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棕櫚を燃やす の商品レビュー

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12件のお客様レビュー

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2024/06/23

イライラむずむずする焦燥や異空間にいるような孤独感、自分は存在しないような浮遊感とか、よくあの感情を表現したなぁ、という感動。マインドフルネスをしているような、その時の呼吸だけに集中するような、研ぎ澄まされた感覚で音や温度や質感や空気感をとらえてる感じ。過ぎていく時間と、逆行する...

イライラむずむずする焦燥や異空間にいるような孤独感、自分は存在しないような浮遊感とか、よくあの感情を表現したなぁ、という感動。マインドフルネスをしているような、その時の呼吸だけに集中するような、研ぎ澄まされた感覚で音や温度や質感や空気感をとらえてる感じ。過ぎていく時間と、逆行する切望の静かな摩擦が丁寧だった。 2作目は、普通。

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2024/03/20

ほとんど筋というものがない。淡々と過ぎゆく父と娘二人の日々と会話が繰り返されるだけ。そんななかで時折3人それぞれの世界観をじわっと感じさせる。穏やかに。 まるで詩のような春野のひとりごとが続いていく。柔らかに。 フランスの作曲家の室内楽を連想した。ドビュッシーかな。 ただ耳を任せ...

ほとんど筋というものがない。淡々と過ぎゆく父と娘二人の日々と会話が繰り返されるだけ。そんななかで時折3人それぞれの世界観をじわっと感じさせる。穏やかに。 まるで詩のような春野のひとりごとが続いていく。柔らかに。 フランスの作曲家の室内楽を連想した。ドビュッシーかな。 ただ耳を任せていて心地よい。

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2024/01/21

主人公はここで、きっと泣いたんだろうな、と思える場面があったが、泣くとか、涙と言う単語を使わずしてそれを見せてくれた。その様子が私自身にも覚えがあり、ビビッと来て泣きそうになりました。 優しい場面、ささいなことの表現が魅力的な作家さんだと思います。

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2023/12/13

表題作は、闇に息吹く、鮎の匂い、地平線の場所、雪の音 の四部構成になっていたが、春野と澄香が父と暮らす何気ない日常の話が淡々と続く.あまさず暮らそう という目標のようなフレーズが気になった.むるむるという字句も頻出する.亡くなった母を しろい手 で表現しているのも深い意味を見たよ...

表題作は、闇に息吹く、鮎の匂い、地平線の場所、雪の音 の四部構成になっていたが、春野と澄香が父と暮らす何気ない日常の話が淡々と続く.あまさず暮らそう という目標のようなフレーズが気になった.むるむるという字句も頻出する.亡くなった母を しろい手 で表現しているのも深い意味を見たような感じだ.後半の「らくだの掌」では、たなごころが読めなかった.なかちゃんこと中林と並木さんが栗原さんを支援する話だが、茫洋とした感じで淡々と話が進むが、捉えどころのないままに話が終わった感じだ.はるまきが何度も出てくるのが気になった.

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2023/10/13

決して方言や訛りがあるわけでもないのに、なんとも読みにくいセリフが多かったのですが、それは日常会話で喋る言葉をそのまんま綴られていたので、読みにくいのは当たり前だと思い、むしろ、よりリアルな会話が伝わってきました。 「思ったことをそのまま言える相手」と言うことはよく聞きましたが...

決して方言や訛りがあるわけでもないのに、なんとも読みにくいセリフが多かったのですが、それは日常会話で喋る言葉をそのまんま綴られていたので、読みにくいのは当たり前だと思い、むしろ、よりリアルな会話が伝わってきました。 「思ったことをそのまま言える相手」と言うことはよく聞きましたが、 「目にしたものをそのまま言える相手がいる」と言うコメントがあり、自分以外の人と心の中で共有しているような気持ちになります。 家族愛と言ったらそれまでなんですが、 「あまさず暮らす」とはどんな暮らしなのか。 段々とした一見なんの変哲もない家族3人のように始まり、それぞれの想いが、「しろい手」によって、少しずつ姉妹と父は何かに向かっていく世界に、読者も吸い込まれていきます。 今いるこの世界から考えると、遠い宇宙の片隅にいる家族を観ている感じでした。 なんか寂しいとか切ないとか孤立感があるように見えたのに、どこか、他の何よりも暖かく、愛があり、本当の人間を味わっていたのかもしれませんね。 「らくだの掌」では、後半に差し掛かると、前半に戻ったり、中盤に戻ったりしながら読むこととなり、しまいには初めからもう一度読んでしまい、最後のオチを知ってから、もう一度読むとまったく違った印象にも感じました。 中身ですが、中林さんの視線に癖があり、並木さんの言葉や応え方も癖があるのに、どこかで会ったことのある不思議な親近感がありました。 社会の中で置いてけぼりの弱者やそのサポートする方たちのストーリーなのに、嫌味なくその人たちの心をのぞかせていただいた気がします。 メディアやSNSではなかなか知ることのできない内容だったので勉強にもなりました。

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2023/09/16

ひとつひとつの言葉を飲み込みながら、読みました、ヒリヒリしながら。 「棕櫚を燃やす」も「らくだの掌」もです。

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2023/08/05

「棕櫚を燃やす」 「これからの一年をあまさず暮らそう」と、春野が澄香に言ったように、日常の情景や言葉が丁寧に描かれていた。父親の状況を、きっとそうなんだろうなと思わせる描写で著し、あまさず暮らしていこうとする日々がつづられていく。 自分の父と重ねられる場面が多く、むるむるの感...

「棕櫚を燃やす」 「これからの一年をあまさず暮らそう」と、春野が澄香に言ったように、日常の情景や言葉が丁寧に描かれていた。父親の状況を、きっとそうなんだろうなと思わせる描写で著し、あまさず暮らしていこうとする日々がつづられていく。 自分の父と重ねられる場面が多く、むるむるの感じも何となくわかるような気がした。父の言葉が、ごめんねよりもありがとうが増えてくることとか、悲しみは自分達だけのもので他の誰かにわかってもらいたいとか共有したいとは思わないとか、嬉しいときも悲しいとか、おやすみまた明日と言うことが難しいことのように感じるとか。自分のなかにしまっていたものをなぞるようだった。 静かにあますことなく暮らす父娘が、巡り巡ってまた棕櫚を燃やしたあの日に逢えると私も信じたい。 「らくだの掌」 「お茶漬けさらさら、気負わないでこの仕事をやっていけばいいよ。」といってくれた並木さんとのことが描かれている。人に触れることに恐怖を感じていた中林さんに、手渡されたはるまき。そのあたたかさが掌に伝わったときのことを思い、変わってしまったことを再認識する。最後は、中林さん、頑張れと応援したくなる短編。

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2023/08/02

「あまさず暮らす」この言葉に出会っただけでもこの本をよむ価値があるかも。 よいこともわるいこともあまさず暮らしの中にはある。その家族の中で起こる現象の全てが愛おしく感じさせてくれる。

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2023/07/17

ん〜なんだろう??このいつもと違う読後感。静謐な言葉の礫が心にたくさんひっかかり、静かに染み込んでいくような初めての経験。忘れられない1冊

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2023/06/29
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

賞を取った表題作の父と娘2人に通い合う情愛はしみじみと温かく1年と時間をくぎられた中で壊れゆくものをぞっと守っているような緊張感に満ちていた。 もう1篇の「らくだの掌」のひょうひょうとした並木さんのありように心が締めつけられた。とても好きな作品です。

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