グランドシャトー の商品レビュー
Osaka Book One Projectによる「大阪ほんま本大賞」 大阪の本屋と問屋が”ほんまに読んでもらいたい大阪ゆかりの本”を選ぶ。 大阪及び関西近隣エリアの本屋さんが力を合わせて受賞作を売り その収益の一部で大阪府の児童養護施設に本が寄贈される。 選考条件は ・大阪...
Osaka Book One Projectによる「大阪ほんま本大賞」 大阪の本屋と問屋が”ほんまに読んでもらいたい大阪ゆかりの本”を選ぶ。 大阪及び関西近隣エリアの本屋さんが力を合わせて受賞作を売り その収益の一部で大阪府の児童養護施設に本が寄贈される。 選考条件は ・大阪に由来のある著書、物語 ・文庫本 ・著者が存命であること 毎年、天神祭りの日に発表されるこの賞も今年で11回目。 今年の大賞は、高殿円さんの 『グランドシャトー』 高度経済成長期、 義父との結婚を迫られたルーは キャバレー「グランドシャトー」のNo.1ホステス真珠(しんじゅ)の家に転がり込む。 姉妹のように仲睦まじく暮らすも、 莫大な金を稼ぎながら下町の長屋に居続ける真珠をルーは不審に思い過去を探るがー。 ”男の作った城”キャバレーが町と女の生きざまを照らし出す、 これは”ひかり”の物語。 (文庫裏表紙より引用) 『グランドシャトー』 タイトルを見て、私の頭に浮かんだのは 「ん?”グランシャトー”ではなくて”グランドシャトー”?」 グランシャトーは大阪、京橋にある総合レジャービル。 その中に、キャバレーが入っていた。 京橋はええとこだっせ、グランシャトーがおまっせ♬ 関西人なら知っている人が多いであろうCMソング。 1980年代まで深夜帯を中心に放送されていたようだ。 私、今でも歌えるわ。。。 てっきりキダタローさんの作曲だろうと思っていたら 作曲者不詳になってて、ちょっと驚いた。 小説『グランドシャトー』は まさにこの京橋”グランシャトー”がモデルになっている。 産経新聞・大阪版で連載されていたこの小説。 著者の高殿円さんはインタビューで↓のようにおっしゃっている。 大阪でキャバレーの話を書こうと思ったら 千日前か京橋だなあと思っていて。 そこで京橋にしたのは、もちろんグランシャトーがあるからなんですけど、 もう一つの理由は1945年8月14日、 終戦の前日に1トン爆弾が落ちて一度灰の街になったことが大きいですね。 前日なんて日本はもう降伏していたはずなのに、なぜ…。 そこからコンクリートを敷き詰めて、 闇市が立って、あっという間に歓楽街になった。 都心なのに長い間爆弾が埋まっているということで再開発もされず そのまま手つかずだった元陸軍の施設がすぐそば。 大阪の中でも一番古き良き、 そして何でもありな五目めしみたいな感じが残っています。 でも、そういった京橋の良さもいつかはなくなる日が来るんじゃないかと思って。 それなら、私が覚えているうちに書き残そう、 キャバレーがまだなくなっていないうちに書く意味があるんじゃないかと思いました。 (引用:本の話〈高殿円インタビュー〉消えゆく文化、キャバレーを書き残したい) 主人公ルーはこの目まぐるしい変化の時代を キャバレーで生き抜いてきた。 そこはまさに戦場だった。 その「グランドシャトー」に足を踏み入れる前から ルーの人生は過酷だったけど。 自分は昭和世代だと思っていたし、今も思っている。 だけど、私の知る”昭和”はいつも”ひかり”が当たっていた。 当たり前だと思っていたそのことは 実はとても恵まれたことだったんだ。 ルーは”ひかり”を求めて強く生きていた。 ずっと、ずっと。 読みながら、ルーの悲しみ、悔しさが伝わってくることが何度もあった。 そして、ルーの強さに喝采を送ることも。 知っているつもりでいた あの時代の大阪を追体験しながら ちょっと懐かしい気持ちになっていた。 読み応えのある一冊だった。
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昭和から平成という時代を背景にした、ヒロインとその傍らに在った人物の一代記であると同時に、社会や風俗の移ろい、大阪の京橋やそこから然程遠くない地域の変遷が描かれているような、味わい深い小説である。 <大阪ほんま本大賞>という賞が在るのだそうだ。2013年に「大阪の本屋と問屋が選ん...
