貸本屋おせん の商品レビュー
江戸下町の生き生きとした描写と、主人公おせんが営む貸本屋の文化、そこに絡む事件...もろもろ読みやすく一気読み。
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※このレビューにはネタバレを含みます
不思議な絵師と出会ったり、幻の本「雲隠」の捜索を頼まれたりと、本にまつわる出来事に巻き込まれる貸本屋おせんの話。 短編集ということで気軽に読めた。 江戸らしい書き言葉で書かれているので少し慣れるまで読むのに時間がかかってしまったが、慣れると小気味良くドラマを見ている感覚で読める。 貸本という文化は軽くは知っていたが、 曲亭馬琴や源氏物語の『雲隠』など、実在の人物や作品も自然に織り交ぜられているので、私自身にもう一歩踏み込んだ知識があればさらに楽しめたと思う。 戯作者、絵師、彫師、貸本屋という、本にまつわる人たちの本に対する考え方、思いは、職業の呼び名は変われど今も昔から変わらないということが感じられた作品だった。
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ところどころ色っぽくて小気味よい、江戸の長屋の貸本屋おせんと周囲のエピソード ちょっとミステリー感もあり面白かった
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貸本屋梅鉢屋おせんの父親は 腕のいい彫師だったが無念の死を遂げる。 天涯孤独となったおせんは周りの者に助けられ 高荷を背にしたたかに生きていく。 〈たかが本〉 その本は〈長い年月人の手にあり、何十年、何百年と読み継がれていく〉 P120より。 5話それぞれに物語があり その時代...
貸本屋梅鉢屋おせんの父親は 腕のいい彫師だったが無念の死を遂げる。 天涯孤独となったおせんは周りの者に助けられ 高荷を背にしたたかに生きていく。 〈たかが本〉 その本は〈長い年月人の手にあり、何十年、何百年と読み継がれていく〉 P120より。 5話それぞれに物語があり その時代を精一杯生きた人々の矜持が窺える。 老舗問屋、「蔦屋耕書堂」 創業者の蔦屋重三郎 が、第二話「板木どろぼう」にも登場する。 あのTSUTAYAだ。 参考文献にも読みたい本がたくさんある。 やはり、本は読み継がれていくものだと改めて思う。
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これはいいものを読んだ。五編からなる天涯孤独の江戸の貸本屋おせんが、本を愛する(執着とも?)がゆえに様々な事案に巻き込まれ、また面倒を引き寄せていくことで、物語が展開していく。謎解き要素もあり楽しめるが、何より江戸時代の庶民の暮らしぶり、本や歌舞伎などの娯楽、遊郭、幕政などが垣間...
これはいいものを読んだ。五編からなる天涯孤独の江戸の貸本屋おせんが、本を愛する(執着とも?)がゆえに様々な事案に巻き込まれ、また面倒を引き寄せていくことで、物語が展開していく。謎解き要素もあり楽しめるが、何より江戸時代の庶民の暮らしぶり、本や歌舞伎などの娯楽、遊郭、幕政などが垣間見えるさりげない著述が、物語全体をしっかり支えていて、骨太な内容となっている。おせんの江戸っ子な勝気さと、女ひとり生きる不安、関わる人々の人情など、編が進むごとに徐々に盛り上がり、特に第三編から最終第五編まではどんどん読み進めたくなってしまうほど集中できた。続編希望な楽しみな作家さんだ。
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町人文化が発展した文化年間の江戸浅草で、庶民の読書文化を支える貸本業・梅鉢屋を営むおせんが捕物に挑む物語。本を背負って得意先を回る一方、様々な手立てで書籍を仕入れ、時には自ら写本して客の求めに応じる。そんなおせんの書物への愛情やこだわりを基調に彼女が数々の事件の謎を解き明かすとい...
