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デンジャー・ゾーン 迫る中国との衝突 の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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2025/06/30

台頭しつつある大国ではなく、ピークを過ぎ、衰退に向かう大国である中国が、衰退を食い止める「機会の窓」を見出した時が最も危険であるとして、中国の勢いが残っている一方で米国等の準備が整っていない、「機会の窓」が開いている2020年代(デンジャーゾーン)を、過去の冷戦時代の教訓などを基...

台頭しつつある大国ではなく、ピークを過ぎ、衰退に向かう大国である中国が、衰退を食い止める「機会の窓」を見出した時が最も危険であるとして、中国の勢いが残っている一方で米国等の準備が整っていない、「機会の窓」が開いている2020年代(デンジャーゾーン)を、過去の冷戦時代の教訓などを基に乗り切る戦略を論じている。 また、デンジャーゾーンを切り抜けることは、「始まりの終わり」に過ぎず、冷戦と同様長期に渡り競争状態が継続するとする。

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2025/01/03

アメリカの若き戦略家であるハル・ブランズ氏とマイケル・ベックリー氏の共著を奥山真司氏が訳したもの。 論旨としては、情勢分析と処方箋の二つに大別されると思う。 冒頭の4章までで、いわゆるトゥキディデスの罠的な台頭する国と老成した大国の対峙が危険なのではなく、台頭する国がピークア...

アメリカの若き戦略家であるハル・ブランズ氏とマイケル・ベックリー氏の共著を奥山真司氏が訳したもの。 論旨としては、情勢分析と処方箋の二つに大別されると思う。 冒頭の4章までで、いわゆるトゥキディデスの罠的な台頭する国と老成した大国の対峙が危険なのではなく、台頭する国がピークアウトした後こそ危険であり、機械の窓が閉じないうちに行動に移すことこそ危険としており、過去の例として1914年のドイツ第二帝国、1941年の大日本帝国を挙げている。この中で、2027年頃が危険だという説について、中国側の事情だけではなく、米海軍・空軍のアセットが2020年代後半にかけて大量退役して復活までに時間を要すること、台湾側の体制が整わないことも併せて挙げているのは興味深い。 その上で、5章で中国政策を分析し、対中政策を論じる前提として6章で冷戦時代の対ソ戦略を解説している。その前提に立って対中政策を論じているが、まず、2020年代後半をデンジャーゾーンとして、そこに対しては今ある手段で対抗するような短距離走的な処方箋が必要となり、それにより紛争を抑止して次のフェーズに繋げることを提唱し、そこを乗り切ることがまず大事であり、次のフェーズ自体も冷戦のような長期戦を見据えて同盟国・同志国の枠組み、技術の囲い込み、軍事費の強化などの手を長期的に打っていくことを慫慂している。 いずれにしても日本がこれに無関係な訳はない。本書でも、短期的には、琉球諸島への長距離ミサイルの配備などのプレゼンス強化、長期的にも軍事物資の補給拠点としての役割など現行の安全保障政策を超えるアイデアが盛り込まれている。実際にそこまで踏み込むかどうかは別として、日米間での相当な政策調整が必要となってくる。 短期〜長期の対中政策を考える土台として非常に参考になる文献と思う。

Posted byブクログ

2024/11/08

台頭する中国との武力紛争の危険性もしくは中国が暴発する危険性は、既存の大国(米国)の地位に新興国(中国)が挑戦することによる「トゥキディデスの罠」ではなく、衰退し始めたことを自覚した新興国が最後の機会に賭け無謀な軍事的手段に訴える可能性によって高まる、という主張。 人口(特に労...

台頭する中国との武力紛争の危険性もしくは中国が暴発する危険性は、既存の大国(米国)の地位に新興国(中国)が挑戦することによる「トゥキディデスの罠」ではなく、衰退し始めたことを自覚した新興国が最後の機会に賭け無謀な軍事的手段に訴える可能性によって高まる、という主張。 人口(特に労働力人口)が減少に転じ、失政により経済成長が鈍化している中国の現状はまさにその条件に当てはまる。 その中国に対抗するには、民主主義諸国の団結、理想的にはそれらによる新たな国際機関の設置、短期的に有効な防御手段の実施、長期的に中国の弱点を攻めつつ弱体化を図る等々の対応が必要だと、的確に指摘されている。 朝鮮戦争を経て極度に高まった共産圏に対する危機感と比べれば現状のものはまだ緩いが、状況の厳しさは当時に劣らないという認識を持って当たることが日本を含む各国に求められている。 現状分析、将来のリスク評価、短期・長期の対抗原則・手段など、バランスよく、的確にまとめられた良書。

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2023/06/21

米中冷戦は長いマラソンだなんて思ってると、最初の100mで負けるよ!と言う警告の本。 ホントそれな 勃興する大国と既存の大国が衝突するトュキディアズの罠はまちがいで、勃興してきた新興国が、既存の大国を抜くチャンスの窓が閉じる瞬間が危ないという警告には、それなりの説得力がある。...