昭和から平成という時代を背景にした、ヒロインとその傍らに在った人物の一代記であると同時に、社会や風俗の移ろい、大阪の京橋やそこから然程遠くない地域の変遷が描かれているような、味わい深い小説である。 <大阪ほんま本大賞>という賞が在るのだそうだ。2013年に「大阪の本屋と問屋が選んだほんまに読んでほしい本」を択んで紹介するということを始め、毎年続けており、2016年の第4回からはこの賞を<大阪ほんま本大賞>という呼称に確定して現在に至る迄続いている。 この賞の選考対象となるのは「大阪に所縁の在る著者、物語であること」、「文庫であること」、「著者が存命であること」の3つの条件を満たす本ということになっているそうだ。要は、「大阪に所縁の内容である文庫本」で「御薦め!」を大阪の書店関係業界の皆さんから成る選考委員会で択んで推薦しようということなのかもしれない。 些か失礼ながら、個人的には本に関して「〇〇賞」というような事柄は然程気にしない。本書に関しては、時々愉しく拝見している、大阪の色々な話題を綴るブログで紹介されている記事を拝読し、面白そうだと思ったから手にしたのである。 大阪の京橋と聞けば、個人的には、大坂城を訪ねた際に京橋駅を利用したというようなことを思い出す。京橋駅側から大阪城の天守閣が見えるような辺りに歩を進めると「砲兵工廠跡」という碑が在ったと記憶するが、京橋辺りは大きな軍需工場が在って、戦時中には激しい空襲に晒された経過が在る。そうした場所が色々な変化を遂げている。現在の京橋お辺りは、高層のオフィスビルが林立して「大阪ビジネスパーク」と称している場所にも隣接している感じで、街の様子が移ろった“振幅”が大き目な地区と言えるかもしれない。 本作は、実在したレジャービルをモデルにしているらしいのだが、京橋のキャバレー「グランドシャトー」を舞台にした物語である。 本作のヒロインのルーは、母親の再婚相手の両親が、母親が妊娠しないのであればその娘である彼女と結婚させると言い出したという事態を受け、とりあえず逃げることになった。そして大阪に辿り着き、何とか生きて行くということになるのである。 大阪で懸命に生きようとするのだが、色々と巧く行かずに苦労していた中、ルーは「グランドシャトー」で働くことになる。そして街で出くわした女性が、真珠という源氏名で働く「グランドシャトー」のナンバーワンで、思わぬ再会をした。やがてルーはこの真珠との深い関りで生きて行くこととなる。 本作の“主旋律”は、昭和30年代半ばから昭和40年代半ばの頃、更に平成初期に至る迄のルーの生き様なのだが、「キャバレー」という業態の娯楽産業の変遷、社会変化、街の様子の変化、真珠が秘めている事柄等の様々な“旋律”が巧みに絡み合い、「交響楽」の様相を呈していると思う。これは、大阪の書店関係業界の皆さんから成る選考委員会で「大阪に所縁が深い内容の御薦めな一冊」として択んだのも納得出来る作品だ。 本作では大阪の中の地名が色々と出ている。何れも立寄った、または通り過ぎたことが在るような場所で、過去の時期の様子が判って興味深かった。或いは、また大阪を訪れるようなことがあれば「『グランドシャトー』で言及が在った…」と何処かで思い出すかもしれない。 なかなかに好い作品に出遭えたことを歓びとしたい。紐解き始めると、頁を繰る手が停められなくなってしまい、一気に読了に至った。
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大阪、京橋のキャバレーグランシャトーを舞台にした物語。貧しくて気の強い女の子が芸能界をも駆け上る。そして、地元に戻る。
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プロローグから、テンポの良い大阪弁の丁々発止のやり取りに笑ってしまった。 物語は大阪京橋にある、言わずと知れた、あのビルがモデル。 逞しく生き抜いてNo.2にまで上り詰めたホステスのルーと、不動のNo.1ホステスの真珠。 この手の話にありがちな「女の闘い」は二人の間には無い。 ...
