覇王の轍 の商品レビュー
Amazonの紹介より 鉄路の下に巨悪は眠る。 警察キャリアの樫山順子は、北海道警捜査二課長に突如、着任することになった。歓楽街ススキノで起きた国交省技官の転落事故と道内の病院を舞台とした贈収賄事件を並行して捜査するなか、「独立王国」とも称される道警の慣習に戸惑う。両事件の背景...
Amazonの紹介より 鉄路の下に巨悪は眠る。 警察キャリアの樫山順子は、北海道警捜査二課長に突如、着任することになった。歓楽街ススキノで起きた国交省技官の転落事故と道内の病院を舞台とした贈収賄事件を並行して捜査するなか、「独立王国」とも称される道警の慣習に戸惑う。両事件の背景に、この国の鉄道行政の闇が広がっていることも知り…… 大ベストセラー『震える牛』で食品偽装を、NHKでドラマ化の『ガラパゴス』で非正規労働の闇を暴いた筆者が、ついに鉄道行政のタブーに踏み込んだ! 「震える牛」や「ガラパゴス」での主人公・田川とバディを組んでいた樫山が、今度は主人公ということで、そちらの方は未読なので、シリーズとしては初見で読みました。 この作品だけで見ると、樫山という人物は、芯が強く、正義を貫き通す女性で、頼もしい存在だなと思いました。 北海道警に着任早々、不可思議な転落死と贈収賄事件に直面していくのですが、調べていくうちにわかってくる隠された多くの「闇」。リアルにあるかどうかわかりませんが、取材を多くされているためか、リアルと思えるほど、綿密に描かれていて、働くことの意義って何だろうと思ってしまいました。 大きな組織や圧力によって、翻弄される様々な人達の苦悩にモヤモヤしっぱなしでした。 保身のために何事にも隠す一方で、小さな命が忘れ去られようとする現実。何とも憤りを感じました。 今回は新幹線神話の虚と実ということで帯で宣伝されていましたが、個人的には、もう少し新幹線にまつわる話を深堀りしているのかと思っていました。 たしかにJR(小説の中ではJE)についての昔の体制などが描かれていましたが、思ったよりもがっつりというわけではなかった印象でした。 しかし、組織による様々な不祥事を通して、色々と攻めている小説でした。正義を貫き通す樫山の姿に世の中捨てたものじゃないなと思いました。 ただ追及しすぎると、最後はこうなるだろうと予想はしたのですが…やはりやるせない気持ちになりました。 大きな組織には勝てないのかと諦める一方で、最後は微かな希望も垣間見えたので、読後感としては少し良い余韻に浸れました。 会社としてどうあるべきか?働くことの意義とは? 現実としては、色々難しいことはありますが、働く側も意識して働かないといけないなと再認識させられました。
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「色々な意味合い」で凄く面白い小説だと思う。休日の時間を費やして、頁を繰る手が停められない状態に抗うことなく、素早く読了に至った。 作中での出来事の舞台が北海道で、何となく判る場所がモデルになっているというのが多く出て来るので、作中世界に入り込み易かったかもしれない。全編を読めば...
「色々な意味合い」で凄く面白い小説だと思う。休日の時間を費やして、頁を繰る手が停められない状態に抗うことなく、素早く読了に至った。 作中での出来事の舞台が北海道で、何となく判る場所がモデルになっているというのが多く出て来るので、作中世界に入り込み易かったかもしれない。全編を読めば意味が解るという感じのプロローグが在るのだが、その中には「宗谷線の永山駅」という駅名が出て来て、「おっ!?」と思った。 物語の冒頭…警察庁キャリアで、警察官としては警視の階級を有する女性、樫山順子は北海道へやって来ていた。非常に急な形で、北海道警本部の捜査二課長を拝命して赴任することになった。前任者の事情に関連した急な異動であったために手頃なフライトを取り損ね、新幹線で函館に上陸することにした。そして少しだけ時間が在ると考え、縁在って八雲町の牧場主に嫁いだ高校生だった頃からの友人を訪ねてみるというようなことをしていた。そこに「課長の運転手を務めるのだ…」という指示を受けたという伊藤巡査長から連絡が入り、車で函館へ移動し、慌ただしく札幌へ飛び、とりあえず北海道警察に着任した。 着任した北海道警本部の捜査二課では、贈収賄事件の捜査の真っ最中であった。北海道庁で道立病院に関する事務を担当している女性職員が、医療機器等の会社から収賄しているというのだ。件の女性職員は度々東京に出て新宿歌舞伎町のホストクラブで豪遊しているのだという。贈賄をしているのが東京方面の企業であることから、事案は東京の警視庁の捜査二課との合同捜査ということになった。警視庁の捜査二課でこの件の指揮を執っている小堀理事官は、樫山課長と同様のキャリアである。