴らがどんな理屈をつけても、結局は金のためだ」って言ったのは『風と共に去りぬ』のレット・バトラー……。 そして、多くの悲劇を生む。 それは今でも同じこと。
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阿片ビジネスを巡り、男たちの友情と裏切りを描いた物語。 心理描写が巧みなので、次郎と楊直(ヤン・ジー)のそれぞれ相手に対する心の移り変わりがわかりやすい。 だからこそ、2人通じ合ったような終盤の展開は熱い! ただ、阿片の密売を中心に物語が進むので、全体的に暴力的なシーン多め。 とくに中盤、楊直の家族に対して極めて残酷なシーンが描写されています。 私みたいに登場人物に感情移入しやすいタイプの方は、今作の「上海灯蛾」のような作品は精神的に余裕があるときに読むことをオススメします。 私はそのシーンを読んで、ひどくメンタル沈んで落ち込んだので、心落ち着くまで4〜5日ほど本書から離れなければいけませんでした。 血なまぐさい過激な描写が苦手な方は要注意です。
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2023年。あの時代の上海といえば読まないわけにはいかない。 兵庫あたりの貧農の家に生まれた次郎。IWannabeSomebody、実家を飛び出して上海へ。上質の阿片を売りに持ってきたユキエ、義兄弟の契りを交わした揚。そして青幇、上海だ~。ロシア人とのハーフ常楽。大学で学ぶべく希望を持って進学した常楽が関東軍にからめとられていくところも灌漑深い。恩人次郎と敵になってしまう。 揚の家族の惨殺。物語は阿片をめぐって青幇、関東軍との戦いに。 灯りに群がる蛾。ミステリタッチもあるし、業につかれた人間たちの物語を堪能した。
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田舎から成り上がりを夢見て上海に来た青年、吾郷次郎が原田ユキエと名乗る女性から芥子の種を受け取ったことで、麻薬の売買など裏世界に絡んでいく物語。 組織内で起こる争い、それに加えて国同士の対立も交じり合っていく。 作中で起こる事件、原田ユキエがなぜ種を持っていたか、など数々の謎が結びついていく瞬間はとても爽快感がある。 主人公である吾郷次郎の義理堅いところや、支配への反発など頑固な所が気に入った。そんな主人公が楊直や原田ユキエなどと徐々に信頼関係を築いて行く展開には心が躍る。 また、次郎が囚われて拷問されている時に楊直が「丁重にもてなしたら喋るかもしれんぞ」と伊沢に対して言った時は、なるほどありえると少し笑えた。 中盤から盛り上がり、一気に読めた。 最後も個人的にはすっきり終わった感じがしてとても楽しめた作品。
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ハードボイルド小説を久しぶりに読んだ。日本がパールハーバー襲撃を起こす前、満州建立から阿片を運用し、そして上海へ。阿片戦争がどんなだったか記憶からすっかり吹き消されているけれど、この物語を読んでいると史実かと見まがうほどにリアリティで物語の世界に吸い込まれていく。中国人に扮して生活していた日本人が上海マフィアの歯車にいやおうなしに組み込まれていくも日本人として、組織人として、そして自分個人としての生き様を主張して混沌と時代の渦に巻き込まれていく。 タイトルが難しいような表現だったけど文中にも説明が入り、ああ、なるほど灯りに群がる蛾のように、ね。 プロローグで書かれていたので、結末は分かっていたけれどそういう展開になるのかーと最後まで読みごたえ万歳だった。後を引く終わり方がまた良い。
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戦前の上海を中心に、阿片やマフィアや日本軍、因縁と抗争。 ドロドロ血生臭い内容ではあったが、次郎の芯がぶれず好感が持てたので読後感はすっきり。文章もとても読みやすかった。 知らず知らずのうちに登場人物たちに愛着を感じていたようで、読み終わった後しばらくロスを味わった。
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上田早夕里の上海三部作の最後…と言っても、各作品に直接のつながりはないのだが…。 良質の阿片利権をめぐって覇を競う上海裏社会を牛耳る結社「青幇」と日本の関東軍との争いに翻弄されつつもしたたかにのし上がろうとする主人公「吾郷次郎」を描く。 毒花のように艶やかで危険で底知れない魔力と魅力を放つ暗黒都市「上海」と太平洋戦争前後の退廃と暴力と破滅の雰囲気。青幇や関東軍の個性的にイヤらしい登場人物、媚薬のような芳香を放つ危険なヒロイン。フィクションとわかって読んでいても悪酔いしそうな物語世界。500ページを超える小説世界の独特な雰囲気に浸るだけでも十分に面白い。 そんな世界の中で、主人公が意外にも平凡(あくまで登場人物の中では)なのが、これまた良いのである。悪や退廃や大陸的な処世術だけを読まされると、迷子になったように戸惑ってしまうのだが、かろうじて理解できる主人公の生き方や価値観を浮き輪代わりにつかまって、艶美悪徳都市「上海」を漂える。随分心もとない浮き輪ではあるのだが、それがまた良いのである。 それにして麻薬の恐ろしさ。エルロイやウィンズロウや馳星周がさんざん書いてきた通り、使うにしても売るにしても麻薬はかかわった瞬間から破滅の道をたどる。裏社会に生きる分かりやすく「悪い人」が扱うだけなら、そこに踏み込まない用心もしやすいのだが、一見表社会の人がそこに絡むから怖い。 本作でも、国家の正義と大義のためと言って阿片で利権を得ようとする関東軍(今となっては悪い組織だが当時の日本ではエリートかつ英雄だともいえる)が、軍隊の威光をかざし悪辣な所作を行う。勉学で身を立てようと志した若者が、つまづきもせず努力してきた果てに関東軍で麻薬戦争の朱戦力になっていたりする。 現実だってそうだと思う。政権与党はカルト宗教が奥深くまで巣食っていたし、地方政治の某超人気政党は、公務員と看護師と文化予算を削りに削って、カジノを誘致する。正義だの正しさだのを強く主張するヤツらの危うさにまだ気づかないのかと、魔都上海は笑っているに違いない。
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開戦前の上海。日本軍、青幇(中国の秘密結社)、アヘンの栽培と取引に関わる中国人になりすました日本人の生き様。 開戦前の上海をきっちりと表現し、中国人として暗躍する次郎の活動と心の内側をうまく描き出している。 当時の中国人から見た日本軍への思いや、逆に日本軍が資金調達をするためにアヘンをどう扱ったかがわかる。 さらに青幇が日本軍から隠れてアヘン栽培をするためにミャンマーに畑を作ったのだが、それが現代のゴールデントライアングル(一時ヘロインの世界で60%以上の生産)を作ったという仮説(真実っぽい気もする)に基づいている。SF作家でもある著者の思い切った洞察の面白さを感じる。
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