ウィンダム図書館の奇妙な事件 の商品レビュー
大学図書館をめぐる学園ミステリーですね。 ジル・ペイトン・ウォルシュさん(1937ー2020)イギリスのロンドン生まれ。作家。 初読みです。 人物の細かな心模様を実に興味深く描写されています。イングランド東部に広がる沼沢地方の自然の美しさと大学の古風な佇まい。風習やいかにもイギ...
大学図書館をめぐる学園ミステリーですね。 ジル・ペイトン・ウォルシュさん(1937ー2020)イギリスのロンドン生まれ。作家。 初読みです。 人物の細かな心模様を実に興味深く描写されています。イングランド東部に広がる沼沢地方の自然の美しさと大学の古風な佇まい。風習やいかにもイギリスらしい伝統を守る風俗、個人主義の対人関係などがわかりやすい訳で語られています。 日本とは違いがはっきりとしたイギリスの物語は、今までに何人かの作家さんの作品を読んできましたが、ミステリーは久しぶりです。とは言え、読んだのはコナン・ドイルのみで、アガサ・クリスティもチェスタトンも読んでいません。かなり新鮮に読めました。 ケンブリッジ大学の古色蒼然とした学寮セント・アガサ・ガレッジのガレッジ・ナースのイモージェン・クワイを主人公にした、いわく付の『ウィンダム図書館』で起きた殺人事件の真相を解き明かす物語です。 日本とは風習がかなり違う所は、翻訳の猪俣美江さん(英米文学翻訳家)慣れた手腕で、綺麗に訳されていて、心地好く読み進められました。 最後のどんでん返しもですが、イモージェン・クワイのしっかりとした人物が魅力的に描かれていたのが印象的ですね。本をめぐる学園ミステリーを風土も楽しみながら愉しく読了しました。 (この本は、メメさんの本棚登録で興味を惹かれて読んでみました。メメさん、久しぶりにイギリスのミステリーを堪能しました。ありがとうございました。)
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著者 ジル・ペイトン・ウォルシュ(イギリス) 学寮付き保健師<イモージェン・クワイ>シリーズ 1作目「ウィンダム図書館の奇妙な事件」 序盤であまり作品に入り込めず寝かせていた本でしたが、アリ・ブランドンの「書店猫シリーズ」一作目を読み終え、本に関するタイトルのこちらも気になっ...
著者 ジル・ペイトン・ウォルシュ(イギリス) 学寮付き保健師<イモージェン・クワイ>シリーズ 1作目「ウィンダム図書館の奇妙な事件」 序盤であまり作品に入り込めず寝かせていた本でしたが、アリ・ブランドンの「書店猫シリーズ」一作目を読み終え、本に関するタイトルのこちらも気になって久しぶりに本棚より手に取りました。 裏書きに「巨匠セイヤーズのピーター・ウィムジイ卿シリーズを書き継ぐことを託された実力派作家による、英国ミステリの逸品」とあり、少し前にドロシー・L・セイヤーズの「誰の死体?」を読み終えていたので期待値も上がって今回は一気に読了でした。 作品として、面白かったです。徐々に引き込まれていき、後半は夢中になっていました。 序盤の印象はミステリの面より、学生同士の関係性や内面の部分が気に掛かりましたが、三橋曉氏の解説を読み、著者のウォルシュが児童文学の書き手ということで腑に落ちました。 話はケンブリッジ大学のもう一つの図書館(大学の図書館とは別のウィンダム氏によって遺贈された図書館)で、学生の死体が見つかるところから始まります。亡くなった学生は公立校から奨学金で入ったフィリップ・スケロー。 大学の貧乏学寮セント・アガサ・カレッジの保健師イモージェン・クワイは、友人の警察官マイクに頼まれ、彼の死に関係すると思われる5人の学生に話を聴くことにしますが、フィリップを下げすんでいた関係性が明らかになっていきます。そして、2人目の死者が、、、。 貴重な古書が盗まれるというもう一つの事件も交錯しながら、事件は膨らんでいきます。そして畳み掛けるように全てが紐解かれていく終盤は一気に読み終えたくなります! 可哀想なフィリップの死と、そこに残った疑惑の謎を、しっかり解き明かしてくれた主人公のイモージェンと著者のウォルシュのことが好きになりました。 他の作品も読んでいきたいです。
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なんて言ったらよいのか。ヒロインのまっすぐな性格と正義感は好ましかった。でも、ちょっとした悪意と不運な出来事が重なって引き起こされた殺人事件。上手く話はまとまったが、傲慢で不遜な人達が、ろくに反省もせずにのらりくらりと生きのびる。暦のトリック?みたいなものは、後出しジャンケンみたいだが、当時そんな事があったのかとびっくり。
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同著者の『ケンブリッジ大学の途切れた原稿の謎』を書店で見て気になっていたので、前作のこちらを読んでみました。 ケンブリッジ大学の学寮、セント・アガサ・カレッジ内にある〈ウィンダム図書館〉で、学生の死体が発見されます。 カレッジ・ナース(学寮付き保健師)のイモージェンは、友人の巡...
