満天のゴール の商品レビュー
こちらはフォローしている方のレビューを読んでのチョイス。 夫に裏切られ10歳になる息子とともに逃げるように故郷に帰ってきた奈緒。かつて免許をとったものの仕事はしたことがなかった看護師として働き始めた病院で出会う人々の生と死。 最初の100頁あたりまで、自分を捨てた夫にあそこまで...
こちらはフォローしている方のレビューを読んでのチョイス。 夫に裏切られ10歳になる息子とともに逃げるように故郷に帰ってきた奈緒。かつて免許をとったものの仕事はしたことがなかった看護師として働き始めた病院で出会う人々の生と死。 最初の100頁あたりまで、自分を捨てた夫にあそこまでされて、それでもしがみつく奈緒の心情が理解できず、あまり興が乗らなかった。看護師として働き出してからも、経験がなくモタモタするのは仕方ないとして、自分がやるべきことにも手がつかない姿にはややげんなり。 親子を取り巻く人々、医療過疎地域で日々地域医療に奮闘する医師の三上、遠くない自分の死を覚悟しながら住み慣れた家で静かな時間を過ごすトクさん、74歳になっても訪問看護を続けている小森さん、過去の出来事を秘したまま静かに逝こうとしている早川さん、それぞれのしっかりした生き様はとても良いドラマだったように思うし、『世界有数の長寿国だというのに高齢者が増え続けた先のことまで考えるには及んでいなかった』この国の過疎地医療や在宅看取りについても考えさせられるところがあった。 母を一番近くで支える息子の涼介のしっかりぶりも頼もしく映った反面、いかにしっかりしていようとも10歳の子どもに夫婦の修羅場や続けざまの死、家庭内暴力などの世間の悲惨さを見せる展開はちょっと気になった。 この作者さん、私にはこれまでハズレがない方だったが、今回はちょっとフィットしませんでした。
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ほんとに、藤岡陽子さんの書く小説は、人生に大切なメッセージをそこここに含んでいる。それも、上っ面じゃなくて、肚のなかから出てきた、経験した人にしか話せないようなこと。 主人公の情けなさに最初辟易しそうになるけれど、大丈夫。母は強いのです。 そうそう、看護師と医師の安易なラブストー...
ほんとに、藤岡陽子さんの書く小説は、人生に大切なメッセージをそこここに含んでいる。それも、上っ面じゃなくて、肚のなかから出てきた、経験した人にしか話せないようなこと。 主人公の情けなさに最初辟易しそうになるけれど、大丈夫。母は強いのです。 そうそう、看護師と医師の安易なラブストーリーにならないのも、藤岡さんの小説の好きなところ。仄かに良い感じ、くらいでね。 好きな台詞を覚えておくために一つだけここに記録。 トクさんは涼介くんに会えて嬉しかったんだ。罠を作ってる間、きっとワクワクしてたぞ。人が人と関わり続ける限り、相手を想う気持ちがうまれるんだよ。
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はじめの4章の夫の不倫の話しは、この作品には必要なかったように思う。夫のあまりの身勝手さにイライラされられただけ。 5章からは話しが変わり、話しに引き込まれて、感動させられる場面もあり、この物語の世界にどっぷりとつかった。小学校4年生の子供が、あまりにも子供らしくない所が少し引っ...
はじめの4章の夫の不倫の話しは、この作品には必要なかったように思う。夫のあまりの身勝手さにイライラされられただけ。 5章からは話しが変わり、話しに引き込まれて、感動させられる場面もあり、この物語の世界にどっぷりとつかった。小学校4年生の子供が、あまりにも子供らしくない所が少し引っ掛かったかな。
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初めて読んだ藤岡陽子さんの作品『手のひらの音符』にとても感銘を受け、他の作品も読もうと決めて手にしたのが本書『満天のゴール』です。 ブクログユーザーの皆さんの評価も高かったこともあり期待して読んだのですが、その期待値をラクラクと上回ってくれました。評価は当然☆5です。 また、(「...