小堀は色々な経過が在って、理事官として現場で指揮を執ることに拘る男である。 北海道警側、警視庁側の双方共に、ベテラン捜査員のリーダーシップの下に着々と贈収賄事件の捜査を進めていた。この他方、樫山は気になる案件に巡り合った。ススキノの旧いビルで、転落事故が発生し、東京から来ていた男性が死亡したという出来事が在った。如何いう人物が事故死したのかが不明朗であったのだが、調べると件の男性は国交省で鉄道関係の事に携わっていた技官であったのだ。気になることは調べてみなければ気が済まない性質の樫山は、独自に調べてみると、「事故」ではなく「殺害」であった可能性を見出してしまった。「殺害」の捜査が行われず終いで、「事故」ということになってしまっているのは大問題である。樫山は、合同捜査のカウンターパートである小堀に、贈収賄の捜査の傍ら、気になるので少し調べたいと伝えて了解を得た。 樫山は調べる中で、国交省技官が死亡してしまった事案が、鉄道を巡る重大な事案が背景に在ることを知ってしまう。更に、合同捜査で贈収賄に携わった4名を拘束した事案にも関連が在ることに気付いてしまう。 こういうように、何やら驚くような展開となる物語だ。事件と、作為的に隠蔽されてしまった事件と、そして国の中に蠢いている妙な事情とが複雑に絡まり、そうした中で筋を通したいとする樫山や小堀の苦闘が描かれる物語だ。何か「複雑な読後感」というように思った。 主人公ということになる樫山は、個人としては鉄道旅行を少し好み、各地の路線の白地図の乗車した区間をマーカーで塗ってみることを愉しんでいるような面が在るのだが、仕事では自腹で部下と懇親するというような感じで筋を通し、少し肩に力が入って仕事の世界を生きる女性キャリア官僚だ。慣れた捜査員のようなことを出来るのでもなく、方向音痴な傾向で何処かを訪ねるようなことが些か苦手でタクシーを多用するのだが、独自の人脈で情報を得る、または得た情報の裏を取ることを重ね、事の真相を推論するという独特な感じで事案に臨んでいる。そんな様が少し面白い。加えて本作では「どんでん返し」も在る。 基本的には、事件の謎を追うというエンターテインメントだが、社会に横たわる大きな影を考えるような内容も含まれている。大変に興味深い作品だ。
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キャリアの樫山順子が、北海道警ニ課長として贈収賄事件を捜査する。 だがそれだけでなく、延伸工事での死亡事故や国交省技官の転落死など不可解な処理に疑問を抱く。 組織は大きくなればなるほど、小さなミスを巡って責任を押し付けあう。 隠蔽に加担した道警。 捜査を妨害する政治家。 腐った...
キャリアの樫山順子が、北海道警ニ課長として贈収賄事件を捜査する。 だがそれだけでなく、延伸工事での死亡事故や国交省技官の転落死など不可解な処理に疑問を抱く。 組織は大きくなればなるほど、小さなミスを巡って責任を押し付けあう。 隠蔽に加担した道警。 捜査を妨害する政治家。 腐った組織の中で終わるわけにはいかないだろうが、誰を信じたらいいのか…という思いがとてもよくわかった。 政治案件で不本意な人事異動を強いられることが平然とある。 人間とはなんと非力なのか… 圧力とは残酷である。 なんとしても真実を貫いてほしいという気持ちで読み終えた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
鉄オタまではいかないけれど、鉄道好きとしては小説だからと、簡単に流されない問題だ。 新幹線問題、確かに恩恵も受けているけれど、日々の生活利用者にはデメリットの方が大きくなる。 鉄道の存在、この小説で改めて考えさせられるし、政治家や経済界の利権が絡まり明るい未来は見いだせない。 最後のあのどんでん返し。してやられました。
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相場英雄『覇王の轍』。北海道警捜査二課長に着任したキャリア樫山順子はススキノで起きた事故死に不審をいだき、管轄外の事件を調べ始める。そんな中、並行して捜査を進める贈収賄事件との接点が明らかに。警察官の矜持と組織の論理との間で揺れ動く主人公、覇王の轍の呪縛を解き放つことはできるのか
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読み応えあった。げに恐ろしきは永田町のパワーゲーム。あるあるだけど、大物出る前に道警内で潰されるだろうし、こんな物分かりのいい気骨ある上司もいないし…「覇王の轍の呪縛に50年以上縛られたまま」「人間というのは小さな嘘を隠す為に大きな悪事に手を染めるもの」中島公園のボートの隙間で暮...
