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日本の電機産業はなぜ凋落したのか 体験的考察から見えた五つの大罪 の商品レビュー

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17件のお客様レビュー

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2024/04/18

どこを読んでも痛いことが書いてあって反論もできない的確さなので、泣いちゃう。 電機業界のことを書いているけど、他の業界であっても思い当たる節があるのがツラい。 そのツラさから目を背けているから失敗が続くのだという指摘もあって、逃げ道がない。 平成版『失敗の本質』といえる本なの...

どこを読んでも痛いことが書いてあって反論もできない的確さなので、泣いちゃう。 電機業界のことを書いているけど、他の業界であっても思い当たる節があるのがツラい。 そのツラさから目を背けているから失敗が続くのだという指摘もあって、逃げ道がない。 平成版『失敗の本質』といえる本なのだが、よくよく見ると昭和版と似たような過ちを指摘している。 日本の組織が陥りやすい弱点を書いているということなのだろう。 著者自身はTDK出身で、シャープ副社長を務めた父親からのヒアリングと合わせた一冊。多分に個人的な経験に基づく内容なのだが、それでも読み手に「本質的だ」と感じさせるのは、いかに日本の組織が同じような陥穽に陥っているのか、という話だ。

Posted byブクログ

2024/02/18

●=引用 ●その一方で、業績を大きく改善するためには、イノベーションが必要だ。新しい製品やサービスを生み出し、ヒットさせる必要がある。ところが、予算が乏しく、人手も足りず、おまけに結果を急かさせる組織でイノベーションを起こすなど無理な話だ。組織に余裕がなければ、画期的な製品やサ...

●=引用 ●その一方で、業績を大きく改善するためには、イノベーションが必要だ。新しい製品やサービスを生み出し、ヒットさせる必要がある。ところが、予算が乏しく、人手も足りず、おまけに結果を急かさせる組織でイノベーションを起こすなど無理な話だ。組織に余裕がなければ、画期的な製品やサービスは生まれない。 ●普通の企業ならば、市場性の見えない限り製品化には動かないものだ。ところが、同社には十五%カルチャーがあった。勤務時間の十五%を自分の好きな研究に充ててよいとする社内ルールだ。かの技術者はこのルールに則って先が見えないまま開発を進め、二年の歳月をかけてポストイットを製品化させたのだ。3Mが十五%カルチャーを重視する背景には、優れた新製品を開発するには大量のものを試し、うまくいったものを残すしかないという経験則があった。イノベーションを予測するのは難しく、やってみないとわからないという考え方だ。 ●計画的にイノベーティブな製品を開発するのは難しい。NAND型フラッシュメモリーやポスト・イット、電卓も、一つ間違えば日の目を見る機会さえなかったかもしれない。これらの成功例に共通しているのは、それぞれの組織に余裕があることだ。傍流の研究を続けさせて東芝、個人の裁量を許した3M、黙ってお上に従うことをよしとしなかったシャープ。どの組織にも、時間的、金銭的でなく、精神的な余裕を感じる。もし、それぞれが「選択と集中」の徹底されていた組織であったならば、異端の技術者は排除されていただろうし、出来損ないの接着剤に時間を費やすことは許されず、通産省に認められなかった事業は棚上げになったはずだ。このように、イノベーションと「選択と集中」は、親和性が低いのだ。 ●ビジョンとは、組織が目指すべき具体的な未来像だ。優れたビジョンには、未来像だけでなく、時間軸も明快でなければならない。いつまでに、何を達成するかが明らかなのだ。 ●それは、日本企業における圧倒的な議論の不足だ。儲かる、儲からない。売上が計画に届く、届かない、といった数字の議論には日々熱心なのだは、馴染みのない新しい技術の可能性を探ったり、新興勢力の影響を予測したり、物事の本質を探ったりする議論は不足していた。少し厳しい言い方をすれば、正誤がハッキリした安易な議論には熱心なのだが、意見の対立を生んだり、当事者の見識が問われたり、組織が目を背けている問題にあえて焦点を当てたりする議論を、無自覚のうちに避けてきたのだ。 ●さらに、エンゲージメントが低下した社員は、議論の場でも積極性を失う。(略)反対の意思があっても、あるいは優れたアイデアがあっても、「まあいいか」と口を閉ざしている社員の姿だ。日本では珍しい話ではない。ただ、このような状況に陥れば、言うまでもなく活発な議論など期待できない。

Posted byブクログ

2024/01/21

財政出動と金融緩和が不徹底だったから日本は失われた30年になったと考えている人は是非、本書を読むべき。金融財政政策では電機産業の凋落はどうにもならなかったことが納得できよう。 提言されている雇用規制の廃止に私は賛同するが、日本は与野党ともに家族的共同体の会社を理想とする政党しかい...