町人文化が発展した文化年間の江戸浅草で、庶民の読書文化を支える貸本業・梅鉢屋を営むおせんが捕物に挑む物語。本を背負って得意先を回る一方、様々な手立てで書籍を仕入れ、時には自ら写本して客の求めに応じる。そんなおせんの書物への愛情やこだわりを基調に彼女が数々の事件の謎を解き明かすという内容になっている。 曲亭馬琴、式亭三馬、山東京伝らの読本、人気役者の錦絵など、江戸の出版文化の世界に誘われ、同時に幕府の威信に触れる異説・流言を取締る出版統制の厳しさを思い知らされる。 おせんの父・平治は読本の挿絵や錦絵の版木を掘る腕利きの彫師だったが、幕府に批判的な書物の出版に関わった疑いで、板木を削られ指を折られた。酒に溺れた平治は、愛想をつかした妻に逃げられ、結局、自死に至る。天涯孤独となったおせんはそんな浮世への疑問と憤りを書物への愛情と信頼に昇華させた。 板木泥棒、幽霊騒ぎ、幻の書物探しなど様々な事件に巻き込まれ、悪どい商売人などと対峙するおせんのしたたかさが強く印象に残った。また、同じ長屋に住むおせんと、彼女を口説きたい下心から何かと味方する棒手振り・登の絡みも物語に彩りを添え、楽しく読むことができた。
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幼い頃に両親を失い、一人で貸本屋を営みながら生きるおせん。 彼女の目を通して、この時代に生きる人たちの生活が、今もそこにあるかのように見えてくる。 女一人、必死に逞しく、でも軽やかに生き抜いていく彼女の姿に励まされ勇気付けられる人も少なくないはず。
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なかなか楽しい本だった。江戸時代の出版事情がいくらか分かった。 主人公のせんも魅力的に描かれている。 次作が待ち遠しい
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”貸本屋”と聞いて小学生の頃、マーガレットや少女フレンドなどの漫画を借りていたお店を懐かしく思い出した。青山文平さんの小説「つまをめとらば」(https://amegasuki3.blog.fc2.com/blog-entry-269.html)でリタイアした武士・貞次郎が好きな...
”貸本屋”と聞いて小学生の頃、マーガレットや少女フレンドなどの漫画を借りていたお店を懐かしく思い出した。青山文平さんの小説「つまをめとらば」(https://amegasuki3.blog.fc2.com/blog-entry-269.html)でリタイアした武士・貞次郎が好きな算術を中心に貸本屋業を営んでいたとあり、江戸時代にもすでにあったと知り驚き嬉しかった覚えがある。(最近青山文平さんの『本売る日々』も上梓されている) 貸本屋の歴史にも興味が湧いた。 小説でたびたび使われる『写本』とは? 江戸時代にも勿論出版規制があった。(おせんの父親は版木職人だったが、御公儀を愚弄する内容と判断され指を折られ、それを苦に自殺している)そこで、裏技として使われたのが写本だった。規制の対象となる木版印刷の出版統制の対象から逃れるために、問題となる書物は写本され規制の網の目を潜り抜けていたのだ。 江戸浅草で女手ひとつで貸本屋を営む〈おせん〉の奮闘を描く。読本をめぐって身にふりかかる事件の数々をおせんが謎解いていく。おせんのような貸本屋が時代を経て大手のレンタル店を生み出し、技術革新でまたそのレンタル店が姿を消している現在、貸本屋おせんのような真似事をしてみるのも面白そう。
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寛政の改革以来、厳しい出版統制が続いている頃。 読物は高価で庶民には手が届かないことから、「貸本屋」が重宝された。 おせんは「梅鉢屋」を名乗り、本をかついで振り歩いて五年。 自分自身が本の虫であることはもちろんだが、本と人を繋ぐ役に立ちたいと思っている。 「けしからん」の一言で、多くの本が出版停止になるのはおかしい。 お上に逆らうことはできないが、裏道を通ってでも、本を生かし、読み継がれる手助けをしたいとおせんは考えている。 明確な意思を持った、影の活動家かもしれない。 いつか店を持つのが夢。 第一話 をりをり よみ耽り せん自身のこと。12歳で両親と別れるきっかけになったのも出版統制だった。 第二話 板木どろぼう 災害で命を落とした母の災難を勝手に美談に置き換えられ、娯楽小説として出版されることに憤る。 現代でも当てはまる事はあるだろう。 第三話 幽霊さわぎ 大店の主人が亡くなり、その通夜に女将と手代が睦み合っていた。怒った故人がよみがえり・・・? 当時の浮世絵と風俗が良くわかる。 第四話 松の糸 遊び人と名高い、大店の若旦那が本物の恋をした相手は、若い後家。 幻の書物を見つけてくることが求婚に応じる条件と言う。 意外なオチにウケる。 やはり、生きている人間が幸せにならなくては! 第五話 火付け せんは、危ないことに首を突っ込みすぎなのかも。 火事や災害で失うものがあっても、江戸の庶民は何度でもたくましく立ち上がる。 お金も、本も天下の回りもの。 頑張れおせん。 続く・・・のかな?
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