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上海灯蛾 の商品レビュー

4.2

22件のお客様レビュー

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2023/04/02
  • ネタバレ

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大東亜戦争~第二次世界大戦の時期の上海共同租界を舞台にしたひとりの日本人青年の成長と成功、そして死に至るまでのほんの11年間のストーリー。そして出会った様々な人間や闇の圧力団体、旧日本軍。 時代と「阿片」のせいとだけは言えないけれど、それは血みどろで陰謀渦巻く、思わず目を背けたくなるような~。 その時代のこと、大陸の大きさを(何につけても…)知らなさ過ぎる自分が勉強不足であるということもよく分かった。

Posted byブクログ

2023/03/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 『破滅の王』の作者が再び1930年代の上海を描いた作を完成させたと知り、さっそく購入。上海を中心とするアヘンの流通に焦点化した意欲作で、期待に違わぬスケール感を満喫できた。汪兆銘政権統治下の上海で、関東軍の特務機関と上海の「青幇」の世界観と論理がぶつかり合うラストに至る展開は、作者の筆力とリサーチ力が存分に発揮されている。    語りの戦略も興味深い。このテクストの男たちは、まさに灯火に群がる蛾のように、主体的に動いているように見えて、じつは彼らの力を超えた何者かによって動かされてしまっている。作中で唯一事態を動かしているのは原田ユキヱだけなので、次郎も楊直も、そしておそらくは「董老板」も志鷹中佐も、金と権力によって状況を操作できていると思い込んでいるだけだ。というより、描かれた出来事を追いかけてみれば、この物語の筋を作っているのは、むしろ原田ユキヱと満洲国・関東軍との戦いなのだ。  しかし、作者はユキヱのエピソードをあえて傍系に置くことで、アヘンに踊らされた男たちの狂奔を活写していく。こうした語りの構図は、日本の戦争も、「青幇」たちの「抗日阿片戦」もともに厳しく批判できる視座を確保するための戦略だろう。戦時下の上海を舞台にしたノワール小説のようでいて、じつは、そのような暴力を可能にした場そのものの自壊を描く、企みに満ちた一篇と読んだ。

Posted byブクログ