財政出動と金融緩和が不徹底だったから日本は失われた30年になったと考えている人は是非、本書を読むべき。金融財政政策では電機産業の凋落はどうにもならなかったことが納得できよう。 提言されている雇用規制の廃止に私は賛同するが、日本は与野党ともに家族的共同体の会社を理想とする政党しかいないので、実現は不可能だろう。

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2024/01/19

ミッションとビジョンは違う。 ミッションとは エンパイアステートビルの屋上に立つ   ビジョンとは、 5年後に飛行機でニューヨークに行っている自分と設定するのがビジョン。英語を勉強する、お金を貯める、パスポートを取る、ホテルを予約するなどをやることが具体的に見えてくる。 ビジョン...

ミッションとビジョンは違う。 ミッションとは エンパイアステートビルの屋上に立つ   ビジョンとは、 5年後に飛行機でニューヨークに行っている自分と設定するのがビジョン。英語を勉強する、お金を貯める、パスポートを取る、ホテルを予約するなどをやることが具体的に見えてくる。 ビジョンは時間を区切ると良い。 国内で販売してるテレビを2005年までに液晶に置き換える。 これがシャープのビジョンだった。 ビジョンにもリスクがある。それ以外のことがほかに置かれる可能性があるのだ。 何よりも大切な事は、腹をくくることである。 社是、夢、勇気、信頼、俺はアンパンマンじゃねー。抽象性も大事だが何より具体性が大事である。

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2023/10/27

部下をリストラした自らの会社人生を顧みて、本著を敗者の書いた本と述べる著者。その序文でグッと引き込まれる。世には成功者のノウハウ本が溢れる。しかし、失敗こそ教訓だと。アメリカ企業にはエグジット・インタビューという制度、退職する社員との面談がある。本著は、謂わばエグジット・インタビ...

部下をリストラした自らの会社人生を顧みて、本著を敗者の書いた本と述べる著者。その序文でグッと引き込まれる。世には成功者のノウハウ本が溢れる。しかし、失敗こそ教訓だと。アメリカ企業にはエグジット・インタビューという制度、退職する社員との面談がある。本著は、謂わばエグジット・インタビューのような本だ。 電気産業が直面した課題の一つは、製品の均一化。例えば4Kテレビならどの製品も似たり寄ったり。物量と低コストに要求が変わる中、過剰品質で高コストな体質を転換できず、海外勢に弱みを突かれた。過剰に多機能を追求し、良いものは売れるという信仰が製品のシンプルさも損なう。やがて人員整理によるコストダウンや選択と集中を断行。 選択と集中が実行される組織ではあらゆる余裕が奪われ、金銭的、人的余裕に加えて時間的、精神的余裕も失われる。その中でイノベーションが迫られるが、全てにおいて余裕が無い中では難しい。どんどん追い詰められる。 今や電気産業だけでは無く、あらゆる業種で過剰品質や付加価値信仰に日本は囚われている気がする。その意味でも学び多い著書だ。何をすべきか。先に失敗したものから学ぶ事こそ教訓だ。

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2023/10/17

まだ読み終わってないが、「はじめに」から引き込まれる。私もリストラなど厳しい局面を体験した。年齢も近いので同じ時代を筆者がどう生きたのか興味がある。

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2023/11/26

書かれてあることの部分部分は多分正しい。ただ、5つの大罪に網羅感がなく、無理やりこのフレームに当て嵌めてあるものもあって、全体としては納得感に欠ける。 特に最後の提言はアメリカ式のドライな雇用政策を全面的に導入するというものだが、それは著者が信奉するボトムアップ式の組織と整合しな...

