1,800円以上の注文で送料無料

タイタン の商品レビュー

4.1

53件のお客様レビュー

  1. 5つ

    18

  2. 4つ

    19

  3. 3つ

    12

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/03/21

荒唐無稽な設定と哲学的な問題提起。 この2つがSF小説の重要なポイントだと改めて感じた。 まず本作の設定はかなり荒唐無稽だ。舞台は約180年後の2205年。超高性能AIによって世界はコントロールされ、仕事も貨幣経済も国という概念さえもなく、人々は平和で幸福な生活を送っている。こ...

荒唐無稽な設定と哲学的な問題提起。 この2つがSF小説の重要なポイントだと改めて感じた。 まず本作の設定はかなり荒唐無稽だ。舞台は約180年後の2205年。超高性能AIによって世界はコントロールされ、仕事も貨幣経済も国という概念さえもなく、人々は平和で幸福な生活を送っている。これはまあいい。SFとしては割とよくある設定だ。しかし物語の後半、AIの一つが身長1kmのヒト型で歩行してある目的に向かうというトンデモ設定になる。いやいや、流石にこれはいくら何でもあり得ないでしょ。 次に哲学。本作の重要なテーマは”仕事”とは何か。人間としての”仕事”の本質についての考察が展開され、最後にはこの作品(作者)の考える”仕事”の定義が披露される。 この2点が本作のSF小説としての重要なポイントだが、あまりにも荒唐無稽だからダメだとは私は思っていない。むしろSF小説は作者の想像力の及ぶ限界までのトンデモ設定にするべきだ。少なくとも私の想像力では巨人AIを歩行させるという発想は出てこない。 では何故、とんでもなく荒唐無稽であるほど良いのか。 そうすればするほど様々な問題提起が可能になり、第2ポイントの哲学的な深く難しいテーマを論じることができるからだ。例えば名作「華氏451度」。本を読むことが禁じられた世界を設定しているからこそ、本を読むという事の意味、考えることの意味、人間として何が大切かといった深いテーマに触れることが出来る。 そういう点では、本作はSF小説として重要なポイントをきちんと押さえた作品だと思う。 あとは個々人の好みだ。 少なくとも私は自分が生きているうちにこういう世界になってくれたらありがたい。

Posted byブクログ

2024/03/16

AIが全てやってくれる時代。 便利なのか?面白いのか?快適なのか? まだ想像が追いつかないが興味深いお話しでした。 そもそも働くとは??

Posted byブクログ

2024/03/07

AIが社会のほとんどのことを適切に行ってくれ、人類から仕事という概念がなくなった世界を描く。 まさに人類の夢ともいえる世界観、 その中でのAIの不具合という不安、 「仕事とは何か」を追及し続ける主軸。 SFとしてもよくできた作品だと思いますが、個人的には難解で心にストンと落ち...

AIが社会のほとんどのことを適切に行ってくれ、人類から仕事という概念がなくなった世界を描く。 まさに人類の夢ともいえる世界観、 その中でのAIの不具合という不安、 「仕事とは何か」を追及し続ける主軸。 SFとしてもよくできた作品だと思いますが、個人的には難解で心にストンと落ちてこなかったので星2つ。

Posted byブクログ

2024/01/16

好きなことだけして生きていけるユートピアの未来で、社会を支えるAIのうち1機が鬱になり仕事のパフォーマンスが落ちてしまった。主人公はこの時代にはほぼ壊滅した「人間の仕事」として、そのAIにカウンセリングを行い、仕事とは何かを一緒に考えていく。 結末はそっちに行ったかー!という感...

好きなことだけして生きていけるユートピアの未来で、社会を支えるAIのうち1機が鬱になり仕事のパフォーマンスが落ちてしまった。主人公はこの時代にはほぼ壊滅した「人間の仕事」として、そのAIにカウンセリングを行い、仕事とは何かを一緒に考えていく。 結末はそっちに行ったかー!という感じ。終盤まではあまり起伏がなく、ユートピアや仕事についてなるほどと思いながら進んだ。同僚の3人がちょっと濃くて面白かった。

Posted byブクログ

2024/01/14

 本作は、ヒトの「仕事」が全てAIに取って代わり、過去の概念に成り果ててしまった未来の物語です。人類の英知を超えた究極のAI誕生によって、何が起こっているのでしょうか?  時は2205年、ジョン・レノンの『イマジン』の世界観を具現化したような、国境も戦争もないユートピアとして描...