同著者の『ケンブリッジ大学の途切れた原稿の謎』を書店で見て気になっていたので、前作のこちらを読んでみました。 ケンブリッジ大学の学寮、セント・アガサ・カレッジ内にある〈ウィンダム図書館〉で、学生の死体が発見されます。 カレッジ・ナース(学寮付き保健師)のイモージェンは、友人の巡査部長・マイケルの頼みで、警察に非協力的な学生たちに事件当日の話を聞いていくことに・・・。 主人公・イモージェンの“学寮付き保健師”という設定がまず興味深く、彼女と学生、大学の職員たち、そして下宿人とのやり取りが楽しいです。 イモージェン自身も良識的で好感が持てる女性なのが良いですね。 事件当日の出来事に対して妙に口を噤む学生たちに、何とか協力してもらおうと、イモージェンが奔走している内に第二の殺人が起こり、さらにイモージェンの家に間借りしている老教授の希少本が盗まれ、挙句の果てに教授自身が行方不明になってしまうという・・・これら一連の出来事が“事の発端”に繋がっていく、終盤の謎解きには惹き込まれました。 (“殺人の犯人”が判明した“その後”の謎解きの方が面白かったりして) 事件の舞台となった〈ウィンダム図書館〉というのが、寄贈者のウィンダム氏が偏屈で、蔵書はマニアックだし、風変わりな規約があるしで厄介な施設なのですが、この“独自規則”が事件の謎に関わってくるので、要注意でございます。 ただ、図書館で死んだ学生・フィリップがひたすら不憫で、彼を死に追いやった人物への処遇がヌルいのにはモヤモヤしました。 せめて、彼の恋人のトレイシーには幸せになって頂きたいです。 因みに、著者のウォルシュさんは、ドロシー・L・セイヤーズの“ウィムジイ卿シリーズ”を書き継ぐことを託された作家さんとの事。 実は大きな声では言えないのですが、私“ウィムジイ卿シリーズ”は存じてはいたものの、未読なんですよね~(恥)。いつか読んでみようと思っております。 あ、勿論当シリーズの続編も読みますよ~。
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古典ミステリー、いや1992年は古典なんだよ……そうだよな…30年前じゃん… とあとがき読んでひきつった。 元はYA系作家ということで1990年代のコバルトミステリーを読んで育った読者の私はすごく入り込みやすい。 コバルトミステリーの主人公ってざっくりいうと「正しい」人間。 理不...
古典ミステリー、いや1992年は古典なんだよ……そうだよな…30年前じゃん… とあとがき読んでひきつった。 元はYA系作家ということで1990年代のコバルトミステリーを読んで育った読者の私はすごく入り込みやすい。 コバルトミステリーの主人公ってざっくりいうと「正しい」人間。 理不尽なおとなのやりかたとかいじめがけったくそ悪いと思える人間であることが多い。弱虫だったりこずるかったりするけど読者にストレス与えないように設計されている。 この主人公イモージェン・クワイもそう。 ケンヴリッジの住人(生徒・講師・スタッフ・教授)にある特権意識を批判的に見ているし、被害者であるフィリップを思いやるちゃんとした大人だ。 事件は4/5くらいのところで真相が明らかになるが、殺人とは別の謎『被害者はなぜそこにいたのか』の真実をイモージェンは追及する。被害者を愛するひとたちや希望をもってこの大学に来た故人のために動く。 何の得にもならないが何故そうしたかというと、彼女はこの学校の住人の健康やこころを護る仕事に誇りをもっているからだと思う。すべてを知った彼女が断固として罪をゆるさない様子は読んでいて爽快だ。 30年前のイギリスの階級主義はまだまだ強固だが今だって似たようなもんだろうなと思う。ただ、こういったいじめは今発覚したら確実に退学らしいけど。 このシリーズはあと3作あるそうだけど同じように「学術的ミステリー+世俗ミステリー」の混合なのかな、楽しみだ。
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特別に凄いミステリーではないが、主人公が学寮の保健師って言う点が目新しい。被害者、容疑者共に寮生であり、日々の仕事をこなしつつ丹念に会話を続けていけるのも彼女の日頃のフェアな態度が信用されているとわかる。死者に対しても汚名挽回に奔走する点も好感がもてる。
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自分が図書館司書の勉強をしているからというのもあって、あっという間に読めてしまった。 ミステリーを読む時はスマホのメモを使って整理したりすることが多いのだけれど、教授の本が消えた謎や消えたワクチンの謎、11日間の空白など、全ての伏線が答え合わせみたいにページをめくるごとに明かされていって、面白かった! 女性のイモージェンが活躍するのも良かった。彼女が探偵でもなく警察でもなく、カレッジの保健医であることも魅力的に思えた。ただ純粋にカレッジの学生のために事件を解決しようとしているところが伝わってきて、こちらも純粋な気持ちで読めたからかもしれない。ただの好奇心じゃないところが良い。 例え世界最高峰の大学の学生でも、英国の階級社会に縛られているところがあって、イギリス文化の講義を受けた時に教授が仰っていた「英国は人種よりも階級」が如実に現れていた。学校は社会の縮図というけれど、どこの国でも変わらないなと思う。フィリップの疑惑が晴れて良かった…トレイシーもイモージェンも幸せになってほしい…。
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児童文学から、ドロシイ・L・セイヤーズの遺稿を完成するなど、業績を残しているジル・ペイトン・ウォルシュのミステリ第1作。 1992年が舞台で、1993年に発表されたものです。 イモージェン・クワイは32歳。 ケンブリッジ大学の学寮セント・アガサ・カレッジの学寮付き保健師(カレッ...
