コード・ブレーカー(上) の商品レビュー
ゲノム編集技術CRISPR-Cas9の開発によってノーベル賞を受賞した女性科学者ジェニファー・ダウドナの業績を中心に描いたノンフィクション作品。ダウドナ博士の生い立ちから、「自然に対する純粋な好奇心」が、ゲノム編集技術の誕生に至る原動力となった経緯に迫る。また、科学者たちの競争や...
ゲノム編集技術CRISPR-Cas9の開発によってノーベル賞を受賞した女性科学者ジェニファー・ダウドナの業績を中心に描いたノンフィクション作品。ダウドナ博士の生い立ちから、「自然に対する純粋な好奇心」が、ゲノム編集技術の誕生に至る原動力となった経緯に迫る。また、科学者たちの競争や協力、そして彼らの発見がどのように世界に影響を与えたかについても掘り下げる。ゲノム編集、デザインベビーの技術からmRNAワクチンまで。科学的な領域も分かりやすく、科学者の伝記としても面白く読めた。 ー 2018年ある中国人科学者がクリスパーを使ってヒト胚のゲノムを編集し、その原因になるHIVウィルスの受容体を生成する遺伝子を無効化した。操作を行った受精卵から双子の女の子が生まれ、世界初のデザイナーベビーになった。 ー クリスパーとはゲノム編集のツール。現在クリスパーは鎌状赤血球貧血症、がん、失明の治療に使われている。そして2020年、コロナウィルスを検出・破壊する方法の研究がクリスパーによって始められた。クリスパーとは、クラスター化され規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返しの略。 ー DNAはRNAに似ているが、酸素原子が1つ少ない。デオキシとは酸素が取れたという意味。進化的観点から見れば、コロナウィルスも非常に複雑な人も拡散によって高度化された遺伝物質を運搬し、複製しようとするタンパク質でできたパッケージに過ぎない。RNAは、DNAとタンパク質を仲介する中間管理職のような扱い。地球上の生命のある種の生物は、RNA干渉によってウィルスを撃退する方法を進化させてきた。 - 現在ではスタートアップ企業が事業計画書にクリスパーと言う文字を入れるだけで、ベンチャーキャピタリストは熱狂する。しかし、ダウドナとハウルウィッツが資金調達を試みた頃はそうではなかった。 一部の医学研究者たちは、欠陥遺伝子がもたらす疾患を遺伝子治療によって治すのではなく、欠陥のあるDNA配列を編集すると言う目標を掲げた。こうしてゲノム編集という取り組みが誕生した。上巻はこの辺までだが、徐々にボルテージが上がっていく。
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科学の世界で繰り広げられるドロドロの人間ドラマ。特許権や論文を巡る争い、研究室同士の確執…どのような業界でも争いは存在するのである。自身の名誉と利権のためにあらゆる手を使って相手を出し抜く大人たち。笑顔の裏に潜む相手の本心は誰にも分からない。ノンフィクションだが、まるで上質なサイ...
科学の世界で繰り広げられるドロドロの人間ドラマ。特許権や論文を巡る争い、研究室同士の確執…どのような業界でも争いは存在するのである。自身の名誉と利権のためにあらゆる手を使って相手を出し抜く大人たち。笑顔の裏に潜む相手の本心は誰にも分からない。ノンフィクションだが、まるで上質なサイエンスミステリー小説のようでおもしろく読める。 以下、本書より抜粋。 「偉大な科学者だけが持つ特別なスキル。それは、緻密な実験を重ねることと、スケールの大きな問いをすることだ。神は細部と、そして全体にも宿る。」 「科学のブレイクスルーが一瞬のひらめきで起きることはめったにない。それらは総じて10年以上にわたって演じられるアンサンブルであり、個々のキャストは、1人では成し得ない偉大な業績の一部になるのだ。」エリック・ランダー
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物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。 東大OPACには登録されていません。 貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください 返却:物性研図書室へ返却してください
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上巻。「生命科学革命と人類の未来」とサブタイトルにあり、m-RNAやゲノムのお話かと思ったら一人の研究者の伝記だった。現時点では研究開発競争で誰に出し抜かれたとか、授賞式で黒のドレス着たとか、新しい職場で落ち込んだとかばっかり。しかしビル・ゲイツが絶賛しているとのこと。自分の感想...
上巻。「生命科学革命と人類の未来」とサブタイトルにあり、m-RNAやゲノムのお話かと思ったら一人の研究者の伝記だった。現時点では研究開発競争で誰に出し抜かれたとか、授賞式で黒のドレス着たとか、新しい職場で落ち込んだとかばっかり。しかしビル・ゲイツが絶賛しているとのこと。自分の感想が異端であると信じて下巻を読む。
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飛行機が先にあって あとから航空力学が確立する 蒸気機関車が先にあって あとから熱力学が確立する 発明が先にあって原理はあとからついてくる 行き詰まった研究の突破口を開くのが その分野から 程遠い 素人の意見であったり する ということが面白かった。 勤務時間など気にせず ...