初めて読んだ藤岡陽子さんの作品『手のひらの音符』にとても感銘を受け、他の作品も読もうと決めて手にしたのが本書『満天のゴール』です。 ブクログユーザーの皆さんの評価も高かったこともあり期待して読んだのですが、その期待値をラクラクと上回ってくれました。評価は当然☆5です。 また、(「小説」に限定したとして)私の死生観に大きな影響を与えてくれた作品として挙げられるのは、小川糸さんの『ライオンのおやつ』と本書ではないかと思います。 本書は、夫に裏切られた(不倫⇒不倫相手が妊娠⇒離婚を要求される)主人公「奈緒」が、十歳になる息子「涼介」を連れて、実家(京都の丹後地方)に帰る場面から始まります。 序盤、夫と不倫相手のあまりにも身勝手な言動に、読み進めるペースがダウンしそうになりました。加害者(夫と不倫相手)二人がかりで、被害者(奈緒)一人をとても納得できない理屈(どういう思考回路?)で責めているように感じたのが大きな要因でした。 とりわけ、7*ページ、不倫相手の電話での奈緒への言葉は、読むのが辛かったですね。そのような場面が何度かあって、ちょっとイライラし始めたところで、それまでの鬱憤を晴らしてくれる起死回生の一撃が、涼介(もう一人の被害者ですね)から放たれます。 奈緒の実家までやって来て離婚を迫る夫(父親)に、涼介が立ち向かいます! 「もう帰れよ!」 ・・・ 「あのさ、お父さんが家の外でなにやってんのか知んないけど、おれはお母さんのことが大好きなんだ。絶対に一生、それだけは変わらない。だから、お父さんがお母さんをいじめるのなら、そんな父親、おれはいらない」 ・・・ 「もう父親やめるんだろ?いいじゃんそれで。お母さんとおれ、ここで暮らすからさ」 ・・・ 「おれもう決めたから。じいちゃんの家でお母さんと一緒に暮らす。おれさ、もうお母さんの泣いてるとこ見たくないんだ」 ・・・ 「そういうことだから、バイバイ、お父さん」 妻には理不尽な言動をとっていた夫(父親)も、息子である涼介にここまで言われては引き下がるしかないですね。 尚、本書のタイトルである『満天のゴール』に込められたストーリーは、以上の経緯を経て奈緒と涼介が奈緒の実家で暮らすことになり、奈緒が地元の海生病院に看護師として勤務することから本格的に始まると言ってもいいでしょう。 奈緒・涼介母子と、 海生病院に勤める医師:三上(三十代前半・男性) 奈緒の実家近くに一人で暮らしている老婆:早川 三上の患者である老人:トクさん を中心とした登場人物の過去から現在までの人間模様が、人生観と死生観を織り交ぜながら見事に描き出されており、とても感動しました。 また、藤岡さん自身が看護師である(現在も勤務されているのでしょうか?)ことから、医師・看護師・患者とその家族、病気・症状と処置に関する描写がとても詳細であることも、本書の評価に寄与しているのは間違いありません。 ところで、先に書いた本書のタイトル『満天のゴール』に込められれたストーリーとは? については、やはり読んでいただくしかありません。 『手のひらの音符』でもそうでしたが、読み進めながら作品のタイトルを改めて見ると、それだけで胸にこみ上げるものがありますね。 最後に、心に残った文章をいくつか抜粋します。 自分が一番自分らしく生きられる場所で生を終えるというのは、やはり幸せなことだろう。自分の死をゴールと捉えれば死ぬまでの時間、自分がなにをすべきかがわかるかもしれない。 「重くて辛くて、それでも手放せない過去を人は誰しも持っていますよ」 ・・・ 「でもその後悔が、生きる意味になることもありますよ」 「人は一生に一回しか死ねませんからね。たった一度の死だから、自分にとっても周りにとっても悔いのないものにしたい。誰もがそう考えるのは当たり前です。自分の死が周りを不幸にしてしまったら、浮かばれませんから」 *先月読了した、『最後に「ありがとう」と言えたなら』を思い出しました 人が人と関わり続ける限り、相手を想う気持ちが生まれる 「誰にも救ってもらえないのなら、あなたが救う人になればいい。救われないなら救いなさい。・・・」 自分の頑張りに星をくれる人がいる。それだけで人は生きられるのかもしれない。 *大好きな町田そのこさんの作品『波間に浮かぶイエロー:夜空に泳ぐチョコレートグ ラミーに収録』のラストを思い出しました。 「知らないみたいだから教えてあげてるんです。たいていの母親はね、子供に救ってもらおうなんて、これっぽっちも思っていませんよ」 これからも、藤岡さんの作品を読み続けようと思います。
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医療に携わる著者ならではの作品。 表紙に満天の星が輝き、読み終わると夜空にひらく美しい花火が見られた。タイトルの意味がわかった瞬間、思わず涙が込み上げてきた。 33歳の内山奈緒は息子を連れ11年ぶりに寂れた過疎の町に戻ってきた。 「私は幸せにはなれなかった」… 携帯の画面はま...