米中冷戦は長いマラソンだなんて思ってると、最初の100mで負けるよ!と言う警告の本。 ホントそれな 勃興する大国と既存の大国が衝突するトュキディアズの罠はまちがいで、勃興してきた新興国が、既存の大国を抜くチャンスの窓が閉じる瞬間が危ないという警告には、それなりの説得力がある。 そして、中国は人口オーナス期に入り、その警告に当てはまる。 従って、この十年弱の短距離走を全力で走って中国の野望を未然に防ぎつつ、あるべきゴールを装丁して長距離走を走らねばならない。失敗すると中国の暴走で日本は多大な迷惑を被るよ。よ。

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2023/05/08

知人に勧められて読みました。本書の主張をひとことでいうなら、大国同士の対決の契機について、従来よく言われるような「覇権国vs台頭する大国」という構図ではなく、ピークアウトしつつあるがその前にチャンスをつかみたいと考える新興大国こそが、戦争を引き起こす可能性が最も高い、ということで...

知人に勧められて読みました。本書の主張をひとことでいうなら、大国同士の対決の契機について、従来よく言われるような「覇権国vs台頭する大国」という構図ではなく、ピークアウトしつつあるがその前にチャンスをつかみたいと考える新興大国こそが、戦争を引き起こす可能性が最も高い、ということです。その事例として第一次世界大戦前のドイツと、太平洋戦争前の大日本帝国を事例に出していて、この説明は説得力があるとは感じました。 そして著者は、2020年代こそが米中衝突の緊張感が最も高まる時期だと論じます。その理由として、2030年代に入ると中国経済の減速が目に見えて進むからだとしています。つまり中国が覇権をとる「チャンスの窓」が閉まってしまうからだというわけです。そしてその対策として、米ソ冷戦初期にトルーマン大統領がとった様々な封じ込め作戦が示唆に富んでいるとして細かく紹介しています。とにかく最初の取り組みが重要だったと。 なるほど、本書の主張は腑に落ちる点も多かったですが、私は米国自身が第一次世界大戦や第二次世界大戦のときとはずいぶん違っている点について考慮されていないと感じています。つまり、本書では中国について、「もうすぐピークアウトを迎え衰退がはじまる大国」だと論じていますが、実は米国だってすでに衰退がはじまっているのではないか、ということです。そうなると議論は複雑になるはずです。 第一次、第二次世界大戦時のドイツは、当時の覇権国であったイギリスに挑戦しましたが、イギリスはすでに衰退期に入っていたため、もはや単独では対応できず、アメリカという外部プレイヤーの助けを借りてドイツに勝利したわけです。そして今回は当時のアメリカに該当する外部の一大プレイヤーはいません。そうなると「衰退しつつある覇権国vsピークアウトを迎えつつある(覇権を狙う)台頭国」という構図となり、本書で述べているよりもかなりの長期的な対立関係、あるいは泥沼が続くのではないか、という印象を持ちました。たしかジャック・アタリが、「過去の歴史の教訓として、戦争で利益を得るのは当事者ではない第三国、もしくは戦争当事者だが自国が戦場にならなかった国だ」ということを述べていましたが、米中衝突によってパワーバランスはどうなるのか、日本はどうふるまうべきかなどいろいろと考えさせられる本でした。

Posted byブクログ

2023/02/13

大国の急速な経済発展がピークを迎え、衰退していくとき、その崩壊過程で大規模な衝突が起こる。第一次世界大戦時のドイツ、第二次世界大戦時の日本が同じパターンだった。 そして今中国が何かを起こすことは、時間の問題となっている。その時、日本は確実にその災厄の輪の中にある。 本当にこうい...

大国の急速な経済発展がピークを迎え、衰退していくとき、その崩壊過程で大規模な衝突が起こる。第一次世界大戦時のドイツ、第二次世界大戦時の日本が同じパターンだった。 そして今中国が何かを起こすことは、時間の問題となっている。その時、日本は確実にその災厄の輪の中にある。 本当にこういう世界が来るなるなんて、数年前には夢にも思わなかった。 それにしても、共産主義ってどうしてウィルスのように簡単に増殖してしまうのだろうか?

Posted byブクログ