飛行機が先にあって あとから航空力学が確立する 蒸気機関車が先にあって あとから熱力学が確立する 発明が先にあって原理はあとからついてくる 行き詰まった研究の突破口を開くのが その分野から 程遠い 素人の意見であったり する ということが面白かった。 勤務時間など気にせず 人生をかけて研究にうちこむ研究者たちを 尊敬する。
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ウォルター・アイザックソンの本はジョブズ、ダヴィンチとトライしたが、これまで読了したことがなかった。今回は一気に読むことができた。以下感想。 現在進行形の先端科学の話題を取り扱いながら、ダウドナを始めとした人間のストーリーになっているので読み応えがあり引き込まれる。感情移入した...
ウォルター・アイザックソンの本はジョブズ、ダヴィンチとトライしたが、これまで読了したことがなかった。今回は一気に読むことができた。以下感想。 現在進行形の先端科学の話題を取り扱いながら、ダウドナを始めとした人間のストーリーになっているので読み応えがあり引き込まれる。感情移入したり、身近な人が遺伝子由来の難病になったときどう判断するかという思い出問いが浮かんだりしてくる。途中にアイザックソンの解説や私見も入ってくるので、それで頭を少し休ませることもできる。 登場人物の間のライバル意識、そして協働している仲間という人間関係の軸と、ワトソンやフランクリンら先達からの歴史と現在・未来という時間軸、そして生命をめぐる倫理と科学の相克という軸、これらを押さえて読むととても大きなストーリーがさらにビビッドに見えてくる。 アイザックソンがバイオ、ライフサイエンスの世界に着目したというのはいろんな意味で転換点にあるのではないかとも感じた。
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人類が長く生きられるようになった背景には様々な要因があると考えられている。その一つが技術の進歩であり、誰もが疑うことなきことだと思う。しかし、これからは長生きだけでなく、健康に(病気に負けない)生きることができることを目指して進歩し続ける分野があることに気付いた。それが、バイオテ...
人類が長く生きられるようになった背景には様々な要因があると考えられている。その一つが技術の進歩であり、誰もが疑うことなきことだと思う。しかし、これからは長生きだけでなく、健康に(病気に負けない)生きることができることを目指して進歩し続ける分野があることに気付いた。それが、バイオテクノロジーの分野であり、遺伝子コード編集であり、クリスパー・キャス9の働きだと知ることができた。
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ノンフィクションを読んでも本当の事は分からないのだろうが、自然科学、研究、論文、特許、人間模様、のグローバルな時事刻々の進展をインタビュー取材で掘り出し、記録し、組み立て直した著者の力量に圧倒される。冒険物、スリラー物が好きな人にも勧められる。生命科学用語の難易度は、果たしてどう...
ノンフィクションを読んでも本当の事は分からないのだろうが、自然科学、研究、論文、特許、人間模様、のグローバルな時事刻々の進展をインタビュー取材で掘り出し、記録し、組み立て直した著者の力量に圧倒される。冒険物、スリラー物が好きな人にも勧められる。生命科学用語の難易度は、果たしてどうなのかな、一般教養レベルなのかな?
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伝記作家のウォルターアイザックソンの新作。 ゲノム編集技術クリスパーの開発経緯から、その後の特許紛争、新型コロナへの対応までを、ノーベル化学賞を受賞したジェニファー・ダウドナさんを中心に描いたノンフィクション。 ゲノム編集という言葉は知っていたが、それがどんなもので、どのよう...
伝記作家のウォルターアイザックソンの新作。 ゲノム編集技術クリスパーの開発経緯から、その後の特許紛争、新型コロナへの対応までを、ノーベル化学賞を受賞したジェニファー・ダウドナさんを中心に描いたノンフィクション。 ゲノム編集という言葉は知っていたが、それがどんなもので、どのような経緯で開発されたか知らなかったので大変勉強になった。 著者自身が編集作業を経験したり、特許やこのツールの将来の在り方についても絡んでいて、自己の見解を述べたり、研究者間の橋渡し役になっている所が普通のノンフィクションとは違っている。当事者の視点も盛り込まれている。科学者間のポリシーの違いから、医療と生命倫理について考えさせられることも多かった。 遺伝子工学については全く予備知識が無かったので、疑問に思う事も多かった。もう少し勉強しておいた方がもっと楽しく読めたと思う。
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スティーブジョブスの伝記を書いたアイザックソンの著作ということで、期待をしていたが、その期待以上の筆致で唸らされた。(上)はこの本の主人公であるダウドナが、化学の道を選び、RNAの研究者としてクリスパーキャス9システムのメカニズムを解き明かしていくまでが時系列で丁寧に描かれている...
スティーブジョブスの伝記を書いたアイザックソンの著作ということで、期待をしていたが、その期待以上の筆致で唸らされた。(上)はこの本の主人公であるダウドナが、化学の道を選び、RNAの研究者としてクリスパーキャス9システムのメカニズムを解き明かしていくまでが時系列で丁寧に描かれている。 (下)はもっとスコープを広げてバイオテクノロジー分野に関わる人たちの物語という感じで、(上)(下)別の物語として楽しめる。(上)だけでも完結した価値で楽しめるけれど、(上)(下)通して読んだほうが絶対によい!
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