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月人壮士 の商品レビュー

3.5

32件のお客様レビュー

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2024/05/07

時は天皇が在命中にもかかわらずコロコロ入れ替わり、女帝も普通に存在し、まさかの再任すらあったという奈良時代。皇族を山族、藤原氏を海族になぞらえ決して交わってはいけない二族の混血として皇位に就いてしまった聖武天皇の苦悩を、周囲の人への聞き取りという形で綴ったという凝った作品です。 ...

時は天皇が在命中にもかかわらずコロコロ入れ替わり、女帝も普通に存在し、まさかの再任すらあったという奈良時代。皇族を山族、藤原氏を海族になぞらえ決して交わってはいけない二族の混血として皇位に就いてしまった聖武天皇の苦悩を、周囲の人への聞き取りという形で綴ったという凝った作品です。 史実と言われている事柄すら信じられないこの時代のことを、ここまでの精度で創作した手腕がすごい。 本作ではまだ下っ端扱いの弓削道鏡が、どちらの血も引かない天皇を目指してあの事件を起こしたのかも、という想像を掻き立てられます。

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2024/05/05

平安時代が舞台ということで、螺旋プロジェクトみたいな企画でない限り、自分からはなかなか手に取らない小説で、とっても新鮮でした。 海と山の争いと、血の争いをもとにしたストーリー、かつ主人公の帝(聖武天皇)の周りの人の一人称を中心に描かれる複雑な人間関係は、ミステリーみたいな要素も...

平安時代が舞台ということで、螺旋プロジェクトみたいな企画でない限り、自分からはなかなか手に取らない小説で、とっても新鮮でした。 海と山の争いと、血の争いをもとにしたストーリー、かつ主人公の帝(聖武天皇)の周りの人の一人称を中心に描かれる複雑な人間関係は、ミステリーみたいな要素もあって終始ドキドキしながら読めました。 学生時代は歴史の授業が苦手で全く興味をもてなかったのだけど、こういう話を読むと、今さらながらに歴史にも興味がでてきて、学び直してみようかなと思わされます。 面白かったです!

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2024/04/17

聖武天皇の苦悩を妻や官人たちが語る。3章あたりから面白くなってきました。今にも通じる皇位継承問題や心の葛藤が描写されています。特に最後の最後はドラマを感じました。歴史を学び直すいい機会でした。

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2024/02/27

奈良時代の話がまず新鮮だった。固有名詞が難しすぎるけど慣れたら読みにくくない。100ページくらい進んでからやっと、「首さま」が聖武天皇だって気づいて自分でも遅すぎると思った。

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2024/02/15

ここらの時代は血縁関係が本当にややこしい。誰が誰のなんだっけ?と何度も家系図を見直しながら読んだ。 対立というテーマを面白い形に落とし込んでいると思う。この苦悩があっての後の時代、という風に次作は書かれているんだろうか。同時執筆というから、触れられずに進むのかな。

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2024/02/07

螺旋プロジェクト4冊目。 聖武天皇崩御に際し、すでに明らかになっている遺詔のほかにあるのでは?と周辺に聞きまわる物語。 章立ては話を伺った人が一人称で話している。 山の一族天皇家に海の一族藤原家が絡みついていく様子が生々しい。 この時代から藤原摂関家が席巻していく。

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2024/01/07

 聖武天皇の死後、その遺詔を探そうと道鏡と中臣継麻呂が各関係者を回り、首という人物の輪郭を明らかにしていく。  漠然と聖武天皇には好意を抱いていた。東大寺や盧舎那仏を造ったイメージだろうか。澤田氏の『与楽の飯』からいかに現場が苦労を重ねていたかを知ってもなお悪い感情は生まれなかっ...

 聖武天皇の死後、その遺詔を探そうと道鏡と中臣継麻呂が各関係者を回り、首という人物の輪郭を明らかにしていく。  漠然と聖武天皇には好意を抱いていた。東大寺や盧舎那仏を造ったイメージだろうか。澤田氏の『与楽の飯』からいかに現場が苦労を重ねていたかを知ってもなお悪い感情は生まれなかった。本作の各人物の証言はいずれも事実だけをとれば「愚君」と思える内容。ただそれでも首の「孤独」への同情と憐れみが感じられ、そこには澤田氏の思い入れを深く感じられた。  藤原氏の血を受け継いだ初めての混血の天皇。それゆえに全き天皇になろうと苦心した孤独な天皇。一般的には認識されていない聖武天皇の姿に心が動かされた。今わの際に娘への愛情を想起する(これこそが彼の遺詔)演出は非常に心憎い。彼自身は娘への愛情はなかったと否定しているが、自身の苦悩を娘へ伝えないという信念に父の深い愛情を感じた。その選択が結果として恵美押勝の乱や道鏡事件を生んだのだとしても、政の正解と親子の正解は時に矛盾すると思う。孝謙天皇(阿倍)は悪いイメージが染みついているが本作を読んで彼女サイドの物語も読んでみたいと思った。  全体を通して各人物の評価を読者に委ねている形式だと感じた。あからさまに良い/悪い人物はなく、だれもが人間らしく欲望と情で動いている。塩焼王や光明子がまさにそうで、小さい人物に見えるがそこに良さと彼/彼女の信念を感じられてよい。  螺旋プロジェクト作品は本作のみだが、単体として非常に良い作品だった。