児童文学から、ドロシイ・L・セイヤーズの遺稿を完成するなど、業績を残しているジル・ペイトン・ウォルシュのミステリ第1作。 1992年が舞台で、1993年に発表されたものです。 イモージェン・クワイは32歳。 ケンブリッジ大学の学寮セント・アガサ・カレッジの学寮付き保健師(カレッジ・ナース)をしている、落ち着いた女性です。 ある朝、何かと苦労の多い学寮長が血相を変えて駈け込んで来る。ウィンダム図書館で、学生の死体が発見されたのだ。 その学生フィリップはテーブルの角に頭をぶつけたようで、そばには古書が一冊落ちていた。 17世紀の学者ウィンダムが遺贈した図書館は、本を増やしても減らしてもいけないという奇妙な規約があるが、管理人には地所から高額の収入が設定されている。 貧乏学寮にとっては邪魔なような有難いような存在だった。 思わぬ死に学生たちは動揺、警官にも教師にも何も話そうとしない。巡査部長のマイクはイモージェンの友人で、協力を求めてくる。 フィリップはいじめに遭っていた可能性が高く、ルームメイトのジャックが行方をくらましていた。 イモージェンはケンブリッジで育ち、両親の遺した広い家に学生やワイリー教授を下宿させている。 ケンブリッジの美しい町を愛し、個性的な教授たち、手に負えないところもある学生たちを見守ってきた。 これは1作目ですが、過去にも事件に関わったことがあるようで、後の作品に出てくるのかしら? いかにも英国らしいモチーフが多く、黄金時代のミステリを思わせます。 観察眼の鋭さと不当な評価を覆す正義感、悲しむ人に寄り添う心の温かさ。 読後感がいい小説でした。
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ちょっとしたイタズラ,軽いいじめの連鎖と親切心から何が引き起こされたか.事故かもしれないが死んだ者にとっては殺されたようなもの.イモージェンの粘りで名誉が回復されて本当に良かった.
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奇妙な事件とあるが、むしろ奇妙なのはこの図書館じゃないの?! イギリスはケンブリッジ大学、セント・アガサ・カレッジにウィンダム図書館はある。 ニュートンを激しくライバル視したクリストファー・ウィンダムによって遺贈された。 図書館と蔵書と・・・・・・いろいろな条件をである。 蔵書...
奇妙な事件とあるが、むしろ奇妙なのはこの図書館じゃないの?! イギリスはケンブリッジ大学、セント・アガサ・カレッジにウィンダム図書館はある。 ニュートンを激しくライバル視したクリストファー・ウィンダムによって遺贈された。 図書館と蔵書と・・・・・・いろいろな条件をである。 蔵書を増やしてもいかんし、減らしてもいかんとか、そのために鍵をかけるとか、100年に一度、不意に監査が来るとか、奇妙な、ええい面倒な! である。 その図書館に、死体があった。 主人公はイモージェン・クワイ、32才、カレッジの保健師である。 このイモージェンがいい! 立場的にも性格的にも学生とカレッジの間に立っている。 事件にしゃしゃり出てくるような、厚かましいところがない。 華やかさや華々しさはなく、むしろ地味だが、あなたかもしれない、あなたのまわりかもしれない、ごく当たり前にいるような様子がある。 作者ジル・ぺイトン・ウォルシュのミステリーが翻訳出版されるのは初めてらしい。 多作の実力派なのに、あのピーター・ウィムジイ卿の公式続編を書いているのに、日本では絵本の作家としてのみ知られているという。 もったいない。 私はこの主人公が好きだ。 また会いたい。 彼女には幸せになってもらいたい。 よいパートナーが見つかるだろうか? 候補者はこの本にも出てくるのだが。 そして、また奇妙な事件があるのだろうか? そう、事件もまた奇妙なのだ。 通常、探偵が「あなたが犯人です!」というまでが面白いのだが、これは、わかってからのほうがより面白いのである。 イモージェン・クワイ主人公の作品は、あと3作あるのだが、それらも事件は奇妙なのだろうか? 翻訳出版はされるのだろうか? 楽しみにしている。
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