プロローグから、テンポの良い大阪弁の丁々発止のやり取りに笑ってしまった。 物語は大阪京橋にある、言わずと知れた、あのビルがモデル。 逞しく生き抜いてNo.2にまで上り詰めたホステスのルーと、不動のNo.1ホステスの真珠。 この手の話にありがちな「女の闘い」は二人の間には無い。 真珠をどこまでも慕うルーと、ルーを優しく包み込む真珠。 月70万も稼ぎながら長屋で慎ましく暮らす真珠は、辛い過去を背負っていた。 真珠の心中は分からない。良く生き抜いたと思う。 そして、ルーも。 高殿氏はインタビューで「キャバレー文化を筆で残しておきたいと思った」と語っている。 哀しくも温かく、夢中で読んで心を揺さぶられた。 手元に残しておきたい一冊。
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いつも立ち寄る本屋さんに『大阪ほんま本大賞受賞作』として陳列されていて、華やかなイラストが本棚一面を埋め尽くしていたのが圧巻で、思わず手が伸びた。 大阪人にとっては、幼い頃からテレビをつければ否応でも目にした「グランシャトー」のCM。 CMキャラのリリアンさんが強烈なインパクト...
いつも立ち寄る本屋さんに『大阪ほんま本大賞受賞作』として陳列されていて、華やかなイラストが本棚一面を埋め尽くしていたのが圧巻で、思わず手が伸びた。 大阪人にとっては、幼い頃からテレビをつければ否応でも目にした「グランシャトー」のCM。 CMキャラのリリアンさんが強烈なインパクトを与え、夜の時間帯にしか流せない怪しげな面白さがいつまでも記憶に残る。 本作は、実在した「グランシャトー」をイメージしたキャバレーを舞台に昭和から平成にかけて苦難を乗り越え、深い絆を深めていく2人の女性の物語。本当に実在したかのような人物像の描写にグイグイ惹き込まれ、赤の他人同士が家族以上にここまで信頼や尊敬し合える関係にとても胸が熱くなり、羨ましくも感じた。
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高度経済成長期の日本の様子がよく分かります。ちょっと時代の説明が多く感じ、物語にうまく入り込めなかった部分もあり…
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綺羅びやかに見えるがこれは女の戦いの話だ。 歯を食いしばって負けてたまるかと生き抜いた女達の物語だ。 凄かった、最高だった。
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高度経済成長期、義父との結婚を迫られたルーは家を逃げ出され、大阪京橋に1人路頭に迷う。 キャバレーNo.1の真珠の家に転がり込み、キャバレーで働くホステスとはかけ離れた慎ましい生活を送る真珠とともに暮らし始める。 家族との2度の別れを乗り越えルーの逞しく生きる姿に元気をもらえた一...
高度経済成長期、義父との結婚を迫られたルーは家を逃げ出され、大阪京橋に1人路頭に迷う。 キャバレーNo.1の真珠の家に転がり込み、キャバレーで働くホステスとはかけ離れた慎ましい生活を送る真珠とともに暮らし始める。 家族との2度の別れを乗り越えルーの逞しく生きる姿に元気をもらえた一冊。
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ねえさんの心のうちが気になり過ぎてあっという間に読み切ってしまった…現代の人間からすると高度経済成長期のヒカリにはとても惹かれるものがある一方で、ねえさんとルーの暮らしを読んでいる時の安心感もまたこの時代の良さなんだろうなぁ 本編と関係ないけどなぜか私の生活と関連する地域、名前が沢山出てきて節々に縁を感じた小説だった。
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2023/3/25 読了 真珠ねえさんにどうしても惹かれてしまう、ルーが東京で活躍してても、真珠ねえさんは大阪でどうしてんやろって。ルーの真珠さんに対する想いがとても良かった
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