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2023/08/09

良かった! 螺旋プロジェクトで巡ってきて、単体では絶対に読まなかったであろう歴史物。 頼朝あたりまでは、興味を持てば読んだりしましたが、まさかの奈良時代、聖武天皇。 この時代は、藤原、麻呂麻呂いっぱい問題で、人の名前を覚えるのも困難で本当に苦手。 巻頭に家系図がついてなかったら挫...

良かった! 螺旋プロジェクトで巡ってきて、単体では絶対に読まなかったであろう歴史物。 頼朝あたりまでは、興味を持てば読んだりしましたが、まさかの奈良時代、聖武天皇。 この時代は、藤原、麻呂麻呂いっぱい問題で、人の名前を覚えるのも困難で本当に苦手。 巻頭に家系図がついてなかったら挫折してました。 結果、最後まで読んで良かった! 聖武天皇の切なさに涙しました。 そして、この後の道鏡と阿部のことを考えると、やっぱり阿部の中に複雑な想いがあって、宮古、首、阿部と螺旋のように続いていったんだなと、寂しくなる。

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2023/08/06

「螺旋」プロジェクトの8冊目。ようやくこれで第1弾を全て読了。 中古本屋から手に入る順番で買ったので時代の流れとしてはバラバラになってしまった。本作は奈良時代、聖武天皇の崩御から始まる物語。 大学受験の時も日本史は取らなかったし、このあたりの時代のことはあまり頭に残っていない。最...

「螺旋」プロジェクトの8冊目。ようやくこれで第1弾を全て読了。 中古本屋から手に入る順番で買ったので時代の流れとしてはバラバラになってしまった。本作は奈良時代、聖武天皇の崩御から始まる物語。 大学受験の時も日本史は取らなかったし、このあたりの時代のことはあまり頭に残っていない。最後まで巻頭の系統図に戻るを繰り返したので読むのに結構時間が掛かった。 残された遺詔の言に疑いを持った前左大臣・橘諸兄の命を受け、中臣継麻呂と道鏡が亡き先帝の真意を探るべく、ゆかりの人々を訊ね回る。 円方女王、光明子、栄訓、塩焼王、中臣継麻呂、道鏡、佐伯今毛人、藤原仲麻呂。一人語りで語られる天皇の姿と彼らの関りは作者の想像力で膨らまされ、それぞれに面白い。 海vs.山というこのプロジェクトの構図を、皇統の裔にありながら藤原氏の血に支えられているという天皇ひとりの中の葛藤として描いたところも一興。 光明子の話では、男子を産まなければならない后の悩み深さが描かれ、次いで送り込まれた姪に役目を押し付けて自らのためだけに生きようとするところが不憫。現在に至ってもなかなか進まぬ皇位継承問題を思い起こした。 加えて、穏やかな日々を望みながら長屋王の妻として散らねばならなかった吉備内心王の苦しみや血を分けた子からその血ゆえに忌まれた藤原宮子の心痛など、男性社会の手駒でしかなかった女性たちの姿が印象深かった。 どうでも良いことだが、「首様」を最後まで「オビトさま」とスッと読めなかった。

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2023/07/29

螺旋プロジェクトの2作目。主役は聖武天皇。 完全な皇統を目指しながら自らに流れる藤原の(海族)の血脈に感じる葛藤と絶望。 色んな人の一人称で語られるそれぞれの首さまの見え方。 結局その最期までその苦しみは解されず、それは石器時代から脈々と続く”族”の対立には、何人も抗えないという...

螺旋プロジェクトの2作目。主役は聖武天皇。 完全な皇統を目指しながら自らに流れる藤原の(海族)の血脈に感じる葛藤と絶望。 色んな人の一人称で語られるそれぞれの首さまの見え方。 結局その最期までその苦しみは解されず、それは石器時代から脈々と続く”族”の対立には、何人も抗えないという真理か、そしてそれはこの後も続く。 こういう昔の物語は語りが読みにくく時代背景にも詳しくないので相変わらず苦手分野。 けど読み進めるうちにそれぞれに見えてる天皇の苦しみが見えて、そしてみんなそれに気づいてて、苦しみがよく伝わる描写だった。 どんな時代も、色んな見かた、見え方があるよなぁ。

Posted byブクログ