開墾地 の商品レビュー
前作に続いて、母国語でない日本語をここまで小説にできる著者ってとにかく凄い。 日本、アメリカ、父の母国イラン、さまざまな国の中で、言語や文化を、違和感なく表現している。 いろいろなルーツの中で感じる思いを、装丁とリンクして侘びさびを感じてしまう。 3作目、Kindle版、A...
前作に続いて、母国語でない日本語をここまで小説にできる著者ってとにかく凄い。 日本、アメリカ、父の母国イラン、さまざまな国の中で、言語や文化を、違和感なく表現している。 いろいろなルーツの中で感じる思いを、装丁とリンクして侘びさびを感じてしまう。 3作目、Kindle版、Audible版で発売しているが、まだ書籍は出ていない。 Audibleデビューするか?いや、やっぱり生本で読みたいのだ。
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イラン人の養父との血縁に因らない関係に、「そして、バトンは渡された」を思い出した。でもこの物語の中心にあるのは家族ではなく、言語。飛び交う言葉とその言葉が纏うものから意識せずとも意味を読み取ってしまう母語と、意識しなければ音の連なりでしかなくなる言語のことが、繰り返し語られる。主...
イラン人の養父との血縁に因らない関係に、「そして、バトンは渡された」を思い出した。でもこの物語の中心にあるのは家族ではなく、言語。飛び交う言葉とその言葉が纏うものから意識せずとも意味を読み取ってしまう母語と、意識しなければ音の連なりでしかなくなる言語のことが、繰り返し語られる。主人公にとって、母語は愛しかったり、優しかったりはせず、かえって自身を閉じ込めるものに感じていて、その感じ方が新鮮だった。 訥々としたふたりのやりとりが、ちょっとせつなくて、おだやかで、気持ちよかった。 蔓延る葛の葉、越境者のメタファーなんだろうか。
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言語がテーマ。 前作の異邦人も少し続いている。 葛がなんとも言えない圧迫感、切迫感をもたらしている。 二か国語の間で生きる。そのうちの一つは英語。 なんと味わい深いのだろう。 お父さんの昔話がとりわけ。
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切実さを感じる。このグローバル化された時代にあって、確かに英語は万国共通の言葉として強みを発揮し続けているが、その英語という母国語から主人公ラッセルは抜け出すことを考える。そしてマイナーな(失礼!)ペルシャ語を学ぶことで自らのルーツに接近しようとする。言葉を学ぶこと、それによって...
切実さを感じる。このグローバル化された時代にあって、確かに英語は万国共通の言葉として強みを発揮し続けているが、その英語という母国語から主人公ラッセルは抜け出すことを考える。そしてマイナーな(失礼!)ペルシャ語を学ぶことで自らのルーツに接近しようとする。言葉を学ぶこと、それによって自分が知らない、父が見ていたはずの世界へ脚を踏み入れようとすることは新しいアイデンティティを得ること、そこから未知の領域を垣間見ようとする試みとも言えるだろう。そうした自分自身の中の迷いや言いよどみが実に読みやすい日本語で書かれる
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英語圏で育って日本語の世界で生活する著者 アメリカに帰り、父親との暮らしの中で 父親と従兄弟が話すペルシャ語を不思議な感じで 聞いた子どもの頃を思い出す 英語が十分に話せなくて、いろんな対応をされる父親 そして、言葉の間で生きる自分 祖国と言語、微妙な、そして繊細な表現
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情景が目に浮かんでくるような描写でとても読みやすかった。 葛の蔓が繁茂しているのをぼんやりと眺めながらその中から聞こえてくる虫の声を耳を澄ます。 やがて、多くは語らないけど優しさのある父の声が聞こえてくる。 ラッセルが2歳の時に母が今の父と結婚したが、7歳で母は出ていく。 父だ...
情景が目に浮かんでくるような描写でとても読みやすかった。 葛の蔓が繁茂しているのをぼんやりと眺めながらその中から聞こえてくる虫の声を耳を澄ます。 やがて、多くは語らないけど優しさのある父の声が聞こえてくる。 ラッセルが2歳の時に母が今の父と結婚したが、7歳で母は出ていく。 父だけは、それまでと何も変わらず彼と暮らす。 アメリカ生まれのラッセルとは英語で喋るが、父の言語はペルシャ語だ。 父が、故郷の家族と話すときは英語を使わない。 そのことに寂しさを感じるのか、自分だけ家族ではないと思ってしまうのか…。 国が違えば、ことばも違うという当たり前のことだが、日本から離れたこともなく、身近に日本語以外を話す人がいない自分には想像できないことだった。 だが、父親が一人だけで入り込んでいたあの不思議な世界を、自分の目で見たかった。というラッセルの優しい思いが、心に沁みた。
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言語、世間、社会、家族 自分たちを取り巻いているものに対して、かんがえながら読みました。 物語に出てくる事象や事柄がまさにそれを想像させるようなものだと感じます。
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父はペルシャ語(イラン)から英語(アメリカ)へ、子は英語(アメリカ)から日本語(日本)へ。ひとつの国と言語で生きていくことは、実家を取り巻く葛に似て、その土地での不条理に強く絡めとられてしまう。子がアメリカサウスカロライナ帰省中に、実家の葛の蔓を焼き払う作業を一過性の効果しかない...
父はペルシャ語(イラン)から英語(アメリカ)へ、子は英語(アメリカ)から日本語(日本)へ。ひとつの国と言語で生きていくことは、実家を取り巻く葛に似て、その土地での不条理に強く絡めとられてしまう。子がアメリカサウスカロライナ帰省中に、実家の葛の蔓を焼き払う作業を一過性の効果しかないと知りつつ終えると、親子もまた住む土地と母語に絡めとられないそれぞれの暮らしがしばらく継続する見通しが立つように思われました。
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短いのに濃厚な90ページだった。故郷、自分のルーツ、居場所。どこにいても落ち着かないフワフワした不安定な気持ちがよく分かる。葛の蔓がどんどん伸びて飲み込んでしまう。故郷って何だろうと思う。
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