 本作は、ヒトの「仕事」が全てAIに取って代わり、過去の概念に成り果ててしまった未来の物語です。人類の英知を超えた究極のAI誕生によって、何が起こっているのでしょうか?  時は2205年、ジョン・レノンの『イマジン』の世界観を具現化したような、国境も戦争もないユートピアとして描かれるのですが‥  世界に12拠点あるうちの一つ、北海道の第二知能拠点のAI『タイタン』が処理能力低下に陥ります。  ごく限られた就労者(管理者)側は、このAIを一旦人格化し、臨床心理の観点から原因分析しようと試みます。この【働けなくなったAI】の【カウンセリングの仕事】を強制依頼されるのが、心理学を趣味(仕事ではない)とする主人公の内匠成果。  物語の中心となる展開は伏せますが、まずは非常によくできた話だな、と思いました。昨今の科学技術の進歩を考える時、妙な近未来として現実味を帯びている気がしてきます。  でも、ヒトの仕事を全てAIが代替している世界は、本当にユートピアなんでしょうか? これ程読み手に仕事の意義を考えさせるSF小説もないと思います。  個人的には、社会的な役割がなくなれば、個人の能力を発揮する場面が減り、人間の想像力が退化することで、社会の存続も発展も減衰していく気がします。全ての判断がAIに委ねられる世界は、もはやディストピアではないでしょうか?  「今後10年〜20年間で 、49%の仕事がAIに取って代わられる」「AIが人類の知能を超えて、制御不可となる技術的特異点が訪れる」などと、不安を煽る分析や学説は聞き覚えがあります。  私たちの子どもたち、さらにその子孫に、素晴らしいと思える世界を残していく義務が、今を生きる大人には確実にありますね。

Posted byブクログ

2023/12/24

タイタンが人間の仕事を肩代わりした世界で、何もすることなく生きる人間は、果たして楽しく幸せなのだろうかと考えてしまった。 ストレスのない世界は絶対すぐにボケちゃうし、退屈なのではないかと?

Posted byブクログ

2023/12/17

AIが全ての仕事を行う近未来の世界で、 仕事とは何かを解いていく物語 テクノロジーが今とは比べものにならない程に 発達している世界でも、現代社会に通じることを 扱っているので抵抗なく読めた。 傑作。

Posted byブクログ

2023/12/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

人類が生み出したAIに人類の全てを管理してもらっているという未来の話なのに、どんどん神話の世界に戻っていくような展開がとても面白かった。コイオスと内匠成果の思索の旅も、旅だからいつか終わりが来てしまうのが寂しかった。 人類が神様を創ってしまった。そんな神話の一ページに立ち会っているような驚きや感動がある。人間には感知できない何かがこれから始まるのだという、その変化と進化の瞬間の物語は、ドラマチックに感情に訴えかけてくるものがあり、何度もうるっとさせられた。 数少ない登場人物がみんな魅力的で、信頼できる仕事仲間という関係性が構築されていく過程も楽しく読めた。なぜだか想像しやすく、頭の中でみんなが映像で動いていた。 人の自我は言葉でできている、と成果が言っていたのが印象的だった。言葉を肯定してくれてありがとう。人類は万物の霊長なんかじゃなかったというラストも良かった。