医療に携わる著者ならではの作品。 表紙に満天の星が輝き、読み終わると夜空にひらく美しい花火が見られた。タイトルの意味がわかった瞬間、思わず涙が込み上げてきた。 33歳の内山奈緒は息子を連れ11年ぶりに寂れた過疎の町に戻ってきた。 「私は幸せにはなれなかった」… 携帯の画面はまるで覗き穴だ。夫の相手のブログの幸福に満ちたコメントを覗くと自分が薄汚れた存在になった気がする。惨めだ! 虫好きの息子、涼介はとても良い子。10歳と思えない程大人びていて「お母さんも怖いと思ったら攻撃スイッチに切り替えろよ。そうすれば相手の思い通りにならなくてすむ」と母を庇い、離婚届を持ってやってきた父親を追い返すのだから逞しい。 奈緒と涼介に関わる人々が温かい。 事故にあった父親の川岸耕平は、三上医師に助けられ海生病院に入院する。奈緒は病院の看護師として働き始め、三上の往診にも付き添う。僻地医療の難しさの中で、医師や訪問看護師が患者と心を通い合わせていく様子が良くわかる。 "満点のゴール"を目指すトクさんの日々が星マークになって連なっていく。 「死は怖いものでなく、美しいゴール」との考え方に胸が熱くなった。 何度も決まったコースを飛ぶ「蝶道」があること、蝶を産卵させる方法もこの本で初めて知った。本物の夜の怖さも! トクさんは涼介を喜ばせようと、バナナの匂いでカブトムシを誘き寄せる罠を仕掛けた。こぼれ落ちるほど沢山のカブトムシを手にのせた涼介は、トクさんと過ごした大切な時間を決して忘れないだろう。 海生病院で奈緒の母が手術を受ける前に、転院を促した看護師は早川さんだった。三上医師の忘れられない記憶の中の人も早川さん。 「救ってくれる人がいないなら、あなたが救う人になればいい」 祖母の訪問看護婦だった早川さんからもらった星のシールのおかげで、僕は今まで生きることができたのだ… 夜空に瞬く星の光は優しい。人として生きること、いずれやってくる死にどう向き合うかを指し示してくれるような温かい物語でした。
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序盤は考えの甘い奈緒に、自分勝手な夫と不倫相手、どうやっても満天のゴールに辿り着けそうもない登場人物にどんな物語になるのか不安になりながら読み進めました。 全力で生き抜いた先に死があるのだとしたら、死は行きたことの証に違いない 限界集落で死を迎える事を選択した老人が描かれます...
序盤は考えの甘い奈緒に、自分勝手な夫と不倫相手、どうやっても満天のゴールに辿り着けそうもない登場人物にどんな物語になるのか不安になりながら読み進めました。 全力で生き抜いた先に死があるのだとしたら、死は行きたことの証に違いない 限界集落で死を迎える事を選択した老人が描かれますが、トクさんのように生きられたら幸せだろうなと思いました。 物語を進めるためではありますが、涼介が10歳にしては出来すぎているのが少し気になりました。
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"その人の生きざまが死にざまに反映される" "救われないなら救いなさい" "山全体がホスピス" 家族の思い出、人生の思い出が詰まった場所で、自分の意思で最期を選んで迎える。 とても羨ましいゴールだなと思う。 トクさんの...
"その人の生きざまが死にざまに反映される" "救われないなら救いなさい" "山全体がホスピス" 家族の思い出、人生の思い出が詰まった場所で、自分の意思で最期を選んで迎える。 とても羨ましいゴールだなと思う。 トクさんのゴールも早川さんのゴールもとても深く沁みた。 みんな誰かの支えになったり、誰かを支えにして生きているんだなと改めて感じる。 誰かの喜ぶ顔を想像したら活力になり、未来が楽しみになる。 そんなことを繰り返して生きていたいと感じた。 私のお守りみたいに手元に置きたい本に追加された。
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生き方が、どう死を受け入れて、どう終わりを迎えるか、生と死は相反することに思えるけど、繋がっている。自分らしく生きること、自分らしく終わりを迎えること、最期に幸せだったと思える生き方をしたい。作中で3人の老人が最期を迎える。その3人の老人からも生き方を学ぶことができた気がする。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
表紙の満天の夜空が綺麗だったから 思わず手に取った1冊でした。 “満天のゴール”というタイトルと表紙から 私は綺麗な夜空が印象的な そんなお話しだろうなぁと想像していた。 だけど実際は 僻地医療や終末期がテーマのお話しで ゴール=死までの日々の中で 頑張った日に星のシールを貰って 星が集まると満天になっていく。 それも眩しいくらいに輝く。 終末期医療に向き合うって 本当に難しいし毎日が大変で苦しい。 でもその人らしくゴールを迎えられたら とても素敵なことだと思う。 看護師として その人らしく過ごせる看護を 提供していけるように これからも頑張らなくちゃなぁ。
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藤岡陽子さんなら出羽の、死生観を描いた物語。死とは何か、ネガティブな要素だけではないんだなと感じた。満点のゴールという題名も、死に対する前向きな捉え方の一つである。ゴール、とても良い響きだなと感じた。
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