読み応えあった。げに恐ろしきは永田町のパワーゲーム。あるあるだけど、大物出る前に道警内で潰されるだろうし、こんな物分かりのいい気骨ある上司もいないし…「覇王の轍の呪縛に50年以上縛られたまま」「人間というのは小さな嘘を隠す為に大きな悪事に手を染めるもの」中島公園のボートの隙間で暮らしていた猫たち元気かなぁ?リニア大丈夫か?心配。
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田川信一シリーズのスピンオフだった! 面白かった!! あー、読み損ねたままのガラパゴスも読まねばっっ!!
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著者の十八番の社会問題を深く抉る快心作。主人公・樫山順子といえば「アンダークラス」で田川信一と相棒だったキャリア警察官。こちらを主役に据えた「震える牛」シリーズのスピンオフ作。今回は国鉄解体後も多々問題ある鉄道行政に切り込む。事件の造形と展開、過不足ない登場人物の描き方は一級品で...
著者の十八番の社会問題を深く抉る快心作。主人公・樫山順子といえば「アンダークラス」で田川信一と相棒だったキャリア警察官。こちらを主役に据えた「震える牛」シリーズのスピンオフ作。今回は国鉄解体後も多々問題ある鉄道行政に切り込む。事件の造形と展開、過不足ない登場人物の描き方は一級品でストーリに溺れる。バディの伊藤巡査長が実は、、、はかなり衝撃的で一本取られた。JR労組の闇がキーポイントのひとつだが、こちらは西岡研介氏の労作「マングローブ」や「トラジャ」あたりを一緒に読むと良いかも。
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「震える牛」「ガラパゴス」「アンダークラス」と続く“田川信一シリーズ“のスピンオフ作品という位置付け。前作で田川とタッグを組んだキャリア警官・樫山順子が主人公の作品。 北海道警察本部捜査二課長として赴任したばかりの樫山が、ススキノで起きた転落事故に引っかかりを覚えるところから始...
「震える牛」「ガラパゴス」「アンダークラス」と続く“田川信一シリーズ“のスピンオフ作品という位置付け。前作で田川とタッグを組んだキャリア警官・樫山順子が主人公の作品。 北海道警察本部捜査二課長として赴任したばかりの樫山が、ススキノで起きた転落事故に引っかかりを覚えるところから始まる。 警視庁と合同で行なうことになった贈収賄疑惑に、整備新幹線の工事現場で起きた作業員の死亡事故と、樫山が拘っていたススキノ転落事故までが繋がりを見せ、JE(JRと思われる)と鉄道建設機構、警察、官邸までも巻き込む一大疑惑に発展する展開は読みごたえ十分。 ただ、贈収賄の合同捜査で皆が一丸となっている中、指揮をとるべき立場でありながら個人的に引っ掛かるという理由で転落死の事件を捜査するという行為はいただけない。 それが偶々贈収賄事件と繋がったもののそうじゃない場合は職務怠慢の謗りも免れないかと。新聞記者との協力関係も職務上微妙なところだし。 キャリア警察官として出世する道を捨てる覚悟もできていない中での樫山の暴走は目に余るし、官邸から横槍が入った時の振る舞いもやはり中途半端。 最後まで主人公に肩入れできなかったので田川信一シリーズの3作品のようには没頭できませんでした。 小説だから最後に希望を持たせた終わり方になったけど、現実なら事件は潰されて終わりだろうな ぁ。
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急に北海道警の捜査二課課長に異動した樫山順子。北海道で収賄罪した金が歌舞伎町のホストに流れてる事件を警視庁と捜査することに。同時に道警は事故として処理した、国交省の官僚が札幌のいかがわしい店の入るビルから転落死した件は殺人ではないかと疑う。 とても面白かった。巨悪を断罪する。今...
急に北海道警の捜査二課課長に異動した樫山順子。北海道で収賄罪した金が歌舞伎町のホストに流れてる事件を警視庁と捜査することに。同時に道警は事故として処理した、国交省の官僚が札幌のいかがわしい店の入るビルから転落死した件は殺人ではないかと疑う。 とても面白かった。巨悪を断罪する。今回はJR北海道と北海道系と整備新幹線がネタ。真相が段々と明らかになるカタルシスが凄かった。
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