Posted byブクログ

2023/11/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

人間の巨大な脳を模した最高機能のAI「タイタン」が世界中に配備され、戦争も病気も仕事もなくなった近未来。仕事をする必要がなくなった人類は、タイタンの手厚い庇護の下、暇つぶしに「趣味」で研究活動などをして過ごしている。 趣味で心理学を研究し、それなりの成果を出している内匠成果は、ある日謎の男に拉致され、「仕事」をすることを命じられる。その「仕事」とは、心理的要因が基で機能不全に陥ったタイタンの一体「コイオス」をカウンセリングし、機能を回復させることだった・・・。 うわー、野﨑まどらしいひねくれた設定だなー、というのが第一印象です(笑) 趣味で心理学を研究しているだけの無職の若い女性が、世界中の社会機能全般を支える超高性能AIのお世話をする、というコントみたいな設定なのですが、ハードカバー版の帯には「「お仕事」とは何かを考える」みたいな、ちょっと深みを感じさせる(ように見える)惹句がついていて、お仕事人間たる鴨的には「何かの気づきが得られるかも?」との淡い期待を込めて、本作を手に取りました。 ・・・が、読了しての結果はまぁ、やっぱり野﨑まど作品でしたね(^_^; 作中設定は面白いし、ストーリー展開は派手派手しくてスピーディだし、抵抗勢力とか謎の組織とかが次々登場して話を引っ掻き回すし、何よりもキャラの癖がまぁ強いわ強いわ、どこをどう切り取っても野﨑まど作品でした。「お仕事とは」と深く考察する余裕はありませんでしたね(笑) ついでに言わせていただくと、突っ込みどころも満載。(*ツッコミについては、後日amazonでのレビューを拝見したところ「SF好きですが何か?」様のご意見と重複する箇所があることを確認いたしました。引用ではないことを念のためご説明させていただくとともに、「SF好きですが何か?」様には意見の重複をお詫び申し上げる次第です) まず、タイタンが人間の脳を模しているのはまぁ理屈がつくとして、同じサイズの身体全体まで作る必要があるのか?「身体の動きも理解できないと正しい判断ができない」のなら、脊髄の刺激伝達の機能だけでも良いのでは?さらに、コイオスのカウンセリングに、同じタイタンである「フェーベ」に直接会いに行く必要がなぜあるのか?コイオスがフェーベのいる米国西海岸に到達するまでのロードームービーがこの作品の面白さの一つでもあるのですが、AI同士で「直接会う」とか、しかもフェーベが花嫁衣装を纏っていたりとか、絵的には面白いんですけど何じゃそりゃ?なシーンが満載。さらに、最後に明かされる「ヘカテ」の存在。これがあるなら、そもそもコイオスが「仕事が物足りなすぎて心理的に不安定になった」という初期設定が成立しないのでは。・・・などなど、ロジック的にはツッコミ満載です。 でも、突っ込みながら楽しむのが野﨑まど作品の読み方だと鴨は思っているので、読み終わって「なんじゃこりゃ・・・」とは思いつつ、読書にかけた時間を無駄だとは思いません。まぁ、SF世界のトリックスターかな、と(笑)

Posted byブクログ

2023/09/30

知り合いに勧められて読みました。野崎さんの作品を読むのは初めてなのですが、読了後の率直な印象として、なにか200年後の人間は21世紀の今よりも幸福そうだぞ、という感じがあり、まずは好感を持ちました。私自身はディストピア的なSFよりも、本書のようなテイストの方が好きではあります。舞...

知り合いに勧められて読みました。野崎さんの作品を読むのは初めてなのですが、読了後の率直な印象として、なにか200年後の人間は21世紀の今よりも幸福そうだぞ、という感じがあり、まずは好感を持ちました。私自身はディストピア的なSFよりも、本書のようなテイストの方が好きではあります。舞台は西暦2200年の日本です。人間は仕事をしておらず(厳密に言えばごく少数の人だけ仕事をしている)、AIロボットが分業してあらゆる作業をしてくれます。人間は趣味で何らかの活動(ハンナ・アーレント的にいえば労働でもなく仕事でもない領域)に従事しています。ただし2200年にも男女のマッチングサービスはあるようで、相性度まで表示される。なるほど人間の生理的欲求は、AI全盛期でも残っているのかな、などいろいろ想像してしまいます。 ネタバレになりますのでストーリーはこれ以上書きませんが、私は個人的に最後の展開がとても気に入りました。これは予想できなかった(単に私のイマジネーション力が乏しかっただけですが)。久しぶりに本を読んで「えっ?そういうこと?」と驚きました。ジャンルは全く違いますが、アガサ・クリスティのミステリーを読んで、最後の展開に「えっ?」と驚く感覚に近い気がしました。その意味でストーリーの粘着性の高い本という印象です。これを機会に野崎さんの他の作品も読んでみたいと思います。

Posted byブクログ