書かれてあることの部分部分は多分正しい。ただ、5つの大罪に網羅感がなく、無理やりこのフレームに当て嵌めてあるものもあって、全体としては納得感に欠ける。 特に最後の提言はアメリカ式のドライな雇用政策を全面的に導入するというものだが、それは著者が信奉するボトムアップ式の組織と整合しない。半端の罪で書いてあるように、いいとこ取りは機能しない。アメリカ式を目指すなら教育システムも移民政策も何もかもアメリカに合わせないと、どこかで歪みが生じる。著者にその覚悟があるとは到底思えない。 自分が会社に入ったのは、バブル崩壊の翌年。電機メーカーではないが、凋落の経過はTDKと軌を一にする。でも今から振り返ってみても、他にやりようがなかったと思う。中韓が作れない利幅の大きな高付加価値品を作って売上を維持しようとするが、当然縮小均衡になって開発費も減らされ、高付加価値も実現できなくなる。まさに負のスパイラル。 今はそのスパイラルに入る前に事業ごと売り払って、M&Aで新しく事業を買ってきてポートフォリオを無理やり変えるのが常套手段。当時からそれをやれば良かったのか?著者の嫌う選択と集中なのだが。 結局電機産業やDRAM半導体ビジネスが、先進国型の産業じゃなかったというのが真相だろうと思う。日本型企業の最たる自動車産業や素材、部品ビジネスは今でも成長を続けているのだ。 その意味で電機メーカーは事業ライフサイクルのピークでポートフォリオの転換が必要だったが、日本はアメリカ型のプラットフォームビジネスにも、台湾型の製造特化にも進まなかった。またその意思も持たなかった。これが最大の罪。日本の組織では製造業からソリューションビジネスへの転換みたいな革命は起こらない。トップにビジョンもリーダーシップもないボトムアップ社会だから。 やはり凋落は不可避であったとしか思えない。

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2023/07/03

本書の冒頭にかかれているように、失敗から学ぶ。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。貴重なビジネス系の失敗学。筆者自身はTDKで当事者として記録メディアの撤退を経験。また、筆者の父からシャープの話を聞き取っていて、非常に具体的だ。当然、日本の現状は「日本すごい」「日...

本書の冒頭にかかれているように、失敗から学ぶ。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。貴重なビジネス系の失敗学。筆者自身はTDKで当事者として記録メディアの撤退を経験。また、筆者の父からシャープの話を聞き取っていて、非常に具体的だ。当然、日本の現状は「日本すごい」「日本ダメポ」のような単純な話ではなく、複合的な要因なのだが、この40年の日本と世界の政治と経済の動きを振り返り、悪かったところを反省し良かったところに光を当てる。全体を通して目新しい意見ではないが、あらためて真摯に受け止めて、自分の考え方や行動を見直していくきっかけとなる。

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2023/06/25

電気産業がうまくいかなくなった原因について述べられている。 傲慢さ、デジタルの捉え方が正しくできなかった。 投資すべき時に投資に目を向けることができなかった。 終身雇用でなくなることは、安心を失うが、自由を得られるという考え方。

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2023/05/28

実体験の部分が秀逸。 第1章、2章のあたりは著者の体験からくる結論は説得力がある。 体験の断片をつなぎ合わせていくともっと大きな提言 ができる可能性もあったと思うのに惜しい。 とはいえ、記載された失敗体験には価値がある 電機産業の衰退はここにある通り複数の要因があるとは思う。 ...

実体験の部分が秀逸。 第1章、2章のあたりは著者の体験からくる結論は説得力がある。 体験の断片をつなぎ合わせていくともっと大きな提言 ができる可能性もあったと思うのに惜しい。 とはいえ、記載された失敗体験には価値がある 電機産業の衰退はここにある通り複数の要因があるとは思う。 特に大きいのは1章のニーズとシーズを見誤り続けていることにある。 アナログからデジタルへの変換は、後発企業に圧倒的に有利であり、先発企業は イノベーションのジレンマの立場に追われることになる。 先発企業の先行者優位はデメリットとなり、人件費、設備費等は、重しとなる。 市場が何を欲しているかを正確に把握しながら、後発企業の動向を注視し、開発部門や経営層へのFBを即座に行わなければならなかったのだろう。 デジタルの時代の高付加価値は求められていないと分かっていながら、社内の事情を優先してしまったことは当時でも気づいていたはずである。 機能の簡素化をしてしまうことは、開発部門としては事業の縮小を意味し、営業部門は競合会社の差別化を失うことになり、経営部門は直近の売上の減少を意味する。 それぞれの部門が部門の事情で意思決定をできなかったということであろう。 プロダクトや製品サイクルの転化が迫られている場面では、歴史のある企業や大企業の関連会社は圧倒的に弱い。守るもののないスタートアップや正しい判断の下せるトップダウン企業の方が柔軟に対応できる。その違いが出たのではと考える。 仮にデジタル化を乗り切れたとしても、磁気媒体のライフサイクルから、業界特化してダウンサイジング、もしくはM&A ハードウェア、ソフトウェア問わず隣接部門への次の種を探すといったことをしなければ、事業自体は残っていけなかったと思うので、闇は深い。 昨今、地政学的リスクや円安から半導体工場を分散化させる施策が出されている。 今度は、日本がキャッチアップする立場になる。 台湾や韓国が電機メーカーから学んでいたように虚心坦懐、市場、先発企業から学ぶ事で復活のチャンスをものにしたい。

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